今日は朝から疲れた 予想外な事が発生した。
しかも加賀が、あんな事を言うとは思いもしなかった。
…………まぁ、予算が無事なのが救いではある。
工廠ではすでに自衛官達の武装になるゴム弾が作られ始めていたが
「うおお!うぉぉおおお!!」
と夕張が興奮していた。
原因はスネークの技術屋だ、何でもいろいろ作ってきたらしく、夕張とも相性が良いらしい。
何より腕が良い、その技術に興奮していた。
……私は工廠でゴム弾が作れる機械があったことに驚いたが。
弾数は3日あれば十分に作れるらしい
珍しく、いや初めて書類が全て片付いた。
時刻は23:00過ぎ、早く寝てもバチは当たらない、今日は早く寝よう。
何せ今日は彼女が帰ってきた………今頃、外は諜報合戦かもしれない。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
今日は朝からいろいろ起きた、予想外の事態が発生したからだ。
しかも、内容が艦娘との模擬戦だ。
…………まぁ、俺らだけが闘うわけじゃ無いのが救いだ。
研究開発班の奴が自衛官のためにゴム弾を作り始めていたが
「スゲェぇ!スッゲぇぇぇ!」
と興奮していた。
原因は工廠の技術屋、正しくはそこにいる軽巡洋艦。
何でも、艦娘の装備や艤装開発をしているらしく、こいつとも息が合うらしい。
何より腕が良い、あの不思議なものを作れる事に興奮していた。
……俺は不思議なものを作れるのはお前らも同じだと思うが。
ゴム弾は、3日あれば弾数は十分だという
そして柄にも無く俺は5人を呼んだ。
作戦会議をする、22:30ちょうどに全員が来た
深夜にやっても結果は同じだろうが、今日は早く済ませたい。
「……まぁ工廠の凄さは解った。で、何かあるか?」
「まだ初日ですし、分かる事は無いですね」
「自衛官・艦娘ともに士気は向上してます」
「駆逐艦の子が明らかに敵意剥き出し何ですけど……」
「……その言葉、朝のお前らに言ってやれ」
まぁ、俺もそれぞれ自衛官・艦娘に1回ずつ仕掛けられた。
よほど俺らの実力には興味があるらしい、しかも今までこんな機会が無かったらしく
双方共にやる気が高い。
「まだ22:00を過ぎたばかりですもんね」
「……ということは、明日わかるかもな」
俺の言葉を全員が理解した、全員が頷く。
ならひとまず解散だ。
「全員、装備はあるのか?」
解散する前に確認する
何せ今決まったことだ
「BOSS、俺たちは諜報班所属ですよ?」
「……そうだったな」
そうだ、こいつらは戦闘班や研究開発班に元はいたが今は一流の諜報員だ。
しかも戦闘の知識も経験もある。
想定外の事態に備える事に慣れている。
全員、指向性マイク付きの双眼鏡とサプレッサー付きの麻酔銃を手にしている。
「01:30……合流」
『……YES BOSS』
全員が鎮守府の中に消えていった。
俺も仕事を始めるために山側に向かった
夜中の警備は担当の小隊による巡回と
艦娘の一部が巡回・工廠の近くにある警備室で待機している
まあ、バレ無いように艦娘のいる寮に近づくのは簡単だ。
だが、情報を得るとなるとそれは難しい。
さすがに夜中、女の部屋に潜入するのは褒められたものじゃ無い、それに警備もいる。
そこで、高いところから指向性マイク付きの双眼鏡を各部屋に向ける事にする。
海沿いと山側にはすでに部下がカバーしているだろう。
今は弓道場から偵察している
ここはちょうど、寮の真後ろ・工廠の裏手に位置している。
俺は真ん中の部屋に向ける。
しかし、今は何も聞こえない
この指向性マイクは、障害物関係無く500メートルまでなら声を拾える
ここで、待つ。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
『全員来てる〜?』
動きがあったのは01:00
しかし、寮の部屋からでは無く
工廠近くにある警備室だ
もっとも、警備室は名前だけで造りは大きいプレハブ小屋だ。
『ああ、もういるぜ』
……俺には誰だかわからない、後であいつらに聴かせよう。
拾った声を録音し始める
『では、始めるか』
『で、まず誰が出るか何だけど』
『私たちは火力重視、だ〜か〜ら戦艦2隻に私たちから4人が一番かな〜』
『愛宕、それが一番とはちょっと言えないわ』
『……なんでよ』
『今回、私たちは主砲は使えるけど、あまり使えないのよ』
『何で〜?』
『そもそも長距離射撃がメインだから使い勝手が悪いのよ』
『それに建物を破壊しかねない』
『ということは……』
『私たち全員が基本機銃で対応する事になるの』
『けど戦艦には私たちと同じ口径の副砲があるわよね〜?』
『ああ、だから副砲を積むことになるが』
『……そっか〜、そもそも戦艦とか関係無いのね〜・・・じゃあ!一層の事、長中距離がアレなら
近距離で—–』
『『『ムーーーリーーー!!』』』
キーーーーーーン、と音が外れるほどの大音量が拾われた
思わず首をすくめる……夜中だぞ?
『いい!?向こうは1人で40人相手に丸腰で格闘術のみで訓練で処理したのよ!?』
『……自衛官さん達には悪いけどそれは弱すぎたって事は——』
『無いな、むしろ向こうが強すぎる』
『けど、私たちなら——』
『……悪いが、スネークは加賀の勘違いとはいえ、奇襲を迎撃して反撃したぞ』
『ええ!加賀ちゃんやられてたの!?』
『……加賀にちゃん付けは無いだろ足柄』
『けどスネークさんは強いです。私は体捌きを直接観てませんけど、身体つきからだと多分正面からは勝てません。もし肉弾戦をするなら、後ろから仕掛けるしか勝ち目が無いと思います』
この声の主は、なかなか観る目があるらしい
確かに正面から仕掛けたら確実に彼女たちでは俺には勝てないだろう
『それに響ちゃんが刃物を禁止にしたのは正解だわ』
『そうだな』
『ん?なんか理由があんのか?』
『そもそも、ナイフ禁止がなぜ響につながるんです?』
『……今日の昼間に、残っていた空母と軽空母、遠征帰りの竜田達の9人で仕掛けたらしい
その結果出待ちしていた空母3人はあっさり無力化・逃げようとした暁は頭に弓を喰らったそうだ』
——あの駆逐艦しゃべったのか……
『しかし、それではナイフ禁止につながりませんよ?』
『……その後10人で話していた時、瑞鶴が自分の弓を投げられた事に怒ってな』
『ああ、瑞鶴の弓を投げたのか。そりゃ怒るわ』
『理由を聞いたらしい』
『理由、ですか?』
『その答えが、“助かった”だそうだ』
『何で仕掛けられた方が感謝するのよ?おかしいわねー』
この声のやつはなぜか笑っている……腹が立ってもしょうがない
『……ナイフを暁の頭横に投げる予定だったらしい』
『っなバカじゃねか!!そんなん狂ったらどうすんだ!?』
『ああ、瑞鶴も同じ事を言ったらしい。そしたら——』
『——ナイフを投げたんですね?』
『そうだ、すぐにドアに向かって投げたらしい』
『……っそれ、何が大丈夫なんだ?』
『ナイフはドアに刺さらず、……取っ手に当てて落ちたそうだ』
『……そんなのが1人じゃなく6人もいるってか?』
まあ、あいつら全員がナイフ投げができるわけでは無い
だが近術戦闘は俺と渡り合うことはできる
『手榴弾が禁止になってよかったわー』
『で、どうするんでしょう?メンバーは』
『とりあえず、私ら2人は出たいんだが構わねえか?』
『私も出る。あと3人、陸奥は足が遅いからパスだそうだ』
『そんなの、長門も一緒じゃねえか』
『私は面での攻撃ができないなら、ちょっとキツイもの』
『そうですね』
『……フォローは無いのかしら』
『じゃあ私も出るわ〜、どんな実力なのか観てみたいし』
『私もでます!!』
『珍しいわね、羽黒が自分からやるなんて……まさか惚れた!?』
『違います!!試してみたいだけです。自分の実力を』
『……それなら、お姉さん一肌脱がなくちゃね〜』
『じゃあ、続きは明日って事で』
どうやら決まったらしい。
『明日全員暇か?私らはいるんだけど』
『午後なら空いてますよ』
『私は1日中いる』
『同じく〜』
『じゃあ、午後になったら工廠前で集合で』
『了解』
そこで欲しい情報は途絶えた、あとはドアが開く音と話し声だ。
盗聴は趣味じゃ無い、録音を止めて時計を見る、01:25、もうすぐだ。
合流地点に向かう
「全員いるな?」
すでに5人集まっている
「で、何かあるか?」
「軽巡洋艦・駆逐艦を張りましたがありませんね、寝息がよく聞こえました」
女1人が答える。
まあ、アレはまだ子供と同じだろう。
夜更かしをしてまで作戦会議をするとは思えない、仮にやったとしても昨日の今日に行動しない。
「そっちはどうだった」
男の方に聞いてみる
「こっちは空母を張りました、メンバーは決めてませんが機種を決めてましたね
どうやら低空でも戦闘機や爆撃機は飛ばせるらしいです」
「機種はわかるか?」
「明日、調べて報告します」
さて、残るは俺だ。
ここにいる5人……いや6人全員が俺を見ている
「俺は、戦艦の所の編成だけだがな」
「誰なんです?」
「それが、声だけで判断が俺には難しい……聞いてみるか?」
部下に目を合わせる、全員頷いた
そして最後の部分だけ流しその日は解散した。
翌日から、少し鎮守府の雰囲気は変わった
と言っても、別に自衛官と艦娘が険悪になったわけでは無い
自衛官達は射撃練習としてゴム弾を撃ち始め、訓練により懸命に努めるようになった。
艦娘は出撃はほとんど無くなり
遠征や演習に行っているもの以外は、陸上からの射撃練習をしていた。
工廠ではゴム弾が量産され、夕張と技術屋が目を互いに輝かせ
弓道場では加賀が瑞鶴に怒っていた
そして18:00を過ぎた時
情報戦が始まった
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「いや〜、すごいですね今日は」
俺の部下の技術屋が他人事のように話す。
ここらは鎮守府内で何が起こっているのかよく見える、さらに隣ではナイトビジョンで下での出来事を……“観察”している、“偵察”では無い。
「昨日の内に最低限の情報が得られて良かったですね」
「……ああ、そうだな」
場所は昨日と同じ、鎮守府領内のどこかの山の中
今は23:00だが、すでに自衛隊・艦娘ともに暗号や筆談による作戦会議が始まり、
その情報を得ようと双方の諜報員が総力を挙げている。
……それなりに上手くやってるみたいだが、動きに無駄が多い。
「体を壊さなきゃ良いんですけど」
「そこまで無茶はしないだろう、あくまでコレは交流だ」
「全員本気ですけどね〜」
事実、俺らの情報を得ようと何人かの艦娘が尾行してきたが俺は撒いた。
他の部下も同じらしく、この隣の技術屋は麻酔銃を使ったらしい。
「接触はできるだけ控えろ」
「……気をつけます」
まぁ、麻酔銃を使っても良い。
だがそれは気分のいい物ではない
「それで、情報は?」
「空母が使う機種ですが、スペックは……どう表現すれば良いんだ……」
技術屋の奴が頭を抱える
そんなに難しいのか……いや難しく考えているだけか?
「……カタログスペックはわかるか?」
「ああそうか。はい、ええっと」
そう言って、そいつは工廠の軽巡から教えてもらったというスペックを言った。
・戦闘機は全て時速約600キロ
・爆撃機も同じ速度が出るらしい
・武装は7.7ミリと20ミリのゴム弾
・爆撃機には、爆発物が使えないために急降下で強化プラスチックの物体を頭に喰らわせる予定
だそうだ
「爆撃機にはゴムじゃなく、もどき爆弾かー」
「……当たったら痛そ」
「そもそもなんで爆弾もゴムじゃ無いのさ?」
「何でも瑞鶴っていう正規空母がすごい剣幕でプラスチックにするよう要請したらしい」
「BOSS、なんか心当たりありますか?」
「……まぁなくは無いが」
そこまでして、やり返したいか俺に?
……もう少し本気で謝った方が良かったか。
「まぁ、大した改修じゃないんで良いんですけど」
「いやあんた止めなさいよその改修」
「無理だ、それは妨害行為になる」
そう、それは事前の妨害行為に当たる。
なら当たらないように避けるしか無い、出来ることは全力で迎え撃つだけだ。
……加賀には悪いが勝てる要素はあいつらに無い。
「…………当日新しい情報があれば言え、男と女で別れて捜索、各個撃破で行動、良いな?」
「…………向こうが一個に固まっていたら?」
「バレるな、合流してから強襲する」
「了解です」
「……何か質問は?」
昨日と同じように6人が俺を見ている
「では…………解散だ」
同じように全員が鎮守府に消える……これで上手くいくと良いんだが。
♦︎♢♦︎♢♦︎♢
時刻は01:30、場所は工廠の中
そこに艦娘の出場メンバー全員が居た
「ただいま帰りました〜」
そこに最後の参加者が帰ってきた。
「やっぱり、夜は最高だね、野戦は良いね〜」
「……姉さん、字が違います。それだと本当に戦場です」
「え?あ、本当だ」
「……では作戦会議を始めます、まず情報は何かありますか?」
加賀が話し始め、まず全員の視線が3人に集まる
「私の方は得られたよ、昨日は散歩していて正解だったよ。
集合場所が一緒だった、私らのチームに関しての情報は漏れてない。
空母は機種はバレてるけど護衛が誰かはわかって無いみたい。
戦艦は誰が出るかは把握してるね」
「……いつバレたんだ?」
「そう睨まないでよ、私に言われても……ただ昨日の時点で把握してた」
「……昨日か」
「まあ、こちらは初動が遅れてました、仕方ありません。
昨日の内に全て決まっていなかったのが救いです」
そう、昨日はメンバーや武装を決めただけで
漏れていると致命的な作戦地域については漏れていない
今から決める
「で、あの人たちの作戦は2手に分かれて各個撃破するみたい
でも、もう全員集まらないぽいから情報を得るのは難しいかな〜」
「……そうですか、神通は?
「私は作戦のみです、残りの二つは6人全員が固まって行動するみたいです」
「那珂ちゃんはー、セッティング終わったよー」
セッティングとはこの工廠周辺のセンサー設置だ
「で、何か問題はあります?」
「問題は場所ですね」
「私達は山の中にした、それが一番機動性が活かせる」
「こっちは市街地で仕掛ける、でなければ主砲が活かせる事が出来ない」
「見えてないと撃てないものね〜」
長門・愛宕が答える
ルール上、対象を目視で本人が補足しないと撃てない
制圧・後方支援に当たるためだがそもそも艦娘側が与えたハンデだ。
……もっとも戦艦が陸上で範囲攻撃を行えば、結果は目に見えている
空母による攻撃は例外的に認められている
「私達は隠れながら航空隊を発艦させて支援します。随伴艦の皆さん、護衛をお願いします」
『ハイ!』
護衛の駆逐艦 響・雪風・秋月が答える
「何より一番の脅威はスネークさん達です、我々は最初偵察機を飛ばします。山の中は無理ですが、発見次第全員に無線で伝えます」
「では、明日の午後練習しましょう」
最終の安全確認として明日は、
午前に自衛隊・スネークの3チーム
午後に艦娘の3チーム
それぞれ練習する事が出来る。
情報秘匿のため、明日はお互いの接触は食堂だけで許され
出撃や遠征任務以外の艦娘は自分の部屋に籠る
同じように、各隊員も16:00まで警備以外は籠る
「何より、ここで話したことは誰にも話さない。……イイですね?」
加賀が全員を睨む
破ったらどうなるか分かったものではない
長門や重巡洋艦の艦娘は笑っていられるが
川内三姉妹と駆逐艦は、笑えない
「では、解散」
解散とはいえ正面から出るのではなく工廠の裏から
ネズミのごとく、各寮に戻った。