奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?
運営のアイコンの雪風可愛すぎだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?
ちょっと、雪風のためにカレンダー買おう!

……前から見たら普通と言うかかなりの美少女ですからね……雪風……
小動物のインパクトが強いだけで……


第15話「恋が破れる時」

 夕食を食べ、自主的な走りこみして、生徒会室への報告も行い全ての日課を終えた私は自室への帰路についていた。

 更識さんが不在とは言え、その代理を務める布仏さんに報告することは怠る訳にはいかない。

 これでも私は一応は「更識」に雇われている身であるから。

 思えば、私がこの世界に来て当初は訓練に対して焦燥感を感じなかったのは更識さんの付きっ切りの訓練を受けていたのが大きかった。

 しかし、今はその更識さんとの訓練は潜伏しているかもしれない工作員に感づかれないようにするために出来ずにいる。

 我ながら、自分で一夏さんを指導したいと言いながらも自分の訓練不足を嘆くとは本当に自分勝手だと思えてくる。

 だが、一度神通さんの下で鍛えられてきた身としてはどうしても現状には不満を感じてしまう。

 

 凰さんの言うように譲るべきなのでしょうか?

 

 こんな風にへこたれていると凰さんの持ち出してきた言葉が魅力的に感じるし正しくも感じてしまう。

 確かに彼女と交代すれば、私はそれなりに満足できるだろう。

 ただ

 

 ……あの事(・・・)がばれたら

 

 一夏さんの「恋人」である彼女が私と入れ替わりになれば、とんでもない修羅場になるのはここ最近の出来事を見ていれば火を見るよりも明らかだ。

 ゆえに譲るわけにはいかない。

 それに自分が引き受けたことを易々と辞めるのは義理に反している。

 また、あくまでも交代するのは私が負けた場合だ。

 私はこれでも負けず嫌いだし、勝負に手を抜くつもりはない。

 何よりも「水雷屋」としての矜持がそれを許さない。

 

「と言う訳だから―――って」

 

「……この声は?」

 

 そんな時だった。

 凰さんの声が聞こえてきたのは。

 だけど、その声がしてきたのは

 

「ふ、ふざけるなっ!

 なぜ私がそのようなことをしなくてはならない!?」

 

「……!?」

 

 篠ノ之さんの怒鳴り声がして来て私はそれが一夏さんの部屋からのものだと言うことに気づいた。

 

 

「ま、まさか……!?」

 

 私は二人の声を耳にして、例のことがばれたことに気づいた。

 そして、急いで一夏さんの部屋へと向かった。

 

 急がなくては……!

 手遅れになる前に……!!

 

 私が急いでいるのは感情的になってしまった篠ノ之さんが早まった真似をしそうだったからだ。

 失恋する辛さも悲しみも苦しみも痛いほどに理解できる。

 だけど、だからと言ってそれを理由に人を傷つけていいことにはならない。

 辛いのは理解できるけれど。

 それでもそれはしてはいけない。

 その痛々しさを理解するからこそ防ぎたい。

 

「ちょっと待ったぁ!!」

 

「うおっ!?雪風!?」

 

「ゆ、雪風!?どうしてアンタがいるの!?」

 

 私は部屋の前に辿りつくとその勢いのままに部屋へと入った。

 多少、礼儀がなっていないが緊急時なので気にする暇はない。

 

「篠ノ之さん!

 早まってはいけません!!」

 

「な、なに……?」

 

 そのまま私は篠ノ之さんの方に向き直り、彼女が早まらないように制止した。

 篠ノ之さんの沸点の低さはここ数日を見ていれば理解できる。

 ここで止めなければならない。

 

「辛いのは分かります……

 しかし、ここは耐えて……」

 

 私は必死に彼女を止めようと思った。

 こうなるのならば、もっと早めに例の件を明かせば良かったと今更ながら後悔してきた。

 

「なっ!?

 貴様までもそんなことを言うのか!?」

 

 彼女は激昂した。

 無理もない。

 失恋とはそう言うものだ。

 好きな人に恋愛対象として見られず、その好きな人には既に意中の人がいる虚しさは本当に辛い。

 

「ですが、ここで暴れても意味が……!」

 

 彼女の暴れたい気持ちは理解できる。

 恋は決して単純なものじゃない。

 頭では理解していても割り切っていても振り切るのは無理だ。

 だから、彼女の気持ちも理解できる。

 しかし、だからと言って彼女が自暴自棄になるのだけは避けたい。

 それでは彼女が彼女自身を傷つけるだけだ。

 

「ふざけるなっ!!

 どうして、私が部屋を変えねばならない(・・・・・・・・・・・)!!?」

 

「それは―――え?」

 

 説得を続けようとした時だった。

 聞き間違いだろうか。

 篠ノ之さんは今、何と言ったのだろうか。

 篠ノ之さんの口に出した凰さんに対する怒りの理由は私の考えているものとは違ったような気がした。

 

「……どういうことですか?」

 

 一瞬、思考が停止しそうになったが篠ノ之さんに今回の騒動の原因を訪ねようとしたが

 

「いやその……鈴がいきなりこの部屋に来て箒に部屋を替われって言い出したんだよ」

 

「……はい?」

 

 代わりに一夏さんが私の質問に答えた。

 どうやら、篠ノ之さんと凰さんが言い争っていたのは一夏さんと凰さんの関係がばれて傷心の篠ノ之さんが自棄になって攻撃的になったわけではないらしい。

 よく見てみると、凰さんは大きなバッグを持ってきている。

 どうやら、一夏さんの言っている通りらしく、凰さんが突然この部屋に押しかけてきて篠ノ之さんに部屋を替われと無理難題を押し付けたらしい。

 

 なんだ……例の件がばれた訳じゃないんですね……

 

「はあ~……」

 

 真実を知って私は安堵を覚えた。

 

「すみません、篠ノ之さん……

 ちょっと失礼します」

 

「……?」

 

 しかし、私はそれ聞いて篠ノ之さんに断りを入れてから

 

「……凰さん?」

 

 凰さんの方に向き直った。

 私は安堵と同時に凰さんに呆れも覚えてしまった。

 

「な、何よ?」

 

「いくら何でもそれはダメでしょ」

 

 至極単純に思ったことを口に出した。

 

「どうしてよ?」

 

 凰さんはなぜそう思えるのか理解できないことを言ってきた。

 この人は規則を何だと思っているんだ。

 

「部屋割りは学園側が決めていることです。

 それを許可もなく勝手に生徒同士が替えるのは明らかにマズいですよ」

 

 この部屋割りは学園側が決めているものだ。

 それを生徒が自分の気分で勝手に替えるのは明らかに間違っている。

 「規則」と言うのは一見すると面倒臭いしがらみにも思えるが、規律を正し、それを守ることの重要さを学ばせるものだ。

 規律や規則がなければ集団はただの群れになってしまう。

 それは人が社会と言う集団の中で生きる上ではあってはならないことだ。

 もちろん、私が規律や規則を重んじるのは元軍人と言うこともあるが、それでも私は規律や規則は必要だと思う。

 何事にも必ず意味がある。

 今は気づかないかもしれないけれど、いつか気づく時がある。

 それは失って初めて気づくことかもしれないが。

 ただ恐らくだけれど凰さんは私が理詰めで説得しても納得しないだろう。

 今の凰さんの反応は子どもの癇癪と同じだ。

 つまりは駄々っ子と。

 なので私は

 

「仮に部屋替えをしたければ、織斑先生に許可をもらってからすべきですよ?」

 

「いっ!?」

 

 この学園で最強の抑止力であろう織斑さんの名前を出した。

 どれだけ道理を説こうともそこに強制力が伴わなければ道理は正されない。

 

「そうですね……

 今から、織斑先生の所に一緒に行きますか?」

 

「そ、それは……」

 

 意地悪気に私は言った。

 僅かでも相手に期待を持たせれば相手は諦めない。

 だから、相手に自分で諦めさせなければならない。

 必要なのは相手に選ばせる(・・・・)ことだ。

 

「け、結構よ!!」

 

 私の提案を彼女は蹴った。

 人は他人に強制されると反発してしまう。

 だから、あくまでも自主的(・・・)にやらせる。

 神通さんから学んだやり方は未だに忘れない。

 

「そうですか……

 すみません、篠ノ之さん。

 てっきり誤解して」

 

「……え?

 それはその……」

 

 凰さんが諦めたのを確認して私は篠ノ之さんに非礼を詫びた。

 私は事が収まったと思って、この場を跡にしようとしたが

 

「ねえ、一夏……?

 約束(・・)覚えてる?」

 

「……!?」

 

 その言葉を耳にして立ち止まってしまった。

 

 なぜ一難去ったばかりなのにそれを言おうとしてるんですか!?

 

 私は凰さんがよりによって、篠ノ之さんの前で何かを言おうとしていることに強い疑問を覚えた。

 凰さんのしおらしい様子から恐らく、「約束」と言うのは「告白」のことなのだろう。

 このままでは二人が恋人同士であることが篠ノ之さんにばれてしまう。

 私は慌てて止めようとしたが

 

「約束……?」

 

「う、うん。

 覚えてる……よね?」

 

 彼女の表情を見て動けなかった(・・・・・・)

 いや、正確には動かなかった(・・・・・・)

 私は艦娘だ。

 そして、何よりも女だ。

 かつて恋をしていた一人だ。

 いや、今でも私は「あの人」を慕っている。

 凰さんは不安だったのだ。

 彼女からすれば、恋人が違う女性と一緒にいるのは不安でしかなかったのだ。

 だから、先ほどの行動を起こしたのかもしれない。

 彼女はただ確認したいだけなのだ。

 そう考えると私は邪魔を出来なかった。

 

「え~と、あれか?

 鈴の料理の腕が上がったら毎日酢豚を―――」

 

「そ、そうっ。それ!」

 

 一夏さんの言葉に凰さんは希望と期待を目に浮かべた。

 

「おごってくれるってやつか?」

 

「「……はい?」」

 

 しかし、それは彼のその一言で一瞬にして奪われた。

 私はそれを聞いた瞬間、凰さんと一緒に呆然としてしまった。

 よく見てみると篠ノ之さんも同じだった。

 

「だから、鈴が料理ができるようになったら俺に飯をご馳走してくれるって話だろ?

 いやしかし、俺は自分の記憶力に感心―――」

 

 自信満々に一夏さんは続けていた。

 何を言っているのだろうか、この人は。

 その一夏さんに対して凰さんは

 

―パァン!!―

 

「……へ?」

 

 平手打ちをかました。

 いや、そうしたくなるだろう。

 そして、今のやり取りから私はある答えに至ってしまった。

 

 え、えっと……凰さんは所謂、『毎日味噌汁を作ってあげる!』と言う告白を自分の得意料理に言い替えたんですよね……

 だけど、一夏さんはそれを『おごってくれる』とそのまま受け取ってしまって……

 つまりは……二人は恋人では……ない?

 

 「告白」は「告白」として成立していなかったらしい。

 それに気づいた瞬間、私は脱力感に見舞われた。

 だが、私はすぐに姿勢を正した。

 なぜならば

 

「あ、あの、だな、鈴……」

 

 一夏さんは恐る恐る凰さんの顔色を窺った。

 凰さんはと言えば、目に涙を浮かべて意地らしくも唇を噛み締めていた。

 

「最低っ!!

 女の子と約束をちゃんと覚えていないなんて、男の風上にも置けないヤツ!!

 犬に噛まれて死ね!!」

 

「凰さん……!!」

 

 そのまま怒りと悲しみに身を任せて部屋から出て行ってしまった。

 私はそれを見て、彼女を放っておけず彼女を追いかけてしまっていた。




大晦日の日に更新できてうれしい限りです。
一年間ありがとうございました。
来年も頑張っていこうと思います!

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