株式会社 鎮守府   作:不可

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34. 大攻勢

 先日の、輸送航路での敵遭遇率増加の報告から二週間ほどが経った。

 様子見をしていたのも三日程度で、連日同様の報告があったため護衛部隊を少し増強することにしていた。

 新造の艦娘もいることだし、そういった新規の仲間の練度上げにはちょうど良かったので、従来のシフトを少しいじるだけでどうにかしたらしい。いつの時代でも新人というのは集中的に扱きあげるのが肝心なので、結構なことである。休みが減ったのは可哀想だが、低練度の内からあまり日を置いて出撃するのはむしろ成長が鈍化しそうという二水戦の軽巡達の訴えを尊重した形だ。

 頑張れ新人達。演習じゃない分まだ楽だろう。

 

 流石にウチの鎮守府が護衛艦隊のシフトを変更してまで対応するという事態である。本土の防衛部隊に連絡して質問しないわけにはいかない。

 そもそもは向こう側から、汎用化した艦娘用の艤装を装備した自衛官の運用で近海の深海棲艦は受け持つ、と言い出していたのだ。それがどうにも上手くいっていない。何かあったのは確実と見て、詳しい事情を問い合わせていた。シフト変更の翌日に。

 

 つまり現在から十日ほど前に問い合わせをしたというのに、今日に至るまで「調査中です」やら「担当が会議中です」やらともったいぶってロクな返事をよこさなかった本土の連中に、流石の大淀さんも呆れ果てたようです。

 相手の面子を気にして、最近では割と控えめにしていた龍驤の式神による諜報活動を久々に全力稼働してもらった。

 するとまぁ、当然と言えば当然なのだが、式神操作の技術に関しては空母連中が束になってかかっても敵わない元一航戦の彼女はものの数時間で事態の詳細を報告書にまとめてくれた。大活躍すぎる。

 

 そんな龍驤ちゃんの暗躍もあって判明した事態だが、正直なところ、こちらとしては何ともしがたい。

 ここ南鳥島鎮守府のある本土の北東から南東にかけての広い海域は、我が鎮守府の艦娘たちの戦果によって完全に制海権を掌握できている。

 沖縄諸島などがある南西部に関しては、遠いしそもそも守るべき人間もいないので放置気味だ。それ以南の海域に関しては潜水艦娘による哨戒をたまにするくらいで、ほぼノータッチだ。北海道周辺海域に関しても同様で、アリューシャン近くは遠目で警戒するに留めている。守る必要がないからだ。しかし太平洋方面から侵攻する全ての深海棲艦はウチで対応しているのだから、文句は言わないで欲しいと思う。というか、それらの島々の周辺海域を制圧するのは簡単だが、維持ができない。できないというか、できることはできるけどやりたくない。遠いから艦娘を派遣するにも大変だし、彼女たちが全力を振るうための補給を続けるのも大変だからな。

 そんなこんなもあって完全に放置されている本土の西側、つまりは日本海方面だが、今回はこちらが大変な問題になっているらしい。

 

 大変な問題になっているのに本土から鎮守府に支援要請などがないのは、被害を実際に受けているのが日本ではないからなのだ。

 

 どうにも日本の遥か南西、台湾沖というよりは若干沖縄諸島よりの位置で発生した深海棲艦の大規模な勢力が、いつも通り黒潮に沿って太平洋方面に向かうことなく、偶然か否かはわからないが対馬海流に乗って日本海側に攻め入ったらしい。

 いつもの流れと全く違う深海棲艦の動きに、国防首脳部は泡を食って対応を急かしたようだ。逐次的に投入されたミサイル護衛艦やら水上特攻隊となった自衛官たちは、散発的な攻撃だったためにロクな戦果を上げることもなく悉くが海中に没した。

 すわ、日本海沿岸部の都市が壊滅するかと非常事態宣言を発令するか否かのタイミングで、深海棲艦の部隊がそのまま北上してしまった。

 そう、これまで日本と中国が地理上の盾となって被害を免れてきた朝鮮半島が標的となってしまったのだ。

 

 ここまでの話を聞いて俺は、ここに作為的なものを感じてしまった。この深海棲艦の動きは恐らく意図的なもの、深海を巡るエネルギー総体の意志に違いない、と。

 多分ヤツは、エネルギー総体の影響を受けた日本人が勝手に死ぬのは大歓迎している。一方で鎮守府産の食料を摂取していない半島の人間が勝手に死んでいくのがもったいなく感じてしまったのだろう。

 朝鮮半島は深海棲艦による侵攻こそないものの、外国との交易が完全に途絶した今、かなり治安が悪化しているため、ほぼ統治不能状態の世紀末シティと化しているから、結構な人数が内紛で毎日天に召されているらしい。

 それでエネルギー総体は、どうせ死ぬならと、自分で積極的に攻め滅ぼすことで人類の魂に刻まれて集積されたエネルギーの回収に乗り出したのだろう。

 

 もはや無法地帯と化していた朝鮮半島には、深海棲艦の侵攻を団結して防ぐという組織的な動きは望むべくもなく、沿岸部から内陸深くにかけてまで恐ろしいほど順調に壊滅していったらしい。

 どうにかこうにか向こうの政府が日本に対して救援依頼を出した頃には、半島の八〇%ほどが既に敵の手に落ちていたらしい。

 

 それが昨日のことらしく、昨日になってやっと日本も敵部隊の偵察を終えたらしい。

 それまでは九州方面の国防部隊が全滅した穴埋めのために、本土の防衛部隊、特にウチの鎮守府の支配海域に近い所の部隊が派遣されていたから最近では物資輸送航路での接敵率が上がっていたようだ。

 それはそれでいいから、せめて報告だけはよこしとけって話だ。面子が邪魔してできなかったのかもしれないが、もし仮にこちらの戦力では対応できずに、鎮守府からの物資供給が途絶えたらどうするつもりだったというのか。

 こういう補給関連を軽視しがちなのは日本の首脳部の悪癖もいいところである。つい最近まで物資の欠乏に喘いでいたというのに、全く学習しないあたりがむしろ凄い。

 

 今日になって日本海側の戦力を整えた日本の自衛隊だが、既に朝鮮半島の救援は絶望的というか不可能だ。これまでの進攻速度を考慮するに、むしろ既に中国領に侵攻を始めていてもおかしくないくらいだ。

 よって日本が取るべき手段としては、中国の軍と連携しての挟撃となるのだろうが、多分無理だろう。

 敵の部隊の勢力が強すぎる。

 

 確認されただけで駆逐艦級が三〇隻以上、軽巡洋艦級が二〇隻以上、重巡洋艦級が一〇隻前後、戦艦が八隻以上、軽空母を含む航空母艦が四〇隻以上というだけでもどうしようもない。空母が全て五〇機程度しか航空機を扱えないとしても、最低で二千機以上の航空戦力を持っているのだ。人間の戦力ではもはや太刀打ちできないというか、ウチの鎮守府でも鳳翔さん抜きではかなり厳しい。

 これだけでもかなりどうしようもないっていうのに、敵の中核をなす存在がまた理不尽すぎる。

 以前、戦艦棲姫に尋ねて教えてもらっていた姫級や鬼級の中でも特に危険で厄介な深海棲艦。

 ほぼ無尽蔵に航空機を生み出し続け、その上で理不尽な火力と再生力で敵をねじ伏せ回る姫級の中の姫。

 棲姫とは異なり、自ら単体でエネルギー総体から補給できるので、棲地に縛られることなくあらゆる海を駆け回ることもできる移動型拠点。

 戦艦棲姫ですら、一対一なら確実に負けるし、随伴艦が深海棲艦なら何隻いても意味がないから結局負ける、と言わしめる強敵。

 その名も飛行場姫が居るのだ。日本の自衛隊と中国軍の戦力がどれだけ揃っていたところで、本当にどうしようもない。




ご無沙汰しております。更新の間を空けに空けてしまって申し訳ありません。
よもやこれほどまで投稿できないとは、この作者をしても見抜けませんでした。節穴どころかちくわ並の貫通穴ですね。

そして安定の説明回。地の文ばっかですね。いえ、一応提督の独り語りではあるんですが。

この世界での棲姫たちは棲地のトップとして出現するので、棲地からは基本的にあまり離れられません。
飛行場姫も姫級ではあるんですが、彼女の場合は飛行場姫自身が棲地みたいなものなので、動きがクッソ遅いくらいしか弱点がありません(最大戦速5ノット=時速9.26キロ)。
この世界ではかなりの強キャラです。エネルギー総体から直接補給できるので再生力的には無限に復活できますからね。

次は今週中にあげたいなと思います(白目)
次もお読みいただければ幸甚です。
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