奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

79 / 332
今回、この作品における艦娘の誕生の仕方が出てきます。


第2話「警戒すべきこと」

 あ~あ……すっかりと噂が蔓延しちゃってますよ……

 

 相川さんと夜竹さんと一緒にいながら朝のSHRが始まる前のある種の自由時間の中で一夏さんが来た瞬間に周囲の彼に対する視線が妙に熱くなったことでどうやら大半の女子たちが例の噂を信じているのだろう。

 

「ねえ、陽知さん?

 例の噂のこと知ってる?」

 

 相川さん私に興味津々で訊ねて来た。

 彼女は恐らく、年頃の女子らしくある程度の好奇心によって動いているのだろう。

 彼女とは友人同士ではあるが、何とも複雑な気持ちだ。

 

「ええ。知ってますよ?

 それがどうしました?」

 

「あ、陽知さんも知ってるんだ?」

 

「それでどうするの?」

 

 次は夜竹さんが訊ねて来た。

 きっと私の出場の是非を訊ねたいのだろう。

 彼女の場合は興味本位なのだろう。

 「学年個別トーナメント」は学園外部にとっても大きな催しではあるが、内部にとってもそうだろう。

 彼女は一人の生徒として、いや、観客として気になるのだろう。

 見世物にされているようで、多少複雑ではあるが、私の参加の是非を訊くと言うことはそれだけ楽しみにしているのだろう。

 例の噂が原因で盛り上がることにはただただ不快感が募るだけだが、こう言ったただ楽しみにしている人間のことは憎めないから困る。

 

「……川神先生に言われて出ることになりました」

 

「ああ……」

 

「うん……」

 

 私は最も当たり障りのない答え方をした。

 嘘は言っていない。

 ただこれだけで余計な邪推を招くことはないだろう。

 その証拠に二人の反応がそれを物語っている。

 噂好きと言うことは当然ながら神通さんのことも知っているはずだから。

 こんな所で二水戦時代に神通さんに散々植え付けられた時の感想が活きるとは。

 ちなみにこの二人は神通さんの訓練には参加していない。

 そう言うこともあってか、私は二人に対しては好意的だ。

 下心で訓練に参加して直ぐに音を上げて逃げ出すよりは十分マシだ。

 訓練は遊びでやるものではないからだ。

 

「でも、それだと織斑くんと陽知さんが付き合うことになるのかな?」

 

「え~……なんか、私嫌だな……」

 

「うんうん。ユッキーがお嫁に行くなんてやだな~」

 

「……本音さん。いつからそこにいたんですか?」

 

 二人がこちらの真意を知らずに話題を膨らませていると

いつの間にかこの場に来た本音さんが会話に入って来た。

 『嫁』とはなんだ。

 本音さんには昨日のうちに伝えていたはずだ。

 今回の私の出場に関しては生徒会の面々にはしっかりと報告してある。

 更識さんは

 

『そう。じゃあ、楽しみなさい♪』

 

 と妙に嬉しそうだったが。

 神通さんと再会するまでの三週間の彼女ともどこかギスギスした感じであったが、神通さんとの再会後の説明の影響か、いつの間にかその雰囲気は抜けていた。

 それどころか、神通さんの思い出話をしきりに聞いてくるほどだ。

 おかげで以前よりも親しくなっている気がしなくはない。

 この頃の彼女の様子はどこか素の彼女を感じるほどだ。

 

「そうそう。布仏さんの言う通りだよ」

 

「陽知さんを嫁に出すとか、本当に勿体ないよ~」

 

 本音さんの発言に乗ってくるように二人もそう言ってきた。

 なぜ彼女たちはそこまで言うのだろうか。

 

「……いやいや……

 たかが噂ですよ?それに本当に噂が本当であってもそんな権利なんて要りませんよ」

 

「「……え?」」

 

「あはは……ゆっきーらしいや……」

 

 私がキッパリと言うと二人は呆気に取られ、本音さんは私と言う人間を身近で見て来たこともあって苦笑いした。

 

「私はそんなやり方で男性と交際するつもりはありません。

 と言うよりも、そんな無理矢理な方法で付き合ったら自分の品格を落とすだけですよ。

 意中の相手と交際したいなら自力で惚れさせるべきですよ」

 

「うわぁ……」

 

「下手な男よりも男前だわ……」

 

 意中の男性に恋心に気づかれず、恋愛対象にすら見られず、未だに初恋を引き摺っているので説得力皆無だが、私はとりあえず、自分の名誉のために「噂の報酬」が動機での参加ではないことを強調した。

 そもそも私は一夏さんのことは異性としては意識していない。

 弟弟子として、護衛対象としては守るべき存在だとは認識しているが、ただそれだけだ。

 

「まあ……恋愛に関しては……その……譲れないものがありますし……」

 

 ちょっとムキになったことを反省して私は慌てて言い訳しようとするが

 

「なにそれ?気になる」

 

「陽知さん、恋愛したことあるの?」

 

 ……しまった

 

 それが二人を違う意味で煽ってしまった。

 このぐらいの年頃の女の子のその手の話への好奇心はすごいことをすっかりと私は失念してしまった(と言っても、艦娘と人間の実年齢での比較はあてにはならないが)。

 

「い、いえ……恋愛はしたことはありませんが……その……初恋であって……相手の方とはそう言う関係では……」

 

 なんとか話をそらそうとするが、この手の話題が苦手なこともあって私はなんとかぼかしながら直ぐに話を切ろうとするが

 

「……え!?何それ、ものすごく気になる!」

 

「と言うか、陽知さん顔真っ赤」

 

「ふぇ!?」

 

 内容をぼかそうとしたが、逆に二人の注目に火に油を注ぐ結果となった。

 さらに夜竹さんの言葉でさらに焦りが増して変な声を出してしまった。

 私は本音さんに助けを求めようと思ったが、肝心の本音さんが目をそらしたことで助け船は期待できなかった。

 

「な、な、な、何を言っているんでしょうか?

 わ、私は至って冷静ですよ?」

 

「……ゆっきー……ものすごく動揺してるよ?」

 

「うわ……陽知さんの思わぬ……いや、ある意味当たり前な一面が出て来たよ……」

 

「陽知さんを惚れさせるとか……どんな人なんだろう……その人……」

 

「な、何が当たり前ですか!?

 と言うよりも二人とも、私のことをどう思っているんですか!?」

 

 夜竹さんと相川さんの言葉が心外だったので私は噛みついてしまった。

 すると返って来たのは

 

「勇敢な小動物」

 

「男よりも男前な乙女」

 

「あと、多少天然ぽいかな~」

 

「しょ、小動物……!?

 と言うか、本音さん!?あなたもですか!?」

 

 またも「小動物」であった。

 男前は百歩譲って許せる。

 ただ「小動物」扱いは泣けてくる。

 それとなぜか本音さんも加わってきた。

 「天然」とは「この世界」で言うちょっとズレた人間と言う意味だったはずだ。

 私は決して、「天然」じゃないはずだ。

 私のどこがずれているのだろうか。

 私は常に真剣だ。

 どこに問題があるのだろうか。

 だが、このままではボロが出てしまう。

 仕方ないので私は

 

「すいません……初恋の件については……失恋で終わっているので……ちょっと……」

 

 前に一夏さんたちに使った相手の罪悪感を煽る手を心苦しいが使った。

 

「え?あ、その……」

 

「ごめん……」

 

 二人はやはり一夏さんたちと同じような反応をした。

 このクラスには多少「IS」を絶対視する人間や女尊男卑に浅く染まっている人はいるが、根本的には人としての善良さを持っている人たちだ。

 だからこそ、それを利用することに私は自分の胸も痛むのだ。

 同じように心を持つからこそ私はこの手はあまり使いたくない。

 

「い、いえ……大丈夫です。

 それよりも二人とも「ISスーツ」は決まりましたか?」

 

 私はとりあえず、これ以上彼女たちが自責の念に駆られないようにとこの教室、いや、全生徒が共通して興味を抱いているであろう「IS」の話題に切り替えようとした。

 これは先ほどから随所で聞こえてくるクラスの人間の話題を耳にして思いついたことだ。

 今も一夏さんと山田さんが「ISスーツ」のことで話の輪に入っていた。

 

「え?う~ん……それは……」

 

「と言うよりも、陽知さんのスーツてどこ製なの?」

 

「あ、それ!私も気になってた!」

 

 話題の変更に成功し二人は年相応のはしゃぎ様になった。

 こうして見てると、中華民国での部下や教え子たちのことを思い出す。

 

「私のは倉持が「初霜」との相互作用を考えての実験用ですよ?」

 

 私の「ISスーツ」はなぜか初霜ちゃんの制服の色を基調とした元々、私が着ていた水兵服の意匠を模したものだ。

 どうして、このデザインになったのか私には理解できない。

 織斑さんや楯無さん、さらには轡木さんにも訊ねたが、どうも「初霜」に関しては残っている情報がないらしく、日本政府から轡木さんが内密に保管を頼まれたらしいが。

 

「え?それってどういう事?」

 

 相川さんはさらに興味を持ったのか追究してきた。

 その顔はまさに好奇心の固まりだった。

 これはあれだ。「酸素魚雷」について、どうも私たち駆逐艦のことを鬱陶しがっていた北上さんが佐世保に特別講師として訪れた際に「酸素魚雷」のことを訊ねた際の私の表情と同じだ。

 あの頃の私は無邪気だったと自嘲してしまうが、それでも相川さんのこの顔は、いや、相川さんだけでなく全ての少年少女はいつまでも忘れないでもらいたいものだ。

 

「そうですね……

 例えば、セシリアさんや鈴さん、一夏さんの「IS」は「「第三世代」ですよね?」

 

「うん」

 

「そうそう」

 

「ですが、「第三世代」の開発が遅れている国も多くあります。

 例えば、この日本やフランスです」

 

「あ~、確かに……」

 

「そうそう。織斑君のは特製らしいけど……何というか、ピーキー過ぎる気がするし……」

 

 この「IS」の世代交代は実は深刻らしく、楯無さんも妙に複雑な表情をしていた。

 最初私は「霧纏いの淑女」が日本の「第三世代」だと思っていたが、彼女がそれを否定した。

 そして、その直後に「霧纏いの淑女」が彼女の才能で完成されたことに驚愕した。

 しかし、肝心の日本の「第三世代」の開発は遅れているらしい。

 この件に関しては倉持の方々に対して申し訳なさを感じている。

 

「ですから、保険として「打鉄」を改修して燃費や武装面、速度と言った既存の性能そのものを強化することを目的としたのが「初霜」です。

 そっちの方が断然手間がかかりませんから。

 それにその成果をある程度「第三世代」に活かせますし」

 

 実際に量産機の最大の利点は数と信頼性だ。

 「第三世代」のほとんどはまだ実験機で信頼性は低い。

 ならば、「第二世代」の武装や機関を強化すればいい。

 それに天津風と島風ちゃんの関係のようにすればいい。

 私たち艦娘にはまず、元となる随伴艦が必要だ。

 随伴艦がある程度、完成することで艦娘が生まれる。

 そのため、軍内部では私たちのことを「艦の化身」と呼ぶこともある。

 ちょっと恥ずかしいが。

 つまり、随伴艦がしっかりすればするほどに私たちの生まれ持った力も強くなる。

 その中で天津風と島風ちゃんの関係はある意味、この場合に当てはまるだろう。

 実際は表向きの事情だが。

 

「あ~、なるほど……」

 

「うんうん。確かに納得」

 

「そして、それに加えて今度は「ISスーツ」の性能を向上させることで「IS」の開発費を浮かせる狙いもありますね」

 

「そっか。そう言う考え方もあるんだ」

 

「流石、「第二世代」で「第三世代」に勝ってる人は言うことが違うね」

 

「いや、あれは多分ゆっきーじゃないと無理だと思うよ……」

 

 なんとか、この場はしのぎ切った。

 しかし、実はこの「IS」の「第三世代」に関しては本当に深刻な課題だ。

 なぜならば、それは時機にこのクラスに新たな火種が訪れるからだ。

 

「諸君、おはよう」

 

―お、おはようございます!―

 

 織斑さんが来たことで一斉に教室中の気が引き締まった。

 ただ私はそれを見て思う。

 皆さん、山田さんにももう少し、同じようにしてあげてはいかがだろうかと。

 先ほど、一夏さんたちの話を盗み聞きした時に彼女が気の毒に思えた。

 少なくともバリバリの軍人だった私からすれば、教師をあんな風にいじるなんてことは信じられないことだ。

 神通さんにあんなことをすると考えるだけで二水戦時代の私は恐ろしくてできないだろう。

 訓練は別にいいが。

 と私が山田さんのことを気の毒に思っていると

 

「今日から本格的な実践訓練を開始する。

 訓練機ではあるが「IS」を使用しての授業になるので各人気を引き締める様に」

 

 織斑さんが教室中にしっかりと事前に注意を促した。

 全くその通りである。

 「IS」はどう言い繕おうが兵器だ。

 たとえ生みの親の篠ノ之博士が宇宙開発用の装備だと主張しても火力がある時点で人を傷つける可能性が0とは言えない。

 例えば、これは当然の礼儀であるが鋏を人に渡すときは必ず刃の方を握って渡すのと同じように扱いには気を付けなくてはならないだろう。

 それに一か月前のあの無人機が「IS」は人を害する可能性があることをすっかりと証明している。

 織斑さんの言葉に素直に頷いた時だった。

 

「各人の「ISスーツ」が届くまでは学校指定のものを使うので忘れないようにな。

 忘れたものは代わりに学校指定の水着で訓練を受けてもらう。

 それもないものは……まあ、下着で構わんだろう」

 

 ……いや!?構いますよ!?

 あと、水着てもしかすると、あれ(・・)ですか!?

 

 途中まで織斑さんの言葉をもっともだと感じていたが、私は思わず心の中で黒潮お姉ちゃんが乗り移ったが如くに即座にツッコミを入れたくなった。

 学校指定の水着て確か58さんたち潜水艦娘が着ていたようなあれだったはずだ。

ちなみに私は初めて例の水着を目にした時、

 

『機能美に溢れる提督指定の水着が~』

 

 と言う涙目の58さんの言葉が浮かんだ。

 どうやら、未来に来たことであの水着が決して趣味じゃなかったのは立証されたが内心複雑だった。

 あれだけで恥ずかしいのに下着姿は最早拷問だ。

 絶対に忘れないようにしようと思った。

 

「では、山田先生、ホームルームを」

 

「は、はいっ!」

 

 そして、自らの役目を終えて織斑さんは山田さんと役目を交代した。

 ある意味、この役割分担は理想的なのかもしれない。

 山田さんは穏やかなので変に生徒たちが緊張しないですむ。

 重要な情報は織斑さんが伝えると言う点では効果がある。

 ただ山田さんがやはり可哀想に思える。

 何というか、私は彼女に親近感を覚えるのだ。

 恐らく神通さんに鍛えられなかった私も中華民国でものすごく侮られていた気がするからだ。

 お姉ちゃんにも

 

『あんたって、十六駆(私たち)の中じゃある意味心配なのよね……』

 

 とよく呉時代に言われていたからだ。

 その時、私は軽く凹んだが。

 私が色々と思い出していると山田さんが口を開き出した。

 

「ええとですね。今日はなんと転校生を紹介します!

 しかも二名です!」

 

―えええええええええええええええええええっ!?―

 

 ……!来ましたか……!

 

 その情報を耳にして私は気構えた。

 なぜなら、これから来るであろう転校生のうち一人は私が神通さんと楯無さんから教えられた事前情報によって警戒している人物であるから。

 その中で教室の扉が開き二人の人物が入って来た。

 

「失礼します」

 

「………………」

 

 クラスは静まり返った。

 理由は簡単だ。

 そのうち一人が服装と私の見た書類では男性だったのだから。




個人的に新世代機よりもカスタム機とかの方が好きだったりします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。