鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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報告

 

すぐに現場を離れた

建物の出入り口にはでかいブルーシートが貼られていた

人質……艦娘も含め全員が車に乗っていた

 

俺らの目の前には、行きの途中までに乗っていた車両が止まっていた

乗るとSAT隊員がすでに集まっていた

 

「アレ、ウェーバーはいないの?」

「……あいつは____」

「なんかスネークに“人質を確認次第合流します”って言ったから確認してから乗るって言って

ついさっきまで狙撃ポイントで構えてたんで少し待つんじゃ無いですか?」

「……真面目ね」

「私はそんなこと守らな____」

 

 

『いや、お前は守れ!!』

 

 

マーリンの発言に3人がツッコミを入れる

……確かにこいつが作戦を守らなくなったらまずい、少し冷静さに欠ける

まあトリガーハッピーでは無いだけマシだ、闇雲に撃つやつで無ければ問題は無いだろう

 

「ねえマーリン、あなたって本当に仕事したの?」

「へ?……ただ単に事務処理してただけだけど?」

『……………』

 

なるほど、余りにも平和すぎて戦う事が無かったらしい

……いや待て、一体どこの組織で事務処理をしていたんだ?

 

「……ウン、もういい」

「はい!?」

「なんか……ねぇ?」

「マーリン、あなた後で私とお話しましょう?」

「ん?フォレストから話そうなんて珍しいね、何話すの?」

「……いろいろよ」

「……ご武運を」

 

エアーが軽く敬礼した

……あんまり面倒ごとは御免なんだが

そんなやり取りのうちにウェーバーが乗車して来た

 

「人質の身柄移送を確認しました、俺の任務も終了……ですよね?」

「ああ、ご苦労だった」

「……なぜ雰囲気が変なんですか?」

「気にするな」

「全員揃った、出してくれ」

 

隊長の一言で車両が動き出した

外にはまだ指揮車は停まっていた

機動隊員がこちらに向かって敬礼をし見送っている

 

「あの指揮官と機動隊はまだ残るのか?」

「ええ、指揮車に乗っている2人はすぐに後ろから付いてきますが

機動隊にはまだ周辺警戒の任が解除されてません

一応、我々は機密の高い部隊なので先に帰る事になっていますが」

「なるほど……帰りも30分ぐらいかかるんだよな?」

「ええ、まあ」

「なら今のうちにお互いに確認しておきたい」

「しかし、それは向こうでも____」

「……おたくらが話しても良いと思っても、そう思えない連中もいるだろう?」

「……そうでしたね」

 

確かにいまここにいる隊員たちには俺らに不満を示す奴はあまり居ないだろう

お互いにやるべき事をやっただけだ

 

だが上層部は違うだろう

 

……名前は忘れた、あの男がどんな立場かも知らないが

少なからず、未だにあの俺に会った男は俺らをあまり良く思っていないだろう

全員があんな感じでは無いんだろうが、快く情報を提供してくれるとは思えない

 

「そういう訳だ、何かわかった事が有れば教えてくれ。

コッチもまともな物では無いが情報は引き出した」

「わかりました。では雑談という事で?」

「そうだな」

 

どうやら理解してくれたらしい

他の隊員からも不満は無いようだ

 

「こっちは、あの爆弾魔を専用車両にぶち込んで爆弾を解除した後に話を聞きました」

「……それで何か割れたか?」

「いいえ、終始無言で何も話しません」

「……そうか、こっちはあの“神様”とか名乗っている奴が情報を持っている事がわかった

どうやら仕事を頼まれてやったらしい」

「……アレから情報を引き出すのは難しいですね」

「い・ち・お・う警察官だからなぁ俺ら、ルールはルールだしな……」

「恐らく身柄は公安に一旦移されるだろう、さっき連中の車両が来てた」

「ああ、あそこなら何でもありですもんね」

「それでも口を割るんだか……」

 

どうやら日本の警察も裏では“尋問出来る”部署はあるらしい

 

「あともう1つ、武器は新潟の倉庫から持ってきたらしい」

「新潟!?それは本当ですか?!」

「落ち着け、少なくともそう言っていた。それを調べるのが警察だろ?」

「……北からの流入か?」

「あそこの政治も深海淒艦の攻撃で大混乱したらしいですからね……」

「だが深海淒艦や艦娘が日本海側も巡回している、ここ最近のものじゃ無いだろうな」

「だとしたら以前に運んであった物を使ったって事ですか?」

 

可能なのは今のところそれしか考えられない

彼らが話した情報ではこれ以外の検討は出来なさそうだ

憶測だけしかここでは作れない

 

「そもそも、今回の目的は何だったんだ?

仕事を頼まれたって事は頼んだ奴がいるって事だが、その頼む理由がわからない……艦娘が目的か?」

「それは無いですね。

彼女たちが外に出る事自体外部には出ていないはずですし

仮に内部に協力者がいて漏れていても他の民間人を人質に取る必要が無いです

私が鑑定した範囲では最初の交渉者には冷静さがありました。

艦娘が目的なら艦娘だけで無いと効果は薄いですし

仮に艦娘を狙ったところで価値は無いかと思います………犯人たちが早死したく無いなら」

 

 

立て籠もり、政治的要求をしてくるテロリストは自爆テロとは違う

確かに、自爆し警察・人質を巻き込む手段は持っているが、それはあくまで最終手段だ

交渉し自分たちの目的が達成できなければ意味が無い

そのため民間人や、時には様々な業界のVIPを拉致し国や特定の組織を脅すのだ

 

 

だが艦娘は極めて特殊だ

 

 

まず彼女たちはこの世界の敵である深海淒艦倒せる貴重な“戦力”だ

……彼女達を自分のために利用しようとする連中はいるだろうが、殺しはしない、殺す意味が無い

 

それに彼女達は一般的に“兵器”として認識されている

少なからず日本国籍を持っていないため人権があるかどうかも怪しい

 

そのため警察側も強硬手段を使いやすい

 

事実、余りにも早い突入は実行された

そこには防衛省からの圧力と同時に“艦娘だから”というのもあったのだろう

仮に何人か死んでも“艦娘がいたから”で済むと踏んだのかもしれない

 

まあどんな理屈があれども、少なからず艦娘をターゲットにしてテロを起こす価値はあまり無い

警察は強硬手段を使ってくるし、世間への印象も悪い

それが金では無く政治的理由ならまず狙わない

 

 

 

……………待て……………………フォレストに聞いてみる

 

 

 

「あの神様と名乗ってた奴が仕事を頼まれた、なら最初の交渉役もシナリオの内って事だよな?」

「まあ恐らく」

「そのシナリオを書いたのは仕事を頼んだ奴が書いた可能性が高いよな?」

「ええ、とてもあのシナリオを彼が書けるとは思えません」

「……確かあの“神様”は言ってたよな“やっぱり突入してきたんだ”、と」

「確かに言ってましたが……それが?」

「それは警察が強行突入する事がわかっていたって事だ、だがあいつが警察の突入を予想できたとは思えない」

「ちょっと待て、いくらイカれていてもそのぐらい解るだろう」

 

SAT隊員から疑問を投げかけられる

確かに普通はそう思う………………だがあいつが予想できたとは思えない

 

「いや、予想できていたとは考えにくい」

「なぜ?」

「普通、いつ攻撃されても解らない状況で銃を置くか?

それが出来るのは絶対に突入して来ないという自身か考えていなかったらやらない」

 

『!!』

 

 

あの連中は非常識だ

人質の監視には銃を持たせていたのに自分達は銃を置き……女を物色した

しかも実質的に交渉を自ら決裂させた直後だ

 

どんなにこちらが一度ヘマをしているとはいえ、

交渉を決裂させたならすぐにでもこちらを殺してくる可能性がある

いくらバカでもそんな事をする奴は見た事が無かった

 

だが、説明のしようはある

 

 

「それって、まるで何も考えていないみたいだな……」

「そうだろうな」

「……どういう意味だスネーク?」

「簡単だ、バカが何も考えずに動くとしたらどんな時だ?」

「……………わからない」

「言い方を変える、バカを何も考えさせずに行動させるにはどうすればいい?」

「え?……事前に命令を出す____」

「わかった!!!」

 

マーリンが閃いたらしい……叫ぶ必要は無いが

 

「行動マニュアルか、完全に予想されたシナリオがあったんじゃない?」

「……なあお前、少し周りを見てみろ」

「え?……みたけど?」

「何とも思わないか?」

「全然?」

「……お前朴念仁って言われないか?」

「何それ」

「いや……何でもない」

 

ウェーバーが疲れた顔になった

……まあこいつが周りの空気を気にするとは思えない

 

「……で、つまり何が言いたいんです?」

「つまりだ、あらかじめ決められたシナリオがあったんじゃないかって事だ」

「……それって殺される事を前提とした物ですか?」

「恐らくな、だが途中でアドリブが入った」

「……金の要求ですか」

「ああ、イカれたテロリストを演じさせたまでは良いが、その本人が調子に乗って金まで要求し

ネット上に配信までした」

「けどネット配信は計画なんじゃ____」

「いや〜、いくら何でもわざわざ身元を割る危険を犯させる事はさせないでしょう?」

「多分、自分の世界に酔いしれて物語を他人の物ではなく

自分の物に書き換えようとしたんでしょう、支配欲の一種です。

ベタなのは、政治家の息子が親のレールじゃなく自分のレールを・・・、といった具合ですかね」

 

 

フォレストの説明が正しいのか知らないが、

少なくともシナリオが変更されたのは事実だろう

 

 

「あの、書き換えたのは金の要求だけですか?」

 

別のSAT隊員から質問が来た

 

「それだけとは断言できないが、大きい改変はそこだけだろうな

他にも交渉内容が変わったぐらいだとは思うが……」

「それでは24:00になったら殺すのは計画の内って事ですか?」

「それは移動中に俺が言ったはずだ、要求を通すために殺す、とな」

「……それじゃあ犯人の目的は人殺しですか」

 

その目には憎しみが生まれ始めていた

 

「……いいか、今回の実行犯の全員が駒に過ぎない

本当のテロリストなら信用できる奴を使って実行し、仲間の釈放を要求する

だが今回は何の信用も出来ない奴が使われた

そこにどういう意図があったかはわからない、

だが少なからず政治的目的も金でも、ましてや艦娘でも無いのは確かだ

それらが目的なら、警察の強行突入まで考えられる奴がこんな無意味な計画は立てない」

「なら____」

「……まあ新潟の倉庫を当たるしか無いだろうな、そこはあんたら警察に任せる」

「だが、手がかりはほぼゼロか」

「ああ、今回の場合だと釈放をを要求したリストからも手がかりは無いだろうからな」

「公安が調べるしか無い……か」

「その前に乗り越える事が多そうだがな」

 

目の前に桜田門が広がり始めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では報告をお願いします」

 

警視庁内の会議室

さっき使っていたホワイトボードがあるような所ではなく

プロジェクターと長机に俺とSAT隊長・指揮官・お偉いさんがいる会議室だ

鎮守府の講堂よりは少し小さいが、30人程度しかいないこの部屋は無駄に広く感じる

 

「……なら俺から、

状況が状況だった

外には人間爆弾がいる事がわかってそいつの位置を特定してからで無いと突入は不可能

23:00過ぎにようやく見つけて突入した」

 

「なぜ現場に着いたあとすぐに突入しなかった?」

「……あのなぁ、自分ごと部屋を吹っ飛ばして警察官を巻き添えにする奴がいるって事は

外にも似たような奴が居るだろうと思ったんだ

事実、内部を事前偵察したら18人しか居なかった、

つまり3人以上は外にテロリストがいると考えたからだ、そいつらを排除しなければ被害は悪化した」

 

「被害とはどんな被害だ?」

「……警察のスナイパーの殺害・および無差別射撃、そして自爆テロ

人質じゃ無いからそれら3つが同時に起きても問題が無いか?」

 

……こいつら考え無しか?

 

「いくら何でもそんな言い方は!____」

「そちらも俺がわざわざ言う必要があったか?察するに状況の流れではなく、情報が欲しいんだろ」

「……なら情報をくれませんかね?」

 

俺もこんなところに長くいるつもりは無い

……そう自分ではない何かからも感じる、だが部下からでは無い

 

「情報を主に持ってるのは途中から交渉役になった“神様”と名乗っていた奴だ

他の奴からは新潟の倉庫から武器を得たと言っていた

それと、今回の事案に直接関わらず、仕事として頼んだ奴がいる。それが主謀者だ」

「新潟……ですか」

「仮にだが、国外から流入の可能性があるなら俺にも連絡をくれ」

「なぜあなたに?あなたは自衛隊員じゃ____」

「詳しくは言え無いが、俺の知り合いには未だに健在だ。頼めば武器の流入ルートは解る」

「……ですが部外者に____」

「言っとくが、主謀者はまだ捕まって無い。

今後も何度かテロが起きる可能性がある、しかも今回みたいなヌルい犯行にはなら無いハズだ」

 

 

敵は警察の強行突入まで考える事が出来る程度には冷静だ

その程度に冷静なら、さらに念入りな犯行を考える事ぐらい可能だ

…………それが猟奇殺人者だろうと無差別テロだろうとプロのテロリストだろうとな

 

 

「……つまり、その手掛かりを得る手助けをしたいと?」

「手助けをするとは言って無い。情報が欲しいなら、関係のある情報と見返りが必要だ」

「まさか金を払えと!?」

「いや?誰が金を払えと言った」

 

俺らは傭兵だ

確かにタダ働きをする事もあるが、基本は仕事だ

それ相応の報酬は必要だ

 

「では何が必要ですか?」

「大した事は無い、もっともあんたらが俺らに仕事を頼むなら、だが」

「そうですか……………では頼みます」

「……他の奴は文句がありそうだが?」

「仕方無い、それぞれ考えは有るでしょうが大勢の国民を犠牲にするわけにはいきませんから」

 

……大勢の国民、か

ここではここで内部の思惑があるらしい

 

それに関わりたくは無い

 

仕事だけの関わりでいい

 

余計に苦労するだけだ

 

……あの提督もこんな戦いをしているのか?

 

「それで、報酬は何を用意すればいいのでしょう?」

 

一番上位の位置に座っているのが質問する

……大層な事じゃあ無いんだが、何故か全員身構えてる

 

 

「経費で俺らの打ち上げ費を出してくれ、それと必要な情報だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は02:40

約30分で会議……警察への報告は終わりヘリポートに向かう

要求は了承され、ひとまず来週頃にSAT隊員との打ち上げは決まった

タダで飯が食える・飲めるという事で随分隊員たちは湧き上がっていた

 

ヘリポートには行きに世話になったヘリパイロット

そしてSAT隊員・隊長・指揮官の22人がいた

 

「見送りか?」

「ええ、あれだけ手伝ってもらって何もする訳にはいきませんよ」

「……何で上層部の人間がいないんでしょうね」

「そういうなマーリン、わかって言ってるだろう?」

「…………」

「まあ近い内にまた会うがな」

「その時はそのマスクの下の顔見して下さい!」

「そうだな」

 

ここではメディアと接触する可能性が無くもない

警察に顔が割れるのは別にいいんだが、広く知られるのを避けたいだけだ

……部下たちはわざわざ“スネーク”と俺のことを呼ぶ配慮までしていたが

 

「そろそろ出ますよ!」

「わかった」

 

そう言って、パイロットが行きと同じ様にインカムを渡した

……そう言えば指揮官に言い忘れていた

 

「ああ、そう言えば何だが」

「?、私ですか?」

「もし、お前のところの隊員が復帰できないとでも判断されて警察を辞める。

とか言いだしたら俺のところ……横須賀鎮守府に電話してくれ」

「どーうすーるーんーでーすーか!!」

 

すでにヘリの騒音は大きいため、指揮官は大声で悲観する暇もなく質問してきた

 

「俺が引き取る」

「へ!?」

 

そう言って、ヘリのスライドドアを閉じた

《離陸します》

 

インカムから声が聞こえた直後、ヘリは高度を上げ南西方向に機首は向き東京の夜空を移動し始めた

 

 

《全く、何回も夜間飛行をやらされるなんて思いもしませんでした》

「何回も?」

《ええ、あなた方を運んだ後に防衛省から子供を鎮守府に運んで

その後給油して待機してたら、陸自さんのヘリが2機も鎮守府に来たんで

こっちに飛んできて、また横須賀に飛ぶんですよ……………》

《え!2往復したんですか!?》

《ええ、そうですよ》

 

パイロットが疲れた声を出している

……俺らより大変だった様だ

 

 

 

 

 




「行きましたねぇ……」

「ああ」

「……黙祷、しませんか」

「……そうだな」



ヘリポートに残った22人のSAT所属の警察官は

艦娘を守るために散ったであろう自衛官に対して黙祷を捧げ

そして、ヘリが飛んでいった方向に敬礼した








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