「お待たせしました!どうぞ」
「……よし、行くぞ」
電話が鳴ってから20分後、POLICEと書かれた青いヘリが来た
事前に艦娘たちが水を撒いき
エアーがフレアを焚いてグラウンドに誘導した
ヘリパイロットがスライドを開け、プロペラ音に負けない様叫びながらインカムを渡される
「あんたがパイロットか?」
「とにかく乗って下さい!時間が無いんです!!」
「スネーク……頼んだ」
提督が最後に声をかける
部下はすでに乗った
艦娘たちも周りでこっちを見ている
「あんたはここの守りに専念しろ、俺らは全員連れて戻ってくる」
《飛びますよ!閉めてください!!》
「……幸運を」
提督がドアをスライドさせ閉める
直後ヘリは上昇、反転し東京方面に向かう
……どうやら大事となったらしい
「行ったか……」
「提督…………」
鳳翔が私をじっと見ている
彼女は私以上に心配なはずだ
なにせ彼女たちにとって母親の様な存在であり、
鳳翔にとっては子供の様な存在がテロに巻き込まれたのだ
「とにかく今は自分ができる事をやるしか無い、彼も言っていただろ?」
「……そう、ですね」
……確かにスネークの言う通りだ
今ここを守れるのは私達だ
足早に提督室に戻る、他の鎮守府からも何かしら電話が来るだろう
ー機内にてー
《それでいつ着くんだ?》
インカムを通じてパイロット2人とスネーク達が会話をする
《今のところ後20分で警視庁に到着予定です》
《SATと合同で出るのか?》
《……残念ながら詳細については何も聞いていないんです。
着いてからブリーフィングをするそうですが》
《犯人からの要求は、ヘリと50億……でしたっけ?》
《そう聞いてます、あと要求が飲まれなければネットで公開処刑……だとも》
《しかも対象が艦娘ときたから____》
《俺らが呼ばれた、全員現場は叩き込んだな?》
『はい!』
待機中にスネークたちは周辺の建物の配置は徹底的に叩き込んだ
方角さえ言えば場所もわかる
建物の内部構造も覚えていたが、
その建物自体変わったので今は頭には入っていない
《……ちなみにそのマスクは?》
《気にしないで下さい。私達は顔を知られても良いですが、何かと面倒が起きるので……》
《女性なんですか!?》
《……SATの隊員にもいるだろう?》
《いますけど、ここまで馴染んでいませんよ》
《あともう1人、向こうに元気なのがいるわ》
《半分も女性ですか……》
ヘリのパイロット2人が驚くのも無理もない
事実上の助っ人が鎮守府から派遣されると言われ、急いで回収に来たら
たったの5人だけで、しかもその内の2人が女、さらにもう1人がいるときた。
戦闘部隊の半分が女性など聞いた事が無いだろう
女だけの部隊は世界中でも少なからず存在するが、男女混合など前代未聞だ
《確かに頼りないかもしれないが安心して下さい、警察官に負ける気はしません。》
《はぁ……》
声は清楚なお姉さんと呼びたくなるフォレストだが、その言葉には迫力が隠れている
事実、スネークはもちろんこの部下達は全員元戦闘班に所属し実戦も経験している
表現のしようが無いが、とにかく強い
格闘術よし、ピストルよし、ライフルよし、
それが彼らの基本であり、さらにそれぞれの得意分野がある
……まあスネークにいたっては全てにおいてプロフェッショナルの知識と技術・経験があり
その経験と知識でメタルギアやモンスターまで狩った
そうそう勝てる相手では無い
だが、そんな雰囲気は全く感じさせない
むしろ、バーにいるような雰囲気が機内に漂う
そのため、ヘリパイロット2人はこの時はあまり信じていない
《このヘリは現場にはいかないんだな?》
《着陸できる場所もありませんし、犯人を刺激しかねません》
《わかった、近くなったら教えてくれ》
《……わかりました》
そう言ってスネークは目をつぶる
集中するためだが、周りからは寝ている様にしか見えない
パイロット達は「よく寝れるな……」としか思っていない
他の4人も黙る、20分はあっという間に過ぎ去った
《もう間も無くです》
インカムからパイロットの声が聞こえた
目を開け外を見ると、確かにHマークが見えた
「……3人いるな」
《え?…ああ、ブリーフィングをする会議室まで案内する方達でしょう》
《マーリンもいますね》
「……全員、準備しろ」
『……了解』
間も無くヘリはそのビルに着陸、
時刻は20:53
1時間以内で往復したらしい
インカムを返却し、風が吹いているだろうが構わずドアを開ける
目の前には部下を抜いて2人
……どうやら警察上層部の人間と特殊部隊の隊員らしい
「……あんたらが警察の代表者か?」
「日本語、話せるのですね?」
「それはいい、すぐにブリーフィングを始めたい。」
「時間もありません、移動しながら話しましょう。お名前は____」
「スネークと呼んでくれ」
「……ではスネークさん、こっちに来てください」
上層部の人間らしいのに案内され建物の中に入る
パイロット達は、ヘリを点検している様だ
「それで、あんたの名前は?」
「私は佐藤と言います、所属は言えませんが」
「……そっちは俺らの監視、ってところか?」
「ええ、SATの隊員です」
「……それでどこでやるんだ?」
「ここです、すでに出動する隊員20名が居ます」
階段を降りてすぐの会議室に案内された
誰とも会わない様にする配慮だろう
ドアを開けるとすでに、アサルトスーツを着た隊員が確かにいた
続けて俺らの部下も入る
「はあー、ひっさしぶりに話せるわー」
「女!?」
「……悪かったわね、しゃべって無くてわかんなかった?」
「ていうかマーリン、あなたどこで待ってたのよ?」
「ん?いやフォレストに呼ばれた後、ここでずーと黙って20分待ってた」
『……らしく無い』
「え!別にいつもしゃべって無いよ!?」
『…………』
いやそれは無い、いつも話している。
というか普通にうるさい
「……お前ら話は後だ、ブリーフィングを始めるぞ」
『……了解』
「では、始めさせて頂きます」
「まず質問なんだが、ここにいるお前らは付いて来るするのか?」
「……それは、俺らに出番が無いって事ですか」
「おいよせ!」
「……いや俺の言い方が悪かった、
今回俺ら6人が奴らを制圧するんだが……それを合同でやるのかっていう話だ」
「それは許可できません、
先ほどの失敗で我々はSATの出動を断念し、そちらからの提案を受け入れました。
これ以上、我々は被害を出したくありませんからね。」
「……つまり、民間人の中に艦娘がいるが警察官にこれ以上の犠牲は出せない、
そう判断したところに防衛省から鎮守府からの派遣提案があり、それを了承した。
だから責任は全部俺らが持つ……って事だな?」
「話が早いですね、制圧後にすぐここにいる隊員が逮捕します。
あなた方には犯人の無力化をお願いしたい」
……なるほどな
さっきの若い隊員が俺らに噛み付いたのは、
俺がわかっていて“来るのか”と聞いたと思ったのか。
他の隊員も出動したいが上層部の判断で動けない、
……要するにヤル気は十分って事だ
「よし、なら今ここにいる奴で俺と一緒に来てもいい志願者はいるか?」
『…………は!?』
「それは“警察組織”が決めた結論だろ?
だが個人となれば別だ、自己責任で俺と一緒に来る奴は手を挙げろ」
「ちょっと待ってください!!あなた方に我々の隊員達の指揮権は持っていません!
そもそも責任は誰が____」
「だからあんたが言っただろ、俺らが全部の責任をとるんだろ?だったらここから志願者を募っても文句は無いはずだ」
「何を言ってるんです!?そもそも我々はわざわざ____」
「それは言っていいのか?」
どうやら提督の言っていた縄張り争いというのがわかってきた
厄介ごとは御免だが成果は欲しい
その欲を中心としている様だ
でなければ、警察の特殊部隊隊員を終わった後“すぐに”突入させたりしない
確かに俺らに逮捕権は無い、だが警察が引き取った時に逮捕すればいい話だ
それをしないのは世間に警察が解決したという事にしたいのだろう
そもそも防衛省側は政治的問題も絡んでいるためすぐに武力を行使出来ない、
このような案件に口を出さない、いや出せない
だが艦娘が人質となれば話は違う
警察側からすれば厄介な荷物が人質にいる、死んだら世界の危機に直結する
そしてその原因が警察組織だとしたら、この国の治安は確実に悪化するだろう
防衛省からは場合によっては自分らも対応すると言われる
しかし自分たちが解決したという成果は欲しい、そして決行されたのが強硬突入
結果は失敗、しかも事態は悪化
そして防衛省からの提案を受け入れた
一方の防衛省側も警察に恩を売るのはいいものの、
事態は悪化し、しかも全責任は自分たちが背負う羽目になった
しかしそこは考えていたらしい
正しくは“鎮守府”から派遣される
要するに艦娘が仲間を助ける為に出動した事になる
しかも都合がいい事に俺らもいた
……責任のたらい回しの結果だったようだ
結局傭兵の仕事は厄介事や汚れ仕事だ
「……どういう意味です?」
「恐らくそのまま言いたい事を言えば、ここにいる隊員は一生あんたを恨むぞ」
警察上層部にもやり切れないものはあるだろう
それは世間からの評価が望んだものと違うからであって、“組織の威厳”といった言うなれば見栄だ
だが隊員たちは違う
自分たちが国民を守り、この国の秩序を保っている
それを壊す奴は俺らが許さない、俺らが倒してやる
特殊部隊の隊員たちにとって、それが誇りであり心の支えでもある
その誇りを今彼らは汚されかけている
その誇りが俺らの様に外部が出張ってきた事によるものだったら彼らも我慢できる
先ほどの隊員の様に明らさまに不満をぶつけられる
直接でなくとも文句で済む
だがそれが内部の身内の思惑だったらどうなる
隊員たちは失望する、その対象は警察そのものだ
この・・・斉藤とかいうのは「わざわざ頼むつもりは無かった」とでも言いたかったのだろう
だがその発言は隊員にとって「お前らは役立たずだ、要は無い」としか聞こえない
それはこの場で隊員たちの存在意義を無くす
それにこいつらも馬鹿じゃない、後から考えれば上層部の思惑も嫌でもわかってしまう
そしたらどうなる?
……部隊の崩壊でこの国では済むんだろうが、よそなら下手すればクーデターが起きてもおかしくない
クーデターでなくとも隊員たちは警察をやめるだろう
「____でだ、志願者を募っても構わないよな?
お前には文句は無いし、そもそも知らなかった………それでいいよな?」
「…………ええ、構いません。私は何も知らない」
目の前の男も理解できたらしい、顔色が悪くなっている
当然だが、貴重な戦力を大量に失えば“責任”問題になる
恐らく組織の仕組みで彼が去る事になるだろう
彼にすでに選択肢は無い
そのまま志願者に関して口を挟めば、この場の雰囲気と組織に殺される
目の前の男はそれに耐えられるとは思えない
……提督みたいな奴なら気にしないだろうが、そもそもあんな奴が組織に馴染むわけが無い
いや、あいつは殺されかけるのに慣れているか
「そういうわけだ。
誰も文句も言わない、俺らとついて来る強い意志を持つ奴は手を挙げろ、責任は俺が取る。
さすがに突入はさせられ無いが、やる事がある。
俺ら6人だけで到底できることじゃ無い、普通の警官には出来無い
……いま頼めるのは、お前らだけだ」
もう一度、今度は誰も何も言わ無い
つかの間の静寂の後、一斉に「シャッ」と音がした
「……そうと決まれば話は早い、ここから現場まで車でどの位かかる?」
「約30分です」
この部隊の隊長らしい男が答える
「車の準備は?」
「出来てます」
「よし、全員すぐに乗車だ。
移動中にブリーフィングをする、スナイパーは誰だ?」
すぐに2人が手を挙げる
「こいつが俺らのスナイパーだ、今回はお前らが重要になる。よろしく頼む」
「俺はウェーバー、おたくは?」
「……俺は蘇我だ、こっちは___」
「林イルマと言います」
「そうか、よろしく頼む」
3人がそれぞれ握手を交わす、うち1人は女性隊員だった
「22:00には行動を開始したい。全員武器はあるな?」
全員ハンドガンを俺に見せ、スナイパー3人はトランクを掲げる
「よし、移動開始だ」
『了解!!』
全員水を得た魚のごとく車に向かう
全て俺らが部屋に入ってから10分ほどの出来事だ
俺らの6人も車に向かう
もっとも、会議室の近くにある直通のエレベーターに乗るだけだ
残っているのは、未だに立っているだけの男のみだ