株式会社 鎮守府   作:不可

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33. 別に夜じゃなくても駆逐艦は強い

 最近は自衛隊が自分たちで頑張っているとはいえ、彼らの補給物資は基本的にというか九割九分以上鎮守府の資源に依存している。

 つまり、彼らが活躍すれば活躍するほど自衛隊の戦力は鎮守府への依存度を高めてしまうというわけだ。何というか、自分たちで守っても守らなくても結局ウチ次第ってところが非常にバランス悪い。そりゃあ一部の首脳部や市民団体も不満に思うことだろう。俺が提督ではなくて一市民だったならきっと同じことを思っていたかもしれないしな。

 しかしながら改善できないのも確かである。

 

 自衛隊が気合を入れて頑張るに連れて、政府から要請される物資の提供量が跳ね上がった。

 現在の鎮守府が所有する輸送船団だが、二〇万トン級のタンカーが六隻に十万トン級のコンテナ船が十二隻となっている。全て工廠組の更なる魔改造が施されているため、タンカー三隻・コンテナ船六隻の輸送船団が東京湾まで片道約四〇時間で行けるようになっている。往復でおよそ四日の遠征任務だ。

 護衛艦隊としては主に二個水雷戦隊と二個航空戦隊をつけるようにしている。水雷戦隊の旗艦は基本的に軽巡洋艦の艦娘が勤めているが、最近では出撃が激減して暇になった重巡洋艦や航空巡洋艦の艦娘たちが暇潰しと称して飛び入りしたりもする。飛び入りとは言っても当然ながら大淀の許可は事前に取っているが。

 

 以前、全く何の断りもなく「暇だしぃ?」などという理由でシフト表ガン無視したとある航巡が、帰島後にとある秘書艦に強烈な大目玉を食らったことがあって以来、誰一人としてシフト表を乱すものは居なくなった。

 

 水雷戦隊は基本的に軽巡一人と駆逐艦五人で構成させ、航空戦隊は軽空母か正規空母を二隻と護衛の駆逐艦を二隻で構成させている。それぞれ二個戦隊ずつなので、二〇人ほどの艦娘が一度の輸送で必要になる。

 輸送船団の一組が月に七回ほど往復できる。もう一組を入れれば十四回だ。毎回違う艦娘を抜擢しようとすると二八〇人もの艦娘が最低でも必要となる。

 鎮守府自体の防衛もあれば、日本近海の哨戒任務だってあることを考えれば、明らかに不可能な人数割だ。

 当然、護衛に割り当てられる艦娘と他の任務に割り当てられる艦娘と、しっかり管理しなければならない。うっかり連続出撃でもさせようものなら疲労が抜けきらず回避能力を損ない、最悪の場合は轟沈してしまう危険性すらある。

 

 そうならないためにも、秘書艦たちが毎週毎月額を突き合わせて真剣に考えて検証されたシフト表は、必ず遵守されなければならないのだ。

 もちろん、突発的な出来事に対応できるよう、かなりの冗長性は確保されている。今までにそうなった艦娘は確認できていないが、万が一風邪でも引いた場合などには交代できる要員が必ずいるように考えられている。だからと言って、無闇にシフトを乱されても困るが。

 

 そんなこんなで、先程片方の護衛艦隊を出迎えた俺は、今回総旗艦を務めた五十鈴を執務室に連れて報告を聞いていた。ちなみに、一緒に出迎えに行った秘書艦の叢雲は既に秘書艦たちの詰所に戻っていった。

 

「今回は随分と頻繁に襲撃されたと言っていたが、事実か?」

「ええ。最近の輸送任務と比べれば倍以上ね。五十鈴たちの敵ではなかったけれど。ただ……」

「ただ?」

 

 普段から自信満々な態度を隠さない五十鈴だが、どうにも歯切れの悪い言葉尻だった。組まれた腕に乗っているブツはこれほどまでに誇らしげなのに。

 

「どこ見てんのよ」

「五十鈴の胸だ。構わんから続けろ」

「……ただ、ね。大分前の、それこそ一年くらい前の時の輸送任務と同じくらいの頻度に思えたわ。出てくる敵も駆逐艦級や軽巡洋艦級ばかりで、精々軽空母級がいるかいないか程度だったもの」

「……ふむ。大淀はどう思う?」

 

 俺は隣に控えている大淀に話を振った。

 自他共に認める無能提督であるこの俺が、一年前の敵の出現頻度や構成など覚えているはずがないからだ。いや、構成という点においては、日本近海では低レベルの深海棲艦しかそもそも出現しないんだから、流石に分かるけどな。

 俺と違って有能な秘書艦である大淀は、今回五十鈴が提出した戦闘詳報をもう一度確認すると何度か頷いてこちらを見た。

 

「確かに、五十鈴さんの言うように敵の出現頻度や構成、それに出現箇所に関しても去年と同様のものと思えます。明後日帰島する那珂さん達の報告を待ちたいところですが、ほぼ断定してよろしいかと」

「ふーむ。どうしたもんかね」

「去年とは護衛艦隊の厚みが違うし、敵の襲撃とは言っても精々四隻から十隻程度の小規模なものばかりよ。今後ずっとこのままだとしても問題は無いわ」

 

 五十鈴はそう言うがな。俺としてはそんなことを問題にしているわけでは無いのだ。そもそも二〇人からなる艦娘の護衛艦隊。それに、鎮守府は開闢以来既に三年にもなる。所属する艦娘たちの練度も同じく日々磨き上げられているのだ。日本近海でポッと湧いたような低級深海棲艦なんかに、そうそう遅れをとるはずが無い。これは油断ではなく、積み上げられてきた確固たる信頼だ。

 

 問題なのは、改善していた深海棲艦の出現頻度が何故今になって復活してきたのか、ということだ。

 そもそも自衛隊が汎用化艤装を組織的に運用できるようになって以降、日本近海の哨戒と雑魚狩りは自分たちでやるようになっていたはずだ。

 

「往復四日の護衛作戦での戦果が二五〇隻ですか。ここ三ヶ月の平均は四〇隻ですから、明らかに異常です。それも、ほぼ全てが昼間の襲撃」

「ええ。今までなら自衛隊の討ち漏らしがたまに現れる程度で、残りは自衛隊の活動できない夜に湧いた奴くらいだったのが、今回は全部昼に来たわ」

 

 戦果の内訳だが、敵駆逐艦級二〇三隻と軽巡洋艦級二七隻、重巡洋艦級が六隻に軽空母が八隻、そして正規空母が六隻も出てきたらしい。全て沈めたそうだが。

 艦隊の内訳では夕立と時雨がぶっちぎりのワンツーフィニッシュ。何が終わっているのかは知らんがな。夕立が正規空母三隻を含む四八隻、時雨が重巡五隻を仕留めた上で四〇隻も沈めている。あとは皆二〇隻前後だ。白露型は強いなぁ。

 駆逐艦の酸素魚雷は本当に強い。重巡や雷巡ほど物量的に強い訳ではないが、とにかく命中率が高いのだ。

 そもそも視認しづらく静音性もそれなりな酸素魚雷だが、打ち出したら基本的に真っ直ぐにしか進まない。

 それ故に、発射時の微妙な角度がかなり重要なのだ。

 発射管がそこら中にある雷巡などは一本一本の照準をきっちり合わせるのが苦手なため、無駄打ちも多い。その分避けにくいのだが。

 重巡はどちらかというと砲撃重視だったりするため、魚雷発射管の微調整が間に合わなかったりもする。

 その点、駆逐艦は機敏な動きで体勢をかなり迅速に整えることができるので、絶妙な発射角を作り出すのが総じて巧い。

 それが駆逐艦勢の高い戦果に繋がっているのだろうが、夕立と時雨に関してはちょっと違う。

 

 駆逐艦は基本的に敵艦隊に突っ込んでいくものだが、二人はかなり非常識な吶喊を好む。

 回り込むとか撹乱するとか、そう言った戦術的な動きが全く無い、ほぼ一直線の猪突猛進だ。当然、必要最低限の回避はするが。

 二人とも普段は普通に可愛らしい少女なのだが、いざ戦場となるとかなり凶暴らしい。

 直進しながらの砲撃で駆逐艦級を蹴散らし、行き掛けの駄賃かのようにばら撒いた魚雷で軽巡や軽空母を沈め、エモノの正規空母や重巡にありったけの魚雷を叩き込んでいく二人はかなりピーキーで扱いづらく、旗艦を務める艦娘からの評判は賛否分かれる。その点綾波は周囲との連携を意識して無双していくので、大体誰と組んでもテンポよく敵を沈めていくらしい。

 五十鈴なんかはそこら辺上手く扱えるようで、お互い信頼し合える良い関係である。

 神通は二人を重用しているものの、彼女自身が二人に輪をかけてキレてる特攻をかましまくるので、夕立と時雨の方が涙目になるようだ。普段神通の突撃についていける駆逐艦なんてそんなにいないから、割と本気を出してもちゃんとついてくる二人のことを神通はかなり気に入っているだけに、どうにもままならぬ艦娘関係を感じる。

 逆に合わないのが阿武隈とかだな。夕立と時雨の二人は阿武隈を慕っている気もするが、戦闘中はそんなのお構いなしで突っ込んでいくので、指揮をする阿武隈はいつもあわあわさせられていると聞く。

 

「何にせよ、一度本土に連絡をした方が良さそうだ。自衛隊に何かあったのかもしれないしな」

「そうね。それが無難ね。今の所は大した問題でもないわけだし」

「では、早速連絡を取ってきます」

 

 大淀が秘書艦室に帰っていく。恐らく電信か何かで本土と連絡を取るのだろうけど、どんな風に報告するかはもう一々俺に確認させないことにしている。どうせ俺には判断つかないし。まぁ、これも信頼ってやつだな、うん。

 

「じゃあ私も戻るわよ。艤装の整備とか補給とかあるから」

「ああ。しっかり休んでくれ。報告ご苦労だった。それと、護衛艦隊の総旗艦もな」

「あら。五十鈴にはあの程度なんでもないわよ。でもいいわ。その感謝、受け取ってあげる」

 

 相変わらず自信満々な奴だ。心なしか組まれた腕に支えられている二つのふくらみのドヤ加減もマシマシに見える。

 

「だからどこ見てんのよこのスケベ!」

「お前の胸だ! あとスケベとはなんだ!」

 

 形の良いお尻を向けて執務室をプリプリと出て行く五十鈴を見送った。

 乱暴に扉を閉めるのはあまりよろしくないと思うぞ。




五十鈴ちゃんってかなりスタイル良いですよね。
改二の立ち絵を見た時は本当にびっくりしました。
こういうのを戦艦クラスのポテンシャルっていうんですよね。

とりあえず二月の忙しさは脱したと思ったら既に月末とかちょっと何言ってんのかわかんないですね。
来月というか明日からどうなるかもまだ不透明なのが恐ろしいところですが、せっかくイベントも丙ヘイ言いながらクリアしたことですし、もうちょっと色々書きたいなぁと思う次第です。
Zaraちゃんはともかくとして、沖波ちゃんとかいう未実装艦はいつ頃来るんですかね? ドイツ艦の重巡とかも早く実装されるといいなぁ。空母はもういるのに……。

何というか、よりグダグダな更新になっていきそうですが、おヒマな時にこれからもお付き合いくだされば幸いです。
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