奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
ごめんなさい。
「………………」
煙が晴れて鈴が拘束されゼロ距離からあのビームを喰らったと考えて俺がその絶望の光景を目に入れようとした時だった。
しかし、俺の目に映ったのは
―ジジジ―
「……くっ」
「……!鈴!!」
鈴の無事な姿だった。
爆発が起きたことで俺はてっきり鈴が攻撃を喰らったと思っていた。しかし、爆発の後にボロボロになっていたのは相手の「IS」だった。
例の「IS」は右腕の上腕部がショートしており右手の砲口が潰れていた。
そのことに安堵したと同時に俺はあることを直感した。
「……まさか!」
俺は敵の「IS」に攻撃を喰らわせた人物のことを探るために左に目を向けた。
そこには
「……雪風」
やはり彼女がいた。
彼女はいつもの様に鋼鉄を思わせる黒い砲口を両手に装着し、彼女の後方には黒い煙、それとは対照的な白い煙が舞っていた。
そして、彼女の目はいつもと同じように。
いや、これだけは違った。
その目は明らかに違っていた。
彼女は戦う時は常に真剣だった。しかし、その中でも今の彼女の目はこれまで見たものとは異様だった。
何が違うとは正確には言えない。
けれど、これは俺の主観であるが彼女の今の目はセシリアや俺と戦った時のどこか期待を込めていたものでもなく、鈴との戦いで見せた嬉しさや昂ぶりに満ちたものではなかった。
それは怒り。
そう、ただ純粋な怒りだけがあった。
そして、それは例の「IS」に向けられていた。
明らかにいつもの雪風とは違っていた。
「―――なせない」
「……え」
雪風が意識したのか分からないが突然雪風の声が聞こえて来た。
「私の目の前で
「……!」
次の瞬間、彼女は何か決意を込める、いや、ぶつけるように例の「IS」に向かって突撃した。
俺はただ彼女の剣幕に圧されるだけだった。
「………………」
「……!
雪風、危ない!!」
例の「IS」はしばらく雪風の様子を見ていて動きを止めていたが、彼女が自分に向かってくることを確認すると鈴を拘束している「隠し腕」の右腕を放して雪風の方に向き直り、左腕の二門と右腕の残っている一門を彼女に向けた。
どう見ても砲撃するつもりだ。
雪風は恐らく、あの高速のミサイル攻撃をやろうとしているのだろうが、あれでは自分からビームに当たりに行くだけだ。
それに仮にビームを避けても鈴と同じように拘束されるかもしれない。
それは自殺行為に他ならない。
「……雪風!?」
案の定、計三つの最大威力のビームが撃ち込まれた。
その時だった。
「雪風は―――」
いつも以上に凛とした彼女の声が聞こえた。
「―――沈みません!!」
「なっ!?」
ビームが雪風の目前に至った瞬間、雪風はそれが当たる直前で急上昇しながら回避して前進し続けた。
それは本当に当たるかギリギリだった。
そして、その直後
―ズドン!―
「……きゃ!」
「鈴!」
雪風は右腕の砲で鈴を先ほどまで掴んでいた「隠し腕」の左腕を移動しながら破壊した。
それは一瞬のことだった。
チャンスは限られていたのにも関わらず、彼女はそれを見逃さずにあの速度の中で命中させた。しかも、恐らく一番もろい部分を正確に。
そして、「隠し腕」が破壊されたことで鈴は解放された。
「今です!」
敵の上空を過ぎ去った後、鈴が解放されたことを確認すると雪風は俺たちに向かってそう叫んだ。
「……!」
「ええ……!お返しよ!!」
その言葉を耳にして鈴はすぐに体を反転させて背後の先ほどまで自分を拘束していた敵に対して、宣言通りににゼロ距離からの衝撃砲をお見舞いした。
至近距離からの衝撃砲の圧力を喰らって、体勢を崩された例の「IS」は破壊はできなかったが吹き飛ばされた。
その瞬間、完全な隙が生じた。
それとハイパーセンサーで「あること」を確認した俺は
「うおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおぉおぉおぉおおおおお!!!」
セシリアに教えてもらった「瞬時加速」を使って一気に間合いを詰めて
「はあっ!!」
「零落白夜」を使って例の「IS」の右腕をたたっ斬った。
完全にトドメは刺し切ってはいない。
だけど、俺の目的は達成した。
なぜなら、その余剰エネルギーはアリーナの観覧席に向かって行き遮断シールドを無効化した。
そして、そこには
「これで終わりですわ!!」
「ブルー・ティアーズ」を装着し既に狙撃の態勢に入っていたセシリアがいる。
腕にスラスターを多く取り付けていた例の「IS」は動けない獲物となった。
そうなれば、セシリアからすれば簡単なことだ。
彼女の腕ならばこれぐらいは容易いはずだ。それはここ一か月のことで理解できていた。
そして、セシリアのレーザー攻撃が敵の胸部を完全に破壊した。
そのまま、敵の「IS」はうつ伏せに倒れた。
やっぱりか……!
「なっ!?機械!?」
だが、トドメをさされたことでついに敵の正体が明らかになった。
セシリアが空けた胸から出て来たのは機械の部品ばかりで血などが全くなかった。
そう、敵は機械だったのだ。
鈴との共同戦線を始めてから鈴との戦闘の中で妙にワンパターン過ぎたこともおかしかった。
そして、雪風が突撃しようとしたのに反応が明らかに人間よりも遅かった。
その理由は簡単だったのだ。
そもそも相手は人間ではなかったからだ。
だから、鈴の反応速度にはついていけなかったし、俺みたいな初心者相手にも一発も当てられず、雪風の突撃の際にもすぐに対処できなかった。
明らかにどこかぎこちなく動きに緩急の差があったのもそう言う理由だったのだろう。
「とりあえず……よかった、鈴が無事で……」
しかし、敵の正体が判った衝撃や敵に勝利した喜びよりも鈴が無事でよかったことを心の底から思った。
もし、あそこで雪風が来なかったら鈴は確実にただでは済まなかった。
そうだ……雪風に謝らないと……
俺は雪風の方を向いて謝ろうとした。
「雪か―――」
その直後のことだった。
「危ないっ!!
―ドンっ!―
「―――え?」
突然、俺の上空にいるはずの雪風がいきなり急接近していて俺のことを突き飛ばした。
その瞬間だった。
まだ敵の「IS」が残っていた「隠し腕」を支えにして同じように残っていた左腕の肩の砲門を俺がいた地点、今、雪風がいる場所に向けていた光景が目に映った。
そして、彼女は勢い余って地面にぶつかっていた。
嘘だよな……?
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
けれど、すぐに俺は
「雪風ええええええええええええええええええええ!!!」
ただガムシャラに彼女の名前を呼んだ。
ここまでですか……
敵の「IS」が完全に沈黙していないことに気づいて、それが最後の足掻きとも言える砲撃を一夏さんにぶつけようとしたことに気づいた私は「瞬時加速」を使って、一夏さんの下に駆け寄って突き飛ばしたが当然ながら私は一夏さんのいた場所にいて、「瞬間加速」の欠点である操作の利かなさによって地面に激突して動けなくなった。
そして、敵の砲撃は一夏さんの代わりに私に向かって放たれようとしていた。
避け切れない。
私の理性と直感の双方がそう判断した。
一夏さんを抱きかかえるのではなく突き飛ばしたのも、敵に対して攻撃するのではなく彼を逃がしたのもそれでは間に合わないと判断したからだ。
一度発射された弾丸は銃を破壊してもどうにもならない。
だから、私は標的を移動させた。自分がその代わりになることで。
迫り来る「死」に対して、私はどこか冷静だった。
それは既に一度「死」と言うものを経験してるからなのだろうか、それとも前の「死」と同じように今度も誰かを守れたことに安堵しているからなのだろうか。
ごめんなさい……一夏さん……
私はあの最期の航海となったあの日のことを思い出した。
あの時、私は台風が来ている時に遭難した教え子を救助するために「艤装」を纏って飛び込んだ。
しかし、既に「艤装」も私自身も限界だったことで私は致命傷を受けた。
教え子はなんとか連れて帰った。
だけど、私はあの子に癒えない傷を負わせて、多くの部下や教え子、そして、「司令」を悲しませた。
そのことを繰り返して今度は一夏さんたちに同じことを味合わせようとしていることにただただ悲しみを覚えた。
ごめん……みんな……
そして、同時に詫びたのは
こんなにも短い時間と言うのに私には長く感じたが砲撃が私を襲おうとした。
その時だった。
「大丈夫」
「……え」
とても
その直後
―ドゴーン!―
「……っ!?」
何かが爆発する音と共に爆風と熱気が私に迫り、そのために私は目を瞑った。
だけど、それは決して「死」を意味することではなかった。
爆発の影響でシールドは削られたが、私は死んでいなかった。
何が起きたのか理解できなかった。
私は魚雷を撃っていない。
考えられるとしたらセシリアさんのミサイルであったが彼女の距離から間に合うとはとても思えない。
何が起こったのかを確認するために私は目をそっと開けた。
そこには
「……!?」
爆発の影響で残っていた右腕と「隠し腕」すらも破壊されて燃え盛り完全に破壊された敵、いや、既に残骸とも言えるものがあった。
だけど、私はそれよりも違うものに衝撃を受けた。
私と敵機の間に立ち塞がるように一人の緋色を纏った女性が立っていた。
私は彼女の「IS」と彼女に目を奪われた。
彼女は似ていたのだ。
彼女が纏っているものにはあの私たち駆逐艦を率いた水雷戦隊の長を務めた三姉妹が纏っていた緋色、脚には夜の闇を切り開く探照灯のようなもの、右腕にはどこかカタパルトに似ているものがあった。
しかし、違うのは彼女の腰には片方ではなく左右双方に魚雷に似たロケット弾ないしはミサイルが存在し、右には一振りの日本刀、左には二振りの脇差があった。
それは
だけど、
後ろからしか見えないが、彼女の茶褐色の長い髪、あのリボン、あの信頼できる背中姿は彼女を彷彿とさせた。
そして、何よりも彼女のあの言葉とあの声は。
くっ……自分の語彙力のなさにこれまで以上に不甲斐なさを感じたのは初めてです。