奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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E6終了でE7√ギミック解除……
装甲ギミックをやってから、ボス……
資源が資源が……
ルイージ来たけど。


第21話「誇りと意思」

「………………」

 

 訓練のためにアリーナへと向かう途中、生徒たちの様子が騒がしいのを目にしてなぜか胸騒ぎがしたので私は急いでアリーナへと走り、私がピットまでに到着すると聞こえて来たのは生徒たちの悲鳴だった。

 私がアリーナで目にしたのはボロボロになったセシリアさんとそれを助けようとする鈴さん、そして、それを意に介さず砲撃しようとしていたボーデヴィッヒさんであった。

 それを目にした私は無意識のままに魚雷を発射し、その後最大時速で移動しながら砲撃を重ね続けて彼女の注意をこちらへと向かせた。

 命を奪われようとしたことへの怒りが私を突き動かしている。

 何よりも目の前の「軍人」を名乗る輩が平然とそれをやろうとしたことが私には許せなかったのだ。

 

「雪風……」

 

 鈴さんが私に声をかけて来た。

 どうやら二人とも無事なようらしい。

 そのことに私は安堵したが

 

「鈴さん。セシリアさんを連れてこの場から離れてください」

 

「え」

 

 目の前に未だに戦意を持ち続ける相手がいることで気が抜けない私は即刻、二人にはこの場から離れることを指示した。

 なぜならば

 

「あなたたちを巻き込みかねません」

 

「……わかったわ」

 

 最初の砲雷撃戦で目の前の相手には普通の(・・・)戦い方じゃ勝てないと悟ったからだ。

 そして、今から必要なのは速さと広さだ。

 そのことから二人を巻き込みかねない。

 私の言葉を受けて鈴さんはセシリアさんを伴って退避してくれた。

 

「……貴様。

 またしても邪魔を……

 まあ、いい。貴様もここで……」

 

 ボーデヴィッヒさんはまたしても私に横槍を入れられたことに最初は不満げであったが、なぜか今度は私を倒すことに意欲が湧いているらしい。

 その反応を目にして私は

 

「くだらないですね」

 

 たった一言だけ言い捨てた。

 

「……何?」

 

 私が言った真意が理解できないらしくボーデヴィッヒさんは聞き返してきた。

 私は少しウンザリしながらも

 

「だから、くだらないて言ったんですよ。

 何ですか、あなたは?所かまわず相手に戦いを売ってくだらない自分のちっぽけな虚栄心を満たす……

 本当に軍人なんですか?」

 

「……貴様」

 

 私は目の前の人間が本当に「軍人」であることを認めたくなかったことから彼女がしていることが自分の力を誇示したいがためのものであることを口に出してしまった。

 彼女は自分の存在を誰かに認めさせたいがために力を振るい続けている。

 

「あなたには軍人としての信念も兵士としての意思すら感じられない」

 

 目の前の彼女には軍人としての誇りすらも、ただ生き残るために懸命に足掻こうとする強さすらも存在しない。

 あるのは力に溺れて、力に溺れることでしか生きられない

 

弱虫(・・)ですね。あなたは」

 

「な、何ぃ!?」

 

 弱虫の性根だ。

 この世界の軍人の在り方が私の世界と違うのかもしれない。

 だが、たとえそれが私の決めつけであろうと私は目の前の人間を軍人として認めるつもりはない。

 武器を手に取った瞬間に無敵になったつもりになる。

 自らの行動の結果の責任を感じず、相手が人間だと認識できない。

 なぜそうなるか。

 決まっている。 

 そう言った人間に限って自分がしていることの本質を理解した瞬間に壊れる弱虫だからだ。

 他人を見下し自分は選ばれたと思いあがる。

 それ以外のまだ動こうとしない人間すらもクズやら出来損ないだとしか思わない。

 

「自分のしている事の恐ろしさも理解しようとする勇気がない時点であなたは臆病者以外の何者でもない!!」

 

「き、貴様ぁ!!!」

 

 私の最後の言葉を受けてボーデヴィッヒさんは激昂して砲撃して来た。

 

「……その程度ですか?」

 

 それを私は回避した。

 こんなもの避けることなど容易いものだ。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 砲撃の後に来たのはワイヤーが付いた刃の様な物であった。

 私はそれを見て回避しつつ機銃で迎撃した。

 

「まだだ!」

 

「……!」

 

 しかし、それらは一瞬で体勢を立て直し再び襲い掛かって来た。

 どうやら、強度に関してはセシリアさんの「ブルー・ティアーズ」より上らしい。

 

「成程、確かにこれは厄介ですね……!」

 

 機銃で弾き続けながら私は何度弾いても襲い掛かって来る刃とワイヤー、さらにはその中で生まれた隙に放たれる大型カノンを避けながら私は「初霜」とボーデヴィッヒさんの機体との相性の悪さを実感した。

 先ず、例のワイヤーで動きが封じられると確実に詰みになることからあれは確実に避け続けなくてはならない。

 しかし、それらだけでなくあの大型カノンの威力は少なくとも、こちらの小口径の主砲よりも上であり直撃は避けなくてはならない。

 さらにはこちらがようやく砲雷撃にありつけても例の見えない障壁で防御されるのが関の山である。

 あちらの白兵戦の武器を知らない限りは接近戦も危険である。

 

「ですが……!

 その程度(・・・・)です!!」

 

 これぐらいの性能や相性、物量差などとっくのとうに慣れている。

 

「はっ!ガトリングで弾いていてよく言う!

 せいぜい弾数の底が見えるところまで粘り続けるんだな!!」

 

 確かに彼女の言う通りだ。

 今、私が回避し続けることが出来るのは機銃による迎撃が出来ているからである。

 しかしだ。

 

「いいえ。ようやく、反撃への一歩を踏み出せますよ!」

 

 既に反撃への道筋は出来ている。

 

「くだらんはったりを……!」

 

 どうやら彼女は私が強がりを言っているのだと思っているらしい。

 しかし、今の決してはったりではない。

 なぜならば

 

「助かりましたよ……

 自分から安全圏から出て来てくれる(・・・・・・・・・・・・)なんて」

 

「……!?」

 

 条件は整っていたのだから。

 私はその言葉と同時に例のワイヤーへ主砲を向けて砲撃し、続けて他のワイヤーも砲撃する。

 その結果、全てのワイヤーは機能を失った。

 

「な、なんだとぉ……!!?」

 

 機銃で予め誘導しておいた例の刃の破壊は成功した。

 先程から機銃に当たっていたことからどうやら例の見えない障壁はワイヤーには存在しないのは理解していた。

 その事から雷撃では当たり辛く、機銃では火力不足なので私は砲撃で破壊することを狙った。

 おかげで大分戦いやすくなった。

 それは物理的な意味でも、精神的な意味でもだ。

 

 

 

「馬鹿な!?

 ワイヤーブレードを破壊しただと!?」

 

 目の前でヤチの砲撃によってワイヤーブレードが全て破壊されたのを目にして私は信じられなかった。

 

「やはり、例の防御機構はあなたの近くでないと発動できないようですね」

 

「ぐっ!?」

 

 ヤチは「停止結界」の有効範囲を把握したうえで今の砲撃を行ったことを暗に言った。

 あの回避行動の中でこちらのスペックを把握することも頭に入れていることからヤチは観察力に優れていることが嫌でも理解できた。

 だが、問題はそこではない。

 

 砲撃で(・・・)動いているワイヤーブレードを破壊しただと……

 

 ヤチは自らを捕えようと動き続けていたワイヤーブレードを破壊したのだ。

 それも砲撃でだ。

 砲撃はそもそも直撃ではなく着弾時に発生する破片や風圧を以って相手を殲滅するか、自分と同じかそれ以上の大きさの対象を粉砕するためのものだ。

 しかし、今、ヤチがしたことは砲撃と言う名の射撃、いや、狙撃(・・)だ。

 例えるならば戦車の主砲で高速で飛行している戦闘機を撃ち落とすようなものだ。

 そんなことをやる、いや、そもそもやろうとする人間は普通はいないはずだ。

 だが、ヤチはそれを成功させた。

 やろうとしたこともそうだが信じられないほどの技術だ。

 

 だが、こちらにはまだ「停止結界」がある……!!

 

 ヤチの砲撃能力、回避能力、洞察力が脅威的なのは事実だ。

 奴を見くびっていたのは紛れもない私のミスだ。

 しかし、だからと言ってヤチの砲撃がこちらに打撃を与えることには繋がらない。

 それに接近戦に関しては機体の形状や先ほどのロケットランチャーを見てみればメインではないのは理解できる。

 

 接近戦に持ち込めば……!!

 

「……!」

 

 プラズマ手刀を展開し白兵戦に持ち込もうと加速した時だった。

 

「双方、そこまでだ」

 

「「……!?」」

 

 何者かが私とヤチの間に乱入して来た。

 それは

 

「教か―――」

 

 紛れもなく教官だった。

 教官は「IS」を纏わず「IS」の近接用兵装しか持たずにこの場に現れたのだ。

 それを見て私は戸惑いながらも止まろうとしたが

 

「―――え?」

 

 それ以上に教官が私に向ける悲し気な目を見た瞬間戸惑ってしまった。

 なぜそんな目を向けるのか理解できなかったから。

 

 

 

 無茶をする人だ……

 

 私は目の前に突然現れた織斑さんの姿に呆気に取られてしまった。

 なぜならば、彼女はこの明らかに砲撃や刃が行き交うアリーナに「IS」を纏わず、しかも「IS」の補助なしで「IS」の装備を使っているのだ。

 いくら何でも命知らず過ぎないだろうか。

 もしかすると一夏さんのあの無鉄砲さは遺伝なのではないだろうか。

 

 ……もしかすると、神通さんも出来るんですか?

 

 同時に私は彼女と並んで「世界最強」とされる神通さんも同じ芸当が出来るのではないかと妄想してしまった。

 そんな織斑さんの登場でお互いの攻撃が止んでいる時であった。

 

「陽知。すまないがここは引いてくれないか?」

 

「……!?」

 

「……え」

 

 織斑さんが私に対して矛を収めることを頼むように言ってきた。

 しかし、その言葉を受けて衝撃を受けたのは私ではなくボーデヴィッヒさんであった。

 

「きょ、教官……?」

 

 彼女は困惑しながら自分の師のその姿勢の真意を求めるが

 

「……ボーデヴィッヒ。

 お前もだ。すぐに引け」

 

「……っ?!……わかりました……」

 

 返って来たのは他の生徒に対して変わらない指示、いや、この場合は命令に等しいものであった。

 それを受けてボーデヴィッヒさんは渋々従いアリーナを後にした。

 

「……すまない、陽知。

 だが、奴を納得させるには万全の状態でなくてはならんと思ってのことだ」

 

 ボーデヴィッヒさんが立ち去った後に彼女はそう言った。

 

「……そう言うことですか……」

 

 彼女はこの場に乱入した理由。

 それは事態の収拾だけではなく、自らの教え子の気質を踏まえてのものであった。

 確かに織斑さんの言う通りだ。

 今のボーデヴィッヒさんは鈴さんとセシリアさんとの戦いでダメージを負っている。

 それで彼女を倒したとしてもそれを言い訳にするだろう。

 それでは根本的な解決にはならない。

 

「わかりました」

 

 そして、彼女は同時に私に対して教え子のことを頼んだのだろう。

 彼女に「敗北」を教えろと。

 

「すまない……

 では、トーナメントまでの一切の私闘は厳禁だ!」

 

 私が了承したのを目にして彼女は少し申し訳なさそうにしながらもすぐに教師としての顔となり生徒たちに「トーナメント」までの私闘を禁止した。


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