奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

84 / 332
長門の改二来たあああああああああああああ!!
初のしずま艦の改二来たよ!
これ、雪風の改二も現実味を帯びて来ましたよね!?


第7話「班別行動」

「では、これから皆さんには専用機持ちの織斑君、オルコットさん、デュノアさん、ボーデヴィッヒさん、凰さん、陽知さんの六人をリーダーとしたグループになっていただきます。

 以上です」

 

 神通さんが説明を終えると私は心の準備をした。

 神通さんに役目を任されたのだ。

 彼女の顔に泥を塗るようなことはしたくはない。

 私が意気揚々としている時だった。

 

「織斑君、一緒に頑張ろう!」

 

「わかんないところ教えて~」

 

「デュノア君の操縦技術を見たいなぁ」

 

「ね、ね、私もいいよね?同じグループに入れて」

 

 私のやる気とは裏腹に一組の生徒も二組の生徒も殆どがこれを男子に近づく機会と見てか、一夏さんとデュノアさんの近くだけに集まっていった。

 

 ……何、命知らずなことしてんですか!!?

 

 出鼻を挫かれたことによる屈辱よりも私は彼女たちの軽率さに恐れを抱き、神通さんの方へと恐る恐る振り向いた。

 

「………………」

 

 見てみると神通さんはただニッコリと笑顔で見つめていた。

 ただ私には解る。

 あれは怒っている時の笑顔だ。

 

「この馬鹿どもが……

 出席番号順に一人ずつ各グループに入れ!

 順番はさっき言った通り。

 次にもたつくようなら今日は「IS」を背負ってグラウンド百周させるからな!!」

 

 余りにも無秩序な状態に苛立った織斑さんが神通さんに変わって怒鳴り散らした。

 すると、たちまちに生徒たちが私を含めた専用機持ちの周りに集合した。

 織斑さんと神通さんの気持ちは痛いほどに理解できる。

 こんなこと軍隊でやったら懲罰ものだ。

 ここが学校施設だとしても、締めるべきところは締めるべきだ。

 

「……最初からそうしろ。馬鹿者どもが」

 

 生徒たちの不甲斐なさに織斑さんは呆れながら言った。

 神通さんはと言うと、織斑さんの後ろでかなり申し訳なさそうにしていた。

 あんな不憫な神通さんは初めてだ。

 教え子の私としては師のあのような姿を目にするのは忍びない。

 

「やった。織斑君と同じ班。苗字のおかげね……」

 

 しかし、そんな織斑さんにばれないように生徒たちは小声でコソコソと私語を始めた。

 その中で一夏さんのグループは浮かれていた。

 

「……うー、セシリアかぁ……

 さっき、ボロ負けしてたし……はあ……」

 

 セシリアさんのグループは至極残念そうだった。

 何という落胆ぶりだ。

 失礼ではあるが、彼女たちの気持ちを否定できないのが残念だ。

 

「……凰さん、よろしくね。

 あとで織斑君のお話きかせてよっ……」

 

 対して、同じように負けた鈴さんのグループは割と喜びの声が上がっている。

 ただし、それは鈴さん自身ではなく、鈴さんが一夏さんの幼馴染と言う要素が理由と言う割と失礼な理由だが。

 一応、先ほどは醜態を見せていたといえ学年きっての実力者なのに不憫だ。

 

「……デュノア君!わからないことあったら何でも聞いてね!

 ちなみに私はフリーだよ!……」

 

 一夏さんと同じで当たり扱いされているデュノアさんのグループは当然ながら喜びに包まれていた。

 中にはこれを機会にデュノアさんに色目を使おうとしている人がいるが、デュノアさんが「デュノア社」の人間であることを知らないのか、さらに私でも舌を巻いていた「リヴァール・リヴァイヴ」のあの解説を聞いていなかったのか「IS」の指導を自分からしようとしている。

 まさに釈迦に説法である。

 加えて、彼女の性別を知っている身としては困惑を通り越して失笑物だ。

 ただこれらのグループはまだマシだ。

 なぜならば私を苛立たせる団体ではなく個人がいるからだ。

 

「………………」

 

 なんですか、あの態度は……

 

 私が最も気に入らない人物であるボーデヴィッヒさんのグループは全くの無言と言うよりも閉塞感が漂っていた。

 訓練と言うのは確かに秩序が求められる。

 だが、指導役があんな相手を拒絶し、見下し、無言なようでは最悪だ。

 あの訓練に厳しい神通さんでさえ、教え子である私たちが変に気負わないように私生活どころか訓練時でさえ柔らかい態度を示した。

 何よりもあのグループには「熱」がない。

 あれでは生徒たちが技を学ぶ前に潰れるだけだ。

 

 本当にあれで軍人なんですか?

 

 私は本気で彼女が軍人であるかが疑問に思えてきた。

 軍人ならば必ず教官が付くはずだ。

 その教官との繋がりで軍人としての責務、熱意、技術、冷静さ、人との交わりを培っていくものなのだ。

 

 ……そう言えば、ボーデヴィッヒさんは織斑さんのことを『教官』と呼んでましたね……

 

 彼女は織斑さんに対してだけ敬意を示していた。

 ある程度、推測できることではあるが、やはり彼女たちは師弟関係にあるらしい。

 ただし、これは失礼なことではあると思うが彼女の振舞いを見る限りでは織斑さんの指導不足は否めない。

 少なくともボーデヴィッヒさんは織斑さんのことを尊敬しているつもりではあるが、彼女の行動は師の名前を貶めているに等しい。

 あれが軍人だとは私は認めない。

 いや、認めたくない。

 

「あ、あの~……陽知さん?」

 

「あ……」

 

 私のグループの生徒が不安気に私に声をかけて来た。

 どうやら私の苛立ちが周囲に漏れ出たらしく、それをグループの生徒たちが困惑してしまっている。

 

「……陽知さんかぁ……あ~、良かったぁ……」

 

「……学園最強の人が指導してくれるのは……ラッキーかなぁ……?」

 

「……でも、割と鬼っぽいところあるし……」

 

「……川神先生の指導を嬉々として受けてるし……」

 

「……うぅ……私、生きてられるかなぁ……」

 

 私の評価に関してはどうやら、セシリアさんのようにがっかりされているようでもなく、鈴さんや男子二人(片方は実際は違うが)のように喜ばれている訳でもなく、ボーデヴィッヒさんのように不快に思われているわけでもないらしい。

 むしろ、恐れられている。

 こんな時に本音さんがいれば助かるのだが、残念ながら彼女はここのグループではない。だからと言って、私はそんなことでへこたれることはない。私には二十五年以上の経験と実績がある。今こそ、それを発揮する時だ。二十年以上中華民国の総旗艦と訓練艦を務めて来た意地を見せなくては。

 

 「えっと、皆さん。

 何やら心配していますが、それは杞憂ですので安心してください」

 

 とりあえず、私は彼女たちの不安を晴らそうと思った。

 すると、一斉にグループの生徒たちが私の言葉に耳を傾けてくれた。

 恐らく、織斑さんの一声が効いてくれているのだろう。

 手間が省ける。

 

「私がいつもしている訓練内容を『今、やるのでは?』と不安に思っていられると思いますが、あれは自主的に参加する人だけに限りますので大丈夫ですよ」

 

 私がそう言うとグループ内の生徒たちの何人かは安堵し、フーと息を漏らし肩の力を抜いた。

 どうやら、誤解は多少は解けたようだ。

 実際、私も多少不満ではあるが、自分の訓練が常人にとっては非常識の範疇なものであることぐらいは理解しているつもりだ。

 だから、彼女たちには多少厳しめだけれども優しめの無駄のない最低限感覚だけは掴める基準で行こうと思っている。

 何事もやはり最初は感覚だ。

 基礎知識を座学で学んでも実戦を知らないと解らないように。

 磯風が料理の知識を知っていてもなぜか恐ろしい料理と言う名前の恐ろしい何かを作ったのも結局は感覚を理解しなかったからかもしれない。

 きっとそうだ。そうに違いない。

 そうだと思いたい。

 じゃなければ、あんな恐ろしいものを作るはずがない。

 

「ええと、いいですかーみなさん。

 これから訓練機を一班一体取りに来てください。

 数は「打鉄」、「リヴァイヴ」共に三機ずつです。

 好きな方を班で決めてくださいね。

 あ、早い者勝ちですよ!」

 

 グループ内の空気を多少落ち着かせることに成功すると山田さんいつもと打って変わって自信に満ち溢れた声で生徒たちに訓練機の貸し出しを呼びかけた。

 やはり、あの模擬戦で山田さんは自信を取り戻している。

 試験で一夏さんやセシリアさんに負け、生徒たちには教師と言うよりもなぜか同格扱いされ、織斑さんや神通さんに何かと比べられてきてきっと彼女も辛かったのだろう。

 神通さんや織斑さんが今回の件を考えたのも頷ける。

 ただ神通さんはと言うと、今の彼女は割と傷ついている。

 自分の出した指示が甘かったことと織斑さんに尻拭いをしてもらったことに自分にも厳しい彼女としてはかなり堪えたのだろう。

 しかし、今の私はグループのリーダーとしての役目があるので神通さんのことばかりに気を取られるわけにはいかない。

 せめて教え子の私が彼女の面目を保たなくては。

 

「えっと、皆さんはどっちの機体がいいですか?」

 

 私はグループの生徒たちにどちらを使いたいかを訊ねてみた。

 

「え、それは……」

 

「う~ん……いきなり言われても……」

 

「陽知さんはどう思う?」

 

 グループの生徒たちはいきなりの二択に迷ってしまい私に実質的な決断を迫って来た。

 

「そうですね。私は「打鉄」の方がいいと思いますね。

 「リヴァイヴ」も名機ですが、多種多様な装備と言うのは慣れないうちは混乱してしまいますし、ここは遠中近の決まった武装がある「打鉄」の操作に慣れてからの方がいいと思いますよ」

 

 私は「打鉄」を推した。

 「リヴァイヴ」の運動性や装備面の充実さは確かに「打鉄」を上回っているが、運動性の高さから初心者にとってはかなりやり辛いだろう。

 それに「リヴァイヴ」の装備面の多さは初心者にとってはやり辛いものだ。

 例えば、詰将棋と本将棋がいい例だ。

 初心者にいきなり将棋をやれと言っても駒の動かし方は知っていても動かせる駒や攻め方が多過ぎて困るだろう。

 となると一番いいのは限られた手で駒の使い方を掴め、盤面や先を読む力を育む詰将棋から始めるべきだろう。

 人を訓練する時は先ずは具体的なことから始めるべきだと私は考える。

 つまり、この場合は一番操作が安定している「打鉄」がいいだろう。

 

「陽知さんが言うならそれでいいかも」

 

「賛成!」

 

「やっぱりこう言うのは経験者の言葉が大事だよね!」

 

 少し引くぐらいにグループ内の生徒たちが私の意見に従った。

 彼女たちも人の意見に従うのはいいが、自分の意見を持ったり多少の不満を持ってくれなかったのはちょっと残念だ。

 例えば、『リヴァイヴの方がおしゃれ』とか、『打鉄の渋さもいいよね』とか。

 素直過ぎるのがちょっと物足りない。

 

「じゃあ、「打鉄」を借りてきますね。

 戻って来るまでにどうしても先にやりたい人がいたら話し合って決めてくださいね?」

 

―はーい―

 

 私はそう言い残して、山田さんの所に「打鉄」を借りに向かった。

 しかしながら、素直過ぎないだろうか。

 もう少し位こう言うことではワガママを言ってもいいと私は思う。

 

 

 

 くだらんな……

 

 私は先ほどの中国とイギリスの代表候補生が量産機に「第三世代」で挑みながらも敗北したことにこの学園全体のレベルの低さを把握した。

 特に中国の代表候補に対してはあの「もう一人の世界最強」の教え子としてはある程度注目していたがどうやら、それは買い被りに過ぎなかったらしい。

 また、その「もう一人の世界最強」も生徒を指導しきれず、教官にフォローしてもらい、そのことで落ち込んでいる。

 期待外れだ。

 

 ふん……やはり、教官の補欠程度の存在か……

 

 教官はどうやら川神那々のことを高く買っているようだが、私にはそう思えない。

 世間ではあの二人を互角と思っているらしいがそんなことはない。

 教官こそが唯一無二の最強なのだ。

 それをあの男が教官の経歴に泥を塗ったことで幻想を生んだ。

 

 ……しかし、あのヤチと言う女……

 まさか、専用機持ちとはな……

 

 私の邪魔をし、私のことを「軍人ごっこ」と揶揄したヤチと言う女が専用機を持っていたことは意外だった。

 ただ川神那々に指名されなかったことを考えるとあの女の実力は中国とイギリスの代表候補以下なのだろう。

 その癖に粋がる。

 力もないのにだ。

 気に食わない。

 

 それなのに……なぜ教官は……

 

 教官がなぜあんな程度の存在を気にして信頼するか理解できない。

 既に二人もいた気に食わない存在に新たなにそこに名もない石が加わった。

 必ず証明してやる。

 奴らよりも私の方が上だと。

 

 そうなれば……教官も……




現代っ子の消極的な素直な姿勢にちょっと物足りない雪風と完全に評価を見誤るラウラでした。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。