奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
ありえそうだな~と思った程度のことなので作者の妄想です。
どうかそのことをご了承ください。
『ふ~ん、あなたが私の妹ね』
ひどく懐かしい私の大好きだった声が聞こえた。
『いやいや、私の方が姉でしょ?』
彼女と最初に出会った時には本当にくだらないことで言い争いになったっけ。
『わかったわよ、じゃあ双子ってことでいいでしょ?
で、あんたが普段は妹で私がたまに妹をやるわ。
これでいいでしょ?』
彼女と私の長幼の順は不思議なものだった。
生まれは私の方が先だった。でも、名前を付けられたのは彼女が先だった。
何よりも彼女は多少強情なところがあって、多分19人いた姉妹の中で1、2を争う幼い性格と見た目をしていた私が姉であることに抵抗感があったのだろう。
と言うよりも私は姉妹の中でなぜか下の妹たちからも姉扱いされることが稀だった。
だけど、彼女がなぜあそこまで私が妹であることに拘ったかと言えば、当時同じ駆逐隊に所属していた姉曰く、彼女は「妹ができる」ということをものすごく楽しみにしていたらしい。
それを聞いた時、とても嬉しかった。
それから私は彼女の妹になって、彼女は私の姉になった。
『ほら、あなたもお姉ちゃんになるんだからしっかりしなさい』
私の下に妹ができるとしっかりするようにと言われたっけ。
でも、一応お姉ちゃんやってた時もあったんだけど。
『おえっ……神通さん、厳しすぎ……あんた達、大丈夫?』
いつもは優しくてお母さんのような私たちが所属していた「第二水雷戦隊」の旗艦であるあの人の厳しい訓練でへとへとになった時には私を含めた第十六駆逐隊の妹たちのことを気遣ってくれたっけ。
『いい?あんたたち……
いくわよ!』
初めての出撃の際には緊張している私たちのことを励ましてくれた。
『いい加減にしなさい!!
比叡さんがあんたをどんな気持ちで生かしたのか分からないの!?』
多くの仲間が失われていくあの大戦のある戦いで私を生かすために私に嘘を吐いてまで逃がした人が沈んだことでいつまでも塞ぎ込み続けた私を彼女は叱咤した。
『雪風……今は泣きなさい……
でも、あんたは生き残るのよ……?もう妹がいなくなるのは嫌よ……』
私たちの姉妹の中で私の目の前で訳も分からないうちに戦死した、私と特に仲の良かった小隊を組んでいた「相棒」とも言えた妹の死で心が壊れそうになった私のことを彼女は自らも辛いのにも関わらず共に涙を流しながらも抱きしめてそう言ってくれた。
そして、
『ユキ、じゃあ行ってくるわね』
あの日の瞬間が訪れた。
私と別行動をすることになった彼女を引き止めようと私は手を伸ばして
待っ―――!!
「待って!!お姉ちゃん!!」
私が目を覚ますとそこは昨日、織斑さんと山田さんに貸してもらった部屋だった。
「夢……なの……?」
久しぶりに思い出した彼女との思い出は夢だった。
彼女と出会ったのは私の最初に所属した第十六駆逐隊だった。
私は当時、最新鋭の駆逐艦の艦娘として「華の二水戦」と呼ばれた第二水雷戦隊の1人として着任し、同郷で育った妹以外の陽炎型の姉妹に初めて出会った。
その時の第十六駆逐隊の面々にはもう一人違う部隊に異動した姉がいた。
だけど、陽炎型の姉妹の中で私が単純に「お姉ちゃん」と呼んでいたのは彼女だけだった。
「お姉ちゃん……」
普段は使わなかった呼び方。
たまに妹として甘えたくなる時しか使わなかった呼び方で彼女を呼んだ。
だけど、彼女はあの時を最後に帰って来なかった。
彼女の夢を見たことで彼女のことを思い出して、私は突然寂しくなって泣いた。
「会いたいよ……お姉ちゃん……みんな……」
私はただ子どものように泣きじゃくった。
嵐に巻き込まれてその傷がもとで死んでやっと戦友たちや姉妹の下にゆけると思ったら、私は信じられないことに艦娘も深海棲艦も存在せず、人類が争い帝国が他国を侵略してその結果滅びた世界にいたのだ。
「司令……助けて……」
私は迫る心細さと孤独から初恋の人であり、いつも私たち艦娘のことを大切にして、軍の上層部や政府の人間から私たちを兵器扱いさせまいと守っていてくれた上司に助けを求めた。
でも、この世界に司令はいない。
いや、司令どころか、艦娘の仲間すらいない。
私はただ独り、この世界に投げ込まれたのだ。
誰もあの悲しみも苦しみも知らないこの世界に。
―コンコン―
「………………!」
「雪風さ~ん。
山田で~す。起きてますか?」
ドアをノックする音が聞こえてあの大人しそうな声が聞こえてきた。
どうやら、山田さんが私のことを呼びに来たらしい。
それを聞いた私はすぐに泣くのを止めて涙を拭って、泣いていたことを悟らせまいとしてから
「はい。
起きてますよ」
と自分が起きていることを彼女に伝えてから
「少し、身だしなみを整えたいのでしばらく待っていただけますか?」
涙の跡や色々なものを隠したいがために山田さんに部屋に入らない様に頼んだ。
今の私の顔は滅茶苦茶だろう。
そんな姿を誰か見知らぬ人に見られるのは忍びない。
「わかりました。では、お待ちしております」
山田さんはどうやら、私がただ身だしなみを整えたいと思っただけらしく扉の前で私の準備が整うまで待っていてくれるらしい。
私は内心、助かると思うと同時に彼女を待たせるのは失礼と思ってすぐに洗面台へと向かった。
顔を洗おうと蛇口を捻ると水が出て来たので私はそれを掬い顔をそこに浸し目ヤニや眠気が取れるように顔を洗った。
そして、近くのタオルを手に取りゴシゴシと顔を拭き、それが終わると鏡を見た。
「よし……!」
私は顔を洗い終わると心を引き締めたのを確認すると霧吹きと櫛を取って寝癖ができていてボサボサになっている髪を直した。
この世界には帝国の人間は既に私しかいなく、帝国は滅び既に過去のものとなっている。
同じ日本ではあるけれども何かが違う筈だ。
私はこの世界の帝国の人間ではない。
だが、それでもあの世界の帝国の人間として恥ずかしくないようにこちらの世界の人々にその姿を示さなくてはならない。
中華民国に旗艦として、派遣された頃を思い出す。
あの時は同じように米国に派遣された、私たちにとっての憧れでもあった長門さんも故郷から離れるというのに堂々としていた。
だから、泣き言を叩く暇などない。
それに……泣き言を受け止めてくれる人たちはもう……いませんから……
私にとっての初恋の人の胸は既に違う人のためのもので、訓練の時は厳しかったけれど私たちのことを信頼し普段は優しかった水雷戦隊の隊長や私にとっての「お姉ちゃん」とはもう会えない。
だから、人前で泣くのは止めよう。と私は考えた。
それに私はあの娘の姉だ。
死の直前まで残された姉を独りにしないために私を生還させるために大破状態で殿を務めた最強の駆逐艦であるあの娘の。
いや、彼女だけではない。私は十九人いた陽炎型駆逐艦の唯一の生き残りだ。
散っていった彼女たちの名を穢さないために私はいつまで経っても慣れないけれども堂々とする振る舞いを見せて情けない姿を晒すことだけは避けよう。
私には多くの背負うものがある。
たとえ、世界が違えどもあの世界のことを、故国のことを、姉妹や戦友たちのことを私は誇りに思っている。
それだけが私にとってのこの世界で生きる唯一の「理由」だ。
「よしっと……!」
そして、私は年齢を重ねたことで人間にとっては14~16歳に見えるようになってからは流石に恥じらいを感じたのでスカートを穿くようになった陽炎型の二種類ある一つのセーラー服を纏った。
この服装は私の妹たちが纏っていた制服だ。
身だしなみを整え終わると私は口を開き
「山田さん、もう大丈夫です。
お待たせしました」
と廊下で待っている彼女に準備ができたことを伝えて廊下へと出た。
とりあえず、こう言った雪風ととある姉との関係を書いてみました。
なんか、すいません。ですが、こう書きたかったんです。
でも、感想をくれた御二人や多くの読者の方々のおかげで踏ん切りがつけました。ありがとうございます。
これからも原作へのリスペクトを忘れないようにしつつ、補完していこうと思います。
本当にありがとうございます。