奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
異世界か……
私はあの大戦の後に中華民国の海軍を鍛えるために上海にて駆逐艦でありながらも旗艦を務め、戦闘が無理になると訓練艦となって後進を育て続けた。
そして、戦闘で沈むことなく暴風雨によって負った傷でようやく眠ることになると思ったら、なぜか「艦娘」も「深海棲艦」もいない「帝国」が滅びた世界に来てしまった。
衝撃的な事実ばかりであるが今はこの世界で生きることが大事だ。
それが陽炎型の姉妹たちと第二水雷戦隊のみんな、そして、「彼女」に私ができる唯一のことだから。
「解かりました……
あなた方を信じます」
私は目の前の彼女たちが嘘を吐いていないと信じてそう答えた。
「そうか……なら、ありがたい……」
すると、どうやら先程の言動や態度から立場上では上であるらしい織斑さんの方がどうやらホッとしたらしく、肩をゆっくりと下ろした。
こちらが敵意を持っていないことを理解してくれたようだ。
「では、お互いの詳しいことや今後のことについては明日にしよう。
部屋へと案内する」
彼女は続けて、私に今日はゆっくりと休養するようにと言ってきた。
「解かりました。
こちらも色々と心の整理がついていません。
そちらの配慮に感謝します」
私は彼女の提案に乗る様にそう言うと
「ああ、それと……
雪風、一つだけ言っておきたいことがある……
いいか?」
彼女は何か、私に言おうと神妙な顔をしてきた。
「はい、なんでしょうか?」
自分たちにとって得体の知れないこちらを敵と認識せずにいてくれた彼女たちの誠意をなるべく無下にしたくなくて素直に聞こうとした。
すると、
「この世界はお前の住んでいた世界とは違う……
それだけは忘れるなよ?」
彼女は先程の私の狼狽えた姿を見てか、私のことを気遣うようにそう言ってきた。
世界が違うか……
歴史が違う。
そして、帝国が戦争で敗れた。
それだけで何かと私は理解できた気がする。
「はい……
解かりました」
私は彼女たちを心配させまいと彼女のその忠告を聞いて頷いた。
私は千冬さんと雪風さんのやり取りを見て、心が痛んだ気がする。
千冬さんの言った「世界が違う」と言うのは。彼女がこれからその身で辿ることになるであろう辛苦を思っての彼女を苦しめまいとする優しさなのだろう。
それでも……
辛いんでしょうね……
帝国の人間として生きてきた彼女が見るであろう帝国への人々の侮蔑や憎悪がどれだけ彼女を苦しめることになるだろうか。
私には想像もできない。
ただ「世界が違う」からと割り切れる問題じゃないと思えるけど、そうとしか言えなかった。
そうとしか言えない自分たちが悔しかった。
「織斑先生、本当に彼女は……」
彼女の仮の宿となる空いている寮室に送った後、真耶が私が唱えた先程の雪風の出自について、再び確認してきた。
無理もない。
私自身すらも自分の考えに自信がない。
だが、年端もいかない少女があの大戦に匹敵、いや、それ以上とも言える戦いに参加していたことに私はなぜか心のどこかで納得してしまっていた。
彼女があの「大和」のことを語る時の辛そうにしながらも「立派だった」と称していたのは彼女にとっては「大和」は尊敬に値する存在だったとも考えられる。もしかすると、彼女はその最期に立ち会ったのかもしれない。
それに彼女の我々の言う「終戦の日」を語り出す時に流した涙には多くの気持ちが込められていたのかもしれない。
「山田先生……彼女、いや、あの子の涙の理由はなんだったのだろうな……」
「………………」
私のその一言に真耶は黙ってしまった。
私はいつの間にか、あの雪風と名乗る少女のことをただの不審人物を見るよりも年頃の少女のようにしか見ることしかできなくなってしまった。
彼女はまるで、己のことを戦うために生まれてきた兵器の様な存在のように語っていた。だけど、私にはどう見ても人間のようにしか思えなかった。
人間同士が戦うことを厭い、戦いに勝利しても喜ぶだけではなく無理をしてでも笑って涙を堪え、祖国が滅びたことを悲しみ、平和を愛し争いを憎む。
彼女は帝国軍人としての誇りはあっても私たちがよく反戦ドラマや映画で見る様な部下を怒鳴り散らしたり、民間人に威張り散らしたりするような自分を特別だと思うような傲慢さを持っていなかった。
彼女は、いや、きっと彼女含めた「艦娘」というのはそういった存在なのだろう。
「まったく……あんな小娘に……
明日、この世界の情けない実態を説明しないといけないとはな……」
「………………」
こんな世界を作ってしまった張本人の1人である私は自分を蔑み、世界を嗤うかのようにそう言い放った。
あの子の様子を見て、私にもなぜ兵士が戦争で亡くなった同僚の遺族の前で言いたくもないのに「立派な最期でした」と言うのか解かりたくもないのに解かってしまった。
雪風はきっと、「大和」を始めとした戦友たちのことを誇りに思っているのと同時にその「死」を見て来たのだろう。
そんな彼女たちの死を生き残ったあの子が無様だったと言えるだろうか。いや、誰であってそうだ。目の前で同僚が死んだのにそれを侮辱するようなものだったと語れない筈だ。
だから、どれだけ自分が「戦い」を憎んでも、戦友の名誉だけでも守りたいから誰もがそう言うのだろう。
それを一概に「洗脳だ」とか、決めつけるのは傲慢どころか、残酷な死者への冒涜にも思える。
彼女の様に戦いを憎み、平和を望み、誰かを守りたいからと願いながらも涙を堪え、たとえ、涙を流しても戦友への誇りや想いを忘れずに笑顔を繕う。
武士の意地といったかっこよさを求めるために正々堂々となどを信条とした現代でよく知られる平和な時代の人間が追い求め作られた武士道などではなく、ただ悲壮な覚悟だけに満ち溢れた戦いが彼女らに求められた、いや、それを背負わざるを得ない運命を彼女らは歩み続けたのだ。
あの子の語る「大和」の最期は決して、美化や賛美などの言葉で済まされるものではない筈だ。
そして、あの子はそんな体験を多くしてきたのだろう。
戦後生まれで戦争など経験したことのない私たちには到底、想像もできないことだ。
そんなあの子が「IS」という兵器をただ使える条件があるだけで一度たりとも「戦い」というものを経験もしていないくせに「力」を持つ自分たちは選ばれた者と自惚れる女性たちを見たらどう思うのだろうか。
一夏……お前にまた背負うものができてしまったぞ……
私は自らの弟であるこの世界で唯一の男性でありながらも「IS」を使用できる一夏にさらに重いものを背負わせたと考えてしまった。
今、この世界で男にとっての希望は一夏だけだ。
つまりは一夏だけが「男は先天的に劣っている」という馬鹿な思い上がりを覆すことができる存在なのだ。
そして、この世界を見て、きっと失望することになるあの子にとっての救いになるのかもしれない。
「そう言えば……」
私はここであることを思い出した。
それは
「山田先生はなぜ「雪風」と言う駆逐艦の名を知っていたんだ?」
真耶は駆逐艦「雪風」の名前を知っていた。
私はそれが気になっていた。
普通、戦艦や空母ならともかく駆逐艦の知名度は低いはずだ。「雪風」とはそんなに有名なのだろうか。
「あ、それはですね~」
真耶はあの子の名を持つ艦のことを語り出そうとしてきた。
「「雪風」は「奇跡の駆逐艦」と呼ばれている不思議な艦なんですよ」
「「奇跡」だと……?」
真耶の語り出した「奇跡」という言葉に私は耳を傾けた。
「はい、本当に「雪風」というのは不思議な人生……いえ、駆逐艦なんですけど、そんな人生を辿った駆逐艦なんですよ」
そして、彼女は語り出した。
まるで、あの子の辿ってきた人生を暗示するようなこの世界の「雪風」のことを。
とりあえず、一日目は終わりです。
話の展開が遅すぎて読者の皆さんに申し訳なさを感じます。
あと、困っているのは陽炎型姉妹艦てメディアではあまり絡まないのがお互いの相互関係について不明なので自分で補完しなくちゃいけないので多少、きついです。
例えば、雪風は浜風とは「吹雪、がんばります!」では同じく年ぐらいの妹である磯風のことを「ちゃん」づけだけど、「いつか静かな海で」では浜風のことを普通に呼び捨ての妹扱いだからかなり悩みます。
いや、日常ものとシリアス系だから当然だと思いますけど。
二次創作に対して、かなり寛容的だと思って思い切って行こうと思いますのでそう言ったことにはどうかご容赦ください。