奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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AICて多分、初見で仕組みを理解するのは無理だと思います。


第19話「限界」

 しっかし……啖呵を切ったのはいいけど、どう攻めようかしら……

 

 ボーデヴィッヒに先ほど「龍砲」をお見舞いした結果、何故か「衝撃弾」が消滅したことが重石になってあたしは攻めることに躊躇してしまっている。

 ボーデヴィッヒの「IS」には何かしらの防御機構があるのは明らかである。そして、その手掛かりになりそうなのはボーデヴィッヒのかざした手だ。

 恐らく、あの防御機構は一定方向からの攻撃に対してのみ有効なのだろう。

 となると下手に接近するのは危険過ぎる。

 だが最悪なのはあたしの攻撃手段はあたしを中心に据えた直線的なものしかなく、どうしても一面的な攻撃手段しかない。

 

 雪風ならどうする……?

 

 道筋が全く見つけられないあたしの脳裏に浮かんだのはあたしと同じ様に攻撃手段が限られている姉弟子にして、あたしが超えたいとする相手ならばこの状況をどうするかだった。

 悔しいけれど、やはり今のあたしでは雪風に出来ることが出来ない。

 雪風に出来ること。

 それはたった一つ。

 「勝つこと」だ。

 極めて単純過ぎて何も言えないがアイツならば必ず勝つ。

 勝つ為の手段を見つけ、なさそうな微かな道筋を探り当ててそのまま邁進する。

 今のあたしにはそれが出来ない。

 

「さっきまでの威勢はどうした?

 その程度かっ!!!」

 

「……ちっ!」

 

「くっ……!」

 

 先程、自ら墓穴を掘ったとはいえ恥を掻いたボーデヴィッヒはその苛立ちを発散させるが如く大型カノンを撃ち続けた。

 

 ……こうなりゃ、弾切れでも狙おうかしら?

 

 幸い、相手は頭に血が上っている。

 となれば、回避し続けていれば乱発したことで勝手に自滅する可能性もある。

 あの大型カノンがないだけで十分、戦い易さは変わるはずだ。

 と安易に考えている時だった。

 

「……そんな手に私が乗るとでも思ったか?」

 

「!?」

 

 そんな見え透いたことは見抜いているとでも言うのか、ボーデヴィッヒはあたしに接近、いや、急接近して来た。

 

 「瞬時加速」……!

 

 得意の白兵戦でありながらもまさか、こんなにも早く接近されるとは思いもせずあたしは迎撃が出来ずにいた。

 

「しまっ―――」

 

 自らの不注意さを悔やみそうになった時だった。

 

「鈴さん!!」

 

「―――!!」

 

「!?……ちぃ……!!」

 

 突然のレーザーによる助太刀があたしとボーデヴィッヒの間に放たれたことで隙が生じあたしはそれを見逃さず場を脱しボーデヴィッヒは忌々しさを顔に浮かべた。

 

「まったく……何を考え込んでいるんですか、貴女は?」

 

「……え?」

 

 離脱したあたしにセシリアはボーデヴィッヒを牽制しながら呆れる様に言った。

 

「今のは明らかに貴女らしくありませんわよ?

 何を悩んでらっしゃるの」

 

「………………」

 

 セシリアの言う通りだった。

 確かに今のあたしはいつもと違って慎重になっている。

 いや、ならざるを得ないのだ。

 

「仕方ないじゃない……

 あたしの攻撃じゃあいつに防がれるのが関の山よ。

 だから―――」

 

()()()()()()()()ですか?」

 

「―――!?」

 

 雪風のように戦うしかないと口に出そうとした瞬間、セシリアに見透かされてあたしはその先を紡げなかった。

 

「多分、貴女は『雪風さんならばこうする』とか、『雪風さんならばどうするか』等と考えて自分の戦い方を封じようとしたのではありませんの?」

 

「そ、それは……」

 

 セシリアの言う通りだった。

 あたしはつい自分の戦い方でボーデヴィッヒに勝てないと不安になり、自分と同じような戦い方である意味では理想像とも言える雪風の戦いを意識して求めようとした。

 その結果、あたしはいつもより反応が遅れてボーデヴィッヒに懐に入られてしまった。

 

「貴女は貴女で雪風さんは雪風さんです。

 貴女は何時もの様に貴女らしく突っ走りなさいな……

 貴女が川神先生に認められたと嬉々として自慢していたように」

 

「………………」

 

 セシリアはあたしの背中を押した。

 いつもの様に戦えと。

 

「わかったわよ―――」

 

 セシリアの激励とも取れる指摘を受けてあたしは

 

「―――その代わり、あたしを焚き付けたんだから、確りと勝ち(・・)に行くわよ!!」

 

 セシリアに背中を任せていつもの様に直進した。

 

「馬鹿め」

 

「……!」

 

 ボーデヴィッヒは再び突撃してくるあたしを見ると先程とは異なりただ待ち伏せるようではなくなった。

 最初カノン砲で迎撃して来るのではないかと思っていたが、その予想は外れ「シュヴァルツェア・レーゲン」の肩から突起が放たれた。

 見た所、あれはセシリアの物と違って有線式らしい。

 それを見てあたしは

 

「なら、こうよ!」

 

 「龍砲」を散弾モードに変えて発射された武器の軌道を力ずくで変えようとした。

 その結果、発生した風圧によってワイヤーが巻き込まれて先端部分の軌道が乱れた。

 そのまま流れ弾がボーデヴィッヒに迫るも

 

「……その程度か」

 

「……!」

 

 ボーデヴィッヒは右手をかざして再び何事もなかったかのように佇んていた。

 さらには例の武器もすぐに体勢を立て直し再びあたしに襲い掛かって来た。

 あたしは先ほどの迎撃で生じた少しの隙を掻い潜りそれでも迫る先端部分を「双天牙月」でいなしてボーデヴィッヒの眼前に躍り出た。

 そして、そのまま「双天牙月」で斬りつけようとしたが

 

「愚かな」

 

「あぐっ……!?」

 

 ボーデヴィッヒが同じように手をかざしあたしは目に見えない何かによって動きを止められた。

 まるで小鳥が人間の手に握られるかのような気分を味わったようだ。

 だが、これでようやくボーデヴィッヒがしていたことの正体が理解できた。

 

 「PIC」……!

 いや、これは……!

 

 ボーデヴィッヒがしていたことは極めて単純だった。

 「PIC」。

 「浮遊」、「加速」、「停止」を司る「IS」の基本システム。

 それをボーデヴィッヒの機体は発展させたのだ。

 物質ではなく空間そのものをエネルギーで操る力。

 消滅した「衝撃砲」と私の現状。

 意味することは「慣性」への干渉だ。

 あらゆる物理的手段を停止させる機構。

 力の矢印に対して相対させて相殺させるのではなく、矢印の棒の部分を減少させる力。

 つまりこれこそが謎の防御機構の正体だったのだ。

 

「終わりだ」

 

 ボーデヴィッヒは動きを封じたあたしを至近距離から大型カノンで砲撃しようとした。

 しかし

 

「わたくしをお忘れでございませんの?」

 

「……何?」

 

 ボーデヴィッヒの左方向から聞こえて来る声。

 ボーデヴィッヒはその声がした方を見た。

 すると、その方向には

 

「なっ!?」

 

 「インターセプター」を手に持ちながら接近して来ていたセシリアの姿があった。

 

「遠距離射撃型で接近を挑むだと……?」

 

 ボーデヴィッヒはセシリアが自らの武器とも言える長距離射撃と言う利点を捨てて来たことに驚愕していた。

 どうやら、セシリアは私が注意を惹きつけている間にボーデヴィッヒに側面に回り込んで「スターライトMK―Ⅲ」を収納し「インターセプター」に切り換えてそのまま接近を試みたらしい。

 しかし、

 

「残念でしたわね」

 

「……!?」

 

 セシリアはボーデヴィッヒのその反応を目にして笑みを深めた。

 どうやら彼女の目的は他にあるらしい。

 そして、その笑みの意味は

 

「な、なにぃ!?」

 

 「逆落とし」……!

 

 セシリアは二発しかないミサイルの中、一発を速度を落とさずそのままの勢いで発射した。

 それは先生や雪風の十八番そのものであった。

 まさか、セシリアが「逆落とし」をするとは思いもしなかった。

 

「ぐっ……!」

 

 ボーデヴィッヒは迫り来るミサイルを目にしてあたしの拘束よりも脅威のレベルが高いと判断してか後ろへと下がった。

 そして、そのことによって

 

 今だ……!

 

 拘束が緩みあたしはその機に乗じて即座に距離を取った。

 その結果、ミサイル攻撃は不発に終わり黒い爆炎が辺りに満ちて一帯の視界が遮られた。

 

「助かったわ……

 でも、随分と手荒いことをしてくれるじゃない?」

 

「こうでもしない限りあなたを解放できないと思ってのことですわ」

 

 あたしは助けてもらったことに感謝をしつつも少し乱暴な助けられ方に皮肉を言うが、セシリアは悪びれることはなかった。

 実際、そうなのであるが。

 

「おのれぇ……!」

 

「「くっ!」」

 

 黒煙が晴れてもないのにボーデヴィッヒはあたし達を砲撃して来た。

 恐らく、今のは視界を遮る煙を払う意味もあったのだろう。

 

「小癪なマネをぉ!!

 だが、ここで決定打になりかねないミサイルを撃つとはなぁ……

 それも足手まといを助けるためにな……!」

 

「………………」

 

 ボーデヴィッヒはセシリアがあたしを助けるためにミサイルを撃ったことを愚かだと断じた。

 だが、今のでセシリアが最も火力の高い武器を一つ失ったのだ。

 それもあたしを助けるために。

 様子見とは言え、これは余りにも理にかなっていない。

 

「フフフ……」

 

「……セシリア?」

 

「何がおかしい」

 

 しかし、そんなボーデヴィッヒの発言を受けてセシリアは笑った。それも不敵にも。

 

「やはり、貴女の目は節穴ですわね?」

 

「……何だと……?」

 

 ボーデヴィッヒはその笑みと言葉の意味が理解できず、いや、心のどこかでは何かを感じ取って不安を感じていた。

 対して、ボーデヴィッヒとは真逆にセシリアはさらに笑みを増すだけであった。

 

「他人を見下すことしか出来ない人間などその程度と言うことですわ……」

 

「な、何……?」

 

 セシリアはボーデヴィッヒにどこか憐みのような感情を込めてそう言い、ボーデヴィッヒは別に敵意を向けられているのでもなく気圧されていた。

 

「今から、それを自らの心に刻み込みなさい!!」

 

 その直後、セシリアの号令の如き一括と共にセシリアの最大の武器にして尖兵たちが煙の中から姿を現しボーデヴィッヒを一斉に射撃した。

 

「な、何ぃ……!?」

 

「ブルー・ティアーズ……!」

 

 黒い煙から突如として展開されたセシリアのビット兵器たち。

 それらはセシリアの号令と同時にボーデヴィッヒを包囲した。

 それはまるで見えない檻のようだった。

 

「ぐっ……!

 き、貴様……まさか……!?」

 

 ボーデヴィッヒはセシリアの腰部にビット兵器がないことにようやく気付いた。

 ビットの煙の中からの展開、そして、煙を生んだセシリアの攻撃。

 つまり、それは

 

「ええ。

 先程の「逆落とし」の際に展開させていただきましたわ?」

 

 あたしを助けると同時にセシリアは反撃の準備すらも整えていたと言うことだ。

 

「お、おのれぇ……!」

 

 完全にセシリアの術中に嵌まったボーデヴィッヒはビットによる檻から抜け出そうと、いや、檻そのものを壊すためにセシリアに接近しようとするが

 

「させるかぁ!!」

 

「ぐっ……!?貴様ぁ!!」

 

 あたしはもう一度、拘束されるのを覚悟のうえで前に出た。

 きっと、あの防御機構とワイヤーに捕まる可能性もある。

 しかし、それでも感じたのだ。

 勝利に至る道筋が。

 

「……それが一人の限界よ。バーカ」

 

 あたしはそう言ってセシリアの包囲網の邪魔にならないように「龍砲」をお見舞いしてやった。

 ボーデヴィッヒは当然の如く、それを防ぐ。

 しかし、その顔には明らかな焦りがあった。




ラウラ相手に有利に戦えている理由
・二対一であること
・セシリアの「ブルー・ティアーズ」がラウラの死角を突けること
・伊達に神通さんに鍛えられていない
・ラウラが冷静さを欠いていること
・ラウラがAICを過信していること
・ラウラが前の模擬戦で二人を舐めていたこと
……それでも、機体の性能的にはラウラの方が上なので手が抜けないんですけどね。

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