株式会社 鎮守府   作:不可

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※誤字を修正しました。(2016.03.17)


35. 備えはしておく

 移動式拠点型深海棲艦、飛行場姫の襲撃。流石に強烈なニュースだった。

 そもそも人類はまだ飛行場姫という存在の性能を観測できていない。あくまでウチの鎮守府に戦艦棲姫がいてくれたからこそわかった情報なのだ。

 それを知らない日本の首脳部が、人道的な理由か政治的な思惑かはともかく、自衛隊を突っ込んで解決しようとするのも仕方ないのかもしれない。

 だが、どれだけ頭数を揃えたとしても無駄だろう。

 

 そもそも艦娘でもない生身の人間では、艦載機の機銃ですら致命傷になりうるのだ。当然、駆逐艦の砲撃などは夾叉するだけで命は無い。

 そんな艦載機が最低でも二〇〇〇機はいる目算なのだ。明らかに機動力で大敗を喫している水上バイク程度で凌げるものでは無い。

 

 何が酷いって、飛行場姫は単体でそれ以上の運用能力があるところだ。

 通常の飛行場姫の航空機保有数は五〇〇機程度の設定らしい。この時点でフザケンナと思ったが、まぁ、棲地に準ずる存在だと考えれば不思議でも無いだろう。実際、南鳥島棲地を調伏してできているウチの鎮守府の基地航空隊は一〇〇〇機を運用している。索敵が主任務なので、航続力を重視して二式大艇がメインなのがかなりカオスだ。

 まぁそれはともかく。飛行場姫は保有数五〇〇の航空機に加えて、航空機の生産能力まで持っている。生産量に限界はなく、無尽蔵に生み出し続けられるのだ。

 ただし、その生産速度は鎮守府と比較すれば割と遅いが、人間社会の製造業の基準で考えると奇跡のバーゲンセールだ。

 大体五分に一機の航空機を生産できるらしい。一時間に十二機、一日フル稼働で二八八機が出撃してくるらしい。

 

 それでも飛行場姫自身のキャパシティが五〇〇機しかないから、本当に無限の航空機を運用できるというわけではない。飛行場姫に戻って燃料を補給したらすぐに飛び立って、という自転車操業で頑張れば最大で四〇〇〇機ほど運用できるらしいが。

 単体で四〇〇〇機もの航空機を操って侵攻する飛行場姫が、最低で二〇〇〇機の艦載機を伴った一〇〇隻以上の深海棲艦を引き連れている。

 もはや絶望すら残らないだろう。

 

 というかもう、ウチの戦力でもかなり厳しい。

 少なくとも遠出して叩きに行くのでは勝ち目がないだろう。補給が追い付かない。

 敵の航空戦力にしても難しいところだ。鎮守府の航空隊を全機烈風に機種転換して鳳翔さんと龍驤ちゃんの戦闘機部隊が全力で応戦すれば多分抑え込めるけど、つまりこの三者が揃ってなければ向こうに押し切られてしまう。

 深海棲艦の部隊に関しては量が多いだけなので、戦艦棲姫と艦娘が大規模艦隊を組めば対処できるだろう。事故が怖いが。

 

 やはりどう考えても向こうの航空戦力が理不尽すぎる。

 

「提督、どういたしますか?」

 

 龍驤ちゃんがまとめてくれた報告書を睨んでいる俺に声をかけてきたのは秘書艦筆頭である大淀だ。安定のエロスカートから覗く太ももが眩しい。あと彼女を見ていると何故か牛丼が食べたくなってきた。何故だろうか。

 ちなみに、提督たる俺の執務机を挟んで立っている彼女の横には、この報告書をまとめてくれた龍驤ちゃんもいる。彼女を見ていてもどうしてか牛丼が食べたくなるなぁ。何故なんだろうか。

 

「どうもこうもない。手の打ちようもないし、向こうが何か言ってくるまでは黙っているしかないだろう」

 

 飛行場姫の詳しい性能などを説明して手を出すなと言っても、どうやってそんなことがわかったんだとか訊かれたくない。戦艦棲姫は完全にウチの家族の一員となってはいるが、それを向こうが理解してくれるとは思えないしな。

 鎮守府の仲間に深海棲艦がいますなんて正直に話してもメリットが全くないんだから、秘匿せざるをえない。だから情報の提供元は明かせない。

 どう考えたって面倒ごとにしかならないんだから、飛行場姫についても教えないほうがこっちのトラブルが抑えられる。

 まぁその代償に自衛隊の志ある若者たちが死んじゃうんだけど、仕方ないよね。そんな見知らぬ他人の野郎どもより、俺の娘同然の美少女で可愛い艦娘たちのほうが圧倒的に大事なんだから。

 

「そうやなくて、ウチらの備えはどうするっちゅう話やって」

「はい。現在の鎮守府の備えでは、壊滅することはありませんし相手を撃退することも可能ではありますが、こちらが受ける被害も相当なものとなることが予測されます」

 

 確かに。現在の鎮守府が保有する航空隊はたったの一〇〇〇機だ。いや、たったの、とは言っても一拠点の持つ戦力としては全く破格のものではあるんだけどね。比べる相手が相手だから、一〇〇〇機といえども安心はできない。

 

「そりゃあ、当然航空隊の拡充はするとしてだ。ウチの航空基地としての運用限界ってどのくらいなんだ? あと三式弾はとりあえず量産しておこう。戦艦と重巡の娘たちには通常装備の三式弾の割合を必ず六割以上にするように通達するように」

 

 俺の鎮守府の異能が完全にチートとはいえ、物理的に存在する施設なので、やはり航空機の運用にもそれなりの制限がある。

 艦娘同様に、鎮守府でも発着陸に関してはべらぼうに簡略化というか何かそんな感じになっているから、かなりのペースで攻撃隊やら迎撃隊を出撃させられるんだが、それでも一機が発陸するのには五秒くらいかかる。

 同時に出撃できるのは三機までなので、仮に一〇〇〇機全部を出撃させようとすれば、約一六六七秒、つまりおよそ二五分はかかってしまう。

 それ以外にも、格納庫というか保管場所だったり、整備の施設と回転率などによるキャパシティの問題も多分あるだろう。

 

 そのあたりの細かいところは、俺自身の異能であっても全く把握できていないので、尋ねておかねばなるまい。

 

「今後も安定して運用していくことを考えるのでしたら最大で一五〇〇機といったところです。それ以上は完全に需要数と乖離してしまいますので、単なる無駄になってしまいます」

「陸上攻撃機とか飛行艇やなくて、艦載機の戦闘機とか攻撃機やったら、ウチらの予備機としても確保できるから、せやなぁ……多分二〇〇〇機までならいけるんちゃう?」

 

 空母組の艦載機は出撃するたびにどうしても損害を受けてしまう。撃墜されたり故障だったり破損だったりと理由は様々だが、修理や補充が必要なので、そのための予備機は常に用意されている。

 ただ、今のところ流石に総取っ替えするほどの予備は用意していない。

 出撃した艦娘の艦載機が全て撃墜されるなんてことはまず起こらなかったからだ。

 いい機会だし、予備を確保する意味でも増産はしておくべきだろう。

 

「整備に支障が出たり、搭乗する妖精さんたちの慣熟訓練が中途半端になる恐れがありますが、後ほど不要な機体を解体処分する前提でしたら三〇〇〇機まで配備することは可能ですが……」

「オススメはできへんなぁ。相手の数もどエラいから、こっちも数揃えたいところやけど、連携が巧くできへん味方はむしろ戦力低下につながってまう」

「その通りです。更に言えば整備の信頼性は飛行機の生存率に直結します。機体を増やしすぎて整備の質を落とすべきではありません」

「そうだな……では取り敢えず現在配備中の二式大艇を烈風に機種転換しよう。今回は航続力の高い索敵機よりも機動性の高い戦闘機の数が必要だ」

「現在配備中の二式大艇は七〇〇機ですので、三五〇機を烈風に入れ替えることになります。残り二〇〇機は一式陸攻、一〇〇機が各種艦載機の予備機です」

「おぉぅ! 一気に戦闘機が増えるんやね! でもまだちょっと心許ないでぇ?」

 

「そうだな。烈風を一〇〇〇機まで生産。彗星を二〇〇機、流星を五〇機追加して合計で一九〇〇機。というのはどうだ?」

「ええやん! 戦闘機が一〇〇〇機もおるんはマジで興奮するで! 鳳翔が全部操れたら相手が二万機おったって負けへんで!」

「無茶言うなよ。それで、大淀。今から製造するとして、配備完了までどのくらいかかる?」

「最優先は烈風やで! それから彗星で、最後が流星や。相手の数が数やからな。雷撃機は低空やし飛行進路もロクに変えられへんから、相手の防空網をまともには抜けられへん」

「二式大抵を烈風に入れ替えるのに丸一日はかかります。同時に新規で烈風を量産させますが、工廠をフル稼働させても更に丸一日が必要ですね。その間には三式弾の製造がほぼできません」

 

 大淀はそういうが、丸二日で一三五〇機もの戦闘機を量産できるんだから、まったく鎮守府はチートだぜ。

 しかも今回の場合は超鈍足の飛行場姫ちゃんが相手だ。相手が攻めてくるとしても、時間的猶予はまだまだある。

 

「三式弾の配備に関しては難しいですね。戦艦組はともかく、重巡組は元々夜戦の担当がメインでしたので、三式弾を装備している艦娘がほとんどいません。在庫から回しても、通常弾と三式弾の割合は七対三が限度です」

「それでも無いよりはマシだろ? 今は取り敢えず、重巡全員でなくてもいいから、出撃する部隊の戦艦か重巡には必ず装備させることにしてくれ」

 

 まぁ、今回の飛行場姫の目的は朝鮮半島と中国内陸部を攻めるための橋頭堡になることだろうから、多分日本に侵攻してくることは無いと思うんだけどな。




 何か意外と書く時間はあった模様です。
 ちなみに、艦隊の数も飛行機の数もですが、深海棲艦であれ鎮守府であれ物量チート全開です。自分で書いてて思ったんですが、一〇〇〇機ってなんっすかね。(白目)
 でも実際、これくらい理不尽な敵じゃないと現代の人類は追い込まれてくれないと思うんですよ! そう考えるとむしろ優しすぎな数である可能性が微レ存……?

 頑張れば次も早めに更新できそうなので、またお読みいただければ嬉しいです。
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