Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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お久しぶりです。
ここで、どうでもいい大発表です。
Wi-Fiでネットに繋げることが出来ました!ソロでこそこそとプレイしてましたが、もし、モンハンクロスをプレイしている方がいました、もしかたら会うかもしれませんね(笑)
その際はよろしくお願いいたします。

勝手なモンハン報告
二つ名、獰猛、あいつらやべぇな……。びっくりたまこいたわ……。


※記念SSの癖に本編1話分よりも格段に長くなっております。どうか、目が疲れない程度に気を付けてお読みしてくだされば、幸いです(*゚∀゚)=3



十八話更新記念SS 一色いろはとの出会いはやはり間違っている。

日はとうに沈み、子供は寝静まっている時間帯でも、ドンドルマの集会所では日中と遜色無い数々の音色が交差していた。

真昼時に狩りを始め、帰ってきた時には空には月がくっきりと輝いており、今から雪ノ下と小町が待っている我が家に帰ってもアクシデントが起こる確率が高い。それならば、今日は適当な宿屋にでも泊まって翌朝に帰ろうと算段を立てながら、食事所の最奥でメニュー表を眺めていた。

 

集会所で頼める料理はどれも美味しく、安価だ。無論、高いものもあるが、それは高級料理というベテランが頼む料理。ルーキーにはルーキー用の料理が設定されているため、自分に適したレベルの料理をリーズナブルな価格で頼むことができる。これは我々ハンターにとって集会所は聖地と言っても過言ではないだろう。ハンター業についてはや三年以上も集会所で料理を頼んでいれば自ずとメニュー表を見なくても料理名と価格を言える。頼む料理のランクが変わってないことには決して突っ込んではならない。俺のハートがブレイクするからな。

 

さて、ではなぜ集会所マイスターである俺がメニュー表に目を向けているのか。

それはいつの間にか向かい側に座っている一人の受付嬢を見ないようにするためだ。

 

「せんぱーい、ごはん奢ってくださいよぉ」

「……暇の?暇なら何で帰んないの? つか、 なんで奢る必要があんだよ」

「お腹すいたから帰りませんよ!奢る理由は決まってます、一緒にご飯を食べるためですよ! 受付の女神である一色 いろはちゃんと一緒に食べられるんですよ!さぁハリーハリー!」

「しらん。他を当たれ」

「他の方々はツレがいますから。その点、せんぱいは……ね?」

「うぐっ」

「解ったらさっさとしていください。お腹すきました」

 

自称受付のめがみは腹黒い笑みを浮かべて、メニュー表も見ずに勝手に注文し始めた。当に諦めていた俺は、ついでと言わんばかりに自分が食べる分の料理も注文する。

 

「せんぱい、ご飯がくるまで暇です。なんか面白い話をしてください」

 

「ばっかおまえ、ボッチには言ってはならないランキングトップスリーに入る文句を言いやがったな」

 

「意味わかりません。まったく、男なら面白い話の一つぐらいできないと駄目です」

 

「ふん、なら一つ話をしてやろう。俺の友達の友達の話なんだが」

 

「あ、それ先輩の話ですよね。面白くなさそうですから止めてください」

 

「……なら俺にどうしろと」

 

「そうですね……なら、私と会う切っ掛けになったクエストの話をしてください」

 

「……めんどくせぇ。飯おごってやるから黙って待っとけ」

 

話したくないわけではない。だが、これでは自慢話をするのと変わらないのではないかと、尾を引かれしまう。

 

「……私、知りたいんです。なんでせんぱいがあんなクエストを受けたのか。なんで助けてくれたのか」

 

先刻までのふざけた雰囲気ではなく、何処か真に迫った表情に自然と「断る」という選択肢が消されていく。

 

「わかった。少し時間かかるぞ」

 

「構いません。もう仕事終わってますし」

 

「そうか。そうだな……何から話そうか。とりあえず、あの頃の俺は───」

 

俺はゆっくりと、一色と出会い、助けることになった事の顛末を思い出しながら、話始めた。

 

 

 

 

 

 

        ***

 

 

 

 

 

 

 

あの頃は平塚流の技術を修得し、一人立ちしたばかりだったため、修行も兼ねて身の丈よりも少し上のクエストに挑んでいた。

 

リオレイア、ディアブロス、ガノトトス、ラギアクルス。飛竜というカテゴリに属する強敵に、鍛え上げた技術がどこまで通用するのか、限界を探っていた。そして、ある真昼時。『起きて狩りに行って帰って寝る』という生活を送り続けて一週間近く経過し、集会所で空っぽになった胃に食糧を流し込んでいる最中、ある人物から直々に依頼を申し込まれる。

その人物は年老いた女性で、防寒として藁で編んだ帽子を被り、寒冷地に住むモンスター、ポポの毛皮等を利用した厚手の服装をしていた。年を重ねているためか、背筋は曲がり、背丈は低い。一見、ひ弱そうに見える婆さんだが、実際は村長という大役を勤めているのだから驚いたものだ。

 

「お主、話を聞いておるか?」

「ん、ああ、はい。聞いてますよ」

「ならワタシが言ったこといってみてくれや?」

「あー、あれあれ。うん、あれですあれ」

「ふぇふぇふぇ。クソガキが。次はないよ?」

 

優しい物腰だった目線は飛竜と匹敵する重圧のあるものに変わった。

 

「すみませんでした聞いてなかったですだから殺さないで!」

 

俺の誠心誠意、なんなら靴なめも余裕な勢いの謝罪に満足したのか、ふありと、元の優しい雰囲気を醸し出す。

 

「そんな物騒なことしないよ。仕方がないの。じゃあ次はしっかり聞いとくんだよ」

「イエス、マム」

「先週、ココット村からワタシが村長を任されているポッケ村に森丘を経由して貿易商団をよこすと連絡が来ていたのよ、でも

到着予定を三日も過ぎてる。ワタシの孫が同行してるから迷うことはないはずなんだけどね。何か嫌な予感がするのよ。だから」

 

「俺が確認してこいと」

 

「うむ。その通り」

 

面倒だ、と僅かに思うが、それ以上にこの依頼は受けたいと切に願った。

肉親を殺される、贄にされる苦しみ。俺のような思想を持ちはじめる者を止められるなら、止めてやりたい。でなければ、そうなってしまった者を見るたびに自己嫌悪しに陥ってしまう。これは、俺が俺のためにこの依頼を受けなければならないのだ。

だが、懸念すべきことがある。

 

「俺なんかでいいですか? 高確率で飛竜に襲われていると思いますよ。もっと高ランクのハンターに頼んだ方がいい気がするんですけど」

 

一応下位クラスの中では上位に位置すると自負しているが、今回のような緊急事態は名の売れたハンターに任せるものだ。下位クラスで二つ名を持っているわけでもない俺ではなく、上位クラスのハンターに頼む方がまだ安心できるはずだ。

 

「問題ないよ。お前さんの格好が良い証拠さ。腕を上げたね」

 

村長が指しているのは俺が新調した防具。ナルガクルガという飛竜種に属するモンスターから作られた防具の事を言っているのだろう。確かに、ナルガクルガは他の飛ぶ竜種と比べ、頭一つ抜けているモンスターだ。この防具を装備していれば、そのモンスターを幾度となく狩ってきた証明になっている。つまり、村長は真に俺の実力を認め、今回の依頼を頼みに来てくれたという事だ。

ルーキーの頃からお世話になっている村長から認められるのはやはり嬉しい。そして、その期待に応えねば平塚流派の者では無いだろう。

 

「……わかりました。今から行ってきます」

「ふぅむ。準備してからでもいいんだえ?」

「いえ。村長自らドンドルマまでいらしたんですから。今すぐに行かさせて頂きますよ」

「そうかえ、そうかえ。気を付けて行ってくるんだよ」

 

「うっす」

軽く頭を下げ、村長から渡された依頼書を強く握り、受付へと向かった。しかし、見渡せば下位クラスを担当している受付嬢は姿はない。常に笑顔で座り続け、俺達ハンターの向日葵である受付嬢がいない事に唖然とする。彼女達は自身の仕事を誇りに思い、決して仕事は疎かにしないのだ。

だが、そのポリシーに反して、カウンターに彼女はいない。

何か問題が起きたのだろうかと勘繰っている合間に、ぱたぱたと足音をたてながら馴染みの受付嬢が姿を現した。

 

「お待ちさせてすみません! 取り急ぎ準備させて頂きますね!」

 

慌ただしくカウンターに座り、謝りながら作業を開始するという荒業をこなし、客である俺に向かって何時もの笑顔を向けてきた。

 

「あー、いや、大丈夫ですけど、なんかあったんすか?」

 

俺の問いに乾いた笑い声を出し、小声で話始めた。

 

「……実は、ドンドルマに在籍していた受付嬢の何人かをお偉いさんが地方に飛ばしちゃったんですよ。お陰様で忙しかった仕事はもう手が終えられない状態で……」

 

「はぁー。大変すっね」

 

「もう本当にね……って、ご免なさい! お客様に愚痴なんかこぼしてしまって!」

 

「いや、此方から聞いたんですから、答えてくれて嬉しかったですよ」

 

何時も無視されるからなと、続けてしまいそうになるが、どうにか踏み止まる。ボッチであると公言してしまうのやはり避けたい。いや、俺もボッチであることを誇りに思ってるよ?でもほら、能ある鷹は爪を隠すって言うじゃん。だからボッチはボッチであることを隠すんだよ。うん。間違ってない。俺は間違ってるなんて認めないからな。

 

「えっ……そ、そう? その……ありがとう?」

 

「お礼を言われる事はしてないんですけどね」

 

「あははっ! そこはどういたしましてって言ってよ!ひねくれてるなぁ」

 

「ガキなんで無理です。つか、依頼の発注いいっすか?」

 

「あっ、ごめんなさい! では、依頼書をお願いします」

 

右手に握りしめていた紙を受付嬢に手渡し、次々と発注手続きを進めていった。

俺の場合は例外を除き、基本はソロで狩るため、面倒な手続きはなく、トントン拍子で進み、三分たたずに手続きを終えた。

 

「では、クエスト出発出口の前にアプトノスを待機させています。お気を付けていってっらっしゃいませ……帰ってたらお食事でもしようね」

 

「……うっす」

 

テンプレートな最後の挨拶とあまり聞きたくない一言を聞きを終え、俺は森丘へと向かった。

 

森丘は火山や雪山といった過酷な狩場ではなく、比較的な楽なものになっている。しかし、山高く聳える丘に囲まれている点や自然豊かな場所であるが故に凶悪なモンスターの棲みかとなること事が多くある。

村長の話から予測するに、この森丘に住み着いたモンスターに襲われている可能性がもっとも高い。森丘に多く現れるのは空と地の番井竜。リオレウスとリオレイアだが、新たに電撃を放つ新種の飛竜がこの森丘近辺で確認されたらしい。

仮にその新種と対峙することになれば苦戦を強いることになるだろう。だが、これも修行の成果を確認するクエストになる。

強敵を望んでいるようで、拒んでもいる。相反する気持ちではあるが、実際にそうなのだから仕方がないことなのだろう。

 

今後のことに思考を張り巡らせていると、森丘のベースキャンプに到着した。アプトノスにくくりつけている縄を手頃な木に縛り、ポッケ村の村長が準備してくれた配給品をポーチの中に詰め込む。

 

雲一つ無い空に暖かな陽射しが森丘独特の自然の香りを引き立てる。狩場ではなく、レジャー施設ではないかと、疑ってしまうほどに、穏やかな雰囲気を感じ取った。

 

何処までも続く蒼空を眺めていると、雪ノ下と小町の顔が脳裏に浮かぶ。

 

俺がハンター業に就くと明かしたあの日、小町は唖然とし、雪ノ下は巌に認めてくれなかった。

 

お前では務まらない。

逆に足手まといになるのだから、商人にでもなっておけ。

 

俺の意見意義抗議何一つ通らず、彼方側の考えのみを承諾する形で話は終わった。

 

だが、結果は話し合いの結末とは違う。

 

俺は表向きとしては商業を営み、各地方を転々としている。しかし、裏ではモンスターハンターとして、日夜狩りに勤しんでいたのだ。

雪ノ下が本心では俺の事を心配してるというのは解っている。それでも、家計を回すには、あの日の誓いを守るには、どうしてもハンターになる必要がある。

 

狩り道具は商売物だから触るなと隠し、狩り終えて、家に帰る前に武装は積み荷に隠す。手間は掛かるが、それでもバレずに日々を過ごしてきた。

平塚師匠に住み込みで弟子入りする際も、やり手の商売人に腕を鍛えて貰ってくると言い残して、家を出た。友人でしかない雪ノ下に、幼い我が妹を任せるのは人として最低の行為であったことは自覚している。

 

そうする他はなかった、なんて言葉は言い訳にすぎない。

 

どんな形であれ、安全地帯から年端もいかない女をボロ家に連れ出し、二人を家に残し、友人に妹の世話を押し付けたのだ。この罪は一生涯、命に変えても彼女らを守ることでしか清算できないだろう。

 

そして、守るためには力がいる。

 

力無き者の宣言は毛ほどの重さもない。

 

力を得るためならば、喜んで嘘をつこう。仮面を張り付けてやろう。

だが、家族と友人に虚偽を申し立てるのは俺も彼女らも不利益で不条理な事だ。だから、ハンターとして一人前であると言われる上位クラスに上がれば、ハンターをしていると告げると決意した。

 

俺が猛者になれば、俺がハンター業に就く事を雪ノ下も認めてくれるはずだ。

高額の報酬を得ることができて、小町と雪ノ下を守る力も手にはいる。雪ノ下も俺の力を証明するものがあれば安心するはずだ。

そのために、一人で詰まったいた俺を救ってくれた師匠には、礼の言葉しかない。

 

 

 

脳裏によぎった小町と雪ノ下の顔から連想された、上を目指すと誓った、誓うことを迫られた出来事は、今でもやはり、鮮明に覚えていた。

 

いや、忘れるはずもない。

 

だからこそは俺は平塚師匠に鍛えてもらい、この技術を会得し、今日も「狩場」にいるのだ。

 

次々と思い出されたあの日の出来事を頭から追い出し、遠くに聳える巣窟を目を向ける。すると、馴染みのある爆発音と聞き覚えのある咆哮が俺の耳に届き、安穏とした空気を一瞬で掻き消した。

 

そうだ。決しては此処はレジャー施設なんかではない。

危険に満ち溢れ、俺の人生を掛けるべき戦場なのだ。

 

全ての準備終えた俺は、音源のもとへ駆け出した。

 

 

 

 

        ***

 

 

 

 

「と、まぁ、こんな感じで、あのクエストを受けたわけだ」

 

「なるほど。お婆ちゃんが直接せんぱいに頼みに行ったんですか」

 

「おう」

 

「これがもし、他のハンターだったらと思うとめちゃくちゃ怖いです……」

 

「いや、別に、俺じゃなくて助ける奴もいだろ」

 

「奴『も』、ですよね。実際、あの状況で私を助けに動く人は希ですよ」

 

「……。」

 

「だから、お婆ちゃんにももう一度お礼を言っておきたいと思います。せんぱいに頼みにいってくれてありがとう、って」

 

「……あっそ」

 

「もちろん、せんぱいには感謝してますよ? 本当にありがとうございました、せんぱいっ」 

 

「もう何回もお礼言われたわ。まぁ……なに? どういたしまして?」

 

「もー、なに照れてるんですかっ。それに最後疑問系だし」

 

「やかましい。照れてねーし。久しぶりに人と話してテンション上がっただけだから。それにお前だからって助けて訳じゃねーし」

 

「それはそれで引きますよ。それにって、あれですか? 私には気がない振りをしてるんですか? 逆にかまってちゃんみたいで気持ち悪いですよ。普通にしててもキモすぎて私しか貰ってくれる人いないんですから、そこは『いろはだから助けたんだよ』って言えばいいんですよ。馬鹿なんですかアホなんですか。女性の扱いがなってない人は嫌いなのでごめんなさい出直してきてください」

 

「えぇ……なんで俺またフラれたの。もうやだコイツ」

 

「まぁまぁ。料理がくるまでもう少し時間ありますし、話の続きしてくださいよ」

 

「いや、こっからはお前も知ってるだろ」

 

「せんぱい視点で聞きたいんです、そんなことも解らないんですか」

 

「へぇへぇ、承りましたよ」

 

「聞き覚えがいいせんぱいは好きですよっ」

 

「言ってろ」

 

「あ、また照れた」

 

「んんっ! さて、お前と出くわした時から話すか」

 

「せんぱい、顔、赤いですよ」

 

「……あの時は───」

 

「せんぱい、かわいいです」

 

 

 

 

 

        ***

 

 

 

巣窟にたどり着いた俺は、一つの選択を迫られていた。

 

ランポスの群れに襲われている娘を助けるか、見殺しにするか、だ。 

 

迷う余地もないだろうと、思われるだろうが、厄介なことに一つ問題があったのだ。

 

「グ、ガ、ガ、ガガガガァァァァァァ!!」

 

それは紫色の堅牢な甲殻に包まれた飛竜が此方に向かって敵意を出している事だ。

姿形は新米ハンターの登竜門とされている怪鳥 イャンクックと酷似している。見た目の大きな相違点としては発達した隆々の脚力に耳の形、色合い、そして首元のある純白の毛が生えている事ぐらいだろうか。

 

だが、こと獰猛さに関しては雲泥の差がある。

 

イャンクックのように啄む攻撃等はその発達した脚力によって回避しても追尾される。そして、何よりも驚くのは、攻撃パターンの一部が雌火竜 リオレイアと似ていることだ。尻尾に蓄積されている毒をサマーソルトで射し込んできたり、イャンクックのような優しい火球ではなく、リオレイア同様の荒々しい火の球を放つ。

そして、たちが悪い事に、このモンスター イャンガルルガは知識が高い。

罠をはっても破いたり、嫌なタイミングで攻撃をしつこくつづけてきたりと、類似する二つのモンスターよりもやりにくい相手であるのは間違えないだろう。

 

辺りを見渡せば、何故だが立て込もっているはずの商隊の姿はなく、いたのはランポスに襲われている女性のみ。

 

今回のクエスト内容は商隊の発見及び救出。彼女を見殺しにしても依頼内容には差し支えはないだろう。

それに、今イャンガルルガに背を向ければ、あの強靭な脚で踏み潰しにくるに違いない。今彼女のもとに走ってしまえば、逆に危険に晒してしまうのだ。それならば、俺がイャンガルルガの気を引き付け、彼女には自力で脱出してもらう方が安全だ。

 

 

そう、頭では理解していた。

 

 

ハンターとしての本能なのか、あの大魔王から『理性の化け物』と呼ばれた俺の自制心は働くことは無く、本能が体を突き動かした。

 

今助けねば彼女は死ぬ。

 

直感的にそう思ったのだ。

 

動きを見せないイャンガルルガを横目に、俺はランポスの群れに襲われている女性の元へ走った。

ランポスを殺している暇はない。ランポスの追撃を掻い潜り、どうにか女性の元までたどり着き、問答無用で腰元に抱える。

 

直後、眼前には紫色の刺々しい甲殻が映る。

考える暇もなく、あの地獄の経験が俺にこうしろと、命令した。

身体を空中でうねらせ、間一髪の処でイャンガルルガの攻撃を避ける。

そこからはひたすら無我夢中で別のエリアに向かって走った。

 

何段もの崖を一段ずつゆっくりと降り、また、ベースキャンプの方へ走る。

一心不乱に行動していたため、腰に抱えていた女性が離してくれと、言っていたことことはベースキャンプに戻ってくるまで気が付くことはなかった。

 

「あ、えーと、悪かったな。いきなり」

 

「い、いえ!! 見ず知らずの私なんかを助けて頂き、ありがとうございました! このお礼は必ずさせて頂きます」

 

「いや、別にいい」

 

「そういう訳にはいきません。あ、お名前、教えていただけませんか?

私は、一色 いろはと申します」

 

 

その女性───一色 いろはと名乗った深々と頭を下げた。背丈は俺の肩ぐらいまでで、小動物に似ているような、可愛らしい女性であった。髪はボブカットで短めに揃え、服装も細部に渡って整えられていた。

まぁ、あの状況で服や顔に泥がつき、現在の見た目では、『整えられている』というのはおかしな話だが。

それでも、可愛らしいと、感じるのだからきっと元の姿は本当に可愛いのだろう。

 

「俺は比企谷 八幡だ。ポッケ村の村長から依頼を受けてきた。商隊はどうなっている?」

 

「お婆ちゃんから頼まれたのですね。商隊の方々は、私が商品として取り扱っていた大タル爆弾を使って、モンスターの気を引き付けいる間に逃げてもらいました」

 

一色のさも当然と主張している言葉に絶句した。

雪ノ下とそう変わらないだろう年頃の女性が、何の武装も、狩り知識も無いだろうに、あのイャンガルルガとランポスの群れに立ち向かったと言うのだ。

その勇気に称賛しない者はいないだろう。

しかし、何よりも怒りが湧き出てくる。

 

彼女、一色いろはにではない。商隊の大人達にだ。

 

奴等は自身が助かるために彼女を贄にしたのだ。奇しくもあの時の村人達のように。

唯一救えるのは、父のように死んだわけではなく、無事に生きながら得たことだ。

彼女の事を想う人は多くいるだろう。両親や兄弟、友人。恋人だっているのかもしれない。

その人達を俺のような闇に引きずり込まれずにすませられた。この事は俺の何よりのもの修行の成果だ。

 

「一色。とりあえず、お前をドンドルマまで送り届ける。いいか?」

 

「はい。お願いします。それと、何かお礼をしたいのですが……」

 

「だからいらんと言ってる」

 

「それは無しで」

 

「……なら、敬語を止めてくれ。年も近いはずだからな」

 

「それは無理です。命の恩人に対してそんな無礼な振る舞いは出来ません」

 

「別にお前だから助けたんじゃない。それになんだ、気にせずに普通にしてくれ。それに、少しくらい俺の方が年が上だからな、人生の先輩として助けたまでだ」

 

「……プッ……アハハハハッ!」

 

「……。」

 

「なんですかそれ、男がツンデレやっても気持ち悪いだけですよ。むしろ気持ち悪い過ぎて吐きます」

 

「おまっ、命の恩人に対してなんて言いようだ」

 

「そっちが気にするなって言ったんじゃないですか。でも、私は教育がなっているので敬語は止めません。それに人生の…ププッ……人生……ククククッ」

 

「もう笑えよ」

 

 

「アハハハハハハッ!」

 

「お前まじいい性格してんな」

 

「すみませんね、『せんぱい』!」

 

「俺の黒歴史を引っ張り続ける気か……もういい。さっさと帰るぞ、一色」

 

「はいっ。しっかりと守って下さいよ、せんぱい!」

 

「しまいにゃイーオスの群れに放り込むぞ」

 

「ひどーい! あっ、待ってくださいよ、せーんぱーい!」

 

俺は後方に振り返らず、さっさとアプトノスの背に股がったのだった。

 

 

 

 

森丘からドンドルマまで帰宅するのには時間はそう掛かからず、日が沈む前には集会所に到着できた。

俺達が帰ってくる事を知っていたのか、ポッケ村の村長は出口で佇んだいた。

 

「お帰り。よく無事に帰ってきたね、二人とも」

 

「お婆ちゃん、商隊の人達は?」

 

「もう帰ったよ。君の孫が助けてくれたと言い残してね」

 

村長の声には少なからず怒気が含まれ、体は震えている。それも納得がいくものだ。奴等が言ったことは「テメーの孫、囮に使って悪かったな。じゃまた今度」という内容と変わらない。

憤慨しない方がおかしいだろう。

 

「ハンター殿、孫を助けてくれてありがとよ、本当に、本当に助かった」

 

「……うっす」

 

「さて、二人ともお腹空いただろう。この後食事でもどうたい?

 

「うん、食べる!」

 

「あー、俺は……」

 

「ダメですよ、せんぱい! 一緒に食べましょう!」

 

「わーかったよ、とりあえず、依頼完了してくる。待っとけ」

 

「逃げられたら困りますから、私も付き添いますっ」

 

「俺は囚人か。逃げねーよ」

 

重たい足取りでクエストカウンターに行けば、昼頃と同様に、受付嬢の姿はなかった。

 

「いま……せんねぇ」

 

「忙しいんだろ」

 

すると、数分後にはやはり、昼頃と同じく、トタトタと音をたてながら三つの動作を同時に行い、謝ってきた。

 

「お待たせしてすみません!……あっ、面白い人!」

 

「面白い人ってなんすか……」

 

「あははっ、いーじゃん別に。それよりも、また待たせてごめんね」

 

「いや、忙しいんでしょ。仕方がないっすよ」

 

「もう本当にいそ……ね、その子誰?」

 

受付嬢は俺の横で不機嫌にしている一色に指を指した。

俺が答えるまでもなく、即座に応戦するようにして、一色は名乗った。

 

「一色いろはです。八幡せんぱいに命を助けて貰った者です」

 

「へぇ……ね、一色さん」

 

「はい」

 

 

 

 

 

「受付嬢、してみない?」

 

 

これが、ドンドルマの女神、受付嬢 一色いろはの誕生する瞬間だった。

 

 

 

 

        ***

 

 

「って感じだったよな」

 

「そうですね。あの時リーナ先輩から誘われなかった受付嬢なんてしてないと思います」

 

「ま、俺へのお礼ってことで受付嬢になったのは正解だったんじゃねーの」

 

「そうですね。今とても楽しいですから!」

 

「……さよか」

 

「はい! それにしても、ご飯遅いですね」

 

「そうだな、もう小一時間たってるだろ」

 

「私、少し見てきますね」

 

「おう」

 

一色はカウンター裏へ走って行くが、何を思ったのか、途中で引き返してきた。

 

「おいどうし……ぐおっ」

 

俺の問い掛けに答えることなく、俺の胸元に突進、タックルをかましてきた。それをどうにか受け止め、踏みとどまる。

 

一色は俺の背に腕を回して、唱えるように呟やいた。

 

「せんぱい。今の私があるのはせんぱいのお陰です。本当にありがとうございました」

 

「……おう」

 

一色はゆっくりと俺から離れ、にっこりと微笑む。

 

 

 

 

 

 

「これからもよろしくです! せーんぱい!」

 

 

 

思い返せば、一色との出会いは、余りにも衝撃的であった。あんな死地で、俺と一色が出会うこと事態が間違っているのだ。

 

だが。彼女の笑顔を見て、あの時の選択が正しかったと思うのは、やはり、間違っていない。

 

 

 

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