結局派遣された自衛隊は全滅した。
不幸中の幸いというべきか、深海棲艦の艦載機や航空機は小型ながらもかなり撃たれ弱いので、一般的な人類の使う防空兵器がある程度有効に使えたらしい。それでも光学センサーを含むあらゆる観測機器に捉えられないわけで、火器管制システムというのか何というのかは知らないが、自動照準の対空装備は相変わらず使えなかったが。
単純に、空間いっぱいに弾幕を張ればそのうち当たってくれるし、当たれば一応撃墜できる、ということはわかったので、人類の持つ対抗手段が増えたことは喜ばしいことだろう。
ただ、割と節約志向だった現代の対空兵器ではそういった物量戦が想定されていなかったらしく、念の為に持ち込まれていた機銃用の弾薬は、開戦後たったの十分で溶かしつくしてしまったらしい。ちなみに、その戦果はおよそ二〇機となっているので、まぁ悪くはないだろう。今後は数を用意すればもっと効率は上がるはずだ。
自衛隊員の人員数よりも多い航空機の襲撃に加えて、遠方からの一方的な砲撃を食らった自衛隊員は、正しく絶望しかなかったらしい。悲しいことだ。
掛けなくていいちょっかいをぶちかまして強烈なしっぺ返しを堪能した日本首脳部は、流石に責任問題を追及されたらしく、一部の誠実な指導者たちが更迭されまくっていた。
ちなみに大した損害もなかった飛行場姫たち一行は、何事もなかったかのようにそのまま朝鮮半島を北上して蹂躙し尽くした挙句、中国の都市を幾つか蹴散らしまくってからロストしたらしい。
如何に棲地に準ずる存在とはいえ、流石に深海を巡るエネルギー総体から離れた陸地で暴れ回ればガス欠になるらしい。
逆を言えば、それだけ内陸の奥深くまで引き込まなければまともに対処できないという話でもある。恐ろしすぎるな。
下手な色気を見せずにさっさと放置していれば日本の防衛力もここまでは落ち込まなかっただろう、という事態に陥っている。
ただでさえ損耗の激しい自衛隊員の水上特戦隊を、一挙に数千人規模で失ってしまったのだ。
もはや自国の領海パトロールすらまともにできない。
九州南方の沿岸部と東北地方の太平洋側沿岸部で拠点防衛をするのが精一杯だろう。
「自分で自分の爪や牙を毟り取ってるようじゃ世話ないクマ」
「全くもってその通りですが、任務は任務です。提督のために、確実に遂行しましょう」
出港用のドックでぼやいているのが、今回の輸送船団護衛部隊の旗艦を務める球磨姉ちゃんだ。見るからにダルそうで、やる気の欠片もない。
そんな球磨を諌めているというか宥めているのが駆逐艦の朝潮だ。真面目な彼女らしく、俺のためならと頑張ってくれている。実にありがたい。
いや、球磨姉ちゃんとて実際に海に出れば一切油断せず、完璧に護衛任務をやり遂げてくれることはわかっている。この信頼は、これまで一度も裏切られたことがない。というか、球磨姉ちゃんが任務に失敗したことはこれまで一度もない。被害はあっても必ず完遂させてきた。
人的資源が馬鹿みたいに減った本土は政情が完全に不安定になった。
その辺の不安や不足を補おうと、鎮守府に更なる物資の増産要求が来たのだ。しかも、従来の四割増しである。
四割と書くと大したことないように見えるが、実際の量に換算すると半端ではない。ミサイルなんかはこれまで毎回一〇〇〇発も送っていたのが四〇〇発も増えたのだ。輸送船がもう一隻必要になってしまった。
こんな風に、割とシャレにならない量が増えたので、輸送船団の規模も拡大したため、護衛の際の警戒網が広がってしまった。
挙句に、本土がこれまで頑張っていた近海の雑魚掃討すらこちらで負担するようになったので、護衛部隊の規模を縮小して哨戒部隊を拡充せざるをえなくなっていた。
ちなみに、必死で計画していたシフト表が完全に無駄になった所為で秘書艦組が爆発していた。怖い。
あまりにも突然担当海域が広がってしまったため、従来の休養間隔を維持するのがかなり難しくなってしまった。それでも数日に一日は完全休養日を与えられているが、それ以外はフル稼働に近いというか、訓練に費やす時間が取れなくなったことが大きな問題である。って神通が言ってた。
実際、ウチが本土に慎重になるように言わなかったのが遠因だとはいえ、ちょっとこっちの負担が大きくなりすぎているようにも思ったので、自重しないことにした。
鎮守府周辺海域は基地航空隊の無駄に増えまくった航空機部隊で哨戒と掃討まで任せることにした。夜は今まで通り戦艦棲姫と川内と重巡組がメインだが、夜偵代わりに二式大艇をガンガン飛ばすことにした。照明弾も、艦娘が撃つより大艇から落としたほうが確実だしな。
こうして浮いた人員で、四つの掃討用の艦隊を編成し、まだまだ余っている基地航空隊からの援護機を飛ばしまくって担当海域をカバーするようにした。鎮守府には一三五〇機もの烈風が待機しているので、艦隊ごとに二〇〇機ずつ飛ばすことにして、各艦隊の空母には攻撃機のみを配備するという殺意の高い編成なので、割と安定している。索敵は相変わらず余りがちな大艇が頑張って弾着観測機の代わりをしている。デカすぎて相手の対空攻撃によく被弾するのだが、流石の頑強さで普通に帰島してくる。あとたまに爆弾を積みまくって水平爆撃で援護したりもする。基本当たらないが、意外と牽制にはいいらしく空母組の評価は高い。
輸送船団の護衛はかなり削った。対処の難しい潜水艦対策として軽巡と駆逐艦たちは外せなかったが、今は空母すらつけていない。無論、基地航空隊の一式陸攻の残りや艦載機の戦爆混合部隊がびっちり張り付いて守っているので、むしろ対応速度は上がっている。
ただ、対潜警戒だけでいいとは言っても、十数隻もの輸送船を囲む護衛の艦娘は今のところ六隻だ。信頼と実績の球磨姉ちゃん的には気が休まらないらしい。
「まぁ、しばらくはこんな感じが続くから頑張ってくれとしか言えん。すまんな」
「提督が鬼だクマー」
「早ければ半年くらいで効果が出るはずですので、それまでの辛抱ですよ」
今日の見送りは霧島が付き合ってくれた。彼女も秘書艦組の一員として、俺の自重しない作戦を考案してくれた一人だ。しかしこいつはメガネをクイッとする動作がやたら似合うな。
今回ウチが忙しくなった原因が自衛隊の人員不足なので、養成やら志願者の促進やらでかなり無茶な支援を出しまくったのだ。
多分本土の生活は大荒れだろうけど、俺としては娯楽品の品質と量がある程度担保されていればそれで十分なので、問題なしだ。
奨学金の増額やら輸出品の廉売で収支は多少悪化したものの、未だに無駄な黒字が多くて逆に困るくらいだ。今だって不当廉売もいいところの値段で売りつけてるのに、こっちがノーコスト過ぎて赤字になれない。
ここは株式会社らしく、何か新規事業を本土で開かせて、適当に散財するべきなんだろうか。
まぁともかく、戦災孤児とか未亡人とかがかなり増えただろうから、そういった人たちの支援機構とかを立ち上げておこう。
あとは介護施設とか保育施設とかを建てた方がいいんだろうけど、その辺はお金だけ出せば良いんだろうか。艦娘たちに本土で働いてもらうわけにはいかないし、結局は金を出すだけしかできないんだけどな。
いやぁ、思ってた以上に成金になっちゃったなぁ。
時間はできるものではなくて作るものです! うおぉわあー!
書けたといえば書けたんですけど、相変わらず肝心の蹂躙シーンを飛ばしていくスタイル。鎮守府から一歩も動けない提督の一人称だからですね。仕方ないですね。
勝手に倒れていく本土ですが、半分くらいは提督の所為でもあるんです。
情報提供さえあれば自衛隊だって無謀な交戦は避けられたかもしれませんからね。まぁ、そこに至るまでの信頼感を持たせられなかったという点では本土の指導者たちの責任が大きいので、何とも言えませんが。だって面子を気にして実績抜群の鎮守府に頼まず自衛隊を磨り潰しながら運用している集団ですもの。そりゃあ深海棲艦の一部と通じ合って情報を得ました、とか言えませんよ!
あれ? やっぱり首脳部が悪いのかな?(棒)
提督は頑張って奨学金の拡充とか投資の拡大でじゃぶじゃぶお金を使っているんですけど、輸出量が増えるにつれて収入も桁違いに増えているので、中々収支が合いません。
お陰様で作中の提督は廃課金の中の廃課金ソシャゲーマーです。一日十万円までは課金じゃないってくらいの廃課金です。羨ましいですね!(血涙)
最近ちょっとこの設定チートすぎるよなぁって思ってはいるんですが、全世界の軍隊に打ち勝つ深海棲艦勢から鎮守府一個で日本を守るにはこれくらい理不尽じゃなきゃ無理だもん、と思い直すようにしています。(白目)
次の更新がいつになるかはちょっと不明ですが、近いうちに投稿できるよう頑張りたいと思いますので、よろしければ次回もお付き合いください。