株式会社 鎮守府   作:不可

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12. 意外に優秀な龍驤ちゃん

所変わって執務室。今ここに入ってきた俺と筑摩、球磨と龍驤を迎えるように大淀が立っていた。

 

「おかえりなさい、提督」

「ただいま、大淀」

 

 まるで熟年夫婦のようなやり取り。だが相手の見た目はうら若き乙女な上に傾奇者もびっくりな助平スカート装備。

 しかも実年齢というか、艦娘としての活動期間はまだ二年もないというとんでもない違法ロリだ。いや、ペドか。

 

「むー! 球磨もいるクマ!」

「まぁまぁ。あんま人のイチャイチャに手ぇだすモンやないでぇ? イヒヒッ」

「大淀さん、ただいま戻りました」

 

 けったいな妄想をしてしまったからか、球磨から可愛らしい不満声が上がる。龍驤も妙なツッコミを入れているが、筑摩は何事もないかのように大淀に挨拶をしている。

 

「はい、おかえりなさい、筑摩。それと球磨も。買い出し任務お疲れ様でした」

「お? お? 無視か? 図星刺されたからって無視はアカンでぇ、大淀ぉ?」

 

 なんで龍驤はこんなにテンションが高いんだ。

 とにかく俺は一旦自分の執務机に戻る。空気を読んだ筑摩が、入室した扉に鍵をかけてから秘書艦室に戻っていった。

 

「茶番はここまでにしとこう。そろそろ大淀が切れそうだ」

「龍驤はいっつも加減を超えちゃうクマ。笑って済ませられる範囲で満足しないクマ」

「いやぁ~、悪いとは思ってるんやでぇ。大淀もゴメンなぁ?」

「気にしていませんよ。それより龍驤さん。報告をお願いします」

 

 大淀がそう告げると、それまでヘラヘラしていた龍驤の表情というか纏っている空気が一変する。釣られるように球磨も真面目そうなキリッとした表情をするが、もちもちしてそうなほっぺたと見事なアホ毛の所為でどうしても可愛く見える。かわいい。

 

「陸地に散らばらせた式神は気取られた様子はなかったで。得られた情報も他愛もないモンばっかやったわ。内陸に行くほど深海棲艦に実感が沸かん所為でエラいのほほんとしとったのも相変わらずやね」

「ウチに対する敵対勢力とかは?」

「それも相変わらず。一部の市民団体とか政治家がウチらを日本政府の制御下に置くべきだ~って言っとるけど、そのための方法が全然具体的やない。単に現政権を叩くダシにしとるだけやね、アレは」

「くっだらねークマ。球磨たちは提督以外の下につくきは微粒子レベルでもないクマ」

「まぁそう言ってやるな。自分たちの命が見知らぬ軍事企業に握られてるなんて知ったら、俺だって平静のほほんとはしてられんさ」

「そうですね。本土の国民の心理的ストレスは無視できない要素です。いかに我々が本土に頼らずとも生きていけるとはいえ、暴走されてこちらに侵攻されては面倒です」

「面倒なだけで、あいつらに何ができるってわけでもないんが胸熱やで」

「龍驤の胸はどの道薄いクマ」

「なんやてぇ!」

「脱線すんな」

 

 空母の中には陰陽術を使える艦娘もいる。

 彼女たちは内から溢れるオンミョウ・パワーというか謎のオカルト・パワーを陰陽術として扱い、特に式神と艦載機を重ねることで発艦の効率を実際の空母の数倍に跳ね上げている。

 いや、オカルト・パワーに限って言えばどの艦娘であっても多かれ少なかれ持っているし使っているのだが、それを陰陽術の形で使っているのが空母の一部というだけだ。

 一航戦や二航戦などは矢を艦載機に重ねて発艦させるし、そもそも駆逐艦たちが愛用する酸素魚雷だって実寸を考えれば小さすぎる。やはりあれも、何らかのオカルト・パワーによってかたどられた謎の武装なのだ。

 そうでもなきゃ魚雷の次発装填が早過ぎるし。

 

 まぁとにかく。軽空母の中でも抜群にというか他と比べ物にならないくらい式神の扱いに長けている龍驤には、日本本土への情報収集を担ってもらっていた。

 その所為で艦娘としての戦闘能力を万全に発揮することはできなくなったが、情報は時に局所的勝利に優る。

 ただでさえ異質な俺たちだ。国内の動向には常に気を配っておかねば、思わぬ時に後ろから撃たれるかもしれない。

 撃たれても人間の兵器では大して効果がないのは艦娘も深海棲艦も同じだが、鬱陶しいことには変わりない。それに、艦娘たちのやる気にも関わってくる。

 俺は、あいつらが守りたくもないようなものまで守らせたくはないからな。

 

「兵力を過剰に集中させているとかは無かったか」

「九州方面への増員は慌ただしかったで。漁船が襲われたのが理由やろうなぁ。ウチらの警戒網も四六時中見張っとるわけやないし、その合間を縫ってやって密漁っていうか出港禁止令を無視しとった漁船がボカン、やて」

「だからあんな要請が来たのか……」

 

 以前九州の自治体から来ていた防衛依頼は、そんな背景があったようだ。

 しかし、危険だから出るなと言われている漁に出たヤツまでは流石に気にしてやれん。

 やはりあの件は支援物資の増加で十分だったな。

 

「他はほとんど出現報告を聞かん日本海側の軍縮やな。まぁ九州へ増員するための人員を捻出するためなんやろうけど」

「やろうけど?」

「どうにも数字があっとらん。数人ならともかく、数百人単位で減った人間のほうが増えた人間よりも多いんや。その後どこかに異動になった様子もないし、ウチが侵入できる資料室とかでは失踪者の追跡もできんやった。きな臭いでぇ」

「興味深い話だけど、数百人も消えてよく騒ぎになってないな。普通、流石にわかるだろ?」

「それがなぁ、めっちゃ巧妙やってん。最初は北陸の駐屯地を中心にガッツリ異動させたんやけど、ちょっと取り過ぎて駐屯地維持できんくなったからって各地から少しずつ引き抜いたり、その引き抜きの穴埋め人事であっちこっち入れ替えたりで、人間の異動がめっちゃ激しくなった時期があったようやねん。それで、少しずつ動かす時に一人とか二人単位で失踪させて、それを何度も繰り返すっていう周到さ。裏を感じてまうやろ?」

 

 うわぁ。思った以上に手の込んだやり口だった。

 そして、そんな大規模なやり方ができるってことは、仕掛け人は確実に自衛隊上層部以上の人間。人事をここまで自在にいじれるんだから、防衛省の幹部以上は確実だろう。

 こっちからの輸送物資をほぼ独占的に仲介している防衛省はウチのお得意様だ。転売でかなり美味しい目にあっている。

 そうなると、その防衛省がこっちを攻撃してくるなんてことはまず考えられない。

 鎮守府への侵攻計画が欠片もないわけではないだろうが、数百人程度の規模ではウチの艦隊は破れないというのをよく理解しているはずだ。

 

 すると、こうまでして大掛かりに人間を集めた理由はなんだろうか。

 まさか今更クーデターをするはずもないだろうし。

 

「それでなぁ……、ウチ思うねんけど……」

「……なんだクマ。もったいぶらずさっさと言うクマ」

 

「帝国軍のお家芸やろぉ? ……人体実験って」

 

 流石にないと、思いたい。




ウチの鎮守府では諜報員役の龍驤ちゃん。
彼女の式神は、艦載機を使わなければ二百枚ほどを一度に操れます。すごい。
ゲーム同様に五十五機の艦載機を同時に運用するなら、百枚が精々になっちゃいます。それでもすごい。かわいい。
他の軽空母や雲龍型とかはそこまで器用に式神を操れないので、諜報活動は龍驤ちゃんが一手に引き受けています。すごい。かわいい。すごいかわいい。
日本中を広く浅く時に深く調べているので、龍驤ちゃんがいてもそれが主力艦隊とはなれないのですが、戦闘終了後はキッチリほめてあげます。かわいい。

何故龍驤はこうも可愛らしいのか。
お艦に並ぶ古参空母だというのに。

これも元第一航空戦隊の実力か……。
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