※誤字を修正しました。(2016.01.31)
日本最東端の島だった南鳥島。初めて聞いた時は、なんで南なのに東なんだよ、ってなったのもいい思い出。
この島に俺のオフィスはある。
というか、この島が俺の仕事場だ。
株式会社 鎮守府。俺の城であり、俺の国とも言える。
今や世紀末もかくやと言うほどに殺伐とした海の世界にあって、世界で唯一の楽園とも呼べる場所だ。
今からおよそ二年前に出現した深海棲艦。
驚異的な粘り強さで半年は何とか耐えたものの、日本は限界だった。
補給は無いし援軍も無い。なのに一丁前に文句とクソだけは垂れる民衆の暴動に、国家の治安はかなり揺らいだ。
それを救ったのが俺だ。
当時の国防を最大限揺るがせた南鳥島棲地の出現。
誰もが悲観に暮れる中、俺は単身そこへ忍び込み、棲地を鎮圧した。
それは人類が未だかつて経験したことの無い大勝利だった。
まぁそれも、この俺のチートと呼んで全く差し支えの無い異能あっての話なので、人類全体としては何とも言えないままではあったが。
「提督。お暇ですか?」
何枚か書類を片手にやってきた秘書艦の大淀が声を掛けてくる。
日本的美少女の典型とも言えるストレートでロングな黒髪は清楚さを醸し出し、真面目さと実直さの伺えるメガネがチャームポイントな素敵少女だ。何よりも服装がエロくて良い。なんなんだあの横穴スカート。考えたヤツは変態の極みだろう。サイン欲しい。
「暇と言えば暇だ。今日の艦隊指揮は緊急事態を除けば帰島待ちだからな」
そう、この鎮守府を拓いた提督たる俺の仕事は艦隊指揮、基本的にはそれだけだ。
他のあらゆる事務仕事は大淀を筆頭とした秘書艦勢が裁いてくれるし、一部責任者の裁可が必要な事項であっても、俺ではどうにも判断が付かないんだから上手くやってくれる大淀たちを信頼して頷くだけだ。
まぁその艦隊指揮にしたって、ほぼ素人の俺が一から十までできるわけも無い。大体は秘書艦の中でも戦略に明るかったり経験豊富な魂を持つ艦娘に九割五分ほど計画してもらい、残りの五分は俺が皆に教えてもらったり議論を交えながら決める。
つまり、かなり楽な仕事である。
「でしたら、こちらの書類をご確認ください。本土から社長の判子をいただくように、とのことです」
「どれどれ。……資源輸送の増量申請ね。ここのところ引っ切り無しだな。先月も無かったか?」
「先月どころか、この四ヶ月間はずっとですね。特に今月の増加量は吹っ掛けてきています。こちらの提供量を三割も上積みさせているのに、むこうの支払いはほぼ据え置きのままです。多少の割引なら応じなくもありませんが、これ以上は流石に見過ごせません」
「まぁこっちとしても生まれ故郷の発展に貢献するのは吝かじゃないけど、つけあがられても困るしなぁ」
かつては戦争資源に乏しい国であった日本だが、現状は資源の輸出大国だ。ほぼ横流しだが。
この鎮守府は俺の異能の具現であって、敵棲地の特徴をほぼ自由自在に転用できる超チート施設だ。
即ち、深海棲艦の無尽蔵とも言える供給力を手にしたのだ。
鎮守府の施設を使って得た資源によって、日本の国防力は一挙に改善した。
動かしたくとも油の無かった艦船。打ちたくとも弾頭や炸薬の無かった砲火器。現代的で文化的な生活を支える生活物資。その全てを、この鎮守府は供給できた。
いや、その供給力は日本の需要全体を上回って余りあるほどだ。
だからまぁ、こんな世の中だし、政府も欲目が出たのだろう。
「資源に余裕ができたのをいいことに他国に売りつけるのも勝手ですが、私たちは別に政府の奴隷でもありません。提督は確かに日本国民でもありますが、この鎮守は自治権を保証された半独立地域でもあります」
「まぁまぁ。そういきり立たなくてもいいさ。でも、俺も慈善家ってわけじゃないし、この要望は当然却下だな。返事をしておいてくれ」
「かしこまりました」
「……もうちょっと砕けた言い方できないかな。ちょっとむず痒い」
「では、そうですね。分かりました。提督のお名前で返事を出しておきます。内容は『要望は理解した。だが受け入れられない。現在の単価を維持したまま数量を増やすならばこちらにも否は無い』としておきます」
「うん、そんな感じ。従業員みたいな扱いとはいえ、家族みたいなモンなんだ。そうかしこまることは無いよ」
「そうでしたね。では、失礼します」
そんな分かったような分からないような返事を残して、大淀が退室する。退室とは言っても、提督執務室に隣接する秘書艦事務室に移っただけだが。
さて、また暇になったものだ。多分大淀のことだからすぐに手紙の確認をしに来てくれるんだろうけど、それだって大した手間でもない。
現在時刻は一四○○。午睡と行きたいところだけどそうも行かない。
提督は緊急事態に際して可及的速やかに艦娘へ命令を出す。ただその為だけに日々の執務を秘書艦たちに負担してもらっているのだ。
例え何も無い時であっても常に即応体制でなければならない。
不幸にも寝起きは最悪の人間なのだ。昼寝なんぞしようものなら夕飯まで絶対に起きないだろう。
しかし最も早い帰島予定時刻は一七三○だ。元々余裕を持った時間設定ではあるが、三十分以上早まることは無いだろう。即ち、これからあと三時間は確実に暇だということだ。
「うーむ。買出し部隊が帰島するのも明日の予定だからなぁ。雑誌も大体読みつくしたし、購買部か食堂にでも行っておやつでも買うかな」
よく考えたら、欠片も艦娘が出現しない第一話だったので、慌てて続きを捏造。
秘書艦はやっぱり大淀さんだと思うんですよ。
そもそも第一艦隊旗艦が秘書艦って、毎回督戦やっている鎮守府ってやばくないっすかね。