「点呼、点呼。全員集合せよ、繰り返す」
その放送で目を開ける
……ここで横になって約2時間か
十分だろう、さっさとグラウンドに向かうか
『おはようございます、BOSS!』
「ああ」
部下5人はすでに真ん中に並んでいた
いつもと変わらず、俺に敬礼して挨拶する
周りも人数確認の怒号が聞こえるが、右側の艦娘は少し人数が少ない
捧げ銃をしながら君が代を聞いた後
提督が台に登り話し始めた
顔に疲れは見られない
「諸君、おはよう。
昨日は全員知っているだろうが事件が起きた
常に警戒していた隊員に、そして私たちの仲間も助けてくれたスネーク達に拍手を贈りたい」
そう言って周りから拍手が起きた
……俺らはできる事をやっただけだ
数十秒後、拍手は鳴り止み再び提督に視線が集まる
「だが犠牲が無かったわけではない、護衛に就いていた自衛官が1人殉職した。
……全員、彼に対して黙祷を捧げてほしい」
空気は変わり、研ぎ澄まされた雰囲気が辺りを包んだ
「黙祷」
自衛官達は再び捧げ銃をし
艦娘たちの何人かは海に向かって弔砲を撃った
空砲が辺りを振動させる
そして鳴り止み、静寂が訪れた
「黙祷止め」
提督の言葉で全員が姿勢を戻す
「……さて今日と明日、私は大本営に呼ばれたためしばらく留守にする
その間の鎮守府の指揮を小野田中隊長に一任する」
そう言って、1番の年長者である中隊長が前に出た
「終わった後スネークは私の部屋に来てくれ、以上だ」
提督が敬礼した後、周りも号令の後に敬礼し返し解散になった
「BOSS、何か聞いてます?」
「いや、まあ行けばわかるだろう……自衛官の訓練と艦娘の訓練、頼んだぞ」
『了解!』
……今回は厄介事になりそうだな
「それで要件は……大本営への報告か?」
すぐに提督室に入った
鳳翔は、決まった場所で書類を処理していた
「いや、大本営への報告より面倒になりそうだ」
「……俺が断るとどうなる?」
「艦娘の外出が禁止になる」
「……聞こう」
「今朝、点呼が始まる前に大本営から連絡があった。
内容は[訓練が適切なものか]といった内容を聞かれるらしい」
「……だがそれはお前が企画した事だろう
わざわざ俺を連れてってまで弁解しないといけない程難しい話でもない
それに、大本営は防衛省の管轄下だろう?
……艦娘が自衛官を1人殺したわけじゃない、あんたの責任問題にはならないはずだが?」
自衛官の死は艦娘が原因では無いのは明らかだ
査問されるとしても、艦娘やその監督者である提督では無いはずだ
「ああ、責任問題にはなっていない……“なぜ外に艦娘が居たのか”が問題になっている」
「……それは訓練で帰ってきたからだろう?」
「海で帰投すればいいだろう、との事だ」
「馬鹿か?輸送機が着陸できて海に近い基地なんてあるのか?
それを知らない程に大本営ってのは考え無しか?」
「問題なのは、大本営が私を呼んだのは大本営や防衛省が話を聞きたいわけじゃ無い」
「…………別の勢力か?」
「ああ、野党議員がこことぞばかりに防衛大臣を叩くつもりらしい
“税金は兵器を守るために払われ、血が流れるのか”……だとよ」
「……いい迷惑だな」
今まで任務の失敗を内部から責められ、責任を取った事はある
だが、別の人間からもこの国では責められるらしい
「だが、それは第三者が改善を求めるものなんじゃ無いのか?」
「そんな事は全く考えていないだろうな
人気・注目を得て、選挙で票を集めるために壮大な揚げ足をとる
そのために大臣を叩き、今の政権は駄目だと世間に思わせ、自分たちの政治を行う
……要するに自分たちのためだ」
あ?
「それで、政権を変えてどうするんだ?」
「自分たちが思う通りに金が動かしやすくなる」
「……邪魔な存在だな」
「全くだ、おかげで私は参考人招致を受けるらしい」
「……なるほどな」
防衛省の責任を追及され、その説明を艦娘を実質的に管理している大本営が求められ
詳細を知るこの提督に話が行き、話がわかる俺を呼んだと
「だが、俺が直接国会に出るわけにはいかない」
「当たり前だ、それは私の仕事だ。
あなたには外部顧問として私のアドバイザーとして来てもらいたい」
「……まあ俺の契約相手はあんただ、明らかな契約違反でも無い、ついて行く」
「すまない、私だけではとても言いくるめる事が出来るとは思えなくてね」
「あんた、自分の上司を言いくるめるつもりだったのか……」
「嘘はつかないが、まずは身内に理解してもらわないとな、艦娘やあなたを」
確かに鎮守府内の警備を艦娘だけに任せようとする連中だ
何も知らない権力を持った奴には現場の人間の声は必要だ
「出発はいつだ?」
「今日の13:00にここを発つ、12:55にこの中央舎前に集合だ」
「了解、あとウェーバーを連れて行っていいか?」
「構わないが……訓練は大丈夫か?」
「俺の部下は優秀だ、1人欠けても訓練なら支障は無い」
むしろマーリンやエアーが喜ぶだろう
「12:55に中央舎前に集合だなわかった、それまでにこっちも準備する」
「……くれぐれも爆破準備はするなよ?」
「俺らをなんだと思ってるんだ……」
「まあ冗談だ、こんな面倒な事はさっさと終わらそう」
「なら俺は失礼する」
そう言って提督室を後にする
……ミラーが居れば楽なんだがな
「それで、どうにかなるんですか?」
「まあ大丈夫だろ……上層部は」
そもそも、スネーク達を使う事に上層部は乗り気だった
しかし、議員から指摘される羽目になり慌てて自分たちを守る体制に入ったもんだから……
だからこちらの正当性さえ理解してくれればいい
それはむしろ進んで理解してくれるだろう、何せ自分らは何の問題が無いとわかるんだから
問題は参考人招致をどう乗り切るかだ
何も知らない
ただ人気集めに走るために仮想の敵を作り
正義を掲げ
世論を味方につけ
味方のまま選挙を行う
それが政治の常套手段だ
……何で艦娘を狙うかなぁ〜、破滅するのは自分たちだ
国内でテロ騒ぎがあったのに警察を責めるんじゃなくて
何で自衛官の死と艦娘をつなげて考えるかなぁ〜
まあ適当に言葉をつなげれば世論を活発化させやすいからだろうけど
……面倒だ
「提督、大丈夫ですか?あの、なんか顔がとても怖いですよ」
「ん?ああ悪い、火の粉をこっちに向けたやつを考えたらな……」
「……今も昔も変わらないんですね、国民には真実を伝えない・伝えられない」
「鳳翔さんに言われるとグサッと刺さります………けど、今の方がタチが悪いかもしれません
下手すれば自分たちが苦しい目に会うかもしれないのに
苦しい目に今のところ全くあっていないですから」
一時的に物資が国民全員に渡らなくなったが
彼女たちが輸送任務に奔走してくれたために品不足は解消された
もっとも、それを理解しているのはごく一部の人だけで
ほとんどの人たちは彼女たちそのものを理解もせず、普通に暮らしている
それはそれで構わないが、文句を言われる筋合いは無い
……それがよりによって
「まぁここで文句を言っても始まらない、今は書類を片付ける。」
「……そうですね」
久しぶりに鳳翔の笑顔を見た気がする
そう思いながら机に体を向けた