幻想郷物語 ~if be if story~   作:竹馬の猫友

6 / 6
ハーメルンのマイページを開きこの小説の最終更新日時を見る。
私は絶句した。
気付けば2ヶ月経とうとしていたのだ。


―――なにが原因だったのだろうか。

自分の頭の中に直接語りかけてくる声。

「サボろうとしてたんじゃないのか?」

―――……う。

その言葉一つ一つが心に深く深く落ちてゆく。

「楽しようとしてたんじゃないのか?」

―――ち…う。

だが、そう考えるのも不思議ではない。

「失踪しようと…」

―――違う!ただ、ただ…。

一番聞きたくない言葉を遮り私は叫ぶ。しかし、言葉が続いてこない。

「ほら、何も言えないじゃないか。」

―――…言える、わけ…ないだろ。

一瞬の静寂。




艦これに没頭してたなんて!!!

ほんとすんませんでした。


第6話 覚悟・妖虫・決意

 魔女とは超自然的な力を使い人畜に害を及ぼすとされた存在である。

 

 たまに私のことを”魔女”と呼ぶものがいるが、それは違う。と声を大にして否定したい。あくまで私は”魔法使い”なのだ。魔女も魔法使いも元来は同じ意味だが、私は違うと私なりの自論を持っている。魔女は超能力のようなものを使うと考え、魔法使いはあくまでタネのある術、言うならば化学の力。それを使用し様々なことをするのだ。しかし、これはあくまで私の言い分。他のものからは「それはおかしい。」などの否定的な意見が飛んでくるだろう。

 

 だが、それでも私は自分の意見を曲げない。私は魔法使い、そう、”普通の魔法使い”なのだから。

 

 この勝負は”普通の魔法使い”としての始めての戦い。だから、

 

「私は勝たなければならない!」

 

 私は目の前の虫の妖怪に向かって鞄から取り出した小さい小瓶を二つ投げつける。相手も驚いたことだろう。威勢よく何か投げつけてきたと思ったら、中身はただの小麦粉と、酸素を詰めた瓶だなんて。

 

 投げた瓶は少しの時間差で投げている。ただ、時間差を置いて投げたわけではなく、後に投げた瓶のほうが若干力を込めて投げている。なぜか?相手にその瓶を当てる前に瓶同士でぶつけて相手の目の前で割る為だ。

 相手は不思議そうに瓶を眺めており、二つが目の前で割れた瞬間少しびっくりしたようだが、ただの小麦粉だと分かりやはり不思議そうに眺めていた。

(よし、そのまま不思議そうにしてて…!)

 私は心の中でそう呟く。相手はただ視界を妨害しただけだと判断したらしく動かない。それが敗因だと知るのはすぐだろう。

 鞄の中からまた一つ取り出す。今度は小さい細い棒。しかし、ただの棒ではない。棒の先端に頭薬をつけたもの。所謂マッチだ。しかも、燃焼性が上がるように頭薬は少し工夫してある。燃焼性が上がることにより、投げたりしても燃え続けるようにしたのだ。なぜそうしたか?無論投げる為だ。どこへ?その応えはすぐに分かる。

 

「(今だ!)」

 

 私はマッチに火を点け、目の前の小麦粉が舞い、空気中の酸素と混ざっている箇所へと火の付いたマッチを投げつける。そして、その瞬間後ろへ全力で飛び退く。もうすでに分かるだろうが、私は粉塵爆発を狙ったのだ。本来なら戦闘中に狙って出来るようなものでもないし、下には先程の少年と私を庇ってくれた少女の妖怪がいる。もし万が一があれば巻き込んでしまう。しかし、それはお互い空に飛び上がった為解消された。空へ出た為空気は多くあるし、小瓶に詰めた酸素でさらに空気中に酸素を増やした。これならいける。そう頭で考え実行したのだ。

 全力で遠のいた瞬間、虫の妖怪が何かを察したらしくこちらに向かってこようとしたが、それは悪手だ。こちらに向かってこようとした瞬間、マッチが小麦粉と酸素の混ざった箇所に到達。その瞬間、爆発音が周りを包む。しかし、小麦粉の量をあまり多くしなかった為に大規模とまではいかない程度の爆発に抑えられた。そしてその爆発した箇所から下へと何かが落ちてゆく。

 

「よかった…。これは使わなくて済んだ。」

 

 上着のポケットに潜めた球体に触れつつ落ちていく虫の妖怪を見る。受身を取ろうとしないところを見ると気絶したか、運悪く死んだか、だ。だが、相手は妖怪。油断はしない。こちらにはまだスペルカードもある。しかし、慢心はしない。次の策を練る。まだ鞄には材料はある。戦闘用に持っていたわけではないが、ダメージを与えられるものは多くある。しかし、どれも致死性は無い。それこそこの粉塵爆発が一番ダメージを期待できるものだったのだ。

 

「次点では”あれ”かな。」

 

 今度は液体が入った小瓶二つを手に取る。しかし、これは純粋に危険だ。下手をすれば私も危ない。それに妖怪に効果があるか分からない。しかし、やってみる価値はあるだろう。虫の妖怪が落ちらしい音を聞いた後にその二つの液体を混ぜ合わせる。混ぜたのは濃塩酸と濃硝酸。それを3:1で混ぜたのだ。手元の瓶に橙赤色の液体が出来上がる。これこそ、王の名を持つ水。

 

「出来た。王水…。」

 

 銀以外ほとんどの金属を溶かすという最強の性質を持った液体。もちろん人体にとっては害悪でしかない。劇薬だ。今回この液体の入った瓶は注意して取り扱わなければならない。この瓶は特別性。他の小瓶と違いガラスが薄いのだ。つまりは簡単に割れる。下手に力を加えようなら私の手が黒こげになってしまう。

 これを虫の妖怪に投げつければほぼ勝敗は決まったものだろう。

 

「…今更だけど私弾幕ごっこやってないな。」

 

 本当に今更である。しかし、相手は少年を食べようとした犯人。容赦をするわけにはいかない。そう思っているとゆったりとした速度で虫の妖怪がこちらに飛んできた。しかし、相手からは敵対心というか覇気というかそういったものが感じられない。

 

「…?」

 

 どうしたのだろうかと観察しているとその妖怪は器用に空中で土下座をしてきた。

 

「すんませんしたっっっ!」

「!?」

「姐さんのことマジで舐めてました!こんなに強いお方だとは思わず、俺はとんだ失礼を…。」

 

 いや、だからキャラ変わりすぎだろお前。てか姐さんてなにさ。そう突っ込みたい気持ちを抑え、なぜ今回のようなことをしたのか妖怪に聞く。

 聞いてみると、どうやら元々5人のグループのようなもので動いていたらしいのだが、些細なことが原因で喧嘩別れ、という生易しいものではなく、死人が出そうな争いの中、命からがら逃げ伸び、その腹いせに今回の事件をやったらしい。

 

「…すごいはた迷惑ね。」

「本当に反省してます。さっきの妖怪の子にも当たっちまったし…。」

 

 どうやら優しい心の持ち主ではあるようだ。本来疑うべきなのだろうがあまりにもこの妖怪が不憫に思えたのと、言っていることが嘘とは私は不思議と感じなかった。なら私から言うべきことは一つ。

 

「…いいわ。私は許してあげる。」

「良いんですか!?」

「ええ、”私”はね。さっきの妖怪の女の子に謝るのはもちろん、あなたが連れ去った男の子、その家族、里に謝りに行くの。」

「了解です!」

 

 やることが決まった虫の妖怪はそれからの行動が早かった。先程吹き飛ばしてしまった少女の妖怪。その子を探し、重症ではないことを確認し応急処置。少年には水を飲ませ、いつの間に狩ってきたのか熊の肉を食べさせ元気にさせた。

 

「(いきなり熊の肉って大丈夫なのかな?かなりお腹に堪えそうなんだけど。)」

 

 そんな私の心配は何のその。まだ十代前半らしき男の子には関係ないらしい。しかもなぜか虫の妖怪が謝ったあと意気投合。こんど遊ぼうなどと言っていた。先程食べられそうだったと言うのに暢気なものだ。妖怪の少女は気絶している為一旦私の家で看病しようと提案した。だが、その前に少年を里に帰し謝るのが先だ。

 

 

 

「本当に申し訳ありませんでした!」

 

 そう言って俺は里の皆さん、少年の家族に土下座をし謝罪する。心からの土下座、心からの謝罪。故に余計な言い訳などはしない。今回は全て自分が悪いのだ。どんな罵詈雑言でも受けるつもりだし、石を投げつけられたり棒なんかで叩かれてもそれも全て受けるつもりだ。

 頭を下げている時間が嫌に長く感じる。あたりは静寂に包まれている。素直に謝りに来た俺に困惑しているのだろうか。それとも、傷一つ負っていない少年が不思議なのか。はたまた、怒りから言葉が出ないのか。それは俺にはわからない。

 そんな静寂をザッという誰かが動く音が取り払う。次の瞬間、感じたのは軽い衝撃。どうやら石を投げられたらしい。しかし、痛みはさほど大きくは無い。あまり大きい石ではないからだろうか。それを皮切りに暴言、罵倒、それと同時に石やごみが投げつけられてきた。

 

「(そう…。これでいい。)」

 

 そうやって罰を受けようとしていたのだがピタリと物も言葉もこちらに飛んでこなくなった。何事かと思い顔を上げてみると里の者達は上を見上げていた。しかし、みな表情は血の気がなくなっている。自分もそれに習って上を見上げる。そこには2つの影。目を凝らしてみると見覚えのある妖怪が里の上空で飛んでいた。もともと俺とつるんでいたグループの2匹だ。

 

「よ、妖怪だー!」

「いやあああぁぁぁぁ!」

「早く逃げるんだ!食われるぞ!」

 

 もうその場は先程のような罰を与える場所ではなくなっていた。みなパニックになり、我先にと近くにあった家屋に逃げ込んでいた。ある者は周りのものを押しのけながら強引に進み、力の無いものは押しのけられた反動でしりもちをついたり、転んでしまったりしていた。妖怪はそんな状況を楽しんでいるのか上空で円を描くように飛んでいる。

 と、一匹が逃げている者達のほうへ急降下してきた。ついに仕掛けてきたのだ。そして不運なことに標的にされたのは俺が攫った少年。押しのけられた衝撃で転んでしまっていたのだ。危ない。そう思った瞬間、俺の体は自然と動いていた。

 

「…なにしてんだ?てめぇ。」

「見てからねぇのか?三下妖怪?」

「黙れ!」

「あぁ?能力も使えない。戦闘能力も俺より下。さらに戦いのセンスもないと来た。これが三下じゃなければ何なんだよ?この虫けら。」

 

 妖怪の手を掴んでいた俺の手が強引に外される。次の瞬間には顔に2発、両肩に3発ずつ、腹に5発殴られていた。しかし、驚きはしない。これがこいつの能力だと知っているからだ。近接戦闘ではかなり強い能力。”殴る速度を操る程度の能力”それがこいつの能力だ。以前教えてもらったことがある。合計10発の殴打をくらい視界が揺らぐ。立っていられなくなりその場に片膝を付く。ハッと嘲笑するような笑い声が聞こえた。しかし、それでも俺は立つ。

 

「はっ、まだ立つのかよ虫けら。大人しく休んでろよ。」

「…は、っ、休ま、ねーよ。」

 

 ちなみに里には姐さんは来ていない。故に増援は期待できない。俺一人で何とかしなければならない。

 

「………?」

 

 なぜそんな事を思うのだろうか。俺は妖怪。本来なら俺も人間を襲う立場の者だ。それなのに、なぜ。

 

『こんど俺の友達と一緒に遊ぼうぜ!』

『…いいわ。私は許してあげる。』

 

 先程2人の人間に言われた言葉を思い出す。酷いことをしてしまい、その上食べようとしていたのにも関わらず遊ぼうと笑顔で言ってきた少年。許されないだろうと思いつつも一つのケジメとして謝った結果、寛大な心で許してくれた魔法使いの少女。そういったことがあったからだろうか。俺は人間が好きになっていた。他の妖怪から見れば「なんてちょろいやつなんだ」なんて言われたり思われたりするかもしれない。だけど、一つ決意する。

 

「俺は、人間を守る妖怪になる!」

 

 

―――これが俺の……俺の、決意だ。




更新速度まばら過ぎてワロえない。
いや、自分の所為なんだけどさ。
ちなみに艦これやってたのは本当ですが、実際はネタが思い浮かばなかったと言うのが本音です。
てか、今回の話、虫の妖怪が主人公みたいになってるじゃん。
あ、ちなみにこの虫は準レギュラーの予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。