株式会社 鎮守府   作:不可

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お読みくださり、ありがとうございます。

ちょっと長くなったので前後に分割しています。こちらが前半です。
後半もよろしくお願いします。


21. 鳳翔さんの本気 前編

 訓練は酷いものだった。

 俺は港に設置された三十メートルもある櫓の上から双眼鏡で観戦していたのだが、まるで戦いといえるものではなかった。

 

 二十五キロの距離を置いて演習が開始され、機動部隊は威力偵察も兼ねた三十機の艦攻艦爆隊と十機の護衛戦闘機を放った。

 これが鳳翔さんの部隊を捕捉し、初撃を加えようと攻撃態勢に入った瞬間、鳳翔さんが放った一矢から五機の戦闘機が顕現し、その十分な初速を保ったまま四十機の航空隊に突っ込んでいった。いや、突っ込む直前に機銃の射程に入ったからか、早くも五機が落とされていたので、接近時には既に三十五機になっていた。

 その後も最大速度を保った両者が交差する際に十機の航空機、恐らく艦攻隊が落とされた。

 早くも艦攻隊を全滅に追い込まれた機動部隊側は全機急上昇。起死回生の急降下爆撃を試みようとするが、試みる直前の上昇前に五機落とされ、上昇しきったところを五機落とされ、急降下しだしたところを更に五機落とされて全滅した。

 かくなる上は機銃攻撃で一機だけでもと覚悟を決めた機動部隊側の戦闘機は、一瞬で十機全員が落とされた。

 鳳翔さんの航空隊側にはかすり傷ひとつない圧倒的勝利である。

 

 これに泡を食った機動部隊側は、戦力の集中を決意。逐次投入による各個撃破を完遂されれば、相手に対して有効な攻撃を一切出せなくなる。鳳翔さんたちの防空能力は異常だが、あくまで相手は少数。手数で優るこちらが、ある程度の損害を受けている間に相手の部隊を確実に叩く。いわゆる肉を斬らせて骨を断つ作戦を敢行した。いや、しようとした。

 

 機動部隊が部隊内でそんな打ち合わせをしている間に航空機の回収と補給まで済ませた鳳翔さんは早速自分の持つ艦載機を全機発艦させていた。

 

 極めて迅速に全機発艦させた機動部隊。総数三百機をゆうに超える航空機が一路鳳翔さんの部隊へと向かおうとしたその瞬間に、その鳳翔さんの戦闘機部隊三十機が急速接近。散開する指示を出すものの初撃回避は間に合わず、最初の一撃で三十機、接近中の一撃でまた三十機、交差時の一撃で更に三十機と、ほんの一瞬で九十機もの損害を出した機動部隊航空隊。

 それでも初志貫徹とばかりに相手部隊へ急行する二百機以上の航空隊は、月面宙返りの要領で急反転した鳳翔さんの戦闘機部隊に後背から追撃を受け、攻撃可能地点に到達した時には更に百二十機を失う事態に陥っていた。

 もはや三十機にも満たない攻撃隊が航空魚雷発射ポイントや急降下開始位置に向かおうとしているのだが、その度に駆逐艦初霜から絶妙に進路を塞ぐ砲撃を受けるため、有効な攻撃を撃てないでいる。

 当然そのようにまごついている航空隊を、鳳翔さんの戦闘機部隊が見逃すはずもなく。

 結局は一矢報いることなどまるでできないままに三百機を超える機動部隊の航空機たちは全て撃墜された。

 

 その間、機動部隊は航空機のことだけで絶望していられなかった。

 機動部隊の近くに航空機が居たからだ。数はほんの十機である。だが、その十機を放ったのが機動部隊の空母ではなく、軽空母鳳翔だというのが問題だったのだ。

 

 鳳翔の戦闘機は空中から敵航空機が消えるまで帰投しない。鳳翔の艦攻隊の出撃数と敵の被雷数は必ず一致する。鳳翔の艦爆隊が高度を取ればどうあがいても敵艦の艦橋は吹っ飛ぶ。

 

 その鳳翔が放った艦攻隊五機と艦爆隊五機が、機動部隊に迫っていたのだ。

 五十鈴が麾下の駆逐艦を必死で鼓舞して対空砲火の密度を上げる。上げてはいたものの、まるでその努力を嘲笑うかのようにどの航空機も危なげなくその弾幕をすり抜けていく。

 あっという間に護衛の艦娘たちを抜き去っていった艦攻隊は軽空母の三名に一発ずつ雷撃を当てて戦闘不能に追い込み、残る二機は同時にグラーフ・ツェッペリンを雷撃して航行不能に追い込んだ。

 高高度から急降下してくる艦爆隊もそれぞれ二機ずつが蒼龍と加賀に爆撃して戦闘不能にし、一機が赤城さんの頭部に直撃。グロ画像は免れたものの、意識を失った赤城さんは普通に戦闘不能だ。

 

 攻撃を終えた十機の航空機に何とか追撃の放火を集中させる五十鈴たちだったが、当然のごとく一発も当たる気配すら見せなかった。

 

 航空隊による攻撃が止んだその間隙をついて、五十鈴のソナーが魚雷の推進音を捉える。演習開始時から潜行し、密かに機動部隊直下に迫っていた伊八による四発の雷撃だ。

 一発は逸れていったものの、残る三発の内二発が飛龍に直撃、戦闘不能。一発が瑞鶴の左足を完全にふっ飛ばして航行不能に追い込む。

 

 慌てて対潜攻撃を始める五十鈴だが、状況は更に悪化した。

 

 機動部隊の航空機を全機沈めた鳳翔さんの部隊が、こちらから十五キロの位置に接近していたのだ。つまり、詰みである。

 

 機動部隊を完全にそのキルゾーンに捉えた金剛が駆逐艦と軽巡洋艦には一発ずつ、念の為にグラーフ・ツェッペリンと瑞鶴に追撃の主砲二射を当てたところで演習は終了した。

 

 機動部隊は完全に壊滅。鳳翔さんの部隊の損害は、消費した燃料と弾薬だけである。航空機にすらかすり傷ひとつないという、完膚なきまでの完全勝利であった。

 




鳳翔さんは伊達でも酔狂でもなく強いです。
空中戦ではまず敵無しですし、水上艦相手でもほぼ確殺してくれます。
ただ、搭載数の少なさと弾薬の装備量が少ないため、大量の敵と戦うのは苦手です。
鳳翔さん自身の回避能力は並なので、艦載機のない状態で駆逐艦に囲まれればそれで終わりなのです。
まず囲まれる前に沈めますし、必ず護衛を付けてもらうのでそんな簡単には行きませんが。

ちょっと話が長くなったので分割しています。
次回も訓練の続きというか補足になります。
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