Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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十二話

 由比ヶ浜 結衣と名乗る女性を見ていると、小さい頃の小町を彷彿させられる。

溢れんばかりの活力が由比ヶ浜から発せられていた。小町が小さい頃はよく遊ぼう、遊ぼうと話し掛けてきたものだ。

 

 いかん。小町はこんなビッチではない。うん、違うよな。違うに決まっている。

 

「ね!私は名乗ったんだから、そっちも教えてくれない?」

 

 頼んでもないのに名乗ったくせに、それを盾にして要求してくるとはなんと図々しい事か。しかし、相手だけ名乗らせるのも悪い。こいつ、馬鹿か阿呆かと思っていたがとんだ策士だったようだ。

 

「比企谷 八幡。 太刀使いだ」

 

 ビッチ……基、由比ヶ浜の出現によりその存在を塵の如く薄くさせていた材木座に、横目で促す。

 

「ざっ、材木座 義輝でしゅ。 私も比企谷君と同じ太刀使いだす」

 

 いや、だから噛みすぎだって。つか敬語。お前、さっきまでソイツより数段上の奴に喧嘩売ってただろうが。

あれか。興奮すると大丈夫ですみたいな奴か。俺かよ。

 

 材木座の変わり様に由比ヶ浜は若干……大いに困惑しながらも平静を取り繕う。

 

「えーっと、ヒッキーと材木座くんね!」

 

「おいまて。なんだヒッキーって」

 

「だって、比企谷じゃん? だからヒッキーじゃん」

 

 じゃんじゃないじゃん、じゃんじゃん。

 お前は芸人か。

 

「お前の理屈はわけわからん。それなら、材木座も意味不明なあだ名つけろよ」

 

 俺の言葉を聞き、瞳に希望を宿した者が一名。

 由比ヶ浜は唸りながら空を見上げたり自分の足下を見詰めたりと、四重六方頭を動かした後、 満面の笑顔を材木座に向けて言い放った。

 

「材木座君は……材木座君だよっ!!」

 

 その笑顔は母性愛に満ち溢れ、俺達ボッチ民族にもその笑顔には心を許しかねない。

材木座はまるで自分を認めてくれているのだ思い、感無量の様子だ。

 だが、材木座よ。

 由比ヶ浜の額に冷や汗が流れていることを見逃してはならない。いや、違うか。きっと気付いているだろう。単に思い付かなくて気まずいから笑って誤魔化そうとしてる事に。だが、人間というものは防衛本能の一つとして、嫌なことから無意識に目を背けるらしい。彼もまた人間なのだ。

 

 だから俺はそっと呟く。

 

「思い付かなかったからって笑って誤魔化してんじゃねーよ」

 

「うっ……」

 

「あぼらっ!」

 

 

 由比ヶ浜は呻き、材木座嘆く。

 いや、だって現実を教えるのは良い事じゃん。嘘はよくないよ嘘は。

 例え真実を知って皆が不幸になろうととも虚像の現実に騙されるよりかはましだと思う。それに、俺は『皆』には入らないから別にいいしな。やはりボッチ最強。

 

「そ、それよりもさっ、ヒッキーと材木座君はここで何してたの?」

 

「あ? 買い物を……あー」

 

 買い物をしていた、とは思えないだろうな。あの状況を見ていたのならば。

 

「ちょっと、話し合いをしてただけだ。気にすんな。あとヒッキー言うなビッチ」

 

「だからビッチじゃないし! まじありえない! 目が腐ってる癖に!」

 

「おい、何故目が腐ってる事を理由にした。俺のとーちゃんとかーちゃんに謝れ」

 

「え、ごめんなさい?」

 

 本当に謝ったよコイツ。

 

「……まぁいい。俺達はこれから用事があるからもう行く。じゃあな」

 

「あ、うん。私も今から買い出しだから行くね」

 

「……おう」

 

 まぁ、同じ店に行く事は無いだろう。

 俺が毎度お世話になっている店「HESTIR」は入り組んでいる細道にあるのだ。所謂、裏路地にその店建てられている。

正直、裏路地なんかに店を構えていても客は来ないはずだ。何故そんな処に店を建てたのか気になるが、大方、彼処しか空いてなかったというオチだろう。

 俺は何時も出迎えてくれる純粋無垢な第二の天使である店員を悲しませる事は聞けない。

第二の天使に想い耽っている間にも足を着々と進め、目的に近づく。俺はの後に材木座が付いてきているのを感じとるも、一つ問題がある。材木座に加え、何故だがもう一人俺の横を歩く人物がいる。

 

「……ヒッキー、ついてこないでくれる?」

 

「此方の台詞だビッチ」

 

「だからビッチじゃな……あーもー! そうじゃなくて! 今から行く店は他の人には内緒なの!」

 

「はっ。俺が行く処もそうだ。良かったな。どっちとも行く先は知られたくないんだ、お前が消えれば事なく進むぞ」

 

「私じゃなくてヒッキーがどっか行けばいいじゃん! て言うか、態度があの時とぜんっっぜん違うし!言っとくけど私も『アベクター』の一員なんだかんね!」

 

「おおそうかー、『アベクター』の由比ヶ浜様かー凄いな凄いなナー」

 

「むきっー!!」

 

 言い合いをしている間に、後十数メートル先に 『HESTIR』がある処まで来てしまった。ここまで来れば近隣に他の店はない。何の因果か、俺と由比ヶ浜が行き付けにしている店は同じらしい。しかし、 『HESTIR』は人々に知られるような場所にはない。この由比ヶ浜が発見した可能性はほぼ無いだろう。つまり、誰かが由比ヶ浜に『HESTIR』の場所を教えたということだ。

 

「由比ヶ浜」

 

「なに?」

 

「お前は誰からあの場所を聞いた?」

 

「んー、言って良いのかなぁ……、まぁ、ヒッキー も『HESTIR』の場所知ってるっぽいし、大丈夫だよね」

 

「知らん。教えられるようなら教えてほしい」

 

「ん。えとね、隼人くんだよ」

 

 隼人、アベクターのリーダー葉山隼人のことか。

 

 彼ならば確かにあの化け物染みたコミュ力で『HESTIR』の場所を知ることも可能だろう。一つ気掛かりなのは誰が葉山に教えたかという点だ。これはもう気にしていたら切りがない。大体、あの店が知られて悪いことはないのだ。

遂に店の前にたどり着いき、俺と由比ヶ浜、忘れていたが本来の目的である材木座は 『HESTIR道具店』の前で立ち止まる。

 

「ここ始めてきたとき、本当に道具店か疑っちゃったんだ」

 

「俺もだ。つか、そう思わないやつなんているのか?」

 

 

 『HESTIR道具店』の外装は隣り合わせにある廃墟とは打って変わり、 朱色をベースとし、白色のラインが所々に入った一軒屋だ。 豪華絢爛とは言えないが、誰も道具店とはとは思えない様な貴賓ある風貌となっていた。

 

「ま、入るか」

 

 俺の後に続くように他の二人も店内に入る。

 平屋となっているこの店は見た目より広い。

床は埃など一つも落ちておらず、客側が土足で入って良いのかと疑念を持つほどだ。

玄関前に並べられている回復類の道具を眺めていると、奥の方から足音が聞こえる。

 

「あ、いらっしゃい、八幡っ」

 

 俺の名を呼び、小柄な可愛らしい天使が駆け寄ってきた。

そのつぶらな瞳、サラサラとした髪。顔を綻ばせるその姿をみた者は皆、こう思うだろう。

 守りたい、この笑顔、と。

 

「おう」

 

「あと、結衣ちゃんも! 二人とも知り合いだったんだ。その後ろにいるのはお初目かな?」

 

「うむ。我は八幡に連れてこられたものだ。名は剣豪将軍 材木座義輝と申す」

 

「へぇー! 将軍さんなんだ! よろしくね、材木座君!」

 

「へ? いや、あの」

 

 おい。素直に返されたときの対処法ないのかよ。いきなり素に戻るな。

 

「戸塚。別にコイツは将軍ってわけじゃない、俺と同じハンターだ」

 

「あ、そうなんだ。それよりも、今日は何をお探しで?」

 

 可愛く首をかしげる姿はまじ小町レベル。危うく告白して振られる所だった。

というか、材木座の事を一言は片付けてられてしまった。戸塚にしては珍しい対応だったと思いながら脳内戸塚アルバムに記録する。小悪魔な戸塚もやはり可愛いが天使には天使でいて貰いたいものだ。

 俺の心の糧である天使二名の事を思い出していると、声を掛けられた。

 

「八幡?」

 

「ん? ……あ、そうだな。いつもの狩り道具一式って感じだ。あとはコイツの紹介をしに来たって処だな」

 

 材木座を親指で指す。

 

「オーケー。準備するね。あと、材木座くんの事も問題ないよっ」

 

「おう、頼んだ」

 

「結衣ちゃんは?」

 

「えと、私もヒッキーと同じで狩り道具一式頼める?」

 

「うん、大丈夫。少し待っててね!」

 

 戸塚はそう言い残して奥の方へと消えていっていった。

彼女の姿が見えなくなった頃だろうか、材木座はわざとらしく咳き込み、俺に声掛けてきた。

 

「んんっ、時に八幡よ」

 

「あ?」

 

「先程の美しい女性に、伴侶はおるのか?」

 

「……いねぇと思うけど」

 

「そうかそうか!」

 

「言っとくが、お前じゃ話にならんぞ。二つの意味で」

 

「ふん! 男ならば勝負せねばなるまい!」

 

「……そうか、『男』なら勝負するのか、なら止めん。頑張れ」

 

 終始沈黙していた由比ヶ浜は慌てたように口を挟む。

 

「ヒッキー!解って言ってるでしょ!駄目だよ、教えてあげなきゃ!」

 

 俺は由比ヶ浜の言葉を無視して更に言葉を連ねる。

 

「材木座。俺はお前の意志を尊重する。だからこの店を出る前に勝負に出ろ、いいな」

 

 材木座は感銘を受けたように瞳に涙を溜めて、俺の名を呟く。

 

「八幡……! 承知!必ずや成功させようぞ!」

 

 ああ、楽しみにしてるよ。お前の爆死を。

 

 話に一段落ついた頃合いに戸塚が布袋を三つぶら下げて戻ってきた。

 

「待たせて御免ね。回復薬、解毒薬、痺れ罠、ペイントボール、 『HESTIR』製携帯食料を各々何時もの数入れてるから。一袋千五百ゼニーだよ」

 

 俺は材木座の分も会わせて三千ゼニーを戸塚に手渡し、袋を二つもらう。片方を独り言に熱心になっている材木座に渡し、残りの一つは肩に下げる。

由比ヶ浜も会計を終え、店での用件は全て終わった。

 

「じゃあ、気を付けて!また来てね!」

 

 照れたように微笑みながら小さく手を振るその姿は、昔師匠に見させて貰った異国の着物を着た少女、大和撫子なる者に似ていた。

その姿を見て気持ちが先走ったのか、材木座は一歩踏み出し、思いの丈を戸塚に伝える。

 

「と、戸塚殿!拙者、お願いがっ」

 

「嬉しい!!」

 

「え?まだ我何も……」

 

 

「初対面の人に───『男』だって解ってもらったのは久々だよ!」

 

 

「…………へ?」

 

 

 材木座は呆けた顔をしてピタリとその場に止まる。

由比ヶ浜は頭を押さえ、材木座を決して見ないようにしているようだ。

かくいう俺は込み上げてくる笑い声をどうにか押し留めるために下を向いている。

 

「殿って事は男として見てくれたんだよね! 八幡なんか、雪ノ下さんに教えてもらうまで僕の事女の子だと思ってたんだよ! 失礼しちゃうよね!」

 

「悪かったって。もう十年以上前の事だろ」

 

「ふんっ、まぁいいけどね。『あの時』の事もあるし……水に流してあげるよっ」

 

 口元に手を当てて笑うその姿はやはり女性にしか見えない。

材木座は俺と戸塚が話してる間に店を出ていた。

 

「ヒッキー! 材木座君行っちゃったけど良いの?」

 

「ああ、大丈夫だ。集合場所も解ってるだろうし。それに……今は走りたいだろうよ」

 

「うん……。」

 

 戸塚はキョトンとした顔で不思議そうに訪ねる。

 

「え?材木座君って走るの好きなの?」

 

 うん。好きなの。今は走らなければならないの。

 

 幸いにも、話題の中心人物でありながら話題を理解できていないため、更なる地獄を材木座に見せずに済むようだ。

 

「てゆーかさ、ヒッキー」

 

「んだよ、つかヒッキー言うなって言っただろうが」

 

「うるさい。じゃなくて、思ったんだけど、なんでヒッキーはこの店の事知ってるの?」

 

 俺は一瞬思考が停止する。

 思えば確かに不思議になるはずだ。

 俺の事をルーキーと思ってる由比ヶ浜にとっては、古参しか知らないようなこの店を知っている俺を不思議に思わないはずがない。崩壊し始めている俺の思考能力を総動員させ、一言ずつ言葉を紡ぐ。

 

「……俺は、平塚さんと知り合いなんだ。『ルーキー』である俺に何故か優しくこの場所を教えてもらって以来、時折、狩りをしに行く仲にもなってる」

 

 『ルーキー』という言葉を少し強めに言い、戸塚に目配せをする。

 

「ええええっ! あの戦乙女の平塚さん!? 」

 

「あ、ああ。まぁ、弟子入りは断られたけどな」

 

「そりゃ『死神』がいるから無理でしょ! でも凄いね! 『死神』以外に教えてもらってる人ってヒッキーくらいだよ!」

 

 戸塚は話に入ることはなく、無言で俺達を眺めている。

 

「でもいいなー! あの戦乙女と一緒に狩りができるなんて!ね、もしかして今日って……」

 

「……ああ、今日は材木座付きで平塚さんと狩りに行く予定だ」

 

 由比ヶ浜は俺の言葉に声なき悲鳴をあげて、手足をバタバタさせた。

 

「ねぇ! それって私も一緒に行けない?」

 

「無理だ」

 

「即答だ!?」

 

「平塚さんとの折り合いもあるし、お前も『アベクター』のメンバーを裏切る事になるんじゃないのか? 」

 

「たははは……今日はフリーの日だから問題なかったんだけど……でも、いきなりは失礼だよね、無理いってごめんね」

 

 頭を下げなら言われ、自分が残忍なのかと思えてくる。しかし、これ以上イレギュラー因子を増やすのは悪化の一歩をたどる事になってしまう。

 

 由比ヶ浜は申し訳なさそうに微笑み、貞静を保とうとするが、逆にその態度が彼女の気持ちを露にしていた。

 

 ……やはり俺は馬鹿らしい。

 

 俺の宿敵とも言えるリア充どもにですら同情してしまう偽善者。全くもって損な保護欲に駆られてしまったようだ。

 

「あー、まぁ、平塚さんも話だけなら聞いてくれるんじゃないか?」

 

 そう告げると呆れたことに、先刻まで申し訳なさそうにしていた顔は頬を朱色に染めてとびっきりの笑顔に変わった。

 

「ほんと!? ありがと、ヒッキー!」

 

「おう。聞いてもらえるかも解らんけどな。あとヒッキー言うな……ってこれ何度目だよ……」

 

「ヒッキーでいいじゃーん、何が嫌なの?」

 

「全部」

 

「えぇ……」

 

「そもそも、引きこもりですっていうあだ名を好きになる奴いるのか? いや、断じていない。よって即刻そのあだ名を廃止せよ」

 

「ハイシ?」

 

「要はそのあだ名で呼ぶのをやめろって事だ。ごめんな、難しい言葉つかって」

 

「ば、馬鹿にしすぎだし! ハイシくらい解ってるもん!」

 

「どの口がいってんだか、まぁいい。取り合えず平塚さんと合流するぞ」

 

「うん!」

 

 戸塚と別れの挨拶をもう済ませてしまっていたのにも関わらず、店内で話し込んでしまった。戸塚は最後まで空気を読んで話に入ってこなかったが、俺達の話の節目に上手く口を入れてきた。

 

「じゃあ、二人とも急がないと。平塚さんは待たされるの嫌いだからね」

 

 由比ヶ浜はその事を聞くや否や外、別れの挨拶も告げずに飛び出していった。

俺は由比ヶ浜に集合場所を伝えていない。つまり、「取り合えず走る」という短絡的な行動をとったのだ。

 俺は溜め息をつきながら戸塚に顔を向ける。

彼は先刻までの柔和な表情とは違い、厳しい顔つきに変わっていた。

 

「八幡。解ってると思うけど何時かは……バレるよ」

 

 何を指しているのかは解る。

 何時までも隠し通せるとは思っていない。だが、まだ駄目だ。

 俺が平塚師匠のいるハンターの頂に達するまでは、雪ノ下にバレては駄目なのだ。

 

 

「おう。長居して悪かったな。店長と坊主に宜しく」

 

 今日はいないらしい、はだけた服を好む店長と、白髪紅眼の人懐っこい少年を思い出しながら、俺は戸塚の返事も聞かずに、店を後にした。

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