奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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秋イベ。やはり、レイテですか。妙に秋の季節ボイスでレイテを彷彿させるものが多かったのはそう言うことですか。
敵の連合艦隊が来る可能性大ですね。
ただ、連合艦隊と言うよりも機動部隊な気がしますが。

追記
と思ったら、艦隊作戦第三法でした……
誤解を与えて申し訳ございません。


第8話「花の如き、乙女の一生」

「こ、告白……?」

 

 目の前の少女の訴えに私は衝撃を受けた。

 彼女は確かに「告白」と口に出した。

 「告白」とは詰まる所、意中の相手に想いをぶつけることだ。

 そして、彼女はそれを一夏さんにして、なおかつ受け止められたのだ。

 それはつまり

 

「あなたは……一夏さんの恋人なんですか!?」

 

 彼女と一夏さんは恋人同士と言うことに他ならない。

 

「え!?その……」

 

 私の質問に目の前の彼女は顔を赤らめて返答を渋っていた。

 無理もない。

 

「ま、まあ…そうね……」

 

 ほどなくして、彼女は気恥ずかしそうに肯定した。

 だが、それだけでなく

 

「い、一応結婚を前提とした(・・・・・・・・)仲よ?」

 

「ええええええええええええええええええええええええええ!?」

 

 さらなる衝撃的な発言を口に出した。

 「あちらの世界」で育った私は本音さんたちに初めて連れ出してもらった「こちらの世界」の文化に衝撃を受けたが、その中で最も衝撃を受けたのはこの世界の恋愛観だった。

 この世界では「恋愛」と「結婚」は別と言う価値観に関しては私はあまりにも衝撃的だった。

 なぜならば、艦娘内や軍の人々は私たちをまるで自分の娘のように見ていた方々が多かったこともあり提督たちに対する恋愛に関しては後押ししてくれていたが、世間ではむしろ、『けしからん』とか、『破廉恥』とか男女関係なく批判されることも多くあった。

 実際、「司令」と榛名さんの結婚にもそんなことを言う人間も多くいた。

 でも、私たちは決して浮ついた気持ちで恋愛をしているわけじゃないのは確かだった。

 むしろ、いつ死ぬか分からないからこそ、全力で恋もするし、好きな男性と添い遂げたかったのだ。

 私たちにとっての「恋愛」は短くて儚い生であっても後悔したくないと言う表れでもある。

 そんな艦娘独特の恋愛観と「あちらの世界」の価値観の中で育った身としてはこの世界の『恋愛と結婚は別』と言う考えは余りにも衝撃的過ぎた。

 だが、これが「この世界」の当たり前と言うのは、一応理解できた。

 しかし、目の前の少女はそうじゃないのだ。

 

「お、お若いのに……すごいですね?」

 

 私は素直に感心してしまった。

 この世界においての結婚適齢期と言うものは大体、20代後半らしいがまさか思春期の真っ盛りにそれを見据えて交際を申し入れるとは。

 

 一夏さんが女性に色々とアプローチされても動じないのは……この人のためでしょうか?

 

 同時に私はこの件で一夏さんの今までの態度に納得がいった。

 セシリアさんや箒さんと言った学年でも一、二を争う美女二人に迫られながらも全く顔がにやけたり、下心を見せないのは恋人に義理立てしているからではないだろうか。

 そんな目の前の少女と一夏さんの関係を理解した瞬間に私は咄嗟に

 

「ごめんなさい!!」

 

「え!?ちょ、ちょっと!?」

 

 思わず頭を下げてしまった。

 先ほどまで彼女の事情を知らなかった私はセシリアさんや篠ノ之さんと同じ感覚で彼女を扱ってしまった。

 そして、さも正論を説くようにようにして彼女の心情を理解しないで彼女に偉そうに『一夏さんが誰と恋人になろうとそれは彼の自由じゃないでしょうか?』とか等の言葉を吐いてしまった。

 それを彼の恋人に対してだ。

 あの二人と違って、彼女は嫉妬して当然の立場だ。

 自分の浅はかさに私は胸を締め付けられる気分だ。

 私だって、榛名さんと「司令」が「あの作戦」の前に結ばれた際に心が張り裂けそうになった。

 片想いの私があんな気持ちになったのだ。

 恋人である彼女はもっと辛いはずだ。

 私が罪悪感の中に苛まされていると

 

「もう、頭を上げなさいよ!」

 

 目の前の少女はそう言った。

 だが

 

「いいえ!このままでは私の気がすみません!」

 

 私には頭を上げる勇気がなかった。

 彼女に対する罪悪感もあるが、何よりもかつて恋に破れた一人の女として、彼女に申し訳なかった。

 

 

 

 もう……!!なんなのよ、この娘!?

 

 私は一夏と妙に近しく感じた女子三人組の一人である茶髪のセミロングの女子が突然謝罪し出して、私が頭を上げるように言っても頭を上げようとしないことに困ってしまっている。

 私が彼女に突っかかったのはほぼ衝動的な動機だ。

 だって、告白した相手に女子が近づいていたら、誰だって苛つくはずだ。

 どうやら、目の前の女子は一夏とは本当にただのクラスメイト(・・・・・・・・・)らしい。

 ただし、他の二人については違うらしい。

 

 篠ノ之に、セシリアねぇ……ん?

 

 他の二人の名前を思い浮かべて私はとあることを思い出した。

 

 そう言えば、さっき話をつけてもらった娘が一組にはとんでもなく強い女子がいるって言ってわよね……?

 

 何でもイギリスの代表候補生には圧勝し、一夏相手にもほぼ圧勝までいった女子がいるらしい。

 「代表候補生」を倒せる時点でおかしいが、圧勝と言うのがさらにおかしい。

 とんでもない新入生がいたものだ。

 その新入生相手に一夏は食い下がっているのもすごいが。

 さすが、一夏だ。

 もしかすると

 

「……もしかすると、「雪風」てあんたのこと?」

 

 目の前の女子こそが件の女子、「陽知 雪風」ではないだろうか。

 

「……え?どうして、私の名前を……」

 

 どうやら当たりだったらしい。

 自分の名前を初対面の私が知っているのか解らず彼女は先ほどまで伏せていた顔を上げて驚いた。

 ただ、私としてはなぜ驚くのか理解できない。

 私はこれを話題を変えるチャンスだと考えて

 

「いや、あんた……

 もしかすると、自分の噂も知らないの?」

 

「う、噂?」

 

 そのまま他愛もない世間話に持って行こうとした。

 彼女の顔には明らかな戸惑いがあった。

 と言うよりも、噂に聞いた彼女がこんな感じとは意外だ。

 

「『今年度最強の新入生』とか、『情け容赦ない姫武者』とか、『小動物の皮被った猛獣』とか、『ラーテル』とか色々と仇名が出来てるわよ?」

 

「はい!?」

 

 目の前の本人は自分の知らない所で付いていた仇名に驚いていた。

 私もさっき、話をつけた二組の娘に聞かされたばかりであるが、何でも目の前で自分の噂に戸惑っている女子は入学初日から色々と噂になるぐらい目立っているらしい。

 と言っても、それは可愛らしい外見や普段の優等生的な態度に加えて、問題発言した生徒に対しての批判や、クラス代表を決める際の決闘への参戦、試合になるといつもの可愛らしさとは裏腹にほとんどラフプレイに近い戦いや苛烈な攻撃、女子なのに『吐く』等の言葉を使う一面、さらにはあの千冬さん相手にも評価されるほどの「IS」の操縦技術等のただ目立つ(・・・・・)と言った感じのものばかりだ。

 

 あと……千冬さん相手にも抗議したのよね……この娘……

 

 あの『世界最強』相手に抗議したと噂を聞いて私は命知らずにも程があると思った。

 そう言えば、先生にも別れ際に

 

『今年の「IS学園」には相当な実力者がいるらしいので、あなたも負けないように励みなさい』

 

 と言っていた気がした。

 その実力者とはこの「陽知 雪風」じゃないだろうか。

 ただ目の前の本人は言うと

 

「ら、ラーテルてなんですか……?」

 

 仇名の一つについて悩んでいた。

 確か、「ラーテル」てあれだったはず。

 イタチの仲間で特殊な毛皮を持っていてそれが装甲になって蛇毒にも耐性あって毒蛇を食べたり、人やライオンとか自分よりも大きな相手にも立ち向かう一面があるらしくて、ギネスブックには「世界一怖いもの知らずの動物」と登録されているらしい。

 確かにあの千冬さん相手にも立ち向かう時点で「怖いもの知らず」だろう。

 

「はあ~……なんか、もういいや……」

 

「……え?」

 

 一夏に対するやきもちや事情を知りもしないで説教染みたことをしてきたことについ、カッとなってしまって彼女に噛みついたが、その後の謝罪やら自分の噂に困惑する彼女の様子を見て毒気を抜かれてしまった。

 少なくとも、目の前の彼女は嫌な奴じゃないのは確かだ。

 

「あ、あの?」

 

 私の豹変した態度に彼女は戸惑ってしまっている。

 当たり前だと思うが

 

「さっきは悪かったわね。

 じゃあ!」

 

「え!?ちょっと!?」

 

 色々と情報を手に入れられたし、なんだか「雪風」と言う面白そうな人間を見れたこともあって少し機嫌が直ったこともあって私はその場を跡にした。

 

 陽知 雪風ね……

 ま、とりあえずは一夏を狙っているわけじゃないしいっか♪

 

 

 

「な、なんだったんですか……彼女は……」

 

 突然、私の前に現れて因縁をつけて来たと思ったら、一夏さんの恋人を名乗り、私の噂を口に出して、嵐のように去っていた少女に私は茫然とした。

 

「……やはり、少し目立ちすぎましたか」

 

 我ながら、「噂」になるほど目立つことをしてきてしまったことに私は今更だが迂闊だと思った。

 全力を常に出さないことや後悔するような生き方が嫌だからと言ってこれでは「護衛」失格だ。

 更識さんにはある程度のことは容認されているとは言え、これは不味い。

 

「と言うよりも……ここでも私は「小動物」ですか……」

 

 金剛さん等の戦艦や空母のお姉様方からは妹分兼愛玩動物のように可愛がられていたが、少し複雑である。

 そもそも、「ラーテル」とはなんなのだろうか。

 小動物の類なのだろうか。

 随分と可愛げのない小動物の名前な気がする。

 

「しかし、まさか……一夏さんに恋人(・・)がいたなんて……」

 

 私は未だに一夏さんに恋人がいたことに驚きを隠せない。

 もちろん、彼は顔が整っているし、「IS」以外に関しては勉強面も優秀、織斑さんからは姉孝行な弟と聞かされ、さらにはあの試合で見せたようにどこか覚悟を決めた時の決意は本物だ。

 これだけ揃っていたら、確かに異性の気を惹くのは無理もない。

 ただ、普段の女性に対しての妙にずれた紳士的な態度が邪魔するのだろう。

 

「……でも、これでいいのかもしれませんね」

 

 色々と驚くことばかりであったが、私は一夏さんに恋人がいてよかったと思っている。

 私は一時は彼を利用していたことに罪悪感を覚え、彼が『守る』と言うことに妙に思い入れが強かったことに危うさを感じていた。

 しかし、それは彼に恋人(・・)と言う存在がいることで意味をなくす。

 

 守るものなんて……自分の近くの誰かでいいんですから……

 

 私は彼に既に「恋人」と言う「守るべき存在」がいたことに安堵感を抱いた。

 彼は気負いすぎる。

 だから、背負わなくていいものまで背負おうとする。

 守る対象のいない『守る』決意を持つ人間はそうなってしまう。

 

 思えば……私も……

 

 これは大切な「誰か」すらも守れなかった私だからこそ言えることだ。

 姉も妹も師も僚艦も戦友も守れなかったからこそ、私は「艦娘」を辞めなかった。いや、辞めれなかった。

 自分がどれだけ比叡さんや神通さん、「お姉ちゃん」や磯風、初霜ちゃんたちの想いを無下にしたかなんて自分でも解っている。

 だけど、そんな私でも最期に救えた「誰か」がいたのがせめてもの救いだった。

 

「……セシリアさんに何て言えばいいんでしょうか」

 

 安堵と自戒を感じたと同時に私は一夏さんに恋をした友人に「失恋」と言う悲しみを感じさせてしまうことに苦しさを感じた。




個人的に「ラーテル」て割と好きな動物だったりします。
最初に知った時はこんな生き物がいるんだ……と思ってしまいました。

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