鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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いつの間にか2万文字に行きそうだったので(1)・(2)で分けさせていただきますm(__)m





対空訓練(1)

……そろそろ時間だな、なら俺も動くか。

彼女たちはすでに動いているか?

時間厳守と言っておいたが、もう居るのかレシプロ機がさっきから旋回している

 

 

ー湾口付近ー

 

……艦娘は8人しか呼んでいないハズだ、なぜ20人も居る

しかもまだ30分前だ

ウェーバーはまだ来ていない……事情を聞くか

 

「……なぜ長門たちがいるんだ?」

 

「ん? ああ来たのか、いや対空戦闘の訓練があると聞いてな」

 

「……戦艦でも訓練はするだろう」

 

「そりゃあ するけど、貴方がわざわざやるって秋月ちゃんから聞いてね。

あいつらが来なければ、私たちも参加は出来るしね」

 

どうやら第一艦隊(長門・陸奥・妙高姉妹)と

昨日遠征に行っていた艦隊の神通や那珂・陽炎らがいる

 

「……となると、今日は駆逐艦だけの遠征艦隊が出てるのか?」

 

「いえ、夕張さんが旗艦で天津風さんや浜風さんを連れて行きました」

 

「あと祥鳳さん達も遠征に行ってるよ〜」

 

神通と陽炎が答えた

……どんな風に艦隊編成が回ってるのかよくわからん

 

「それで、お前らも参加するのか?」

 

「ええ、ウェーバーはさっき秋月ちゃんと工廠に行ったわ。そろそろ戻って来ると思うけど」

 

「……だろうな」

 

ここまで人数が増えるとは思っていなかった

恐らくゴムボートか何かを借りに行ったのだろう

……あんだけ訳のわからないものが揃っていればゴムボートくらい調達できるだろう

実際ゴム弾は調達できた

 

「で、今空母の連中は調整か?」

 

「そうだ、まあ私は航空機は苦手だがな」

 

突然……確か…………そうだ那智

那智が突然、航空機が苦手だと言い出した

 

「そうなのか?」

 

「まぁ私は航空機からの攻撃が原因で沈んだからか どうも苦手でな」

 

「トラウマって程では無さそうだがな?」

 

「今は頼もしい味方や姉妹がいるんでな、苦手なだけで恐ろしくは無いさ」

 

「……なら始めるか」

 

確かまだ燃料はボートには入っているハズだ

軽くエンジンの状態でも見ておくか

 

 

 

 

 

 

 

「……しかし、よくゴムボートがあったな?」

 

「俺も驚いてますよ…………いつかあそこをクリアリングしてみたいです」

 

「……だな、もっとも許可が下りるとは思えん」

 

ウェーバーが工廠から本当にゴムボートを持ってきた、しかも2つ

正規空母7人は余裕で乗れる大きさがある

……一体あそこの工廠はどうなっている、実は突撃銃もあるんじゃないか?

 

「で、武器はどうなった」

 

「秋月さんの話だと、どうやら機銃でやるのが近そうですね」

 

「俺はSVDでいく」

 

「俺はWA2000で」

 

「あれは重いぞ?」

 

「俺の愛銃ですよ」

 

「カンプピストルはあるか」

 

「もちろんです、どうぞ」

 

「外したら俺と一緒に射撃場に籠るぞ」

 

「了解」

 

「いったい何するってのよ……」

 

なぜか瑞鶴が頭を抱えていた

どうやら空母の方も調整が終わったらしい

さて、説明するか

 

「まず今回の訓練は秋月がメインだ、空母以外の他の艦娘はついでに教えるだけになるがいいか?」

 

「まあ……私たちは興味本意で来てますし……」

 

「問題無いわ、コレだけの人数をまとめて教える方が無茶よ」

 

「それに20人もまとめて海上に出たら大変な事になるだろうな」

 

「ん?長門どういう意味だ?」

 

「……あんたは知らないか。

基本的に1艦隊あたり艦娘は6人以下で構成する、

これは 理由はわかっていないが深海凄艦の奴らが突然現れる可能性が7隻以上だと急激に上がる。

連合艦隊を組むときは2個艦隊12人で構成され出撃する」

 

「……つまり、鎮守府近海が深海凄艦だらけになりかねないのか?」

 

「鎮守府周辺には常に偵察機が巡回している、接近して来ればすぐにわかる。

だからと言ってこのまま全員まとめて出撃するのは遠慮したい」

 

「そうか…………わかった、今回の訓練は時間もかかるしな。

だが、艤装を展開してなければ問題無いだろう?」

 

「それはわからないが……」

 

「ちょうどいい大きさのボートが2つある。

訓練以外ではそのボートの上で座っていてくれ。

流石に常に7隻の空母を展開させても訓練にならんしな、2グループに別れてくれ。

最大12人しか海上に居られないなら7対7だ」

 

『……………』

 

「……別に罰はない、2グループに別れた後、先攻と後攻を決める。

後攻のグループはまず防衛だ」

 

「防衛、ですか?」

 

「そうだ、ボートには4人か5人は乗っている、攻撃側の空母はそのボートを狙え。

魚雷でも爆弾でも1発でも当たろ。

防衛側は攻撃をボートが目標地点に着くまで凌げ。

お互いの距離はお前らに任せる。

ウェーバーと俺も指導するために分かれる、質問は?」

 

「防衛側の空母は艦戦による艦爆や艦攻の迎撃は可能なのでしょうか?」

 

「却下だ。

今回は艦船による航空機・爆弾の迎撃訓練だ、防衛側の空母は必ずボートにいてくれ

あと戦術は自由だ、艦船を無力化しても構わない」

 

「ボートは曳航して動かすんですか?」

 

「別にその場で対空戦闘でもいいんだが……どっちの方がやりずらい?」

 

「当然動いていればお互い狙いにくくなるわ」

 

「なら俺らの水上バイクで目標地点に引っ張る」

 

「何回攻撃してもいいの?」

 

「それも任せる。

もう一度言うが今回の訓練は空母がメインじゃない。

提督から資源を使っていいとは言われたがあんまり無茶はしないでくれ」

 

提督からはボーキサイトや鋼材を掻っさらうなと言われた。

どうやら演習では……特に航空機が撃墜された場合は出撃する時より消耗が激しくなりやすいらしい

まあ本人たちが熱中すれば消耗もするだろう。

だがパイロット自体は消耗しないらしい、理由は妖精だから、だ。

……全ては妖精のせい、か……

「他に質問は?」

 

「……ないわ」

 

「じゃあ二手に分かれましょう!」

 

飛龍の発言で2グループに分かれ始めた

俺の方には空母3人(赤城・蒼龍・翔鶴)と陸奥・妙高・羽黒・神通・不知火・黒潮・秋月

ウェーバーには空母4人(加賀・飛龍・瑞鶴・大鳳)と長門・那智・足柄・那珂・陽炎・初風

先攻は向こうだ

 

 

 

ひとまず紐でボートを繋ぎ、加賀から言われた出発地点に6人の艦娘に囲まれながら向かう

水上バイクに後ろカゴを連結できるよう改造させたおかげで紐を結ぶ部分はある

出発地点は鎮守府から沖に出て5分ほどの場所、

出発地点からは鎮守府を常に左に捉えて航行し、20分程で目標地点に着く

 

お互いの距離は明かさないが、20〜30kmの距離を開ける

その程度の距離ならレーダーに映るが、今回の演習では範囲を絞るらしい

……だが…………瑞鶴と加賀が同じで大丈夫か?

 

「大丈夫よ、加賀なら」

 

「瑞鶴もあんなに邪険にしなくても良いのに」

 

「……心配なのは…ウェーバーさん……ですねぇ……」

 

「……確かに落ち着きない……特に………那珂ちゃんが……」

 

「陽炎の存在が陰になりそうです」

 

「……いくら何でも不知火、陽炎に酷ない?」

 

そんな事を囲んでいる6人が言い合う

秋月だけはまだボートの上で空母の連中と一緒に居る、後で教える事にした。

まずは見本がてら彼女たちの実力を見たい。

無線で連絡をとる

 

「こちらスネーク、間も無く到着するが……そっちはどうだ」

 

《10分後に攻撃を開始します》

 

ウェーバーが答えたが、その後ろからはノイズの様に騒がしい

……誰かが歌っている?

 

「一体そっちはどういう状況だ?」

 

《……酒が入っていないパーティーってところです》

 

「……大変だな」

 

《長門さんと初風がまともで良かったですよ》

 

「そうか……10分に攻撃開始だな、了解した。手加減しなくていいと言っとけ」

 

《了解です、BOSSも手加減しないでくださいよ》

 

「……だな」

 

もっとも、最初の第1波には俺は手を出す気はない

艦娘たちの実力がどの程度なのか見たい

都合のいい事に戦艦・重巡洋艦・軽巡洋艦・駆逐艦 と対空戦闘を行う艦種が全ている

全体が同じレベルではないだろうが、ある程度わかるだろう

 

「今の無線聞いていたな、10分後に向こうから攻撃が開始される。

10分後にボートも目標地点に向かう、俺はお前たちの実力を見るために第1波の航空攻撃には手を

出す気はないが……いいか?」

 

「問題ないわ、貴方に私たちの実力、魅せてあげる」

 

「そうか、お手並み拝見だ」

 

こっちの旗艦は陸奥、自信があるらしい

挑発的に顎に手を当て表情は明るいが眼の奥は獲物をいつでも狩れる眼だ

……襲われるのは勘弁願いたい

他の艦娘も、錨を降ろし戦闘準備に入った

 

「守られるだけ、というのはとても窮屈ですね……」

 

ボートで待機している蒼龍がそんな事を言った

他も落ち着きがない、特に秋月はこの前のマーリン程ではないが座りながら震えている

 

「そう思ってるのは自衛官や軍人も同じだ。

実力があっても、常に守られるだけっていうのは窮屈なもんだ」

 

『……………』

 

「まあ、今はそんな事深く考えるな。

やる時になったら徹底的にやってくれ、いいな?」

 

「あの〜私は……」

 

「秋月だけは後から教える。

今はこいつらの動きをみて、俺が見てやるべき事を探す、それをお前が実行する、全員イイな?」

 

『はい』

 

どうにかボート上にいる5人は落ち着いた

だが、6人は何か いじっているのかずっと艤装の面倒を見ている

……1番近くにいる陸奥に聞いてみるか

 

「ところで、お前たちはどういう準備が必要なんだ?」

 

『はい?』

 

「いや空母の連中は爆装やらの取り付けで時間がかかるのはわかるんだがな、

さっきからお前たちは何をしているんだ?

何かいじっているみたいだが……」

 

「ああそういう事ね、大体は電探の起動準備よ」

 

「……レーダーの設定か?」

 

「それに関しては私から!」

 

突然、秋月が手を上げて立ち上がった

……ボートの上で転びそうになってすぐに座ったが

 

「……なぜ秋月が説明するんだ?」

 

「彼女が防空駆逐艦なのは知ってるでしょ?」

 

「ああ、知ってるが?」

 

「だから、基本装備として電探を持っているの。

実際に建造した時から、当時としては珍しいのだけれど電探を最初から装備していたの。

彼女の方が説明が上手なはずよ」

 

「……まあ準備の邪魔をするのもアレだしな」

 

説明してくれるならいい

陸奥の方はすぐにまた作業に戻った

水上バイクのエンジンを切ってボートの方に体を向ける

 

「で、その起動準備って何だ。

いや 意味はわかるが、準備も何もそんな大がかりなのか?」

 

「あのですね、私たちの装備はハイテク装備じゃないんです」

 

「……深海凄艦を捕捉できるのか?」

 

「……私たちの装備、あっ電探だけじゃなくて主砲や航空機・爆雷も含めて

旧式なのはわかりますよね?」

 

「まあ……随分アナログな装備だな」

 

大艦巨砲主義の産物でよく戦えているとは思う

確かに火砲の火力は絶大だが、ミサイルの方が命中性能・費用対効果が高い

それに対艦ミサイルも存在する、動きが遅ければいい的だ

だが、深海凄艦は余りにも小さいため 全くレーダー映らない訳ではないがステルス性が極めて高い

おかげでミサイル攻撃に効果があっても命中させる機会が少ない

気付かない内に接近され、砲撃を喰らえば、いくら現代艦でも瞬く間に沈められる

空でも全く同じだ、敵機を捕捉できなければジェット機でも負けるだろう

だが彼女たちのレーダーだけは普通に……ガラクタレベルのハズなんだが……機能する

それにしても、だ

 

「よくそれで戦えるな?」

 

「ん〜そこら辺は未だに原因不明なんですけど、

理屈としては“眼には眼を、歯には歯を”っといった感じなんですかね。

旧式で私たちが同じ様な存在だからこそ効果があるのかもしれないですけど……」

 

……恐らくそれは理屈は言わない、屁理屈だろう

 

「……理由はわかった、要するに古いから手順を踏んで起動させないと使える代物じゃないんだな?」

 

「そうです! ……まあ何で効果があるのかは謎ですけど、起動準備の意味はそういう事です」

 

日本への輸送中にも見たが、彼女たちの装備は1世代前の代物だった。

対潜装備として爆雷を使っている時点で古い。

レーダーに関しては知らなかったが、それも旧式だったか

ならプラズマ菅やら何やらを使っているのだろう。

だとしたら面倒なのは明らかだ

……面倒のまま小型化出来るのか知らないが、それも彼女たち妖精のせいだろう

 

「もう1ついいか?」

 

「なんですか?」

 

「その……お前たちが作業を全部やっているのか?それとも妖精が何かしら仕事をしているのか?」

 

「えーとですね……機関部や機銃の操作、戦艦にもなると主砲の旋回も妖精さんたちがやります。

私たちは旋回したり、主砲で狙って撃つのが仕事です。

航行中は艤装の具合を妖精さんたちと一緒に診たりもしますね」

 

「……とすると、その妖精の腕次第で生存率や命中率が変わるのか?」

 

「いえ!いえいえいえ!!あーけど……なんて言ったらいいのかなぁ……」

 

秋月が頭を抱え突然悩む

そのフォローに赤城が答えた

 

「私たちの指示を元に動くのがこの子たちです、私たちが戦いを経験すればこの子たちも当然経験

して強くなります。ですが、私たちの生存率や命中率は私たち次第なのは変わりません。

感覚はこの子たちと共有されます、もちろん装備の質にもよります」

 

「お前たちの指示で動きも変わるのか?」

 

「そうですね、もっとも飛行機乗り……この子たちは熟練搭乗員になってますけど」

 

そう言って赤城が手のひらをこっちに向けた

 

「……そうか、結局お前たち次第っていうのは変わらないんだな?」

 

「そうです!」

 

「とすると、主砲や機銃の命中率もお前たち次第って事でいいな?」

 

「え、……………ええ」

 

「……秋月、なんか問題でもあるのか?」

 

「ないです!」

 

……感覚の共有とか赤城が言っていたが今はいい、狙いを付けているのが彼女たち自身なら問題ない

教えるべき相手が艦娘ならそれでいい。

流石に小人に射撃を教えるのは勘弁だ

そんなやり取りをしている内に作業が終わったらしい、全員が顔を上げている

 

「そっちは準備出来たか?」

 

「ええ、電探も起動したわ」

 

「一応この海域に潜水艦の反応は無いです」

 

「わかった、何かあったら教えてくれ」

 

鎮守府近海にも潜水艦が出る事があるらしい

訓練海域には防潜ネットが張られているが、念のため駆逐艦は水中探信機を装備して来たらしい。

 

「……1分前よ、もう一度聞くが用意はいい?」

 

『ハイ!』

 

ピリリピリリ ピリリピリリ

 

《こちらウェーバー、1分前です》

 

「そっちも問題ないか?」

 

《ええ……特に空母のうち2人はヤる気満々デス》

 

 

「………………おい待て」

 

 

《ええ、冗談抜きでやる気に溢れているのが2人います、気引き締めて下さい》

 

「……わかった」

 

《じゃあ被弾したか目標地点に着いたら教えて下さい》

 

「了解」

 

……まあ、まずはお手並み拝見だ

本当に不味かったらすぐに銃を抜く

 

 

「全艦 輪形陣!」

 

 

陸奥の掛け声で、6人が俺とボートを囲む

動いてない状況でも陣形を組む事が出来るのか

……随分小回りが効くな、10メートル内でしかも航行せずに艦隊機動は普通出来ない

 

「艦隊抜錨!」

 

さて……問題は加賀と瑞鶴 か

・・・はぁ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……5・4・3・2・1 時間だ」

 

『偵察機発艦!』

 

同時にそれぞれの空母から2機づつ偵察機が発艦して行った

天候も良い、雲はあるが青い空がよく見える。

そんな普通の空に8機の航空機が消えていった

 

「……しかし、今回は訓練だろ。

向こうの動きもわかるのに偵察機を8機も出すのか?」

 

「……念のためです」

 

「念のため…………いつもそうなのか?」

 

「そうですね。

偵察機を出して、敵を補足して、攻撃する、これが私たち空母の役目ですから」

 

大鳳が偵察機が飛んで行った方を見ながら答える

 

「だとすると、補足したら攻撃機を発艦か」

 

「ええ、ですが補足したら近づきます」

 

「……わざわざ敵に近づくのか?」

 

「私だってアウトレンジで決めたいけど、ある程度近づかないと私たちは攻撃できないの!」

 

……どういう事だ?

わざわざ近づく意味は無いだろう

 

「私から説明しよう」

 

ボートの上で腕を組みながら長門が手を挙げた

1番前であぐらを組んでいるとBOSS程じゃないが、威厳がある

 

「……まあ簡単にお願いしますよ、長門さん」

 

「簡単だ、確かに空母は普通、敵の砲撃が来ない所から運用する。

だが艦娘が扱うのはプロペラ機だ、音速を超えて航行出来ない。

そのため、開幕航空攻撃を仕掛けながら接近しないと次の攻撃を行う前に逃げられる。

それに空母だけで出撃する事はまず無い、私のような戦艦や巡洋艦・駆逐艦も一緒だ。

私たちの攻撃は近づかなければ出来ない、だから全艦が接近する」

 

「……まあ運用上の問題なら口出しはしないさ」

 

どうやら深海凄艦との戦いは遠距離でやり合った後、接近戦で殴りあうらしい

 

「……ただ、1つ良いか?」

 

「……何でしょう?」

 

「そう睨むな………今回は全機をBOSSたちの方に向けない方が良いと思うぞ」

 

「何でですか?確かに撃墜される事はありますが、その前に離脱させますけど……」

 

「無理だ、全部落とされる」

 

俺ならそうする

BOSSはスナイパーライフルを持っていないが不可能じゃない

 

「心配無用よ!高度はとっているしね!!」

 

「……それは慢心だと思うんだが」

 

「そうね、慢心よ」

 

「!! あんた—–」

 

「敵艦、補足しました」

 

端的に、冷静に、大鳳が報告する。

……素晴らしいタイミングだ、色々と助かった

 

「大鳳、すぐに高度を上げるか回避して、落とされるわ」

 

「……了解です」

 

どうやら高度を上げる指示を出したらしい

だが………………無意味かな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来たな

 

「敵を補足したわ」

 

「ああ、捉えた右側から2機来てるな」

 

「……そうね」

 

艦隊を組むとはいえ、船より小さい彼女たちは展開する陣形も小さい

少なくとも無線機を使うほどお互いに離れていない

対空電探の有効範囲は肉眼より広いらしいが、実戦でも目視で航空機を見つける事もあるらしい

深海凄艦や艦娘の航空機は小さいため、自然にステルス性能を持っている

彼女たちが運用するレーダーには反応がいいが反応がない時もあるという

今回は演習だが電探が先に捉えた

 

「で、どうするんだ?」

 

「すでに居場所はバレたでしょうね、それに—–」

 

「無駄に情報が漏れるのは問題だから撃ち落としたい、か?」

 

「ええ、けど私の射程圏内にまだ入っていないわ」

 

「本来なら私たちが直掩機を出して落としたりもするんですよ」

 

ボートから赤城が発言する……まぁ気持ちはわかるがな、

 

「だが今回は空母がメインじゃない、我慢してくれ」

 

「けどー……アレ、なんか逃げてません?」

 

『え?』

 

確かに蒼龍の言った通り1機は引き返し

もう1機はこちらに迂回しながら高度を上げ向かって来ている

 

「………ウェーバーか」

 

偵察機の役目は敵の居場所や動向を味方に報告する事だ

今回は経路も明らかだ、撃ち落とされる前に退避させるのは正しい

わざわざギリギリまで粘る必要はない、偵察兵としての判断か

 

「1機は戻って行ったけど、もう1機は高度を取りながらこっちに来てるわね」

 

「まだ距離があるが、高度は約5000メートル……当然か」

 

艦娘や深海凄艦と従来の艦船と違うのは大きさだ、圧倒的に小さい

そのため、レーダに映らない敵艦を補足した時にはだいぶ近いところに既にいる事が多い

いくら妖精の偵察機でもその小ささはカバー出来ないのだろう

ある程度低く飛び発見するしかない

 

「もう主砲は撃てるけど……」

 

「辞めておけ、弾数は取っておくのが当然だ」

 

いくら射程内であっても有効射程ギリギリだ、何回か試し撃ちをしなければ当たらないだろう

機銃ならまだしも、弾数が少ない主砲を撃つのはためらわれる

ましてや今回は対空戦闘の訓練だ

 

「それに、普通は偵察機を落とすのは空母の役目なんだろ?」

 

「まぁ居れば、だけどね」

 

「対空戦闘の訓練だ、諦めろ。

それでも気になるなら俺が落とす、縛ったのは俺だからな」

 

「あら?そんな事できるの?」

 

「……まあアレが真上に来たらだが」

 

真上に来れば恐らく当たるだろう

時間的には………1分後か

 

「で、気になるのか?」

 

『気になる!』

 

空母の連中まで答える

……そもそも陸奥に聞いたんだが、何故10人全員が答えたんだ?

 

「……ならやるか」

 

ホルスターから本体を引き抜き

バックパックから擲弾を取り出す

装填

安全装置解除

 

「それは?」

 

「信号拳銃を改造して手榴弾を打ち出せるようにした物だと言えばわかるか?」

 

「時限信管なの?」

 

「当てなければ炸裂しない、擲弾なんだから決まっているだろう」

 

「……当たるん……ですか?」

 

「そう心配するな、無駄な事をする気はない」

 

弾速的にそろそろ撃つか

・・・・・・・・・・・今

 

「……本当に真上ね」

 

リロード

 

10

 

9

 

8

 

7

 

6

 

5

 

4

 

3

 

2

 

1

 

着弾

 

……ビンゴ

 

 

 

「……1発で当たったか、もう1発撃たないとダメだと思ったんだがな」

 

「10cm連装砲ちゃんでも当たるかどうかなのに……」

 

『三式弾の意味って……』

 

「……言っとくが、こいつは元は信号拳銃だ。

しかも信号弾は大体6000〜8000メートルで炸裂する、今回は条件が良かっただけだ」

 

実際、1万メートルを超えていたら擲弾は気圧差で勝手に爆発していただろう

仮に爆発しなくとも弾道は不安定な物になっていた。

……おかげで今は女に囲まれ、色々な目で見られているが悪い気はしない。

研究開発班に礼を言わなきゃならんな

 

「……そろそろ本命がやってくるだろう、もう一度言うが俺は第1波に手を出さない。

近くで艦船からの射撃を見た事はないからな、見学させてもらう」

 

「アラ?こっちに来る時に見たんじゃないの?」

 

「あの時は駆逐艦と軽空母・重巡洋艦の編成だったからな。

弾幕を見たわけじゃない、それに戦艦を見るのも一応初めてだ」

 

軍に居た時、ミズーリを見た事はあったが近くでは見た事はない

……活躍する機会などもう無いと思っていたが

 

「……そう。

全艦 対空警戒を厳とせよ!」

 

『了解!』

 

空気が締まった

さすが戦艦、と言ったところか

……それじゃ艦娘の対空戦闘を見せてもらうとしよう

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

 

目を閉じていた大鳳が突然目を開けた

同時に口も開いた

 

「彩雲が落とされました……」

 

「なんですって!?」

 

「……それは弾幕の中に飛び込んだわけじゃないのよね?」

 

偵察機を収容しながら加賀が冷静に聞く

瑞鶴の方は、偵察機が驚きのあまり着艦できず仕切り直しだ

 

「はい、ウェーバーさんに言われたのでうちの子を1機だけ残しました。

それに高度も取りましたし、発砲もしてこなかったのですが……突然やられました」

 

「まあBOSSがやっただろうな、コレで」

 

そう言ってカンプピストルを見せる

 

「それは?」

 

「まあ拳銃の一種だ」

 

「……それでどうやって撃ち落とすのよ」

 

「まあ作業しながら聞け、あと少し落ち着け。

こいつは信号弾を撃ち出す物を改造して……まあ擲弾を撃てるようにした」

 

「じゃあ、時限信管も付いてるの〜?」

 

那珂が質問してきた

潜水艦対策で空母だけじゃなく那珂と陽炎の2人だけが対潜哨戒で艤装を着けて待機している

他の4人はボートの上にいる

 

「いや、いくら何でも対空兵器じゃない。

対人や対軽装甲車のための携行武器だ、当たらなきゃ炸裂しない」

 

「……当たるんですか?」

 

「……まあBOSSだから」

 

実際、グロズニィーグラードでのBOSSの仕事を聞けば納得できる

アレだけの事を1人でやりのけた、しかも10年以上前にだ

出来ても不思議じゃない、スナイパーライフルでなら俺でもできる

……あの人なら見えていれば何でも当てるだろう

 

「で、準備完了かな?」

 

「……それ相応の対価を払ってもらいましょう」

 

「対価って—–」

 

だがそれ以上言葉を続けるのは止めた

 

既に加賀のオーラが尋常じゃない程禍々しい、触れたくない

同時に矢を番え尋常じゃない程に集中している

加賀ほどじゃないが瑞鶴や飛龍も集中し、声をかける気にもならない

邪魔するほど俺も意地は悪くない

むしろこの娘たちの方が…………面倒くさい

 

「全艦発艦準備」

 

「周辺に潜水艦の反応はないです!」

 

水中聴音機を使う陽炎が報告しながら空母の4人は風上に向かって最大戦速で航行し始めた

 

「第一次攻撃隊発艦始め」

 

『発艦始め!』

 

4隻が一斉に攻撃隊を発艦

 

しかも早い

 

すでに54機が発艦した

 

近くで見ると壮観だな、見事なもんだ

発艦して行った航空機は空中集合している、同時に多面攻撃を行うって算段か

……………………もう終わりか、まだ1分も経っていない。

それに……聞いてみるか、4人が旋回してこっちに戻って来た、全員が艦載機を見送っている

 

「発艦は終わりか?」

 

「……そうですけど」

 

加賀が睨むが先ほどまであった尋常じゃないオーラは薄くなっていた

話せない程ではない

 

「ずいぶん発艦数が少なくないか?」

 

「……波状攻撃のために残したの。

1回の攻撃で終わらせるつもりはありませんから」

 

「……何を根拠に少ないと思ったのよ」

 

純粋な疑問なのか、絡みたいだけなのか、瑞鶴が突っ込んで来た。

言い方が気になるが、それについて言えばまた面倒になるに違いない

……普通に答えるのが良いだろう

 

「瑞鶴、今の言葉の根拠は交流戦だ。

交流戦の時は赤城と加賀だけで138機を発艦させていたが、いま飛んで行った艦載機は126機だ。

明らかに4人だけで飛ばしたには少ないだろう」

 

「……ちなみに誰が何機出したかわかるの」

 

「ん?

加賀と瑞鶴がそれぞれ36機

飛龍が28機

大鳳が26機

計126機……違かったか?」

 

『……合ってるわ』

 

そうでなかったら困る、本当に困る

間違えた時、俺は死ぬ事になるだろう

 

「あんたは毎回数を数えてるのか?」

 

「……ああ、それが仕事だ。

正規の訓練を受けていないがじゃないが俺は狙撃手だ。

どこから敵が何人来てるか解らなければ死ぬ事もあるからな。

敵の位置、数、武装は見たらすぐに覚えるようにしている」

 

「……なら聞くが爆装と雷装した機数はそれぞれわかるか?」

 

「那智、それを聞いてどうするんだ」

 

「……長門は気にならないのか?」

 

「いや、気にはなるが—–」

 

「爆弾持ちは72機、魚雷持ちが54機じゃなかったか?」

 

『…………合ってる』

 

答え合わせができたな

……そろそろ接敵する時間か

 

「そろそろ時間だが、艦載機を操るんじゃないのか?」

 

「……私たちは魔法使いじゃないんですよ?

確かに見えている範囲なら指示は出せますが、あの子たちが操縦しているんですから。

まあ、あの子たちが見ている光景はわかりますけど」

 

「そうか」

 

……その方が航空機を操るより魔法だろう、一体この娘たちは何が出来ないんだ?

そう思いながら水上バイクを加速させた

 

 

 

 

 

 

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