株式会社 鎮守府   作:不可

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お読みくださり、ありがとうございます。

※サブタイトルでネタバレしていくスタイル

※イクちゃんの名前を間違っていたので修正しました。「伊九」→「伊一九」(2016.01.16)


17. 南西に泊地あり

 長門が日本南方の海域への遠征から帰ってきてから報告した、本土南方に敵の斥候・哨戒部隊と思われる集団を複数確認、という可能性。

 司令部と参謀部に所属する(とは言ってもほとんどの兼任しているのだが)艦娘が臨時に召集され、対応を話し合っていた。

 長門の提出した情報と戦闘詳報を分析するに、敵の哨戒部隊である可能性が高いことも判明。

 早急にこちらの偵察部隊が動員され、九州方面で哨戒行動を取っていた伊一九も緊急で索敵に向かわされた。

 平行して鎮守府から日本政府に向けて、現状はまだあくまで可能性ではある、とは言いつつも、南西諸島付近にある危険を知らせてある。

 これに関してはそういう契約があるため、偵察で判明した敵戦力の概要までは説明するが、それ以上の協力はまた臨時契約を新たに結ばなければならない。

 差し当たってウチの鎮守府は、近くの海域に新しい棲地が出現するとかでない限り基本的に負けないため、こういった場合での営業は完全にこちら有利だ。

 

 そもそも現在の日本は、ほぼあらゆる産業の原料の仕入先がウチの鎮守府になっている。

 各種工業に必要な希少金属からただの鉄鋼もそうだし、衣服などに使う布地を生産するための糸もだし、農業や畜産で必要となる肥料や飼料も含めて、従来の日本が経済活動のために輸入していた資源の大部分を南鳥島鎮守府が供給しているのだ。

 流石に往時ほど隆盛を極めた経済活動がそのまま維持できているわけではない。

 海外との交易どころか国交がほとんど途絶えた現状、製品を作っても輸出できないので、基本的には生活に必要なものと娯楽品の生産に資源は注がれている。

 

 国交途絶による影響も、精々がスーパーに並ぶ商品の中に外国産や外国製の物が見当たらなくなった上で値段が五割増しになったくらいで、一応経済は回っている。

 

 以前はウチから輸出した資源を外国へ横流しして私腹を肥やしていた国の上層部もいたものだが、国交がほぼ途切れている影響で外貨を取得してもあまり意味が無いのは当然で。それなりに向こうが持っていた円建ての資本を回収できたらパッタリと横流しをやめた。

 やめられて困るのは相手国側なので、今度は正式に貿易商品として輸出する窓口を作ったらしいが、相手次第でかなり吹っかけているようだ。

 まぁ、日本が必要とする大体のものは既にウチが提供しているわけで、それ以外に資源と釣り合うものといえば家畜やら装飾品やら技術といった、何らかの完成品だけだろう。相手国のお金をもらっても仕方ないし。

 

 何にせよ、辛うじて日本の経済は形だけでも維持されているので、ウチも営利企業としては商取引によって日本本土の防衛に協力するだけだ。

 

 俺は別に快楽主義者でもないから、自分とこの鎮守府だけ維持できるなら日本なんか滅びてもいい、とまでは思わない。血縁はいないはずだけど、生まれ育った祖国だ。こんな世界で滅んでほしくはない、というだけの愛着はある。

 ただ、逆に愛国者とか博愛主義者といえるほどには自己犠牲精神が高くないので、何の見返りもなしに日本全国を守ろうとは思わない。

 それに、政府や周囲に対してそこまで恩義があるわけでもないから、こっちの犠牲を顧みず戦う、といった熱血さも到底持てない。

 

 あくまで、俺の鎮守府を確実に防衛できる戦力は確保した上で、その余力で対応できるなら手助けしたい、というレベルの愛着なのだ。

 だから毎回、危険は知らせるし詳細も伝えるし、物資面の協力も融通も極力利かせている。

 だけど、安易且つ無責任にこっちに国土防衛を任せてほしくない。

 そもそも過度な干渉もされたくないのだが、俺も国民としてある程度の義務は履行している。納税額だって長者番付に載るレベルだ。

 

 まぁ、そんな俺個人の事情から、こういった本土の防衛力だけでは到底対処できない敵勢力の牽制や排除はかなり吹っかけた条件で営業している。

 

 その甲斐あってか、政府も極秘裏にこちらが提供する艤装の汎用化研究を進めているようだし。

 俺の家族である艦娘をわざわざ戦地に赴かせずに済むような研究なら、本心から応援するし協力だって惜しまないのだが、何故か政府は秘匿している。

 この辺りは、例え汎用化に成功しても装備の習熟に時間が必要でもあるし、長い目が必要かもしれないが。

 

 

 とりあえず、昨日偵察のため出撃させた部隊が、上手く言っていたらそろそろ何か報告を入れてくる頃だろう。

 駆逐艦と軽巡洋艦を護衛につけた水上機母艦の秋津洲がここからおよそ南西五百キロの海域で二式大艇を飛ばし、二式大艇が敵の集結予想地点周辺の偵察へ向かっているのを更に追いかける。

 大艇が何かを発見すれば可能な限りそれを偵察して帰還、何もなくとも燃料補給のために追いかけてきている偵察部隊のところまで戻り、補給後再出撃させる手筈だ。

 一度目の偵察で何か発見できていれば今頃秋津洲たちからの連絡が入っていると思う。

 

 そんな思考が結果を引き寄せたのか、隣の秘書艦室から大淀が出てきた。

 そのエロスカートを披露してくれるのは大変嬉しいのですが、お前は一体いつ休んでいるんだ?

 

「提督。偵察に向かった秋津洲から通信です。二式大艇は無事に敵集結地を発見。敵の規模は総数二百ほどの深海棲艦。フラッグシップ級を多数含むものの鬼級や姫級の存在は確認できず。また、敵は宮古島南の浅瀬で駐留していた模様、とのことです。」

「宮古島……やっぱり沖縄だったか。近いな」

「はい。かなり九州に近いですね。これまでの深海棲艦の戦法から、宮古島を基地にした空襲などはないでしょうが、戦艦級の手法による襲撃ならやろうと思えばすぐできる距離です」

「二百隻も集まっていながらまだ進撃してこないことは驚異的だな。まだ数が増えるのか?」

「恐らくは指揮官級の深海棲艦が出現したのではなく、中型の泊地が形成されたのでしょう。周辺海域から集まるとしても、いつから集まったのかはわかりませんが今週いっぱいで三百隻に届くかもしれませんね」

「やはり泊地か。これはラッキーだったな。鬼級や姫級が出現していれば圧倒的な大艦隊が高度な戦術を駆使して襲いかかってくるが、泊地ならまだしばらく敵は動かん」

「ええ。これなら座標指定したミサイル攻撃で一網打尽できますからね。混乱した撃ち漏らしであればこちらが協力したとしても被害は少ないでしょう」

 

 泊地と鬼級や姫級との違いは明確だ。泊地とはただの拠点に過ぎず、周辺の深海棲艦をとにかく集める。集まった深海棲艦の数が泊地の限界に達すると一挙に陸地に攻め込んでくる。ただそれだけなので、泊地の発見が早ければさっき言ったように座標指定のミサイル攻撃で壊滅させることができる。

 ただ、鬼級や姫級の指揮官が出現すると話は変わる。指揮官も周囲の海域から深海棲艦をある程度集めて、まとまって攻めてくるところは泊地の機能と変わらない。

 ただ、攻めてくる時に高度な戦術を駆使するのだ。

 威力偵察部隊を出して相手の防衛力が出揃ったところを主力部隊で急襲して壊滅させたり、防衛側が必死こいてぶっ放す砲弾やお祈りミサイルを艦隊規模で回避させる指揮をとったり、艦隊を二つに分けて片方が海上防衛戦力とやり合っている間に別の陸地から侵入したりと、非常に賢い。

 

 当然、戦争に明け暮れた人類の用兵学からすれば初歩的なレベルではあるものの、これまで集まっては突っ込んでくるしかなかった深海棲艦の烏合の衆とは一線を画すどころではない厄介さに、防衛線を突破されまくった国が多い。

 大体の国は最終防衛ラインまで食い込まれてから戦術核を使ったりしてゴリ押し勝利を重ねてきたため、大国といえど土地環境の負担が激しくなっている。

 こういうのを思うとやっぱり世界は破滅の一途だよなーとも思うわけだが。

 

「今回は政府の新兵器が出てこないか期待だな。そしたらこっちは出動しなくてもいいかもしれん」

「それは流石にどうでしょうか。こちらがこれまでに提供している艤装は主に駆逐艦用と軽巡洋艦用です。フラッグシップ級が多数確認される敵勢力では、例えミサイル攻撃でほとんど撃ち倒せたとしても……」

「フラッグシップの重巡洋艦級が一隻いるだけで全滅だろうな。期待できる戦力が新造艦の駆逐艦娘レベルが関の山なんだろう? むしろ軽空母級一隻だけで十分かもな。生身の人間なら機銃だけでミンチだし」

「そうですね。慣熟訓練も不十分でしょうから、投入はしてもあくまで試験投入に留まるんじゃないでしょうか」

「そうなるとやっぱり主力はこっちになるかな? お守りは大変そうだけど、将来への投資だと思って諦めるか」

「そもそもまだ汎用化が成功しているかも定かではないんですけどね」

 

 敵勢力がただの泊地とわかって、安堵したような弛緩したような空気になってしまったためか、大淀と雑談に励んでしまった。くすくす笑う大淀のふとももでさざめく袴スカートが艶めかしい。

 大淀の隣りに立ってあのスカートの隙間を横から覗き込みたくなる衝動をどうにか抑えて、政府に詳細を連絡した上でこちらへ何か依頼するかどうか確認する通信を入れるよう大淀に指示を出す俺なのであった。




実際に宮古島なんかに敵の泊地があれば日本はもう完全に終わりだと思います。
毎時間ごとに爆撃機の空襲し放題ですし、戦艦による陸地砲撃だって直ぐ側ですからね、やり放題ですよ。
まぁ補給線がどうなっているかで話は変わりますが。日本だってそんな近距離の敵泊地は全力で潰しに来るでしょうし。余力があれば。

ちなみに、泊地と泊地水鬼とは全く別物です。泊地は前線基地だけど、泊地水鬼は前線基地機能を備えた深海棲艦です。つまりめっちゃつよいです。あとかわいい。
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