奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「シャルル・デュノアです。
フランスから来ました。
この国では不慣れなことも多いかと思いますがみなさんよろしくお願いします」
季節外れの転校生の片割れはにこやかに教室の生徒たちに甘い笑顔で挨拶をすませた。
それは余りにも絵に描いたようなものであった。
ただ私にはとても白々しいものであったが。
だが
―きゃああああああああああああああああああっ!!―
教室の方々は有頂天になるだけであったが。
「男子!二人目の男子!」
「しかもうちのクラス!」
「美形!守ってあげたくなる系の!」
「地球に生まれて良かった~!」
いや、もう少し冷静になりましょうよ……
級友たちの反応に仕方がないこととは言え私は懐疑的になった。
理由は「もう一人の男性適合者」と言うことに何の疑いも持っていないことだ。
更識さんから聞いた話によると一夏さんの時は世界で大騒ぎになったらしいが、今回入学してきたデュノアさんは全くもって騒がれていない。
二回目なので情報を前以って隠蔽したと言う可能性もなくはないが、いくら何でもここまで騒ぎにならないのは異常ではないだろうか。
それも「デュノア社」の人間が。
『明日、フランスとドイツから転校生が来ますが……
フランスの子の方は
それも「デュノア社」の御曹司の』
神通さんはニッコリとした笑顔でいながら私にその情報を明かした。
その後、正式に依頼を私に告げた更識さんからも
『「デュノア社」て結構焦っているらしいわよ?』
この不自然な時期の編入の動機を指し示す情報を知らされた。
どうやら、一夏さんの命を狙っているどこぞの工作員ではないらしいが、それでも怪しい人物に違いない。
同じ男性の友人。
それも女子ばかりの学園の。
なるほど、これは専用機を持つ一夏さんに近づくには持って来いだろう。
……彼……いや、この場合は
シャルル・デュノアと言う人物に対して私は特に性別に関して私は懐疑的だ。
仮に本当の男性の適合者ならば、それこそ「デュノア社」は世間に公表するはずだ。
これは長年、軍の中で一定の身分を務めた私の経験による考えだ。
企業と言うものは利益になりそうなものにはすぐに食らいつくものだ。
それなのに「デュノア社」は公表しない。
となると、デュノアさんが本当に男性なのかすら怪しい。
こう言ったことに関しては簡単にボロが出るような嘘は企業は吐くことはない。
企業の信用にかかわることだからだ。
だから、表向きには公表していないのだろう。
と言っても男装した女性を男子生徒として送り出すと言うことも無理があり過ぎるが。
ただ「デュノア社」の開発状況から出た苦肉の策なのかもしれないが。
いずれにせよ、デュノアさんに対しては警戒するに越したことはない。
「あー、騒ぐな。
静かにしろ」
織斑さんがとても面倒臭そうに騒ぎの沈静化を図った。
これは私の勘ではあるが、恐らく彼女もデュノアさんの正体にはある程度の察しがついている気がする。
理由としては彼女は策謀を張り巡らすような人間ではないが、直感である程度の陰謀は感じ取れる人間な気がするからだ。
それは彼女との三ヶ月の付き合いから私が感じた推測と見解、神通さんと十年以上友人を続けられることから証明できる。
ただ、彼女の場合はそれを感じ取っても本人の力と影響力が強すぎるので下手に動けないのだが。
つまりは不器用な人なのだろう。
「み、皆さんお静かに。
まだ自己紹介が終わってませんから~!」
山田さんも続いた。
失礼ながら、恐らく山田さんはデュノアさんの正体に気づいていないと思う。
理由としては山田さんは良くも悪くも嘘を吐けないし、人を疑えない。
ただ憎めない人のために割とああいう人が部隊長などをやると効果的な時がある。
ちなみにこれは磯風や浜風、初霜ちゃんから阿武隈さんの人となりを教えてもらったことによるものである。
ある程度、そう言ったことを思い出しながらも私はもう一人の転校生の方に目を向けた。
「………………」
……なんでしょうか……この……不快感は……
ドイツから来た転校生を目にしてまず私が抱いたのは印象は不快感だった。
なぜそんな印象を抱いたかは理由は解らない。
なんだろうか、あのセシリアさんとは違う種類の人を見下したような感じは。
彼女の目には何も映っていない。
そんな感じがした。
いや、ただ一つだけ違ったものがある。
「……挨拶をしろ、ラウラ」
「はい、教官」
彼女は唯一、織斑さんだけを見ていた。
その目には敬愛、親愛、そして、一種の忠誠心があった。
そして、彼女は織斑さんのことを『教官』と呼んだ。
あまり……当たって欲しくはありませんが……もしかすると……
彼女の態度や背格好、さらにはその一言で私の頭には一つの仮定が浮かんだ。
決して当たって欲しくはないが。
なぜかそう思ってしまうのが自分でも不思議だとは思うが。
私と神通さんの名誉のためにも外れて欲しい。
ただし、それは
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
……
彼女の無愛想過ぎる点を除く模範的な振る舞いから正解だったと私は理解してしまった。
彼女は軍人だ。
その時、私の胸に走ったのはセシリアさんの引き起こした一悶着を優に超えている不快感だった。
なぜ私は彼女を同じ軍人だと感じ、そして、理解した瞬間にここまで失望感と憤りを感じたのだろうか。
……と言うよりもあの年齢で軍人て……艦娘でもないのに……
それと同時に感じたのは彼女の外見とこの学年に来たことから察せられる年齢と軍人と言う職業との不協和音だった。
予科練習生は帝国軍にもあったが志願制になっていたはずだ。
ただこの世界での彼らのことが私は知って後悔したことであるが知っておくべきだと思ってもいるので記憶している。
そして、世界中の紛争地帯における我々正規の軍人にとっては許容できない出来事に関しても私は頭の中に入れている。
この世界では兵役に関することにこの年齢の子どもが関わっていることは極めて珍しいし、忌避されるべきことだと理解している。
もしかすると、ドイツがあえてそう言った子どもを「代表候補生」に選んだのかもしれないが。
楯無さんの時と違って実際に実戦に出ていない可能性があるのかもしれないが。
ただそれでも私はこの世界で初めてできた友人と彼女とは同じように見れない気がするのだ。
「あ、あの、以上ですか?」
「以上だ」
あまりの口数の少なさに困惑したのか、山田さんがボーデヴィッヒさんのことを考えて促そうとするも、ボーデヴィッヒさんはどこ吹く風であった。
なんだろうか。
不知火姉さんでも霞ちゃんでも、霰ちゃんでももう少しマトモな挨拶はするとは思うのだが。
と言うよりも十八駆をまとめ上げていた陽炎姉さんのすごさを改めて感じる気がした。
これから三年間付き合っていくかもしれない人々にこんな態度では軍や祖国に対して恥をかかせているのに等しいのでは。
織斑さんの方を見てみると、どこか諦めたかのような表情をしていた。
これは私の経験則に過ぎないが、彼女が怒るのはある程度接し方を知っている人間の場合に限っている。
だが、今のボーデヴィッヒさんを見る織斑さんの目は明らかに迷いがある。
何か言いたげではあるが、何を言えばいいのか分からないと言う所だ。
……そう言えば……『教官』と言われてましたね……
二人が旧知の仲であるのは確かだ。
となると織斑さんはドイツで教官をしていたのだろうか。
中国で鈴さんのことを神通さんが指導していたように。
と私が二人の関係について考えている時であった。
「……!貴様が……!」
ボーデヴィッヒさんが突然感情を露わにした。
それは明らかな敵意であった。
彼女のその目が見ていたのはとある人物であった。
彼女はその感情のままに歩き出した。
彼女はとある席まで着くと歩みを止めた。
「……貴様……何のつもりだ?」
「ゆ、雪風……?」
私は彼女が一夏さんに振り下ろそうとしていた右手の手首を掴んで止めた。
彼女は一夏さんを目に入れた瞬間に今までの感情とは全く異なる激情を込めながら一夏さんの方へと足早と歩き出したのだ。
だから、私は直感的に直ぐに立ち上がったのだ。
その結果、私は彼女にすごまれているが。
「『何のつもりだ?』はこっちの言葉ですよ。
転校早々に同級生を殴ろうとするのはどう言った了見ですか?あなたは?」
そんなことを気にせずに彼女に対して無理だと理解しながらも念のために訊ねた。
「貴様には関係のないことだ」
やはりとも言うべきか、彼女は聞く耳なしだ。
いくら何でも非常識過ぎないだろうか。
他人を見下したような目を向けるのは別にいい。
だが、他人に理不尽な暴力を振るうのは間違っている。
「そうですか……見た所、軍人のようですが……何とも短慮なんですね?あなたは?」
「何ぃ?」
特に私たち軍人はそれをしてはならない。
我々は力を持っている。
それ故に自らを律する必要があるのだ。
だからこそ、私は軍人が軍人の矜持を持たないことには我慢ができない。
「先程の振る舞いから軍人だと思っていましたが……
どうやら軍人ごっこに興じているだけのようですね?」
「なんだとぉ……!」
フッと呆れを込めて私は彼女を小馬鹿にした。
こんな人間を「元」が付くとは言え、同業者としては認めたくない。
だから、私は彼女を「軍人気取り」として扱おうと思った。
当然ながら彼女は激昂する。
だが、私もこれだけは譲れない。
これは金剛さんから教えてもらった矜持だ。
戦う術と水雷屋魂を教えてくれたのは神通さんだが、私に誇りを教えてくれたのは金剛さんだ。
それに私にだって軍人としての誇りがある。
「二人ともそこまでだ」
一触即発の真っ只中にようやく制止の声が聞こえて来た。
「教官」
「織斑先生」
私たちに止めたのは織斑さんであった。
まあ、当然だろう。
周囲を見てみると、明らかに呆気に取られているし、山田さんに至ってはあたふたしている。
この状況でどうにかできるとしたら、この場では彼女ぐらいだろう。
だが、やはり今の織斑さんはどこかおかしい。
いつもなら、直ぐに一夏さんたちにするように目で睨みを利かせたり、威圧するだろうし、最悪折檻をするだろう。
当然ながら私もその覚悟はしていた。
いざとなれば、殴り合い上等でボーデヴィッヒさんを止めようともしたし、軍人としては扱わなかったのだから。
「ラウラ。やたらなことはするな」
「……申し訳ありません」
ようやく織斑先生と言う己が唯一気にする人間が忠告して納得はいっていないようであるが、ボーデヴィッヒさんは表面上は引き下がるようだ。
どうやら、二人は師弟関係らしいのだろう。
ただ教育に関しては私と神通さんの関係とは異なるらしいが。
「それと陽知。
お前らしくないぞ」
「……はい。ごめんなさい」
織斑さんは目に後ろめたさを残しながらも私も公平に戒めた。
実際、彼女の言う通り今回の私はかなり感情的に動いた。
先程の暴言は割と素だったのだ。
「………………」
「………………」
そのままボーデヴィッヒさんに敵意を込めた目で見つめられながらも私は彼女が一夏さんから離れるのを確認すると席へと戻った。
ただ一瞬、たった一瞬であったがボーデヴィッヒさんは信じられないものを見たかのような目をしていた気がした。
「あー……では、HRを終わる。
各人はすぐに着替えて第二グラウンドに集合。
今日は二組と合同で「IS」模擬戦闘を行う。
解散!
それと、織斑。デュノアを案内してやれ」
織斑さんは無理矢理であるが騒動をなかったことのように終わらせた。
そして、トドメに
「それと一つ加えておく。
今回の訓練は
以上だ」
最上級の尻の蹴飛ばし方を披露して見せた。
それを聞いた瞬間に教室の生徒たちは我先にへと着替えはじめ、一夏さんはデュノアさんの手を引いて、そそくさと教室を出て行った。
厄介な人たちが来ましたね……
方向性は違えどフランスとドイツの転校生は最悪だった。
一人は任務的に。もう一人は私個人の感情的に。
雪風は珍しくラウラに対して個人的な怒りを感じています。