株式会社 鎮守府   作:不可

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ご感想をいただいちゃったりしたので、はりきって続きを書いちゃいました。
一話ごとの文量が少ないのは仕様です。ご容赦ください。

お読みくださり、ありがとうございます。


3. 鎮守府の供給力

 執務室を出る前に秘書室に声を掛けておく。軍人ではないものの、軍事的行動を食い扶持にしているのだ。己の所在はなるべく明確にしておくべきだろう。

 

「暇になったので鎮守府を散歩してくる。何かあったら無線か警報で知らせてくれ」

 

 事務仕事に励む秘書艦たちのそぞろな挨拶を受けて、改めて廊下に出る。

 

 廊下を歩きながら窓を見やると、いつもながらにだだっ広い海原が広がっている。雲も少ないし、風も穏やかなようだ。各艦隊の作戦行動も順調に進んでいることだろう。

 

 かつて、と言ってもほんの一年とちょっと前の話だが、ここ南鳥島は深海棲艦の一大棲地だった。

 そう、一大棲地だったのだ。

 

 南鳥島と言えばまさしくただの島というか、ちょっと立派な公園が海に浮いているようなものだ。そんな小島がどうして深海棲艦の一大棲地であったのか。

 かなりの理不尽さだった。

 

 海流の関係ではなかったのは確かだが、どうにも海の中にあるオカルト的な何かの流れが太平洋中から集まっていたのがここ南鳥島だったらしい。

 ここに鎮守府を拓き、棲地の全権を掌握した俺だからこそ分かるが、この場所は世界の深海棲艦の得る資源の実に二割が集積する超重要拠点だったのだ。

 たったの二割と言えばそれまでと思うかもしれないが、全世界の軍事力を軒並み封殺する物量の二割を手に入れたのだ。

 日本の救済など、実に容易かった。いや、人手は解消できないため、そこは自衛隊とかに頑張ってもらう他は無かったが、まぁ兵站面での問題は完全に解決できた。

 

 この資源と言うのも実に曲者だ。

 何というか、まず普通の人類にはこれを扱うことができない。

 この資源を資源のまま直接扱えるのは多分、この世で深海棲艦と俺だけだろう。

 

 俺は自他共に認める無能提督で、あらゆる業務は艦娘に負んぶに抱っこだが、そんな彼女たちは俺が唯一自慢できる異能によって生まれ、生きている。

 

 俺が持つ鎮守府の異能によって資源はまず、艦娘たちが扱う燃料や弾薬に変性する。

 この燃料や弾薬の他に、更に鎮守府の施設を通して様々な資材や生活物資を生むことができる。

 

 つまり、戦争資源どころか食料すらまともに輸入できなくなった日本の食卓を支えているのは俺の異能と言うことだ。マジで異能さんぱねぇ。

 何が異常って、この鎮守府の食糧生産ユニットは、たまごや豚肉だって生産できるというところだ。

 今のところ本国の酪農家を追い込むつもりは無いから積極的に生産供給はしていないものの、ほぼノーコストで良質な生鮮食品を手に入れられるのは完全にチートである。

 ただ、良質なのは確かにそうなのだが、あくまで良質なだけであって最高品質ではないし、面白みも無い。

 物資生産ユニットでは雑貨なども生産できるが、作れる雑貨は基本的に無地だし野暮ったい。食糧に関しても、素材レベルであれば大抵のものは生産できるが、完成品となると途端に覚束なくなる。

 以前チョコレートを生産させた時には黒苦いインゴットが出てきたし、ミルクチョコやビターチョコを要求した時は味の定まらないゲル状の異物が吐き出された。

 この辺りの線引きはかなりあいまいなのだが、ココアパウダーだのカカオマスだのと、原材料っぽいものはかなり正確に生産できているという状況だ。

 同様に、紙を大量に生産することはできるし、印刷機も一応生産できてしまったものの、本を生産することはできなかった。

 

 そういった製品レベルでの嗜好品には困るものの、概ね問題は無いという生活レベルの鎮守府である。

 本土に対してこれらの資源や物資を売りつける代わりに、そういった嗜好品をとにかく買い漁ったりしている。というか、向こうがこちらに提供できるものがそれくらいしかないのだ。

 

 まぁ向こうも金払いは良くなってきていたし、それはそれで良いと思っていた。

 こちらが渡した物資を他国に高く売りつけることで財政が上向いたからだろう。

 どうにも調子に乗って勘違いしたヤツがいたようだ。

 

 厄介な話だが、以前は政府が一方的に弱い立場に追い込まれていると勝手に勘違いされていた。

 別にこっちは政府を乗っ取る予定は無いし、征服欲なんてもっと無い。

 だと言うのに向こうは生命線を握られているわけだから、どうにかして優位に立とうとして必死だったのだ。

 だが最近国家の財政も国防の状況も安定して上向いた所為で、頭の軽いヤツがこっちが上場してない株式会社だからって軽んじて、完全な上から目線になってしまった。

 上場してないのは鎮守府の経営に口を挟まれたくないからで、わざわざ株式会社にしたのはその場の勢いと手の出しやすさからだった。

 

 そりゃあ国の中で商売するためにはお偉いさん方の無理な要求を身を削り涙を流し歯を食いしばって呑み続けるのが中小企業や下請け孫請け企業の定めなんだろうけど、ウチの鎮守府はちょっと事情が特殊すぎる。

 面倒だし、それじゃあ薄情すぎるかと思ってしていないだけで、今となっては日本から独立したって別に構わないくらいには自活力があるんだ。

 義理や人情が第一ではないけど、捨て切っているわけでもない。

 

 所謂、思いやりの精神ってやつで本国とは関係を築いてきたってのに、さっきみたいな露骨な搾取を当然だと思われちゃ、俺……日本を守りたくなくなっちまうよ……

 

 まぁそれは冗談として、大淀が言っていたように、俺たちは別に奴隷じゃないし、利益を追求できる営利企業だ。

 不当に値引きを求められたなら毅然として突っぱねる。それをしても特に問題はないわけだし。

 いやまぁ、それで本土から嗜好品を輸入できなくなるとブー垂れる艦娘たちも少なくないだろうけど。

 

 

 さて、ようやっと購買部に着いたことだし、何か面白いものが並んでいないかウィンドウショッピングと洒落込むか。




怒涛の説明回想的な何か。
もっと小出しにすれば良いんでしょうけど、徒然なるままに書くとこうなるというわけです。すみません。

そして気付くとまた艦娘の登場しない独り言回……。
つ、次は艦娘登場しますので、ご容赦を(震え声)
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