Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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三十一話

「君、大丈夫かい」

 

「あ、ああ」

 

 アルの剣を止める手を離さず、顔だけをこちらに向けて爽やかな笑顔で俺の安否を確認してきた。その顔はあの葉山と似て非になるもの。心の奥底から偽りなく他者を労わる気持ちが伝わってくる。何も、葉山が悪者という訳ではない。しかし、集会所で、人に囲まれている中での葉山の笑みはまるで笑顔を杭で打ち込まれている様に俺は感じていた。偉大な父の息子だからなのか。奴は常にプレッシャーを背負っているのだろう。

 世界最強と謳われる男をまえにして、俺は葉山のことを思い出していると、プリシラの怒気が籠った声が彼に向けられる。

 

「貴様、妾の邪魔をするか」

 

「それが正義なら」

 

 プリシラの圧力を受けながらも、淀みなく、受け答えてみせた。それがどれほど凄いのかは先ほどまでの自分が解っている。

 舌を鳴らして、プリシラは玉座へと足を進めた。靴底から高い音をあげ、椅子に腰をかければアルに指示を飛ばす。しかし、その内容はあまりにも実現不可能なもの。

 

「アル。そいつを殺せ」

 

「おいおい……姫さん、それは俺じゃできねぇよ。老山龍を十匹くらいつれてくるしかないだろうよ」

 

「たかだか世界最強に何を手こずっておる。妾の騎士ならなんとかせい」

 

「だから無理だっつーの……」

 

「ふん。妾の騎士ならこ奴くらい倒さぬか」

 

 むすりと機嫌を悪くしながら、アルに無理難題をいうプリシラはゆっくりと玉座に戻っていく。俺の首を撥ねようとしていたアルは己の獲物を背に掛け直し、放っていた殺気は霧散させ、日頃のだらけた雰囲気を漂わせた。兜を被っているため表情は伺えないが、安堵しているように感じ取ることができる。それに呼応するように俺と彼―――ラインハルト・ヴァン・アストレアは顔を合わせて笑う。もっとも俺はひき笑い、ラインハルトの様に爽やかに笑うことはできていないのは常項である。

 ラインハルト・ヴァン・アストレア。「騎士の中の騎士」と謳われる彼は西シュレイド王国の騎士であり、隣国、つまりは東シュレイド共和国からもその腕を認められるほどの使い手である。正確にはラインハルトの家系は皆、強者(つわもの)揃いのため、アストレアという名が畏怖の対象になることもある。だが、ラインハルトは群を抜いて強い。老山龍到来による防衛線の際、総勢力160名の中、一人で戦力の七割を担っていたほどだ。防衛線参加者は皆腕に自信がある者ばかり、個々が弱いなんてことはない。何故、ラインハルトが天下無双の強さをもつのかといえば、それは恵まれた身体能力に判断力があるからというのもある。だが、さらに助長させるのは腰に下げている剣、旧シュレイド王国建国当初から引き継がれる伝説がそこにある。

 人間に「力」を与えたとされる龍は己の一部を剣に変え、旧シュレイド王国の王に渡したとされていた。それが、今ラインハルトの手元にあるという訳なのだ。

 

「さて、色々と理由があると思うけど彼の身柄はこちらが預からさせてもらうよ」

 

「……勝手にするがよい」

 

「だとよ、姫さんの気が変わらないうちにさっさと行くのが吉だぜ、兄弟」

 

「あ、ああ」

 

「そうだね、では失礼させてもらうよ」

 

「川崎、いくぞ」

 

「え……あ、ちょっと!」

 

 完全に空気と化していた川崎の手を引き、不服そうな表情でこちらを見るプリシラを尻目に、ラインハルトと共にこの場を去った。

 

 

 

「さて、君達はこれからどうするんだい?」

 

 豪邸をあとにして、商店街に入り込んだ頃に、ラインハルトから今後の行方を問われた。

 ドンドルマ中心部のように人々の熱気で賑わっているが、違う点がいくつかある。まず、種族の多様さがドンドルマと比べて格段に高い。竜人族、獣族といった人間だけではない者が勃興している。それは異種族との交流が問題なくできているという証拠であり、この国の器を体現している。赤レンガ造りの建物に囲められた道は野菜売りから鍛冶屋まで、数々の店が所狭しと並び立ち、そのさまは以前行われた祭りを彷彿させた。それほどまでに、この国は活気づいているのだ。人ならざる者も上空で輝く陽光が守護しているかのように、人々は皆顔を綻ばせている。

 これからどうするのか。正直、皆目見当がつかない。もともとプリシラ頼みの計画であったため、根本から計画倒れになってしまっている。高収入かつ高ランクの依頼を受けるあてがない。これでは俺はもちろん、川崎の目的は達せられない。

 

「どうするのよ」

 

「あー……正直な話、どうもこうもないんですよ。プリシラ様と交渉決裂した瞬間から路頭に迷うことになったんで」

 

「あははは……君達は中々にギャンブラーだね。でも、無事に帰ることができたのだからよかったよ」

 

「どういうこと?」

 

 苦笑いのような表情のラインハルトをみて、川崎は訝し気に軽く首をかしげながら問いてくる。その質問に答えるのは俺がいかに説明不備でここまできたのかが露呈してしまうので答えたくはない。ないが、説明せざるえない。せめての抵抗として遠まわし気味に伝える。

 

「プリシラ様の機嫌を損ねた奴は皆空の上か、地の下にいってる」

 

「……それってつまり、皆あの世にいったってことでしょ!?」

 

「ま、まぁそうともいう」

 

「そうともいうって……もしこのラインハルトさんが助けてくれなかった絶対死んでたでしょ……」

 

「やめてくれ、僕は彼――スバルから頼まれただけだよ。スバルが僕を信じ、託したからこそ助けることができたんだ」

 

「スバル?」

 

「ああ、プリシラ様の豪邸でピンチになっている二人を助けてくれと。君はスバルの友人ではないのかい?」

 

「そもそも『スバル』って名前の人を知りませんね」

 

 スバルと呼ばれる男がラインハルトを助けにむかわせてくれたらしいが、俺はその名に聞き覚えはない。

 

「なるほど。この件は後でスバルと君を会わせれば……すまない、自己紹介がまだだったね、僕は――」

 

「ラインハルト・ヴァン・アストレアさん、貴方の名を知らない人はいませんよ、特に――あの防衛線にいた人の中でね」

 

 ラインハルトが先に名を言う前に俺が言い当てると、眼を開き、少しばかり驚いた顔をみせる。それは俺が名を言い当てたからではなく、その後の言葉。俺があの防衛線にいたということに驚いたのだろう。

 

「そうか……君もあの防衛線にいたんだね」

 

「ええ、その節は色々と迷惑をおかけしました」

 

「もしかして君はあの時、クルシュ様ともめていた?」

 

「はい」

 

「……そうか、君だったんだね。迷惑なんてとんでもない、君があそこで勇気をもって発言してくれたからこそ、犠牲者がでなかったんだ。僕ではできなかったことだ、むしろ誇るべきだと、僕は思うよ。なにより、君にあんな役割させてしまったことが情けない……」

 

「やめてください。俺がやったことは所詮他力本願の悪巧みを口にして場を混乱させただけです、むしろ、場の空気を壊したまである」

 

「そうだったとしても、君の作戦によってたくさんの救われた人々がいることには変わりはないことだよ」

 

「ちょっと、私をのけ者にしないでくれる?」

 

 川崎には意味の解らない話を繰り広げていたからか、ヘルムの下から拗ねた声が聞こえてくる。

 

「ごめんね、貴女は彼の友とみていいかのかな、『魔女』さん?」

 

「友達じゃなくて契約者って感じよ、騎士の中の騎士と謳われるラインハルトさんに知ってもらえているなんて恐悦至極だね」

 

「こっちでも有名になっている。なにせ、一人でリオレイアを狩ったんだ、貴女の名は僕たち騎士の中でも噂になっているよ」

 

 ほう。リオレイアを一人で狩ったのか。

 川崎の実力は予想以上に高いらしい。バックアップがメインとなる狩猟笛でリオレイアを一人で狩るのとアタッカーが一人で狩るのでは訳が違う。それは二つ名もつくわけだ。

 ラインハルトのリードのもと、アスファルトをまっすぐに踏み続け、商店街から抜け、小川が流れる静かな路地を歩いている時だった。前方に異臭漂う三組のハンターがなにやら喚き散らしなら争っている。青髪の麗人、いや、女神かのような女性は涙を流しながら生臭い、生臭いと呻き、ハンターシリーズで身を固めている至って平凡な男は小さな少女をおぶっている。いや、しがみつかれていた。

 

「いやいや、一日一発しか、竜撃砲しかうてないガンランサーとかないわー!」

「えへへへ、えへ、えへへへへ」

「おい離せ! お前他のパーティでも捨てられた口だろう! 離せ、離せって!つーか、小型モンスター狩るときとか竜撃砲とか使わなしいよいよ役立たずだろう!」

「何処のパーティも拾ってくれないのです! 荷物持ちでもなっっでもします! お願いです、私を捨てないでくださいー!!」

 

 その有様はまるでやることだけやって捨てる屑男と乗せられてしまった可哀想な少女が捨てられているようにしか見えない。さらに言うならば、女神のよう女性が屑男の妻であり不倫現場に居合わせたような、なんともカオスな状態となっている。

 

「ねぇ、前の男、小さい子捨てようとしてない?」

 

 川崎は軽く引き気味にそう呟き、

 

「隣には粘液まみれの女性もいるな」

 

 俺はそれに言葉を乗っけた。

 

「む、詮索はいけないが、彼は彼女達に何か危害でも加えたのかな?」

 

「ち、ちがーーーーう!!」

 

 俺達三人は彼等彼女らの行く末を見届けるため、立ち止まっていると、ハンターメイル装備の男から俺たちの推論を大きな声で否定された。その時、しがみついていた少女が邪悪な目を灯していたのに気付いたのは俺だけだろう。

 

「どんなプレイでもっ、フルフルべビーを使ったプレイでもっっ!! なんっでも大丈夫ですか――」

 

「わ、わーかった! これからよろしくな!!」

 

「カズマー! カズマー! お風呂に入りたいよぉぉおお!」

 

 少女の口からとんでもない言葉が出され、それを急いで塞ぐ男の様はやはり屑男のそれにしか見えない。しかし、俺のセンサーが言っている。一見、あの男が元凶にみえるがそれは逆だ。彼は彼女らの負を背負う男なのだと。そそくさと路地に消えていく三人組をみて、俺はハンターメイルの男の未来に幸があることを祈る事しかできない。

 どたばたとした騒動を前にしてあのラインハルトですら目を丸くしていた。彼等が消え、静けさが戻った時、軽く苦笑いしながら咳き込み、俺達にとびきりのの案を提示してきた。

 

「さ、さて、君達がもし、この後時間があるというなら僕から依頼を受ける気はないかい?」

 

「受けます」

 

 俺はその提案を二つ返事で返した。依頼内容がどうであれ、王国騎士団からの直接、それも指名依頼が受けられるとなればプリシラからの依頼よりかはランクが下がるが目的は果たすことができる。これはラインハルトの善意で出してくれた依頼だろう。事前に調査や試験もなく、王国騎士団から直接依頼を受けることはまず不可能。しかし、今その不可能なことが起きている。

 王国騎士団からの依頼は生半可なものではない。だからこそ、報酬額は通常のものよりも破格であり、依頼遂行内容次第では騎士団入隊の切符が手に入る。

 つまり、これは試験。

 ラインハルトは俺たちに、いや、俺に依頼という形で試験を提示してきたのだ。これをクリアできる実力があるのかと。

 川崎に聞きもせずに受けると言ったが、嫌と言われればソロでも受ける。それまでに、この機会を逃してはいけない。だが、横目に川崎をみれば肩を落とし、ため息を吐きながらも反対するそぶりはない。

 

「なんでアンタは勝手に決めるかな……ま、受けるけどね」

 

 

「ははっ、即答かい。うん、じゃあ頼もう。依頼内容は―――『金雷公』と『白疾風』の同時狩猟だ。期間は四日後まで、依頼主であるユクモ村の村長には鳩を飛ばしておくからすぐにでもいった方がいいと思うよ」

 

 

 すいませんやっぱ止めときます———なんて言葉を喉元でどうのにか飲み込む。

 難しい依頼であることは理解していたが、まさか四日という短すぎる期間があるとは思わなかった。今から直ぐにユクモ村へいったとしても移動に二日はかかる。つまり、実質的な狩猟時間は一日だ。

 『二つ名』モンスターをたった一日で二体とも狩る。頭がおかしい内容だが、頭がおかしい連中に仲間入りをするにはそれも道理だというもの。凡人の能力しかない俺がこの依頼をクリアするには今この瞬間を無駄にしないことだ。

 

「川崎、行くぞ。飛行船なんてトロいこと言ってられない。馬車で向かう」

 

「ちょ、まって! もう……いきなりすぎるんだけど!」

 

 笑みを絶やさないラインハルトに対して挨拶もせずに去ってしまったことはもう些細なことだ。一分すらおしいこの状況下で、川崎が文句を言いながら俺の後ろをついてきてくれているのに感謝せざるえない。

 城下を走り抜け、手頃の馬車に乗り込む間、俺はこれから起こるであろう困難に目をくらましながら笑った。

 

 





 近頃本SSを読み直してみて私は思いました。
「この葉山の面をかぶったキャラクターは何者なのだろうか」と。
いやいや、これ葉山じゃないでしょ。原作のキャラ崩壊がマジぱねぇ。っべー、まじっぺーだわ。
 そんな戸部風にどん引きしてしまったため、本SSにおける葉山の立て直しを図りましたので、よろしければ読み直しをお願いしたいです。
 いやいや、面倒だわ。と思われる方もいると思いますので大雑把に説明すると「
ゆきのんは俺のことが好きに決まっている、俺とゆきのんマジラブラブだから。なんて妄想は消え去り、云うところの『皆の葉山』なる思考回路になっている」
 というものです。
 訂正日時H29年 7月13日ですので、期日以降に読んでくださった読者の方はそのまま読み進めてくれると幸いです。
                                   敬具
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