奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「……何だ?」
箒とシャルロットと俺はいつもの様に訓練をしようと第三アリーナに向かおうとしていたら異様な光景を目にした。
どこか生徒たちの様子が慌ただしく、廊下を走っている生徒たちも多く、みんな第三アリーナへと向かっている。
となると考えられるのは第三アリーナで何かが起きていると言うことだろう。
「何かあったのかな?こっちで先に様子を見ていく?」
シャルルはすぐに何が起きているのかを確認するためにアリーナの観客席の方へと俺達を誘導する。
しかし、観客席から見たアリーナの様子を見てみると
……何だこりゃ?
明らかに異常だった。
自分で言うのもどうかと思うが、俺は雪風と言いこの前の無人機と言い修羅場を二回ほど経験している。
今、アリーナに漂っているのはまさにそんな雰囲気だった。
「……何だこれは……」
箒も俺と同じ感想を抱いているらしい。
剣術や武術に精通している箒が声を漏らすと言うことはどうやら相当な緊張感が漂っているらしい。
「誰かが模擬戦をしているみたいだね。
でも、それにしては―――!?
一夏、あれ!」
「え?……!?」
「IS」に関しての技術は雪風にすら驚かれるらしいシャルロットもアリーナの異変にただならぬ雰囲気を感じていたと思っていたら何かに気付いて指差した。
すると、そこには
「おのれぇ……!!」
「ぐっ……!!」
「悔しいですけど、機体の性能はあちらの方が上ですわね……!」
「鈴!セシリア!」
鬼気迫る表情で攻撃を行うラウラとそれに応戦する鈴と鈴を援護するセシリアの姿があった。
「クソ……!!」
激しい剣幕で戦う三人を見て俺は鈴とセシリアの事が心配になってアリーナのシールドまで駆け寄ろうとしたが
「一夏、落ち着いて!」
シャルロットはそんな俺を制止して冷静になる様に言ってきた。
「落ち着いていられるか!」
友達二人が俺とラウラとの諍いに巻き込まれたことを察した俺は冷静になれず感情的にそう言ってしまった。
元々、ラウラが憎んでいるのは俺だ。
それなのにラウラはただ憎んでいる俺と親しいと言うだけで二人を襲っているのだろう。
恐らく、俺を引き摺り出すために。
何よりもラウラは今日の中休みの時に千冬姉に拒絶されていた。
きっとそれも引き金になったのだろう。
だから、俺は八つ当たり気味になってしまったが
「二人は大丈夫だよ」
「……何だって?」
シャルロットは驚くほどに落ち着きながらアリーナの方を指差した。
「てりゃああああああああ!!」
「ちぃ……!」
「そこですわ!」
「ぐっ!?」
鈴が果敢に攻めてセシリアがラウラの隙を見つけては射撃して明らかに二人がラウラを圧倒していた。
「ほらね?」
「あ、あれ……?」
当たり前と言えば当たり前であるが、鈴とセシリアがラウラを圧倒していた。
そもそも二対一なので当然であるが、鈴が前衛を務めてラウラを食い止め、セシリアが「ブルー・ティアーズ」で包囲して徐々に削っていくと言う理想的な戦い方をしているのだ。
何よりもセシリアの「ブルー・ティアーズ」の動きが明らかに以前よりも圧倒的に速い。
その結果、ラウラの「専用機」と比べると微かであるが鈴も破損は目立つが、セシリアに至っては殆ど損傷が見受けられない。
「焦る必要はなかったでしょ?」
「あ、ああ……」
個人としてはラウラとの因縁に二人を巻き込んだことに対して俺は負目を感じていた。
しかも、この緊迫した空気だ。
明らかに双方の当事者たちは互いに敵意を向けているのでシャレにならない事態になると俺は危惧していたのだ。
しかし、ラウラはともかくとして、勝っている鈴とセシリアならばそこまで酷いことにはならないと俺は安堵したのだ。
たとえ、相手が俺に敵意を持っているとしてもそれを理由に友達が相手のことを痛めつけるようなことを俺はして欲しくないのだ。
「……ぐっ!?」
「ようやく、捕らえたぞ!!」
鈴の動きがいきなり止まった。
まるで見えない手で掴まれたかのように。
それを見て、ラウラは今まで苦戦した分、鈴に反撃しようとしているようだった。
しかし、俺はそれを見ても焦りが生まれなかった。
なぜならば、
「……アンタ、学習能力がないらしいわね?」
「……!?」
ラウラからは見えないが観客席の俺達には見えたのだ。
なぜ拘束されている鈴が冷静で、ラウラが動揺し始めた理由を。
「遠慮なしにやっちゃいなさい!!
「了解ですわ!!」
「し、しまった!?」
鈴の背後から今まで遠距離からの射撃に専念していたセシリアが急上昇しそのままその勢いでラウラの背後へと回り込んだ。
それは優美な曲線を描きながらもアグレッシブなものであった。
セシリアは鈴の背後、つまりはラウラにとっての死角に潜んでいたのだ。
しかし、驚いたのはその接近までの操作技術だった。
元々、セシリアは俺に対して細かすぎる説明をする程に飛行に関しては雪風よりも上の人間だ。
だが、今のセシリアは前よりも速いのだ。
そして、ラウラが回避できない距離まで到達すると
「これで終わりですわ!!」
「……!!?」
逆さまのままミサイルを発射した。
そして、その直後、避けることのできないラウラにミサイルが直撃し轟音が響いた。
その後、辺りには爆発による熱と煙が満ちた。
「っと」
セシリアはその後、まるで体操の選手のように華麗に着した。
どこまでも優雅さにこだわるのがセシリアらしい。
「……体操の選手のつもり?」
セシリアの着地の仕方を見て鈴も思ったのか茶化した。
「このセシリア・オルコットは常に優美さを求めることに余念がないだけですわ」
鈴のからかいに対して、セシリアは全く気にせず、ただ胸を張って自分らしさを曲げなかった。
「はあ~……二人が無事でよかった……」
「そうだね。
だけど、オルコットさんの頭から落ちながらの攻撃……すごかったね」
俺は二人が勝ったことに安堵しシャルロットもこの事態が解決したと思ってかセシリアのミサイル攻撃を称賛した。
実際、逆さまに発射するのは着地や飛行の制御も考えるととんでもなく難易度が高いと思うので驚かざるを得ない。
「ああ、俺もうかうかしてられないな……」
鈴の奮闘ぶりはいつも通りの鋭さがあったが、セシリアの今回の戦は今までになかった力強さがあった。
明らかにセシリアは成長している。
那々姉さんの指導で力を付けている。
例えるのならばまるで曲線でありながらもそこに勇壮さを感じると言う矛盾した性質を共存させたようなものだったのだ。
何にせよ、二人はラウラに勝った。
多分、これ以上事態が悪化することはないだろう。
誰もがそう思っていた時だった。
「……!?」
俺は
「鈴!セシリア!逃げろ!!」
俺は二人に向かってそう叫んだ。
しかし、アリーナのエネルギーシールドによって二人にその叫びが届くことはなく
「あぐっ?!」
「鈴さん!?」
「鈴!?」
ドガァンと炸裂音が響きその後鈴はそのまま吹き飛ばされた。
しかし、それだけでは終わりではなかった。
「なっ!?ぐっ……!?」
「セシリア!?」
今度はセシリアが何かに巻き付かれた。
それはワイヤーらしく、それを辿っていくと
「嘘だろ……」
既に機体のあらゆる箇所が破損している専用機を未だに纏いながらラウラが立っていた。
セシリアのミサイルはラウラのシールドエネルギーを削り切れなかったのだ。
「………………」
何よりも異様なのはラウラの目だ。
今のラウラの目にはまるで機体の色のような、いや、それよりもどす黒い執念染みたものが溢れていた。
雪風が見せるような
そして、それは
「あぐぁ!?」
「なっ!?」
今、捕らえた獲物に対してぶつけられる。
ラウラはセシリアをワイヤーを使って壁に叩きつけた。
そして、今度は
「がっ!?」
ワイヤーを自らの許へ戻しセシリアを自分の近くに引き寄せて今度は待ち伏せて拳をセシリアの腹に突き立てた。
さらにそれが終わると再び壁や床にぶつけ、さらに自分の近くに引き寄せると蹴りと拳を浴びせると言う暴力を繰り返した。
「ひ、酷い……」
シャルロットはラウラのその攻撃ですらない暴力を目にしてそう言った。
最早、一方的な暴虐。
そして、明らかなのは今のラウラはセシリアに対して今までの憂さ晴らしをしようとしている。
それは狂気であった。
「くそっ!」
これ以上はマズい。
そう思って俺は「白式」を展開し「零落白夜」のためにエネルギーを収束し、目の前の観客席のシールドエネルギーを破ろうとした。
この場から一気にアリーナへと駆けつけるにはこれしか方法がないからだ。
その時だった。
「このぉ……!!
セシリアを放せええええええええええええ!!!」
ラウラに砲撃されて倒れていた鈴が復帰しセシリアが晒されている暴力を目の辺りにして「衝撃砲」を叩き込もうとした。
しかし、
「……!?鈴、ダメだぁ!!」
ラウラは鈴の方向を見て鈴が「衝撃砲」を放とうとしているのを察知したのを理解した俺は嫌な予感がして鈴に声が届かないことも「零落白夜」に集中することも忘れて鈴を制止しようとした。
だが、時すでに遅し。
「ふん……!」
「なっ!?」
鈴が「衝撃砲」を発射するのと同時にラウラはワイヤーを使って何かを投げつけた。
それは
「あぐっ!!?」
「「セシリア!!」」
セシリアだった。
ラウラはワイヤーで捕まえていたセシリアを鈴に向かって振り子の要領で投げつけて盾にしたのだ。
結果、怒りに身を任せて最大出力で発射された「衝撃砲」がセシリアに直撃し、セシリアの「ブルー・ティアーズ」はラウラによる暴力の嵐の蓄積もあって機体維持どころか、操縦者の保護すらも危うい状態になってしまった。
「くっ……!」
鈴は自らの行動が起こした結果に後悔の念を一瞬見せるが、すぐにそれを頭の片隅へと追いやりセシリアを保護しようと駆け寄ろうし、俺も再び「零落白夜」を使って助けに向かおうとするが
「終わりだ」
ラウラは大型カノンをセシリアに向けた。
セシリアを餌にして鈴諸共、トドメをさそうとしているのだ。
いや、きっと途中で鈴がセシリアを助けるのを諦めてもそのまま撃つつもりだ。
俺は後悔した。
どうして、さっき「零落白夜」を放つのを止めてしまったのかを。
鈴に声が届かないのは当たり前だったのだ。
だけど、集中力を失った俺は「零落白夜」が暴発するのを恐れて一回止めてしまったのだ。
クソっ……!!
俺は自分の愚かさを嘆いた。
だけど、時間は止まることなく弾丸が発射されそうになった。
その時だった。
「……何!?」
それを止めるかの如く、何かがラウラの右方向から迫って来た。
ラウラは飛来したそれを本能的に右手を使って止めた。
そして、停止したそれはゴトンと鈍い音を立てて落下した。
「あれは……」
落下したものを目にして俺の心から焦燥感が消えた。
さらには
「ちぃ……!」
何者かがラウラに対して、次々と攻撃を仕掛けた。
ただラウラはその攻撃を忌々しそうに防ぐのみであった。
だが、俺はようやくラウラに攻撃し続けるそいつを目で追うことが出来た。
「貴様……」
「………………」
ラウラと向き合う形でそいつはアリーナに立った。
一見すると同系色の黒い機体を纏う両者は似ていた。
だけど、双方には大きな違いがあった。
そいつが纏っていたのは
そして、ラウラが宿しているのが漆黒の狂気だとすると、そいつが纏っていたのは鋼の意思であった。
「……雪風」