奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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秋刀魚祭り、皐月にマジで助けてもらっています。



第7話「誤解と空回り」

 私が自分の我欲と自我との葛藤の中で苛まれていると、それを吹き飛ばすかのような大声が聞こえて来た。

 声のした方を見ると

 

 ……誰ですか?

 

 まるで陽炎姉さんのように長い茶髪を左右それぞれリボンでまとめている生徒が私のことを指さしていた。

 その顔立ちはなんとなくだが、私がこの世界に来るまでの間に見て来た人々と似ている気がする。

 

「あの、どなたですか?」

 

 目の前の彼女と私は初対面のはずだ。

 だから、少なくとも大声で呼び止められる理由はないはずだ。

 

「アンタ……一夏のなんなのよ?」

 

「……はい?」

 

 ただ、同時にその一夏さんはそういったことをあまり深く考えないのは私との仲で理解できることだが。

 

 ……一夏さんのお知り合いでしょうか?

 

 異性のことを下の名前で呼ぶのは親しい人間同士であるのはセシリアさんと一夏さんの例を見れば理解できることだが。

 ただ、同時にその一夏さんはそう言ったことをあまり深く考えないのは私との仲で理解できることだが。

 となると、目の前の彼女は一夏さんとある程度、親しい知人であるのは間違いないだろう。

 恐らく、友人辺りなのだろう。

 

「あの、一夏さんのご友人でしょうか?」

 

 私は目の前で多少興奮状態に思える彼女をなるべく刺激しないように確認しようとするが

 

「……一夏さん(・・・・)?」

 

「あ、あれ……?」

 

 次の瞬間、自分でも面倒くさいことになったと感じた。

 そして、確信がいった。

 どうやら、目の前の彼女は一夏さんに好意を寄せているらしい。

 これは提督たちと艦娘たちが繰り広げた恋の戦いを目にしてきた経験と、一夏さんが私を『雪風』と呼び、私が彼を『一夏さん』と呼ぶ際に目にしたセシリアさんと篠ノ之さんの反応を見たことによる「直感」だ。

 

 ……どれだけ、女性の心を掴んでいるんですか!?あなたは!?

 

 私はここにいない本人に対して、心の中で叫んだ。

 まさか、入学から間もなく好意を三人もの異性から寄せられているとは。

 

 ま、まずいです……

 これでは篠ノ之さんだけでなく、セシリアさんも……

 

 ただでさえ、セシリアさんと「下心」のない私が一夏さんに近づくだけで機嫌が悪くなる篠ノ之さんが目の前の彼女が一夏さんに接近したらどうなるのだろう。

 しかも、下手をすれば今まで大人しかったセシリアさんにも影響が出てくる可能性があるかもしれない。

 

「ねえ?

 もう一度、訊くけど……

 アンタは一夏の何なの?」

 

 目の前の彼女は見た目の印象から(陽炎姉さんに似た恰好をしていることから)考えられない低い声で再び訊ねて来た。

 

 ……いや、私にはそこまで後ろめたいことなどないのですから、ここは正直に言えばいいだけです

 

 ……一夏さんと私ってどういう関係でしたっけ?

 ただ後ろめたいことはあるにはあるが。

 それでも、異性関係には関係ないことだ。

 

 絶対、大丈夫!

 

 私は自分に言い聞かせるようにしながら心の中でいつものように言い

 

「いえ、私はただの―――」

 

 と自分と一夏さんの関係を説明しようとした瞬間

 

 ……あれ?

 

 次の言葉が出てこなかった。

 なぜならば、

 

 ……一夏さんと私てどういう関係でしたっけ?

 

 一夏さんにとっての自分の立ち位置を把握できていなかったからだ。

 確かに私は彼とは名前で呼び合う仲で私は彼の護衛でもある。

 しかし、呼び方に関してはどちらかと言えば、なし崩しによるものであって友人と言えるか微妙な所であり、護衛についても大っぴらに語れることではない。

 本音さんやセシリアさんとは下の名前で呼び合い、名前で呼び合わない相川さんや夜竹さんたちも友人と明確に言えることから、名前呼びしていることが必ずしも友人同士とは限らないはずだ。

 一夏さんがこちらを友人だと思っていてくれているのならば堂々と言えることだが、あちらがどう思っているのか解らないのに友人を自称するのは違う気がする。

 確かに訓練を共にする仲であるが、果たしてそれだけで友人と言えるだろうか。

 

「ちょっと、どうしたのよ?」

 

 目の前の少女は私の言葉が続かなくなったことに戸惑ったことで、多少ながら冷静さを取り戻していた。

 

 えっと……こういう場合は「二水戦」時代の時みたいに……

 いや、「艦娘」でもないのに「僚艦」と言うのは……

 それに軍属でもないのに「同僚」とか「戦友」でもない気が……

 

 長い間、軍にいたことでよく考えてみたら軍関係以外で普通の(・・・)人間関係というものができたのは初めてかもしれない。

 軍属以外の人間でできた人間関係と言えば、私を政治利用しようとする政治関係の人間や私を「奇跡の駆逐艦」と言う「英雄」として見る民間人しかいなかった。

 そう言った世界でしか生きて来なかったこともあって、友人以外の人間関係について、何と言えばいいのか困ってしまった。

 

「いえ……その……一応(・・)、ただのクラスメイトです」

 

 困った私が口に出したのは「級友」と言う種類の友人関係であった。

 ある程度、同じ環境にいればそう言える「戦友」とはある意味では同じだろう。

 しかし、なぜか「戦友」と比べると言葉に重みがないのはなぜだろうか。

 

一応(・・)……?」

 

 自信なさげに言ってしまったのが原因なのだろうか、目の前の少女はかなり訝し目に私を見て来た。

 ここ数日の経験の影響か、あの視線には嫉妬が込められているのを感じてしまう。

 金剛さんと榛名さんが恋しい。

 

「えっと……他のクラスの方よりは交流が多いと言うだけであって、そこまで親しいと言う訳では……」

 

 私はなるべく目の前の彼女を刺激しないように包み隠さずに説明しようとするが

 

「ええ……そうでしょうねぇ……」

 

「……はい?」

 

 彼女はかなり恨めしそうな声音でそう呟き

 

「なにせ、訓練を終えた後にアイツの傍にいて、笑いかけるぐらいには仲が良いんでしょう?」

 

「……え?」

 

 目の前の少女は笑顔であるが、目が笑っていない表情で今日の訓練の後の様子をやけに詳しく口に出した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 彼女はきっと今日の放課後の訓練の後を私たちの様子を見ている。

 彼女が一夏さんに好意を寄せているのは明らかである。

 

「セシリアさんと篠ノ之さんはともかくとして、私は決してそういった目的は……!」

 

 私は彼女の誤解を解こうしたが

 

「へえ~……セシリアと篠ノ之ねぇ……

 一夏の奴、私がいるのに……

 ふ、フフフ……」

 

 あ、あれ?

 

 しかし、その怒りの矛先はいつの間にか私ではなく一夏さんに変わっていた。

 と言うよりも、どこか妙だ。

 そもそも初対面の人間相手にケンカ腰の時点でおかしいとは思うが、彼女の嫉妬は妙に篠ノ之さんがしているものとは異なる気がする。

 

「あ、あの~……」

 

「ん、何よ?」

 

 最初の頃のセシリアさんと比べると相手を見下している感じがしない彼女の様子に私は話ができると考えて、少し気になる所があった。

 それは

 

「あなたはどうして、一夏さんのことに関してそこまで怒っているんですか?」

 

「……えっ!?」

 

 一夏さんに対する嫉妬の大きさだ。

 

「ここは女子校ですよ?

 一夏さんが女性と一緒にいるのは仕方ないのでは?」

 

「う、それは……」

 

 この学園は私の世界で言う女学校と同じだ。

 一夏さんはほぼ強制的(色々な圧力や陰謀から守るためでもあるが)に入学させられた唯一の男子生徒だ。

 そんな中で『女子と話すな』と言うのは、つまりは『誰とも話すな』と言うことになるし、それは彼に『人間関係を築くな』と言っているようなものだ。

 それは健全な青春期を過ごすのは若人に対して、酷なことではないだろうか。

 私個人としては、若い兵士たちの死も多く見て来たこともあってそれは避けたい。

 特にマリアナ沖からレイテ沖で米軍との挟撃策に成功するまでの間は酷いなんてものではなかった。

 それに私はガダルカナル撤退の際に輸送船に引き揚げる際に落ちた若い陸軍の兵士を救助した後に艦娘(私たち)のことを見て、『お母さん……』と言って安堵死していった時の光景は今でも覚えている。

 だからこそ、私は一夏さんには本心では普通に(・・・)生きて欲しいとも思っている。

 

「それに一夏さんが誰と恋人になろうとそれは彼の自由じゃないでしょうか?」

 

 そして、何よりも私はかつて一人の男性を愛した一人の女性として、これだけは言いたかった。

 たとえ、私の想いが「あの人」に届かなくても、「あの人」が幸せでいてくれるのなら良いとも思っている。

 「自由恋愛」とは無縁の時代に生まれた私だけれども、これだけは言える。

 

「『自分が好きだから、自分を好きになれ』と言うのは違うと思いますよ?」

 

 本来ならば、篠ノ之さんに最も言わなくてはいけない言葉なのかもしれない。

 ただ、彼女はきっと私がそう言っても聞く耳を持たないだろう。

 セシリアさんに関しては彼女がどこかで間違えるのならば私は友人(・・)としてはっきり言うつもりだ。

 ただし、今回に限っては一夏さんが嫉妬による理不尽な目に遭わないうちに釘を刺しておこうと思った。

 なにせ、今回の件は一応私にも原因があるのだから。

 

「―――うわよ!」

 

「……え?」

 

 そんな私の主張に彼女は俯きながらも何か語尾を強めながら呟いた。

 そして、

 

「違うわよ!!」

 

 ときっぱりと私のその一言を否定した。

 何が違うのだろうか。

 

「あの……『違う』と言うのは一体?」

 

 今まで見せていた妙に勢いだけの否定ではなく、どこか心が込められた変化に私は戸惑いながらもその正体を確かめようとした。

 

「私……告白(・・)したもん……」

 

「……え?」

 

 その一言に私は一瞬、思考が止まった気がする。

 しかし、

 

「ちゃんとアイツに告白(・・)して『OK』を貰ったのよ!!」

 

「………………」

 

 続く彼女の一言に私は一瞬、理解が追いつかなかったが

 

「え、ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!?」

 

 理解した瞬間に私は驚愕してしまった。




個人的に鈴と箒の違いは
ちゃんと好意を伝えているかだと思います。
少なくとも原作開始前に告白をした鈴は女の戦場に立っていますので。
と言っても、双方とも素直に好意を伝えきれていないのが失敗なんですけどね……
明確に「好き」とドストレートに言わない限りは一夏には届かない気がします。
と言っても、三巻以降の箒もそれを言おうとしてもなぜか事故が起きて伝えきれない……
何と言うか、不憫です……
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