株式会社 鎮守府   作:不可

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お読みくださり、ありがとうございます。

※本日の午前二時五十七分頃に更新してある話を前提としておりますので、そちらを未読の方は是非ご閲覧いただけると幸いです。


26. 歓迎しよう、盛大にな!

「条件が四つある」

「伺おう」

「提督!」

 

 戦艦棲姫を受け入れようとする俺の言葉に、武蔵が抗議の声を上げる。

 しかし俺はこれを手で制して話を続ける。

 

「まず絶対に守ってほしい条件が二つ。鎮守府の敷地内では俺の許可無く艤装を展開しないこと。それに命の危機がない限りは艦娘を絶対に攻撃しないこと」

「容易い話だ。しかし、貴様を攻撃しないと約束させなくてよいのか?」

「お前が本当にただこの地に居たいというだけなら俺を殺す意味はあまりないだろう。ここはお互いの命を懸けた信頼関係というもんさ」

「提督!」

 

 今度は神通が耐えかねたようだ。それを目で制する。

 そもそも戦艦棲姫が俺を殺そうと思っているなら最初の時点で殺せたし、今でだって殺そうと思ったらいつでも殺せるだろう。

 つまり気にするだけ無駄だ。

 

「次の二つは可能であればで構わない。一つはお前にも出撃して深海棲艦と戦って欲しい」

「そ、それはっ」

「構わんぞ。有象無象など取るに足らん。いや、腹の足しにはなるがな」

 

 大淀は戸惑いの声を上げたが、戦艦棲姫は即答だった。しかも笑いにくいジョーク付きだった。いや、本気かも知れないが。

 

「最後は深海棲艦の研究に協力して欲しい、ということだ」

「研究?」

「ああ。俺の鎮守府では棲地を通じてある程度進んだ理解をしているとは思うが、未だに深海棲艦に対しては謎ばかりだ。さっきお前が言った、人類を駆除するための存在とか棲地からエネルギーの供給を受けていたとか、初めて聞いたからな」

「なるほど。私にわかることなら好きなだけ話してやろう。それとも、解剖でもしてみるか?」

「いや、そこまでは要求しねぇよ。その再生力の秘密は気になるところだが」

「単純に棲地からエネルギーを直接供給されているからだ。従って私は今、昔ほどの再生力を持たないし、洋上の他の棲姫どもは完膚なきまでに破壊しないかぎり無限に再生する」

 

 とんでもないチートだった。

 なんだそれ。そりゃあ人類が勝てないわけだよ。

 流石に大淀も武蔵も神通も口を開けて驚愕している。日向は尚も自然体だ。いや、若干羨ましそうな顔をしているな。どちらにしても泰然としすぎだろ、お前。

 

「まぁ、そんな話を色々聞いていきたいわけだ。そしてこれらの条件を飲んでくれるなら、お前を俺の鎮守府に歓迎しよう」

「では歓迎してもらおうか」

 

 相変わらず即断即決の返事だ。気持ちいいくらいだな。

 戦艦棲姫が了承したのを受けて、同意の証に握手でもと立ち上がったのだが、ヤツはそれを不思議そうな表情で見ている。

 

「なんだ、それは?」

「何って、握手さ。知らないのか? ベタな話だな。人間はこうやって同意した時は友好の証に握手するんだよ。手と手を握ってな」

「ほう。愉快な話だ」

 

 そう言って戦艦棲姫は、確かに面白そうな顔で俺の手を取った。

 流石に戦艦ということか、それとも流石は姫級というべきか、力加減を間違えた戦艦棲姫の握手で俺の手が握り潰されそうになって武蔵たちがまた怒り狂っていたが、とりあえず話し合いは済んだ。しかしベタな展開だったとはいえ、しばらく右手の痛みは引きそうにない。

 

 

 所変わってここは食堂。

 所属する艦娘の大半が話し合いを終えた俺に詰め寄ってきたわけだが、一同に対していっぺんに説明するため、全員が集合できる大部屋としてこの食堂に白羽の矢がたったわけだ。

 戦艦棲姫も、人間そのものはともかく人間の食べる料理というものを口にしたことはなかったようなので、興味深そうにしていたことだし。俺も小腹が空いたし。

 

 そんなこんなで着席させた皆の前で戦艦棲姫と二人立つ。

 艦娘の皆には、説明するからとりあえず座って静かにするよう命令していたおかげか、内心はともかくお行儀よく席に着いて鋭い視線を俺と戦艦棲姫に向けている。

 

「――とまぁ、こんな感じで今日から仲間になった戦艦棲姫だ。皆もよろしくしてやってくれ」

「ほう、私は貴様の仲間になったのか。よかろう。貴様らもよろしくするがよい」

 

 反応は様々だった。

 気の弱い者たちは、戦場では悪夢に等しい強さを誇る姫級の存在自体に震えていたし、気が強いものは「ふざけんな」と憤慨していた。

 中には寛容というか達観というか無関心な輩も多く、俺が受け入れると言っているなら受け入れる、というスタンスのヤツも割りといた。

 しかしこの戦艦棲姫、いつまでたっても高圧的な話し方だな。

 まぁ様々な口調の娘を多数所属させる鎮守府である。今更話し方一つでとやかく言う俺ではないが。

 

 いや、そもそもなんでこいつはこんなに流暢に喋って、俺たちと普通に意思疎通できているのだろうか。

 その辺もおいおい聞いていくべきだろう。

 

「今後は、深海棲艦と戦わなくても、よくなるんですか……提督?」

 

 気弱そうな声でそう言ってきたのは駆逐艦の綾波だ。

 心優しい彼女のこと。相手が深海棲艦であっても、命を奪わずに済むならそれに越したことはない、ということだろう。

 彼女自身は駆逐艦の中でもトップクラスの撃墜王、いや撃墜女王なのだが。

 

「どうなんだ?」

「私に聞かれてもな。恐らく無理だ。私は棲地から解放されたことで人類への怨嗟からも解き放たれたが、その辺の海域で発生する雑魚どもに理性なんぞそもそも無い。他の姫や鬼どもに関しても、私と同じく棲地から解放されないことには砲撃の手を緩めることはないだろう」

「そう、ですか……」

 

 それを聞いて綾波は残念そうにする。戦艦棲姫を先駆けに、今後も話し合いで争いを止められれば良かったのだが、深海棲艦のアイデンティティとしてそれが不可能と聞けば落胆せざるをえないだろう。かく言う俺もガッカリしていた。

 

 俺の鎮守府の異能はこの棲地の上で成り立っている。俺が棲地を鎮圧することで鎮守府に関わるあらゆる機能、艦娘たちも含めて全ての現状が成り立っているのだ。

 そしてこの鎮守府は、俺がこの元棲地を離れれば維持できなくなる。

 そうすると、艦娘はおろか、ここの機能に完全に依存している日本だってタダでは済まない。いやむしろ全部ひっくるめて全滅だ。

 

 つまり俺は他の棲地の鎮圧に行けない。そして世界各所の棲地は物理的な攻撃では破壊しても復活してしまう。

 すると、他の姫級や鬼級を棲地から解放することはできないため、話し合いにも応じることはないだろう。

 

 要は不可能ということだ。

 

「まぁ他の深海棲艦はともかく。この戦艦棲姫はこれから一緒に戦う仲間だ。歓迎してやってくれ」

 

 せっかく食堂に来たのだから、ついでに簡単な歓迎会にしようと、食堂担当の妖精さんにお願いして簡単な料理を大量に作ってもらった。

 何せ今鎮守府にいる艦娘だけでも百人を超えるんだ。量がなくては話しにならんだろうし、戦艦棲姫もどれだけ食べるかは未知数。多いに越したことは無いだろうと、品数は少ないものの芳しく美味しそうな料理が机の上に大皿で並んでいる。

 

「それでは新たな仲間を祝して、乾杯」

 

 様々な感情が渦巻いているのは承知しているが、そんなものはこの一杯でどうにか飲み込んでくれ。

 張りのあまり無い乾杯の復唱を聞きながら、隣で目を輝かせているように見える戦艦棲姫を見る。

 どうやら人間の食事は気に入ってもらったようだ。

 

 しかしいつまでも戦艦棲姫と呼ぶのも煩わしいし紛らわしいな。

 何か個体名やコードネームでもつけるべきか……。




お話の流れ上、当然の展開ですが、戦艦棲姫ちゃんは受け入れの方向になりました。
チート戦艦が仲間になったよ! 一般の深海棲艦たちにとっては悪夢もいいところの絶望ですね。
何せフラル改とフラヲ改が徒党を組んでも一回殺すことができるかどうかいうヤバイ級の格差がある本作の世界です。
鎮守府の艦娘と提督と最大限に協力しあったら。日本どころかアジア全域の殲滅だってできるレベルの脅威です。
何せ深海棲艦の陸上での弱点は補給できないことのみなので、艦娘が補助として陸上でも補給してあげたら、戦艦棲姫を止められるほどの人類勢力は地球上に存在しません。
核弾頭だって空中で撃ち落としちゃうのでまともに使えませんからね。

そして、ウチの鎮守府の日向さんはとにかく明鏡止水の人です。いや、艦娘です。
自分の力を十全に発揮するためには、常に冷静沈着で且つ自然体でなければならないと思っている達人系武人なので、まだまだ精神的に未熟な神通さんは彼女を心から尊敬しています。単純な剣術の力量的にも神通さんより上なので。
ちなみに日向さんも、砲撃するより白兵戦での成績のほうがいいのですが、こちらは軽巡と違って動きが鈍重なので、実戦ではいまいち使いこなせていないのが最近の悩みだそうです。
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