鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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お久しぶりです!

……いや、1ヶ月も更新せずにすいませんでしたm(._.)m
新学期やら手続きやら何やらで、執筆はしていましたがインターネットに繋げる事が出来ずにいました

これからも更新は続け、できるだけ週一のペースで上げたいと思っています。
そのため前の様に2000強程度の文章になるかもしれません。
もっとも、話を繋げると大体10000字前後にはなるので、ある程度時間が経ったら整理してまとめます。

長くなりましたが、更新は続けます!!
こんな私ですが、スネークと艦娘の絡みをこれからも楽しんで頂けたら幸いです

では、本編をどうぞ





❇︎今回は溜めに溜めて30,000字を超えました
読みきるのにどんなに早く読めても10分はかかりますのでお気をつけ下さい(._.)




対空射撃

15分ほど写真のおかげで脱線したがまだ16:00にはなっていない

90分あれば感覚ぐらいは身につくだろう

 

「さて、これから仕上げに入るんだが……」

 

「……何ですかBOSS?」

 

さっき川内らに教えたい事を終え、“暇になった”から参加したい2人の部下が目の前にいる

だがまだ演習海域の東京湾沖には出ていない、まだ鎮守府の港にいる

ティムの奴はボートを調整した後ドローンの製作に戻った

艦娘の方は既に補給を済ませた、いつでも艤装を展開し訓練に入れるがその前に打ち合わせだ

 

 

「お前らが参加してきたおかげでBOSSも少し困ってんだよ」

 

「えー」

 

「……そう言うなウェーバー、どちらかと言えば秋月への加減を考えている」

 

「…………私ですか!?」

 

「本来なら空母6人に対して3人プラス余った空母1人で訓練するつもりだったんだがな、

2人加わったから変えたい」

 

「……ちなみにどんな訓練なんです?」

 

「それには加賀に答えてもらう」

 

恐らく過酷な訓練になる、本人が嘘をついてもらったら困る

ここは淡々と話し答える加賀に聞くべきだろう

 

「加賀、実戦では砲撃の中で対空戦闘を行う事はあるか、経験はあるか?」

 

「……いいえ、そんな経験はないわ。けど航空機に対処した直後に奇襲を受けた事はあるわ」

 

「なら……そうする事にしよう」

 

「……どういう意味?」

 

「BOSS、まさか2人にやらせるんですか!?」

 

「それは訓練にならん、俺らは海上では全力は出せない」

 

「じゃあどうする——みんなにやらせるんですか」

 

「まあな」

 

それが一番だろう

十分すぎる人数も有効活用できる

 

「あの……私はどうするんですか?」

 

「重巡洋艦と戦艦、空母による空母機動部隊・水上打撃部隊を編成してくれ」

 

「……それは——」

 

「そしてこの連合艦隊からの攻撃を凌ぐのが秋月、お前のノルマだ」

 

「…………」

 

「理解できたか?」

 

「……私方の艦隊は?」

 

「お前と俺ら4人、あと1人は誰か好きに選べ」

 

「訓練の達成基準は?」

 

……どうやらブレイクスルーを引き起こしたらしい、

さっきまで驚いていた表情は消え 何でもやってやろうという気迫が生まれている。

彼女の何らかのスイッチを俺は押したらしい

 

「最高評価は全員無傷、最低限の条件はお前が生き残ること。

さっきの訓練と内容はほとんど同じだが、訓練の目的はお前の処理能力に負荷をかける事だ。

そのためにお前は水上レーダーを置いて行け。

お前は今回、旗艦として俺らをただひたすら凌ぎきれる様に指示を出せばいい。

空母の方は俺らには1発でも魚雷か爆弾を当てろ、秋月に対しては轟沈判定させればいい、

機銃掃射だけは勘弁してくれ。

さっきと違って目標地点は無い、第二次攻撃隊の攻撃が終わるまでがタイムリミットだ。

仮に俺たちが全滅する前に秋月が轟沈判定を受けたらその時点で終わらせる、それで終わりだ」

 

「……水上打撃部隊を編成する意味はあるのか?」

 

今度は長門から質問だ

……確かに対空射撃をメインとした訓練に対艦戦闘は含まれないだろう

だが秋月は防空駆逐艦、射撃だけの訓練ならただこなすだけになる

 

「ある。聞くが秋月は防空戦闘を専門とした艦種だよな?」

 

「……ああ」

 

「俺の認識だと対空戦闘に関してはなかなかの実力者だと思っている……違うか?」

 

「その通りだ、効率的な弾幕形成・撃墜率は彼女がトップだ」

 

「だとすると航空機の対処には慣れているよな?」

 

「それはそうだろう」

 

「はい、わたし自身空母の皆さんの直衛艦として防空戦闘に関して誇りを持っています」

 

「……なら的を撃つだけなら簡単だな?」

 

「はい」

 

「要するにお前の“処理能力”に負荷をかけるためには最悪の状況を再現するのが一番だ。

お前が今求めているのは航空機の撃墜ではなく兵装の破壊だ。

もう一度言うがお前には判断能力さえあれば兵装を破壊する事は出来る、その判断能力を今から試す

今日だけでは投下された爆弾どころか航行中の兵装をピンポイントで狙撃は意図して出来ない。

だが主力である正規空母全員を相手に出来ることもそう経験できることじゃない、

なら今回は射撃技術の前に判断力を向上させる」

 

「……わかりました」

 

秋月本人は理解したらしい、

覚悟……ではないが決意を俺に示している

 

「俺はさっき 大鳳さんから聞きましたけど、空母は発艦させたあと敵・味方の砲撃圏内に近づくそうです」

 

「なら俺らに砲撃するのも不自然じゃないな」

 

「……で、私たちも全員に当てればいいのか?」

 

「そうだ、俺らはひたすらお前らの砲撃を回避して逃げるだけだ、反撃はしない。

お前ら水上打撃部隊のタイムリミットは空母の第2次攻撃開始までだ」

 

「了解だ、海域は先ほどと同じだな?」

 

「そうだ」

 

「なら神通を旗艦として哨戒任務に出てくれ、なにせ連合艦隊での演習だ。

深海凄艦が攻めてくるかもしれないからな、特に警戒してくれ」

 

「わかりました後から報告します。みんなさん、行きますよ」

 

『了解』

 

そう言って神通たちはすぐに艤装を展開、

そのまま沖に出て行った

 

「加賀は艦隊を編成してくれ」

 

「もう決まったわ……すまいないけど大鳳、今回は——」

 

「なら大鳳はこっちに入ってくれるか。

攻撃機はいらない、戦闘機だけ装備してくれ」

 

「わかりました、けど偵察機もいいですか?」

 

「もちろん構わない、だがまだ取り替えないでくれ」

 

どうやら大鳳が余ってしまうらしい、まあ演習で深海凄艦の束を相手にはしたくない。

なら俺らの方に来てもらった方が良いだろう、事前のそれに調整もここで済ませられる

 

「開始時刻は……16:20だ、先に写真の処理をしとけ」

 

「そっちは?」

 

「10分ほどかけてこいつらと作戦会議だ」

 

「……了解した、なら第1艦隊・第2艦隊出撃するぞ!」

 

『了解!!』

 

加賀を筆頭に12人の艦娘が艤装を展開し海に入水……いや海上に足をつけ鎮守府を先に後にした

こっちもさっさとやる事をやる

 

 

 

「ウェーバーは今のままでいい。お前ら2人、確認だが——」

 

「持ってきてます!」

「無限バンダナもありますよ」

 

「ならいい、大鳳」

 

「はい」

 

「早速だが10機だけ艦載機を上げてくれ、爆装でも雷装でもいい。

秋月、今から練習だ、感覚だけつかめ」

 

「10分で、ですか」

 

「あとは慣れだけだ、艤装を展開してそこにいろ、今ここで教える。

大鳳も別に海に入らなくていい」

 

すぐに2人は艤装を展開、大鳳はボウガンを装填

マーリンとエアーの2人は自分の銃の点検、装填を行っている

今回はレールガンではない、2人ともM21とカールグスタフを装備している

 

「いつでも発艦出来ます」

 

「なら出してくれ」

 

「了解です、それじゃあ行ってきてみんな!」

 

ボウガンの矢が放たれた

飛んで行った矢は一瞬間をおいて小型の艦載機に変化した

爆撃機が5機と雷撃機が5機、緩やかに上昇していく

 

「この後はどうします?」

 

「向こうの上空に旋回させて待機だ、編隊は組まずに各機散開させてくれ……撃ち落とすがいいか?」

 

「ええ、爆発しても問題ありません」

 

「……まあいい、まず秋月 1発だけ水平に撃ってくれ、弾道を見たい」

 

すでに秋月の後ろに位置している、当然だが安全に支障がない程度に距離は取っている

まず弾道を確認しなければ俺が感覚を教えられない

 

「いいですか?」

 

「ああ」

 

「……撃ちます!」

 

秋月の腰付近にある艤装から弾丸が発射される

……彼女も馬鹿じゃない、いくら港湾内とはいえ撃つ方向によっては民間人に被害が出る。

海に向かって撃ったから問題はない、漁船もこの時間は活動していないのは確認している

 

弾速は確かにウェーバーの言っていた通り機銃に近い、およそ900m/秒前後だろう

弾道はやはり落ちにくい、5kmまではほとんど落下しない、だが10kmまでは行かず落下した

 

 

「……角度が必要か?」

 

「そうですね、水平に撃つと8km行くかどうかです。

角度をつければ15kmは普通に届きますけど、私は基本10kmを外縁として弾幕を形成します」

 

「で、対空戦闘の場合は時限信管を炸裂させて攻撃するのか?」

 

「いいえ、まあ確かに私たちが本当の船……って言い方もアレですけど、その時は対空砲弾で弾幕を形成してましたが、今は重巡洋艦や戦艦の方でないとそもそも三式弾……対空砲弾を撃てません。

徹甲弾と榴弾は一応私たちも装備してるので空中で炸裂させる事は出来ます。

けど有効的な弾幕を形成するのは駆逐艦や軽巡洋艦1人だけでは難しいです」

 

「さっきのでわかった、砲門の数が普通とは違かったが、艦種ごとにも撃墜数も違かったからな」

 

 

戦艦である陸奥ですら主砲4基8門と元から備わっている副砲と機銃だけだ。

副砲と機銃に関しては威力が違うため、1発では仕留めきれていない。

いくら専門職とはいえ火砲の数がなければ力不足にもなる、

それに軽巡や駆逐艦はあまり航空機を撃ち落としていなかった、

空中で炸裂させる榴弾も陸奥・妙高・羽黒だけしか撃っていなかった

 

彼女たちの“艤装”と言われる装備は一部取り外しが可能らしい。

どうやらそれは駆逐艦や空母でも変わらないようで、元から艤装に付いている武器とは別に

アタッチメントとして装備を組み替えることが出来るらしいが、それにも限度があるらしい。

無理やり増やすと燃費が極端に悪くなるほか、本人や艤装の調子が悪くなるという

……船とはいえ重量オーバーや設置スペースの問題は付きまとうのだろう

 

 

「ですから航空機により射程圏外で斬撃した後、戦艦や重巡洋艦の方たちが時限信管で炸裂、

出来るだけの航空機を離脱させ、私たちの主砲や備え付けの機銃の射程に入ったら撃ち落とす、

というのが定石です」

 

「つまり撃ち落とす時は、砲弾を直接当てる?」

 

「はい」

 

「……まあ今は突っ込むのをやめておく、それより今は兵装の破壊だな」

 

「けど……そんなすぐ出来るんですか?」

 

「大丈夫 大丈夫!難しいのは意識して実行するのであって、飛んでる飛行機の爆弾をピンポイントで当てること自体はそんなに思っているほど難しくないし!」

 

「……まあマーリンの言う通りよ。

確かに爆弾だけを狙って当てること自体はすぐできるわ。問題なのは——」

 

「本番に実践できるか、ですか?」

 

「ええ、けど感覚だけでも意外とイケるもんよ」

 

「そういうわけだ、早速やる。砲塔を少し上げろ」

 

「えっと……どの位でしょう?」

 

「…………ウェーバー」

 

「了解です。秋月さん 仰角を60度に上げて、標準は……あの爆弾持ちでいいですか」

 

「任せる」

 

「じゃあタイミングを言うからその時に撃って」

 

「はい!」

 

俺はやり方はわかるが……教えるのには慣れてない。

口で教えるほど難しいことはない、体で教えたほうが早い。

ウェーバーは狙撃手としての訓練を受けた、おかげで堅苦しい方法で人に教える事が出来る。

……俺は角度がいくつ上げろなど指示を出せるほど専門知識は無い

 

それに射撃に関しては撃ち方以外全て個人の感覚に任せるしかないが、そもそも彼女たちはどう撃つのか知らん、どこを見ても引き金が存在しない。

それに秋月の場合は妙高や長門らと同じように腰周辺の艤装が主砲になっている。

恐らく妖精がタイムラグを起こさずに発砲してくれるのだろう

 

「・・・・・・いま」

 

 

発砲、

 

弾丸射出、

 

・・・ヒット、爆発し一機だけを落とした

 

 

「タイミングわかったか?」

 

「……どう……なんでしょう?」

 

「けど素直に撃てるだけマシだよ?普通1発でタイミングに合わせて撃てる人たくさんいるわけじゃ

無いんだから。ウェーバーだってそうでしょ?」

 

「俺を最初に例に出すな………まあ“撃って”と言われて素直に引き金を引けなかったのは確かだが。

それと比べれば全然マシだよ秋月さん」

 

「いっいえ!私じゃなくて長10cm砲ちゃんが優秀なだけで——」

 

『“ちゃん”?』

 

「あっこの子、顔があるんです」

 

「……ホントだ!?顔があるじゃん!!

…………待って、主砲を操作してるのって秋月ちゃんでも秋月ちゃんにいる“妖精”さんでもなくて、

主砲そのものが動いてる……ワケないよね〜」

 

「その通りです!!」

 

『…………へぇ〜』

 

……お前ら、自分の銃を見るな

そんな都合よくその銃に自我は芽生えない

 

だが訓練の初めに秋月が戸惑った理由はわかった、

秋月本人の場合は本人が引き金を引くワケでも妖精が担当しているワケでもない

 

“主砲が”主砲を撃つ、

恐らく秋月自身も調整できるのだろうが基本的には主砲が自動で撃つのだろう

そのため秋月本人が主砲や機銃の命中率に関係してるとは言いにくかったらしい

 

「……しかし、全員の主砲に顔がある様には見えなかったが?」

 

「艦娘全員の艤装に顔があるワケじゃありません、駆逐艦の一部にだけ主砲に顔があるんです。

中には主砲そのものが独立して航行して砲撃戦をする娘もいるみたいです」

 

「……けど秋月さん自身でも撃てるんだよね?」

 

「艤装によっては自分で標準して撃つものもありますが中には砲塔だけを動かすものあるんです」

 

「陸奥や陽炎なんかそうだったな、那智なんかは肩にもあったが」

 

「はいそうです。

この子はある程度自分で判断して撃ってくれますけど、

基本的には私が指示を出しながら目標に標準してもらって発砲します。

次弾装填は妖精さんたちにやってもらっています」

 

「ならいいや、問題ないですね?」

 

「標準をつけるのが本人なら何の問題もない」

 

また色々と言いたい事はあるが時間が無い

さっさと次に進める

 

「いいか、あの距離ならその状態が確実に当たる」

 

「……はい?」

 

「俺らが撃つ時は その……当てやすい格好とでも言えばいいか、ソレを覚えて、

あとは感覚で距離によって調整する。

だがお前が興味を持っている投下後の兵装破壊は優先度を見極める目がなければ出来ない。

焦って適当に撃って当たったところで自分や味方に被害が出れば意味が無い」

 

「……………」

 

「落ち込まない落ち込まない!

こんなの他の人に見てもらわなきゃわからないモノだし!

そもそも私たちがオカシイだけだし!!」

 

「……マーリン、あんたにだけはソレを言われたくないわよ」

 

「俺もエアーに同じく」

 

「……その意味は後で追求するとしよう」

 

「え?……え??」

 

マーリンの表情が一気に冷めたが構わない、意識も目覚めただろう

それに“おかしい”というのは恐らく個人の事ではない、組織に関する事だろう

 

……弾丸の価格を気にすることなく射撃練習なんぞ正規の軍隊ではほとんど出来ない、

自分の使う愛銃の癖・弾道・感覚を掴むのには何年かかかる

だが、こいつらがその癖を今掴んでいるのは毎日射撃場に籠もりながら銃身を取り替えさせたからだ

そんな事は普通出来ない

 

「……そろそろ時間だ。お前ら、残った航空機を落とせ」

 

『了解!』

 

ウェーバー、マーリン、エアーが3発発射、

大鳳の艦載機にヒットしそれぞれ3機撃墜した。

 

「やっぱりゴム弾よりこっちだね〜」

 

「突撃はしないわよ?」

 

「撃てればいい!」

 

「私も久しぶりにこれ使うわよ……」

 

「誤差はないのか?」

 

「あなたと違って精密射撃はあんまりしないんでね、弾をばら撒いて対処するわ」

 

そう言っているがさっきの射撃を見る限り、問題が生じるほどの歪みは無いようだ

……あの銃なら確かにばら撒いて対処も出来るだろう

 

「秋月さん、俺らの陣形はどうする」

 

「当然ですが対空戦闘に効果がある輪形陣、大鳳さんを中心に据えて周りを5人で守る。

……それが良いかと思うんですが……」

 

ウェーバーの質問に対してどうも自信がない

はっきりと物を言えていない、肝心な事を忘れているらしい

 

「もう一度言うが秋月、今回の旗艦はお前だ」

 

「…………私、ですか」

 

一瞬秋月が戸惑う、だが問題ない

教えられる方として身構えていたためか旗艦だということを忘れていたらしい

まあ大体の奴は新しいことをやる時はいつも以上に緊張する……中には凄いヤツもいるが

 

「言ったはずだお前の処理に負荷をかける。旗艦として全ての指示を出せ、それはできるな?」

 

「……はい、私は防空戦闘の要ですから」

 

「なら改めて聞く、どう人員を配置する」

 

「……私と大鳳さんを中心とした輪形陣で行きます」

 

「その理由は」

 

「それが一番火力と生存率が高いと判断しました。

マーリンさんとエアーさんは前後に、スネークさんとウェーバーさんは左右に展開して下さい」

 

「わかった」

 

「なら…………私たちはこれより防空駆逐艦、秋月の指揮下に入ります」

 

部下の3人が秋月に敬礼する、

……まさかマーリンが言い出すとは思わなかったが

 

「あえて確認するが、大鳳はなんかあるか?」

 

「いいえ、私は訓練を手伝っているだけですから。

秋月さんの指揮下に入る事に文句は何1つありません、むしろ歓迎です」

 

「だとさ、秋月」

 

「……わかりました、皆さんを私がお守りします!!」

 

「まぁ今回は命に関わらないからそんな気張らないでね〜」

 

バシッ

 

「痛〜い」

 

「お前は少し配慮しろっ」

 

「フォレストに面倒見させようかしら……」

 

……気にせず次に進めさせるか

 

「……お前らそろそろ時間だ、旗艦に注目しろ」

 

『失礼しました』

 

態度を切り替え秋月に向かって敬礼、その後直立する

……そこまでしなくてもいいと思うが

 

「あっあの、そんなにかしこまらなくても良いです。こっちも緊張するんで……」

 

「そう?……じゃあいつも通りに。指示はよろしくね〜」

 

「……では防空駆逐艦、秋月。出撃致します!!」

 

『了解!』

 

開始まであと10分

さっさと海域で待機していよう、その間にも色々話せるだろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと10分、だな

 

「加賀、写真の方は?」

 

「開始時刻になったら投下するわ、その後帰投させるけど訓練には支障ないわ。

時間通りに攻撃は開始させる、写真もちゃんと海溝に落とします」

 

写真に関しては筒に入れ、爆弾を投下する要領で海に投下、投棄する。

 

しかも念入りに写真はバラバラにされ、

それを筒に入れ、

筒には重りを入れ、

海底谷に落とす力の入れ様だ。

 

……これでまた戻って来たら本当に対処を考えなければいけない

 

「すでに偵察機も飛ばしているわ。

時間になる前に訓練海域に着くでしょう、場所を特定しておきます」

 

「神通、いまのところ敵影は?」

 

《ありません、引き続き哨戒します》

 

「ああ、頼んだ」

 

現在、一時的に第1艦隊と第2艦隊の編成を総入れ替えさせている

秘書艦は私だが第1艦隊旗艦を加賀、第2艦隊旗艦を私が勤めてている

敵に向かって突入するのは第2艦隊の立ち回りだ、空母に突撃させるワケには行かない

 

今回は連合艦隊編成での演習、演習で連合艦隊を組んだのは初めてだ。確かに夏の大規模作戦では事前に組む練習はしたが、あの時は組んだのみ。

あとは実戦だけ、鎮守府の近くではなかったから問題ないかったが ここで何度も深海凄艦と戦うのは避けたい

 

「長門、あなたどう思う?」

 

「……どう、とは何だ?」

 

深海凄艦が一挙に押し寄せてくる事

……ではなさそうだな、おそらく私が思っている事と同じだろう

 

「秋月ちゃん達が正規空母6隻分の艦載機を凌ぎ切れるかって事よ。

だってさっきみたいに攻撃隊を二分にするんじゃなくて、1回でまとめて攻撃隊を送るんでしょう?」

 

「ええ、スネークさんは負荷をかける訓練と言っていたので」

 

「……意外とSなのね、赤城さん」

 

「訓練ですから、手加減するつもりはありません」

 

普通なら絶望的な、無茶な状況だ

実戦でないとはいえ空母6隻分……約400機を空母1隻が持つ艦戦と5隻で裁き切るなど聞いた事がない

仮に私と陸奥、大和たち、それに摩耶と鳥海で対空兵器だけを装備しても成功できるとは言いにくい

しかも被弾ゼロとなると成功できる自信はない

 

だがあの面子なら可能だろう

 

 

「だが最初の攻撃は少なくとも凌ぐだろう」

 

「あら〜、どうして?」

 

「……お前もそう思っているだろう?」

 

「まあねっ、あんなの見せられたらちょっとびっくりよ」

 

実際私も驚いた、

スネークがスゴイのは実感していたが、あのウェーバーと言うのも中々……いやとてもやり手だ。

あの百発百中の射撃は目を見張るものがあった

 

 

爆弾を誘爆させ敵機を落とし、

投下された爆弾そのものまで1発だけで仕留める技術……私も欲しい

 

 

「そうだな、私も驚いた」

 

「けど……」

 

「ああ、私たちの攻撃まで凌ぐ……避けきる事ができるかどうか、だな」

 

それでも加賀たちの航空攻撃を凌げたとして、その直後に砲撃を避け切れるとは思えない、

おそらく第2波の攻撃までには早くて10分ほどかかる。

その10分をひたすら、反撃する事なく避けきるのは難しいだろう

 

「しかし、それが訓練内容なんですから」

 

「そうですよ長門さん!徹底的に撃って撃って撃ちまくりましょう!!」

 

「……なぜ妙高がそんなに必死なんだ」

 

「羽黒に対する仕打ちをし返すためです!」

 

「……未遂どころか止めてくれただろう、スネークは」

 

「いいえ、あんな写真を持ってきたマーリンさんですよ!!」

 

「……そうか」

 

「だが姉上、私たちも警戒すべきだろう」

 

「……どういう事よ那智?」

 

「確かにスネークは私たちに反撃しないと言っていたがこちらの妨害をしないとは言っていない。

向こうもただ単に避けるだけならいいが……」

 

「そんな単純な連中……じゃないわよね」

 

「その通りだ、何かしらすると思う」

 

「けど……何をするの?」

 

「……体術とか……な訳ないですね」

 

「せいぜい至近弾で視界を遮るぐらいしかないでしょ」

 

「長門はどう考える?」

 

那智に話を振られた

……そんなの決まっている

 

「……仮に視界を遮られたてもこちらには電探がある、それにここは海上だぞ?

確かに私たちは丘では弱い、だがこの場では、この海の上では最強だと私は自負している。

ここで好き勝手される程私たちも柔な訓練を積んできた訳じゃない、確実に仕留める気だが……言い過ぎか?」

 

「……ふっ、確かにその通りだな。少し負け戦に慣れて弱気になっていたのかもしれない。

さすが“世界のビックセブン”、伊達じゃないな」

 

「……そう下手に褒められても何も出ない。

だが油断禁物なのも確かだ、なにせ相手が相手だからな、気を引き締め臨機応変に対応するしかないだろう、何が起きても焦らずに対処しろ」

 

『了解!』

 

さっきまで私たちのどこかにあった不安を消す事が出来たらしい、

羽黒がやる気になっているなら他の奴も問題ないだろう、妙高自身もそれを見て落ち着いている。

もしかしたら姉として羽黒を気遣ったついでに………………それは考えすぎか

 

「けど私たちはそっちに活躍されるとちょっと嫌なんだけどね〜」

 

「……ああ、私たちの攻撃で全部仕留められなかったって事だもんね。

けど大体私たちが仕留めきれなかった相手をみんながやってくれてるワケじゃん?」

 

「……二航戦は意外と遠慮が無いのね」

 

「私だって爆撃なら負けないわよ!」

 

「瑞鶴、今回はあくまでも秋月さんのための演習なのよ?

勝つとしても二航戦のお二人、ましてや一航戦の先輩方ではないからね。

あと秋月さんじゃなくてスネークさん達が優先目標よ」

 

「わかってるよ翔鶴姉……さっきの様には行かないんだから」

 

「ええ、タイミングを完全に合わせた奇襲をかけるわ。

さっきはウェーバーさんに読まれたけど次は……そうはさせないわ」

 

「そっちは随分と力入ってるわね…」

 

……確かに翔鶴の顔は笑っているが、それは表情だけだとわかるオーラに覆われている

さっき攻撃が読まれていた事にはだいぶ堪えるものがあったらしい

 

「けど、私たちもあの離れ技ができるのかな?」

 

「……瑞鶴?何を言ってるの?」

 

「いや、一応私たちも機銃を装備できるじゃない?

なら私たちも敵機を撃って誘爆させる事も出来るんじゃ——」

 

「それは無理だろう、いや合理的ではないな」

 

確かにそれは不可能ではないだろう、空母自身があのレベルの対空迎撃が出来れば戦力になる。

だが、それはどうなのだろう?

 

「……どういう意味」

 

「いや嫌味を含めた訳ではない。言い方がアレだったが、空母にはできない訳ではないだろう。

訓練すれば不可能ではあるまい」

 

「……だとすると何が無理なの?」

 

「提督が私たちにスネークから丘での訓練をさせないのと似た様なものだ。

文字通りだが彼女は対空戦闘のセンスがずば抜けている、その命中率も折り紙付きだ。

高射装置のおかげでも あるかもしれないが、あの技を扱える様になるのはまず彼女だろう。

だが私たちがアレをやろうとすれば時間がかかるだろう」

 

「けれど……」

 

 

《こちらスネーク、間も無く時間だ》

 

 

……今聞いてみるか

時間は……大丈夫だろう、18:00までには鎮守府に戻れる

 

「こちら旗艦の長門だ、すまないが1つ質問してもいいか?」

 

《……お前が問題ないというなら付き合うが……良いのか?》

 

「ああ構わない、いま瑞鶴と話題になったのだが、あの技術……あの兵装だけを撃ち抜くというのは

空母でもできるのか?」

 

《……無線機を艦娘全員につなげ》

 

「もう繋げてある」

 

《……まず空母も銃器か何かを装備しているのか?》

 

「そうね、対空機銃なら装備できるし、元からある機銃もあるわ」

 

《……まぁ誰が返答してもいいが、それで何機の敵機を撃ち落とした》

 

「……ほぼゼロに近いわ、数える程よ。私たちの持っている——」

 

《察するに、機銃で撃ち落としたいとか言ったのは瑞鶴の様だが、それをやるなら状況判断の訓練をした方がお前らの為だ。

長門の質問の答えとしては訓練すればあんなのは銃に慣れていれば誰でも出来る、

戦艦の長門、お前でも駆逐艦の陽炎でも出来る。

だが空母に備え付けられている機銃を回避するために扱ってきたなら時間がかかるだろう。

それなら瞬時に状況を判断し行動する力でも身につけるべきだと言っておく。

航空隊を運用する事に集中した方が生き残れる》

 

「……って何で私がそんな事言ったって断言してるの!!」

 

《違ったか?》

 

《多分あってますよスネーク〜、まず赤木さんや加賀さんはそこまで欲張りじゃないし、

飛龍や蒼龍の2人はそんなにやる気は無いですよね?

翔鶴さんは……ありえるけどみんなの前ではすぐ喋んないでしょ》

 

《……マーリン、思った事をすぐ口に出すな、失礼だ》

 

《そうよ、後で本人に直接言ってあげないと》

 

《わかった!》

 

《……そんな答えになるんだが納得できたか?》

 

「ああ……今のでこっちの士気は上がった」

 

特に瑞鶴のやる気が上がった、好き勝手言われれば誰でもそうなるだろう。

……演習だ、全員模擬弾しか持っていない、確認済みだ

 

《注意事項を言い忘れていたんだが、さっきもそうだが俺らは実弾を扱っている。

航空機には遠慮なく撃つがお前たちに対してはこの演習で俺らは一切の発砲をしない事を宣言する。

もし俺の部下が発砲したらその場ですぐ教えろ。もう一度言う、すぐに、だ》

 

「……確認のために聞くが、おたくの部下が発砲したらどうするんだ?」

 

《要望がなければ、俺が装備を持たせたまま海に突き落とすが……何か考えはあるか》

 

「いや……ないが」

 

《くれぐれも実弾を当てないでくれよ》

 

「わかっている、点検は済んでいる」

 

《……時間だ、いつでも仕掛けて来い、タイムリミットは17:30だ。

それまでに第二次攻撃まで終わらせてくれ、何かあったら連絡しろ》

 

 

それで通信は切れた

……さて、なら私たちも向かうとするか

 

「加賀、準備は?」

 

「いつでも行けるわ、秋月たちの居場所も確認済みよ」

 

「ならやってくれ」

 

「……全員良いわね?」

 

『ええ』

 

「……第一次攻撃隊、発艦始め」

 

『発艦始め!』

 

瞬く間に矢が戦闘機に、爆撃機に、雷撃機に変わり空中集合を始めた

だんだんと艦隊上空が黒くなっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……言い方が雑だったか?」

 

「文句を言われるほどではないでしょう」

 

「よく空母の皆さんにケンカを売れますね……」

 

訓練開始直前に相手を挑発するなんて……まさか私の訓練の為にワザと皆さんに挑発を!?

 

 

「そんなにマズイ事を言っていたか?」

 

「っっそういう意味ではなく、演習直前に演習相手をイライラさせる様な事を言えるなと思って……」

 

「そんなのウチじゃ日常みたいなもんだからねぇ」

 

「……そうなんですか?」

 

「だって相手は男だらけだよ?

しかも戦場の最前線にいた元敵が目の前にいたら挑発の1つや2つあるって」

 

そういえばティムさんが言ってたっけ

敵味方関係なく戦地や侵入先で優秀な人材を“回収”するって

……確かにケンカの1つや2つ日常的に起こりそう

 

「ウェーバーなんてスネークに殴りかかった事あるんだっけ?」

 

「……誤解を招く事を言うなエアー、噂でしかない人の実力を知りたかっただけだ」

 

「お前は志願兵だったか?」

 

「ええ、おかげで気絶させられましたけど」

 

ティムさんの話でスネークさんが凄いのはわかってましたけど、その……他の方も凄いんだなぁ

・・・って演習とはいえ私は旗艦!ちゃんと皆さんをリードしないと!!

 

「皆さん!もういつ敵機が来てもおかしくないんですから……」

 

「秋月ちゃん堅いよー、命令なら聞くけどー、そう緊張しな〜い!」

 

「……マーリンは馴れ馴れしいけど、折り合いをつけるのは大事よ?」

 

「その通り!!」

 

「……あんたは自重しなさい」

 

「えー」

 

「……ははは……」

 

 

 

現在、秋月を旗艦とした6人は鎮守府を出て南下、東京湾沖に出て航行している

秋月・大鳳を輪形陣で囲み先頭がマーリン、左舷をスネーク、右舷をウェーバー、殿をエアーが担当

先ほどの赤いブイに向かっているが、それ以降は基本的にブイを中心に大回りするだけの予定だ。

今はただ直進するのみだからか、4人はハンドルを固定し頭を様々な方向に向け、

お互いの顔がよく見えている

 

 

 

「電探にまだ反応は無いの?」

 

「はい、けどすぐに反応は出ると思います」

 

まだ私の電探には反応が無い、それに今回は演習で距離も近い

……多分10分もしないで400機が襲いかかって来るはず

 

「どうだかな、徹底した空中集合をさせた後に全方向から襲って来る可能性が高い。

本来なら難しいんだろうけど電探の探知範囲は絞ってるんだし時間は十分にあるからな」

 

「そうなると……雲が邪魔だぁー」

 

「そうね、けどこればかりはどうにも……」

 

確かに夕方になり、空が青から少し赤くなり始めたころから雲が出始めた

予報では今日の夜にかけて雨が降るって言ってけど、今も観測の邪魔になる程度には雲量がある

……7ぐらいかな

これだけ多いと急に直上から急降下して来るのに注意しないと

 

「だがこっちの直掩機も隠しやすい……あの偵察機のおかげで情報は漏れているだろうが」

 

「やたら遠くに居るのがいやらしいですけど」

 

私たちが鎮守府を出て沖に出る頃から付けている偵察機が2機、

さっきの経験から高度だけではなく距離を置いて後方で旋回し続けている

すぐに反省して実行する所はさすがです

 

「実際に深海凄艦はあの位の距離で偵察するのか?」

 

「いえ、私たちの頭上を低空でほとんどは通り過ぎますよ。

実際に私たちを海上で見つけるのにはあの距離は困難ですから、けど触接はして来ますね」

 

「まぁ今回はほっといても良いでしょ、弾の無駄になるだけだし」

 

「俺らは弾切れを心配する事は無いけどな」

 

「だがここから撃ったところで当たらないだろう、離れすぎている。

それでも第一波が去る事には落ちて欲しいがな」

 

「……確かにそうですね」

 

そうでもないとその後来る長門さんたちからの逃走が厳しくなる

残っていればわざわざ撃ち落とすしか無い

……それにしてもマーリンさんを始め、皆さんよく喋るなぁ

 

「……質問してもよろしいですか?」

 

「アレ大鳳さん、このタイミングで何を私に聞くの〜?」

 

「あんたに聞いているわけじゃ無いと思うんだけど……」

 

「いえマーリンさんもです」

 

『も?』

 

「……あの皆さんっていつもこんな感じ……なんですか?緊張しないんですか?」

 

大鳳さんも気になったんだ

……4人は緊張してるようにも、不安を抱いている様にも見えない、

大鳳さんだってこの訓練には不安を抱えている様に見える、私も……少し足が震えそうです

けど緊張しない方法があるなら是非!——

 

 

 

「緊張はするけど今緊張してどうすんのっ」

「緊張してるけど喋ってないと暇だし」

「緊張感が無いけどな……」

「俺らは人間だ」

 

 

 

「…………えっと、不安はあると?」

 

「うん!」

「ええ」

「そりゃそうだ」

「ああ」

 

 

 

「……けど無意味だから喋ると?」

 

「暇だし」

「やる事無いし」

「こいつらに付き合うしかないだろ」

「ああ」

 

………答えになってるんでしょうか、コレは。

………私も聞かないと!!

 

「あっあの!不安は無いんですか!?」

 

「……あのな、緊張は勝手に向こうからやって来る、精神の緊張は無駄に体力を消耗するだけだ。

敵が来たら暇はない、勝手に真剣になる、自然にそうなるもんだ」

 

そうなんだ、緊張は勝手にやって来るだけだし真剣も勝手にやって来るんだ

…………っていう事はマーリンさんがいつも面白おかしいのは……天然?

 

「私は緊張って言うよりやる気が出てくるんだけどね〜」

 

「あなたはストレス耐性が強そうだものね」

 

「いやただ単に何も感じてないだけじゃ無いか?」

 

「……そうなの?」

 

「いくら何でもいい加減にして!私はそんなに馬鹿じゃ無いわよ!!」

 

「……余計バカみたいに聞こえるが……」

 

「BOSSまで!?」

 

「……まあ戦闘狂じゃ無いだけマシだろう」

 

「ですね、自分でセーブ出来ているだけマシですよ」

 

「酷くない?ねえ酷くない!?」

 

『……………………』

 

「酷い!!」

 

 

さっきから訓練とは関係ない話ばっかりだぁ……

大鳳さんの方は…………笑ってる?

 

「大鳳さん笑ってるんですか?」

 

「ふふ、そうね。ちょっと今のやり取りに笑ちゃったわね」

 

「……私はちょっとこの人達を指揮しないといけないって思うと……」

 

「確かに、リードするんじゃなくてされてますね」

 

「はぃ……」

 

「けど秋月さん、あの人たち……スネークさん達の事、心配してはいないでしょう?」

 

「……え?……ええ」

 

確かに……私はスネークさん達の技量や人柄を心配してるわけじゃな

この人達と装甲空母の大鳳さんが居れば今回の様な条件でも凌ぐ事は出来る

だから心配してるわけじゃなくて……

 

「じゃあ何に困ってるの?」

 

「あっ、えーと…………この雰囲気でしょうか?」

 

「……雰囲気?」

 

「はい、この鎮守府に配属されて以来、いえその前から私は空母の皆さんを守るために訓練し、

実践を積み重ねてきました、重ねてきたんですけど……いままで色々な方と組んできました、

対空戦闘は誰でも緊張して口数が減るんです。

加賀さんや赤木さんも集中するためかもしれませんが物静かになります。

逆にその不安を紛らわすために周りの人に話を振る方も居ます、それなのに……」

 

「……緊張や不安も感じない、ただいつもと同じ雰囲気が変?」

 

「変というか何というか……マーリンさんなんか特にいつも通りなので本当にこれからトンデモない

量の敵機が来るっていう実感が湧かないんです」

 

いままで様々な方と訓練しましたし実践も経験しました。

その中でも対空戦闘では緊張や不安が艦隊全体に漂うものなのですが、

…………ものなのですが、いつもと同じこの人たちを少し不気味に思っています。

けど、さすがにここでソレを言うのは…マズイですよねぇ

 

「……けどあの人達は修羅場を掻い潜ってきたプロ集団なのは秋月さんもわかってるでしょ?」

 

「はい、さっきの射撃を見てもわかりますし先月の交流戦でも凄い人達なのはわかります」

 

「じゃあ私も含めてなんだけど、全員を信じてみれば良いんじゃないかしら?」

 

「え?」

 

「言い方があれかもしれないけれど……今日は秋月さんが教えるワケでも無いのだし、

みんな頼れるぐらいの実力はあるでしょう?」

 

……気負いすぎたんでしょうか?

そういえば私はつい対空戦闘の訓練と思って力が入ってしまったのかもしれないです……

 

 

「秋月さーん、レーダーに反応は〜?」

 

「……っはい!けどまだ反応は…………いえ来ました!!」

 

凄い反応、おおよその数は……100機?

……違う!全方向からほぼ同じ機数が来てる!?

速さは……時速500km

 

 

「対空電探に感あり!

大鳳さんは左右に直掩機を!撃墜ではなく編隊を崩せれば良いです!!」

 

「わかったわ」

 

そう言いながら隣でボウガンに矢を装填、発艦作業を隣で始めた

瞬く間に飛んでいった矢が戦闘機になって編隊として左右に分かれていく

 

「エアーさんとマーリンさんは艦隊前後の敵機をお願いします!

スネークさんとウェバーさんは忙しくなりますが後方を支援しながらお願いします!!」

 

《マーリン、くれぐれも外すなよ》

 

《大丈夫です!秋月もカバーしてくれるんですし!!》

 

さっきと違い無線機越しで話し始めた

射撃を開始したら銃声や砲撃音で声がかき消されちゃうし、動作の確認も兼ねてるみたい

 

《報告、左右から来てるやつは雷撃機だけだ、前後は魚雷も爆弾もいる。

低空で飛行してる先頭の機体24機は護衛機、その後ろが雷撃機だ。

だが後方のだけ機数が……20機ほど足りない》

 

《……20機ってそれ誤差じゃないの?》

 

《いや、5機一個編隊が後方だけ4つ少ない》

 

 

目の良いウェバーさんが機種・機数を報告してくれた、約って言ってるけど多分ホントだと思う

それに対空戦闘では細かい数は重要じゃない、機種と高度・速度が重要

 

この情報は大事

 

「わかりました、予想外の方向から来るかもしれません、くれぐれも奇襲に注意してください」

 

《スネーク、撃ちこぼしたのはお願いしますよ》

 

《おいおい、俺にはお願いしないのか?》

 

《あんたは勝手に助けるでしょ?》

 

《なんだそれ》

 

《……マーリン、いくらカバーすると言っても自分に降りかかる火の粉は自分で払えよ》

 

《わかってます!》

 

そんな会話をしている内に大鳳さんの戦闘機隊が交戦し始めようとしている、

向こうの護衛機も高度を上げ待ち構えている。

雷撃機の高度は50mあるかどうか、このままだと戦闘機隊の下を通過する

 

 

 

大鳳さんの戦闘機隊はまっすぐ進む、護衛機は迎撃のため同じ様に直進

 

左舷では戦闘機が一気に、各編隊ごとに急降下

 

一瞬遅れて護衛機も降下

 

速度をつけすぐに水平に戻す

 

そのまま敵の大編隊の上を通過していく

 

けどその後ろには護衛の敵機がくっついてきた

 

 

そのまま編隊は再び降下を開始

 

だが護衛機もついて行く

 

大編隊の後ろについた

 

護衛機も大鳳さんの戦闘機の後ろに付くけど撃てば味方の編隊にも当たるはず

 

戦闘機隊が機銃の射程圏内に入る

 

雷撃機も後部機銃を撃っていない、撃てば流れ弾で味方の護衛機に当てかねない

 

そのぐらい敵味方が規則正しく、とても近く接近してる

 

戦闘機隊が遂に発砲

 

けど同時に護衛機も戦闘機隊に発砲した

 

爆発が6つ、黒煙が6つ、白煙はわからない

 

 

護衛機には損害はなさそうだけどウチの戦闘機隊は3機消耗した

それに雷撃機もいくつか海面に落ちているのに編隊を崩せてはいない、投棄もしていない

敵機の編隊は崩れない、向こうも練度が高い、撤収もしない

 

……これはマズイかも

 

《あれは避けませんね、初撃で決めるつもりですよ》

 

《……だな》

 

「大鳳さんは引き続き側面の編隊に攻撃を!マーリンさんとエアーさんは——」

 

《撃っていいんだね!》

 

《バックアップ頼んだわよ》

 

《……当てろよ?》

 

『当然!!』

 

そのままお2人は大砲を抱え、敵機に標準を向けて

 

・・・撃った

 

砲弾は飛翔

 

着弾まで……10秒はかかりそう

 

角度的に……雷撃機を狙ってる

 

「スネークさん——」

 

《俺らはまだ無理だ、10km以上離れていれば弾丸にパワーが残らない》

 

私の主砲なら問題なくても銃では10kmも飛翔すれば運動エネルギーは残らないようです

 

3

 

2

 

1

 

海面にヒット、前後の海面に大きい波しぶき

しぶきにひかかって何機敵機が落ちたけど…………

 

《護衛機が墜落、だがそれだけだ》

 

《艦隊前方も同じだ、魚雷を持ってる奴は落ちてない》

 

「お二人とも!次の発射は!?」

 

《最速で10秒》

 

《ていうかすぐ5km切る!!》

 

「ウェバーさん スネークさん、作戦通りに射撃をお願いします!」

 

《了解です》

《マーリン、さっさと次弾装填しろ》

 

《わかってますよ!!》

 

そう言いながらスネークさんとウェバーさんが艦隊後方に向けて射撃を開始

私も前方に向かって撃たなきゃ!

最初は爆撃機!!

 

「目標、前方の敵航空隊!諸元入力急げ!!」

 

妖精さんがすでに94式高射装置を操作してる、連動して10cm砲ちゃんも砲塔をうごかしてる

私は周辺を電探で確認しながら航行する

…………入力終わり!

 

 

「撃てっ!」

 

 

敵機編隊に向かって砲弾が飛んで行く

 

後ろは……大丈夫みたい、先鋒の編隊は壊滅、兵装を投棄して離脱し始めてる

そのすぐ後ろにいる編隊にもエアーさんの大砲で被害を出してるみたい

 

左右は大鳳さんの戦闘機隊のおかげで編隊は崩れた

けどまだ脅威は残ってる、投棄もしないでまっすぐ突っ込んで来る!

 

5・4・3・2・1……炸裂

けど編隊の手前で炸裂した、何機か火を吹いたけど堕ちたり兵装の投棄もしない

 

「諸元修正急いで!

全砲門はそのまま!弾幕に隙間を作らせない!!

大鳳さんは右舷の航空隊を左舷に向かわせてください、マーリンさんは右舷に射撃をお願いします」

 

《正面は!?》

 

「私がしばらく抑えます!

エアーさんはそのまま後方を大砲で撃って下さい、ウェバーさん右舷の支援お願いします!!」

 

《俺がマーリンの支援ねぇ》

 

《なんか文句ある!?》

 

《カールグスタフの装填終わったらとっておいて狙撃しろ、近くなったらぶっ放せ》

 

《あいよ〜》

 

「スネークさんは——」

 

《後方をさっさと片付ける、的確な指示だ、流石だな秋月》》

 

「はい!」

 

ありがとうございます……なんて答える暇がない!

今も電探の反応を気にしながら妖精さんたちに指示を出さないと隙間が出来る

まだ弾幕が足りない!……弾幕です!!

 

「再装填急いで!目標を爆撃機から正面にいる雷撃機に変更!

第一・第二砲塔は引き続き爆撃機を狙え!

第三砲塔は雷撃機に標準、併せて諸元の再計算も急いで!!」

 

 

「なんか秋月ちゃんの性格が変わってるんだけど!?」

 

「お前も戦闘になったら人格変わったみたいに頼り甲斐あるぞ!」

 

「また馬鹿にして!そりゃどうもっ!!」

 

《……お前ら無線を使わないのは構わないが、でかい声出したら意味がない。

ここまで聞こえてる、秋月に配慮するなら今は喋るな、報告はしろ》

 

『すいませんでした!!』

 

なんでこの人達はこんなに話せるの!

私はこんな大変なのに!!

 

……けど5km圏内から敵機はほとんど侵入できて無い、

10kmまではほとんど弾は届いてないのにその手前からは連続して爆発が起きてる。

しかも爆発してるのは敵機の兵装、味方の砲弾じゃない

次々と1発の銃弾が魚雷や爆弾を貫通して信管が作動、爆発して僚機に破片が刺さり損傷を与えている

 

……私もあういう風になれば皆を守れる!

 

「全砲塔 射撃目標 正面雷撃機!射撃諸元修正……撃てっ!!」

 

もう5km前後

 

3・2・1・……上手くいった!

 

敵機に直接炸裂して爆発、まとめて10機は堕ちた

けど後ろからどんどんやって来る

 

「諸元の調整急いで!敵機はすぐ目の前にいる!機銃も射程に入るよ!入ったら各自に撃って!!」

 

言った途端に機銃が火を吹き始めた

雷撃進路上に撃って投下出来ないようにする……だけど!

 

「マーリンさん!正面に——」

《ゴメン!カバー!!》

 

瞬間、マーリンさんの投下進路にいた敵機が次々と爆発

けどマーリンさん本人が撃った訳じゃない……ウェーバーさん!?

 

《後でなんかおごれ!》

《オレンジジュース!?》

《何でそうなる!?》

 

《……お前ら無駄に混線させるな》

 

《けど誰も喋ってません!!》

 

《……もういい。秋月、後方の敵機は殲滅した》

 

「…………え!?」

 

……確かに電探からは後方の反応が消えてる、波が出ない…………早すぎる

 

《指示をくれ》

 

「あっ……スネークさんは正面にいる敵機を!エアーさんは左舷にいる敵機の対応願います!!」

 

《了解した》

《願われたからには答えるしかないわね》

 

「大鳳さんは戦闘機隊の回収を始めてください」

 

「わかった、損害は後で報告するわ」

 

「あと艦隊の直上に偵察機も出して下さい、もうすぐ長門さんたちも来ると思うので」

 

「そうね……優秀な子たち、行ってきて!」

 

事前に考えていたのか、すでに偵察機がボウガンに装填されてた

そのまま矢は射出されて偵察機になって急上昇していった

 

「直上に空中待機させてください、発見次第報告お願いします」

 

「わかってる、任せて」

 

《新たな敵機を捕捉!艦隊直上!!》

 

「……え?」

 

すぐに真上を見る

……けど雲が邪魔で真上に本当に居るのかわかんない

 

《ウェバー、本当に直上に居るのか?》

 

《一瞬でしたが真上の雲の右に一瞬だけ翼が見えました》

 

《高度は》

 

《6000m》

 

《……30秒後か?》

 

《ですね。

ウェーバーから秋月へ、30秒後に敵機が急降下して来るのが見えると思います。

目標はわからないが恐らく大鳳さんかと》

 

「……わかりました、マーリンさん」

 

《わかった!正面のカバーはよろしく!!》

 

「私が…囮になりましょうか?」

 

「いいえ、これは実戦ではありませんし今回の第一目標は全員無傷ですから」

 

「……出過ぎたことを言ってしまったわね」

 

「そんなことありません」

 

大鳳さんは装甲空母だから普通より頑丈、

正規空母でもあるから敵機を引き付ける役回りには適任

……だけど今回は犠牲者を1人も出さない事が最優先

 

《被害担当艦なんか今は考えるな、被害を集中させる時じゃない》

 

《マーリンそろそろ時間だ、上空を見張ってろ》

 

《ていうか艦娘に1人で10機以上を近距離で撃ち落とせる娘って居るの?》

 

「私の護衛だった摩耶さんや鳥海さんが敵機を機銃で撃ち落としてたのは見た事あります」

 

《あの2人そんなに射撃上手いの?》

 

「秋月さんとはまた違いますが防空巡洋艦としての改装を受けた事があるので対空戦は得意ですよ」

 

《へえ〜》

 

《全員警戒しろ、誰を狙ってるかわからない》

 

ウェバーさんの言う通りならそろそろ来るはず。

他の敵機は……大丈夫そう、スネークさん達のおかげで左右の敵機もほとんど堕ちてる

……今も会話をしながら当ててるからなおさらスゴイけど

 

《高度2000m、数28、投下軌道!!》

 

《……ってわたしかい!》

 

敵機は意外にもマーリンさんに向かって急降下して来た

アレを全部投下する前に撃墜するのはいくら何でも……

 

「マーリンさん!回避行動——」

 

 

 

《ふ・ざ・け・る・な!!》

 

 

 

あれって大砲?

けど当ててもせいぜい数機だけ…………炸裂した!?

 

《ああ、秋月は私がカールグスタフ撃ってるの見てないし、砲弾がどうなってるのかも知らないか。

本来は戦車の装甲を貫通させるやつなんだけど、対人用に榴弾も装填できるの。

それで今は榴弾を撃って、当てて、炸裂させたの》

 

「けど1人じゃ——」

 

《多いんだよー!》

 

そう言いながら今度は銃を敵機に向けて撃ってる

けど機銃みたいに乱射してない……

 

しかも距離があるからわかる

ただ適当に敵機を狙って撃ってるわけじゃない、ちゃんと手前の敵機から破壊してる

ウェバーさんほど的確では無いけど爆弾投下前に彗星を全部落としてる

 

「秋月さん、艦隊の後方から6人来ました、すでに射程圏内です」

 

「皆さん敵機は!?」

 

長門さんたちの最大射程は37km、

妙高さんたちの主砲も27kmから撃ってくる、すぐに離脱にかからないとやられる!!

 

《艦隊前方の敵機で最後だ、大鳳がさっきの偵察機を落とした。電探以外で捕捉される心配は当分

無いだろう》

 

《こっちのカバーは!?》

 

《あなたがヤバくなったら支援するけど、その心配は無さそうだし》

 

《嬉しく無い!!》

 

けど本当に1人で全部撃ち落としそう……

回避行動もしないで全部撃破するなんてありえないのに…………

 

《で、この後どうする?》

 

「はいっ!すぐにここから離脱します、皆さんのボートなら速度で撒くことは可能ですから」

 

《……それなんだけど》

 

「はい」

 

《俺のボート、エンジントラブル起こした》

 

「……えっ!?」

 

《普通に航行するには問題無いと思うが、高速で航行するのは厳しい》

 

「どのくらいなら大丈夫ですか?」

 

《30ノットは出せない、曳航してくれれば速度はどうにかなるがバランス取るために俺は何も

出来なくなる、それに回避行動も出来なくなる》

 

《どうすんの?》

 

《出来れば見捨ててほしく無いんだが……》

 

「当然です!わかりました、ウェーバーさんは私のすぐ後ろに」

 

《了解》

 

《こっちも全部落としたよ!!》

 

「全員単縦陣!すみませんがスネークさん、早速ですみませんが——」

 

《作戦通り、さっさと撒くんだろ》

 

「お願いします!」

 

《マーリン、エアー、撤収だ》

 

『了解!!』

 

「……敵艦発砲!」

 

「離脱します!」

 

数秒後、艦隊 右舷後方に大きな水柱がたった

急いで陣形を変えたおかげで誰も当たって無いけど、着弾地点は大鳳さんがいた所だ

 

「さっさと撒くぞ」

 

「今やりますよ!」

 

「合図の後にお願いします!!」

 

これで時間が稼げる

ここさえ乗り切れれば勝てますが…………逃げ切るしかありません!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……外したか!

だが完全に射程圏内に捉えた、しばらくは砲撃できる

 

「次弾装填急げ。妙高、切り込みは頼んだぞ」

 

「わかりました、私に任せてください」

 

加賀たちの開幕攻撃は完全に失敗した。

さっきと同じく一切の小破も出さず、しかも一度も魚雷や爆弾を投下させなかったらしい

戻って来たのも数えるほどの様だ、第二次攻撃も出来るかどうか……

 

「長門?本当に観測機を飛ばさなくて良いの?」

 

「ああ、向こうの位置は電探で十分捕捉できる。

それに先ほどまで翔鶴の偵察機から情報は届いていた、私たちならやれる」

 

「……そうね」

 

「秋月ちゃんのためとはいえ、やられてばかりもいられません!!」

 

「あら羽黒、珍しく本気じゃない!」

 

「……どれだけやれるか試したいですから」

 

私と陸奥の一斉射だけで仕留められるとは思えない

そのため妙高たち4人を先に突入させる、私たち2人は後方から主砲で支援する

 

「諸元の修正終わったわよ」

 

「第二斉射、撃てっ!!」

 

電探の反応からして単縦陣で私たちと反対側に向かっている

恐らく速度で私たちを振り払う気だろう、だがそうはさせない。

先に当てて速度を落とす!

 

「あら…………止まった?」

 

「みたいだな」

 

「ではお先に!」

 

妙高たち4人が速度を一気に上げ、

水しぶきを立たせながら秋月たちがいる方へ向かった

 

それに もうすぐ日も落ちる

第二波もすぐ出すと言っていた、時間との勝負でもある

なら足を止めるしかない

 

「当たった……のかしら?」

 

「わからないが速度を見る限りではそうなるだろう」

 

先ほどまで30ノット以上出して離れていってたが、着弾したであろう直後に6隻分の反応が止まった

すぐに動き始めたが15ノット前後と半分近く速度を落とした

……大鳳に直撃して機関に判定が生じたか?

 

「陸奥、前言撤回だ。今から水観を出す」

 

「……気になるの?」

 

「仮に当たったとしても、一旦止まったのが気になる。

秋月に直撃したらその時点で轟沈判定だろう、すぐ連絡が来る、至近弾なら一旦止まりはしない。

大鳳に当たったとしてもそれはあくまで判定だけのハズ、止まることは無いだろう」

 

「確かにね、けどあの子意外と運が悪いのよ?」

 

「……気に障ったか?」

 

「いいえ、ただ単にあなたを からかっただけ。どのみち私は着弾観測のために飛ばす気だったから」

 

「なら飛ばすぞ」

 

「ええ」

 

カタパルトに水観を装着させ発艦させた

すぐに接触できるだろう

 

「それで、次にどうするの?」

 

「電探を頼りに撃ちながら接近するだけだが」

 

「そう……神通たちの方は?」

 

「神通たちは対潜哨戒でだいぶ沖に出てるそうだ。

今の所連絡も無いから問題無いだろう、彼女たちも練度が高い」

 

「まあ最初からココに来たものね、次弾装填完了」

 

「第三斉射、撃てっ!」

 

修正して主砲を一斉射する

距離的に目標は正面に現れても良いんだが……煙幕?

 

《こちら妙高、こっちの電探でも目標は捕捉してるんですが煙幕が広範囲に ばらまかれています》

 

「……秋月も装備していたのか?」

 

《いえ、多分スネークさん達がやったものだと思います》

 

「なぜそう思う?」

 

《煙幕の質、と言えばいいですか、いつもとなんか違う気がして》

 

「それでその中に反応がある感じ?」

 

《どこまで続いているかわかりませんが……煙幕の先に居るのは確かです》

 

「行けるか?」

 

《私たちに任せて下さい!」

 

「頼んだぞ」

 

《じゃ、みんな行くわよ》

 

『了解!』

 

通信が切れた後、第一戦速で4人が煙幕の中に消えた

さすがに最大戦速で視界不良の中を航行するのは危ないと判断したのだろう。

……それにしても、なぜ煙幕なんだ?

 

「あら、まだ何か気になるの?」

 

「相手が深海凄艦ならわかるが、私たちは身内同士だ。

今回は、いやほぼ常に電探を装備している事は知っているはずだ」

 

「それは当然よ、提督たちのおかげで装備は充実させてもらってるもの。

改修もそれなりにしてもらえてるしね」

 

「なら煙幕が意味の無い事も知っているはずだ、わざわざ煙幕を展開させる意味が無い。

……そんな無意味な事を彼らがやるか?」

 

「……罠!?」

 

「無意味な事をする連中じゃない、発砲はして来ないと言ってはいたが何をして来るかわからない」

 

「なら妙高たちに連絡しないと!」

 

「それも承知の上であの煙幕の中に入ったんだろう。彼女たちもそのぐらい想定している」

 

「……ならあなた、何を警戒しているの」

 

「できるとすれば時間稼ぎだ。だが煙幕を炊いても電探で捕捉される、自分たちの姿は隠せない」

 

海上での煙幕は敵の目を欺いて離脱するためにしか使えない

だが、煙幕だけでは何もない海上では電探が捕捉できる…………“煙幕だけ”なのか!?

 

「陸奥、お前の水観は煙幕が張られていないところを飛ばしてくれ」

 

「何よ、独り占めにするつもり?」

 

「違う」

 

「……どういう事よ」

 

「煙幕は何らかの欺瞞工作を隠しているだけの可能性がある、

だとすれば釣られて捜索範囲を狭めるのは向こうの思うツボだ」

 

「……なんかしてやられてるわね、私たち」

 

「そうでも無い、ここでの戦闘経験はこちらが上手だ。

いくら彼らでも水平線の向こうからの攻撃に対処する術は無い」

 

「……なんて言ってたら私の水観が秋月たちを捕捉したわよ?」

 

「位置は?」

 

「私たちの右舷6km先、加賀たちの方に近づいてるわね」

 

なるほど、第二次攻撃のタイミングを短くするつもりか。

 

「そうはさせるか!陸奥、弾着観測は頼んだぞ」

 

「はいはい……主砲一斉射!撃てっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

……飛んできたか

 

《着弾位置艦隊の右舷5メートル!・・・・・・今!!》

 

ウェーバーが秋月に引っ張られながら砲弾の着弾位置を報告

その数秒後、艦隊……俺らが作っている列の右真横に大きな水柱が8つ立つ

一列……単縦陣の中央にいるマーリンとエアーは海水を大量に浴びている

 

「ウェーバー!あの砲弾を狙撃でどうにか出来ないの!?」

 

「無茶言うな!当たったところで弾かれるか潰れる!!」

 

『当てられるんですか!?』

 

このタイミングで秋月と大鳳が興味を持った

……今はそれどころでは無いんだが

 

「すごい早いけどタイムラグはあるから、狙いを定める時間はある」

 

「はぁ……」

 

「そんな事より!この砲撃どうすんの!?」

 

「あらマーリン、怖いの?」

 

「海水でずぶ濡れになるのがヤダ!特に銃のメンテ!!」

 

「気にするな、ティムにやらせればいいだろう。

昨日のツケでやらせれば問題無い、それで許してやれ」

 

「……まあスネークが言うならぁ……」

 

「けどこの状況、どうする気?」

 

確かに航空攻撃は凌いだが、戦艦2隻に重巡洋艦4隻から逃げ回るのは陸上でならまだどうにかなるが

遮蔽物が何も無い海上ではどうしようも無い、向こうにはレーダーもある。

 

「皆さんの手榴弾のおかげで、妙高さんたちからすぐに雷撃を受ける心配はありません。

しばらくは長門さん達からの砲撃を避けます」

 

「私たちのおかげっていうか、常識だと思ってたわよ」

 

手榴弾の話は50分ほど前、

鎮守府から東京湾に出て訓練海域に向かう間に話した内容に関係する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー16:10 東京湾航行中ー

 

「それで、長門たちに捕捉されたらどうするんだ」

 

「一番厄介なのは妙高さんたち重巡に目視圏内に入られて追い回される事ですね。

こちらには対空電探しか持っていないので目視か大鳳さんの偵察機に任せるしかありません。

ただ……」

 

「ただ?」

 

「偵察機を防空戦闘の最中に発艦させるのはほぼ不可能です、

事前に偵察に回したとしても接近中に落とされればそれ以降情報は入って来ません」

 

「……あれ?けど今回大鳳さんって攻撃機の代わりに戦闘機を大量に積んでるんでしょ?

だったら偵察機も大量に運用できないの?」

 

「お前、大量に運用しても堕とされたら何の意味も無いだろ。

それに空母も目視圏内ならある程度航空機を操作するらしい、事故の元になるだけだ」

 

「あっ、操作できるの?」

 

「まあ航空攻撃は妖精さんたちに任せてますけど、輪形陣縁外での戦闘までならある程度指示を出す事が出来ます、全体を把握しながら攻撃目標を命令するぐらいですけど」

 

「ならしょうがない……の?」

 

「ある程度片付いてから上空で待機させてくれ、それで今回はどうにかなるだろう」

 

「しかしスネークさん、それだけではレーダーによる管制射撃から逃げるのは難しいです」

 

「レーダー管制はあいつら出来るのか?」

 

「長門さんはもちろん、妙高さんたちも練度は高いですし昔と違いますからね。

当然のように電探で修正して射撃するぐらい朝飯前でしょう」

 

「あと水上機による弾着観測も出来ますね、水上観測機は持ってたので」

 

「……なら問題ないな」

「無いですね」

「無いわね」

「無いじゃん!」

 

『……え?』

 

「…………あ、あの秋月さん?電探と弾着観測射撃が問題なんだよね?」

 

「はい!それさえどうにかなれば、凌ぐ事は速さを生かして逃げ切れるはずです!」

 

「ならどうにかなる」

 

「……どうやるんです?」

 

「観測機は大鳳さんに任せればどうにでもなるし、電探自体何の問題も無いよね?」

 

「ウェーバーさん、答えになってません。

大鳳さんに観測機を墜としてもらうのはわかりましたが、電探をどうやって——」

 

「チャフだよ」

 

「……ちゃふ?」

 

「え、なんか今大鳳ちゃんが可愛かったんだけど……」

 

「……マーリン、愛でるのはあとにしてくれ。

それより、チャフを知らないんだね?秋月さんも?」

 

「いっいえ、私は知ってます。

ガダルカナルで味方が撒いたのを知っていたので」

 

「私は知りません。加賀さんなら何か知ってるかも知れませんが……」

 

「いや恐らく知らないだろう、知識が無いなら仕方ない。

口で言うよりやった方が早い、マーリン・エアー、持ってるな?」

 

「持ってるも何も……」

 

「艦船なら普通に常備してるものだと思ってたんだけど……」

 

「いいからやれ」

 

「……じゃあ試しに私たちが投げるよ〜、電探にご注目」

 

そう言って2人がチャフグレネードを後方に向かって投げた

……マーリンの奴、投擲距離が中々だな

 

「エアーってグレネード投げるの苦手?」

 

「………あんたが投げすぎよ」

 

「それで、この後どうなるんです?」

 

「まあ電探見てれば分かるから」

 

わざとらしくマーリンが手を大鳳に向かって扇ぐ

その瞬間炸裂、150mと100m後方一帯にアルミ箔片がばら撒かれた

秋月が大鳳にレーダーを見せる

 

「……電探に無数の反応!?」

 

「それがチャフだ。

簡単に言えば、アルミ箔を空中にばら撒いただけだ」

 

「……アルミってボーキサイトから出来るアルミホイルと同じですか?」

 

「当たり前だ、お前らの艦載機もアルミで……出来てるかはわからないが少なくとも人が乗れる奴は

アルミで出来てただろう?」

 

「けど何で電探にこんな反応が?」

 

「……本当に知らないのか

アルミ箔はレーダー波の反射率が極めて高い、だからある程度まとめてばら撒けば架空の反応が

レーダーに映る、上空から撒けば大編隊が現れた様にも見える」

 

「……けどそれが何故私たちが持ってるのが当然だと?」

 

「今じゃ常識だから。

艦隊戦って言うのが正しいか知らないけど、今の海上戦は簡単に言えばミサイルを当てるのが普通。

んで、当てるには遠距離から相手の位置を捕捉しないとダメ。

そのためにレーダーを使うんだけど、当然ながらレーダーを使えばロックオンされているのも

わかるんだけど……ここまでは理解してくれた?」

 

マーリンが2人に説明する

こいつ、戦闘に関しては頭も良く判断も早い、良くしゃべるから説明役には丁度いい

 

「はい、今は電探で相手を完全に補足して攻撃しているのは聞きました」

 

「それはあの提督からか?」

 

「いえ、自衛官の方から」

 

「……まあいい、続けろ」

 

「はい。

それで、ロックオンされたら当然回避しないといけないから地上では建物の裏に隠れたり出来るけど

海上や空じゃそんな事ほとんど無理でしょ?」

 

「……はい、島でも無い限り」

 

「なるほど、囮として ちゃふ を撒くんですね?」

 

「そゆこと。

特に船は速度が遅いっていうのと大量に撒けるから効果が大きいの。

他にもアクティブデコイとかECMポッドとかEMPとか色々と方法は有るけどね」

 

『いっ “いーえむぴー”?』

 

「……なんか癒されるんだけど」

 

「お前、EMPで癒されるって何だ」

 

「けど言い方が可愛らしいかったわよ?」

 

「……そうかよ」

 

「それで“いーえむぴー”って何です?」

 

「……気になるの?」

 

マーリンの表情は変わってなかったが声の調子が固く低いものになった

だがそれに気づけるほどマーリンの話を聞いている2人は変化に敏感ではなかった

 

「はい、空母の皆さんの役に立てそうですから!」

「私も気になります、電探を欺く方法があるとは知らなかったので」

 

「……教えます?」

 

「問題無いだろう、むしろ知らない方が問題だ。俺からついでに提督に言っておく」

 

「……わかりました」

 

「……えっと、また何かしらの機密に関わるんですか?」

 

「ううん、調べればわかる事だよ。

EMPって言うのは電磁パルスって英語の頭文字を取った名前。

簡単に言うと……まあ電子機器を破壊する電磁波」

 

「えっ……破壊、ですか?」

 

「そう、強力な電磁波が電子機器に干渉して異常な電流とか電圧をかけるの。

それで中の回路が焼き切れて早い話ショートさせて、使えないものするの」

 

「じゃあ電探も——」

 

「電探どころか発電所とか電線にも影響は出るし、無線機とかライト、

バッテリーとかで点火するエンジンも使い物にならなくするね」

 

「……それって敵味方関係なく悪影響なんじゃ」

 

「範囲を絞ればどうにかなるけど下手すれば全世界がそうなるよ」

 

「……人体に影響は無いんですか?」

 

「それは全く問題無いよ。

さすがにペースメーカーを埋めてる人は危ないけど生物には何の影響も無いよ」

 

「それでも……怖いですね」

 

「けど上手く活用できれば戦力になるハズです。

私たちが装備出来ないとしてもバックアップとして心強いと思います」

 

「あははは………………はぁ」

 

「バックアップ……ねぇ」

 

「まあ活用できたら有効的だな」

 

「今のところ個人に持たせるのは厳しいがな」

 

「そうなんですか?」

 

「大きい爆弾として投下すれば効果的に作用はするだろうねー。

だけど、深海凄艦のためにそれを作るにはコストがかかりすぎ、

………まあ何にも考えなければ、深海凄艦を殲滅して残党を撃破すればこの戦い、終わるかもだけど」

 

『どんな方法です!?』

 

「マーリン、良いのか?」

 

「ここまで言ってしまいましたしね………そういう事もついでに言った方が良いと思うんで」

 

「俺らが口を出す事では無いだろうに」

 

「けどウェーバーも別に反対じゃ無いでしょ?」

 

「……どうせ知る事にはなるだろうからな」

 

「……また機密ですか?」

 

「いやね……発生させる方法っていうか、発見したきっかけは“ソレ”の副産物で、

“ソレ”が もしかしたら深海凄艦を殲滅させられるかもしれないんだけど……」

 

「“ソレ”って何なんです?」

 

 

「……核」

 

 

『!!』

 

 

2人がその言葉に表情を変えたのだろうと容易に想像出来た

さすがにそれは知っていたか……

 

まあ常識を教えられているなら核の威力・影響は十分わかっているだろう。

……ヒロシマの投下地点近くには軍港があったとティムが言っていたな

 

 

「まぁ……そういう訳で私は言いにくかったの、何かゴメンね」

 

「い いえ、無知だった私の方が悪かっただけです」

 

「はい、マーリンさんが悪い訳じゃありませんよ?」

 

「……うぅっ……大鳳ちゃん・秋月ちゃん、あじがとう………」

 

「…………何であんたが泣いてんの、あと“あじがとう”って何」

 

「味が甘いんじゃないか?」

 

「そんな冗談いま言ってどうすんのよ」

 

「それもそうだ」

 

「ちょっと!何で私の発言がネタになってんのよ!!」

 

「……明らかにネタだと思いましたけど」

 

「秋月ちゃんまで!?」

 

……大鳳の奴は恐らく笑っているのだろう、バレないよう顔を横にしている

 

 

その後、引き続きマーリンがチャフの有用性を話し今回どのタイミングで使うかを決めた。

そして俺が長門に無線を入れ、訓練を始め、砲撃を喰らう現在になる

 

 

 

 

 

 

ー現在ー

 

それにしても、戦艦の砲撃って言うのは派手だ、

何せ演習弾が作る水柱だけでもこっちは頭から海水を被る羽目になる

 

「秋月さん!だんだん着弾位置が正確になってる!このままだとやられる!!」

 

「カールグスタフじゃ とてもあの砲弾の弾道を曲げるのは無理よ」

 

「レールガンならどうにでもなるけどね〜」

 

「いっその事、空中スタンも仕掛ければよかったのに」

 

「そいつはダメだ、今回の訓練は俺らがあいつらを倒す訳じゃない。

秋月の技術向上の一環だ、俺らが仕留めてどうする」

 

「ですよね……」

 

「煙幕、また作る?」

 

「ダメです、時間的に煙幕を展張している間に第二次攻撃が来たら何も出来ません」

 

「直掩機は?」

 

「こんなに砲撃が激しいと発着艦も不可能です」

 

「実戦も逃げるしかなさそうだな」

 

「避けきるしか今は方法はありません!」

 

「……そうか」

 

ウェーバーの奴が言った“実戦も”というのは自分の状況を考えてだろう

……足を怪我した兵士は戦場に長居すればそう長くは持たない、さっさと離脱するに限る

 

「いや、次の射撃で誰かしら被弾しそうな気がするんだが」

 

「……結構回避運動はしてるんですけど」

 

秋月の言う通りだ

一列になった後、ランダムに舵を切りながら高速で航行している

キツそうなのは紐一本で曳航されているウェーバーだが戦闘さえしなければ問題無い

両手が使えないが着弾位置は特定している

 

「向こうとは距離は離れているのか?」

 

「はい、距離を詰められては居ません」

 

「来た!!」

 

《大鳳さん回避!》

 

エアーが声をあげた後すぐにウェーバーが無線に叫ぶ、どうやら直撃コースらしい

すぐに大鳳が陣形から離脱

秋月は砲弾が飛んで来ている右舷に舵を切った、俺らもそれに続く

 

 

だが

 

 

《着弾!》

 

 

水柱が大鳳が居たハズの列の3番目に立つ

他の水柱も直進していれば俺らにも至近弾になっただろう

ギリギリのところでどうにか直撃は免れた

 

だが耳障りな音

 

……大鳳に聞いてみる

 

「大鳳、お前当たらなかったか?」

 

「……すいません、直撃はしなかったんですが水面下で弾頭が……」

 

「それで損傷は!?」

 

すぐに一番後ろにいたマーリンがスモークをいくつか空に投げる

俺やエアーも 続けて空に投げ、あたり一帯を隠す

さらに1人ずつスモークを渡す、これでしばらくは位置がわからないだろう

 

「妖精さんの判定だと機関室に浸水発生、左舷に傾斜中、舵は効きますが船速は……現状を維持

出来ません」

 

「……艦載機の発艦は可能ですか?」

 

「波さえ立って居なければ」

 

「…………わかりました」

 

一番前を航行しているため表情はわからないが明らかに何か考えがあるらしい

他の奴も察したらしい、マーリンが聞き手にまわる

 

「秋月ちゃーん、コレは訓練だからね〜。

……昨日も言ったけど訓練と実戦の違いは縛りがあるのと死人が出ないだけ。

けど意味のある事をすればその訓練からは得られるものはあるからね〜」

 

「あんたずいぶん軽く言ったわね」

 

「いやだって、ここで固苦しく言っても意味ないし」

 

「それもそうね」

 

「得るもの…………」

 

秋月がマーリンの言葉のおかげか決心したらしい、後ろを向き俺らの方を見る

 

「皆さん、私に考えがあります」

 

『知ってる』

 

 

……おい

 

 

「……お前ら、最後まで言わせてやれ」

 

「いやだって重く考え過ぎなんですもん!」

 

「あなたが軽すぎるだけの可能性もあるけれど……今回は事実ね」

 

「・・・えっと・・・」

 

「速度に問題がある俺と大鳳さんをどうかしようっていうんだろう?

リスクはあるけどそれに異議は無い」

 

「私も旗艦の命令には従います」

 

「……では提案ではなく、説明とさせて頂きます。

もう時間もあまりありません、間も無く妙高さんたちも合流して来るでしょう。

……スネークさん、マーリンさん、負担を掛けますが——」

 

「撃てるの!?いっぱい撃てるの!?」

 

「……最初から手を貸す気だ、何をどうする?」

 

「少々無茶ですが皆さんが生き残れる最善策だと思います」

 

 

秋月が作戦を話し始める

…………こいつは確かに手荒だ、だが十分に勝算はある。

 

「いいね〜、突っ込むのは最高だね〜」

 

「……あんた、撃つことは出来ないんだからね」

 

「わかってるって、けど“撃たなければ”いいんですよね?」

 

「ああ」

 

「なら文句ありません!」

 

「私も異議は無いわ、むしろ良くコレを考えたわね?」

 

「仮に第二波が来ない状況でも水上打撃部隊をどうにかしなければ逃げられません」

 

「そりゃそうだ。こっちには正規空母が一隻いる、敵が敵なら逃してはくれないか」

 

「そういう事です」

 

確かにその通りだ

今回は訓練のため途中で砲撃を止めてもらうが本番ではそいつらも対処しなければ逃げられない。

それに俺らは攻撃できない

 

「大鳳さんもいいですか?」

 

「はい、それが一番私が活躍できそうですしね」

 

「ではそちらの指揮は大鳳さんに一任します」

 

「改めてよろしく」

「俺も航行は厳しいが射撃は出来る、防衛は任せろ」

 

「まっそっちに敵向けたらお終いなんだけどね〜」

 

「だな、お前らにはしばらく働かないでもらいたいもんだ」

 

「では20分後、私たちが合流します」

 

「おい、それ貸せ」

 

ウェーバーからブツをもらう

 

「後でティムに評価してやってください」

 

「だな」

 

「では行きます!」

 

そう言ってマーリンと秋月が速度を上げ、俺も物を持ち3人を置いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一機だけ水観をこっちに戻すわね」

 

「だがこのまま見失うわけにはいかない、追撃するぞ」

 

「私たちなんてまだ1発も撃ってないです」

 

「見事に、してやられたからな」

 

「私に砲撃をさせなさい!!」

 

「姉さん……」

 

確かに妙高たち4人はスネークたちのおかげで無駄足を踏んでいる

足柄の言葉はこの4人の本音でもあるハズだ

 

「結局あの煙幕の中には金属片があっただけなのね?」

 

「はい、恐らく電探に反応があったのはコレが原因だと思います」

 

「……欺瞞紙か」

 

「ですね」

 

「航空基地所属の航空隊がばら撒いてた事はあったけれど、人がチャフを撒くなんて……」

 

「しかも効果が発揮できる程度に空中に撒いてありました」

 

「一体どうやって……」

 

「さあな。だがあの人たちの事だ、何をやってもおかしくは無い」

 

「そう……ですよね、超電磁砲なんて作っちゃうんですもんね……」

 

「そんなにスゴイの、その砲?」

 

「瑞鶴さんが言うには直撃すれば障壁を貫通して艤装が粉々になりそうで、

数十メートル離れたところを通り過ぎてもあまりの速さから艤装が壊れるみたいで…………」

 

「なんか何でもありな感じね……」

 

先ほど妙高たちが合流し、現在は単縦陣で全速力で秋月たちがいた方角に向かっている

一応電探も起動しているがそれもあまり当てには出来ない

 

さらに陸奥の水観は先ほどまで触接していたが煙幕を張られ弾着観測は出来なくなった

その周辺を哨戒させたが見つからず、こっちに一機のみ戻すことにした。

逃げ切るには本来我々をある程度倒すしかない、逃げ切るだけなら後に水観が見つける

もしこっちに攻勢を仕掛けてくるなら先に用意しなければ奇襲を受けることになる

 

それにもうすぐ17:00にもなる、夜間の発着艦作業は危険が伴う

いくら訓練でも着艦時に事故が起これば妖精や空母本人も怪我をしかねない

 

「しかし……仮に攻撃に出るとしてもどうするんです?

秋月さんは模擬弾を使えますけどスネークさんたちは私たちに発砲しないんですよね??」

 

「ああ、そう言っていた。

もし発砲したら装備を持ったまま海に突き落とすらしいがな」

 

「一体どんな仕打ちよ……」

 

「けどあの人たちなら普通に泳いで“疲れた〜”っとか言って戻って来そうです……」

 

「そうね……」

 

「確かにな」

 

「ありえるわー」

 

「けど大鳳も……あっ戦闘機だけしか持ってないのね」

 

「そうだがなにをして来るかわからん連中なのも事実だ」

 

「確かに長門の言う通りだが……」

 

那智が顎に手を当て悩む

……まあ確かに今回なら私たちに対する攻撃手段は無いに等しい

 

「…………水観から入電!こっちに3人来てるって!!」

 

「どこからだ!?」

 

「真正面!帰還途中の進路上だから間違いないわ!!」

 

「たった3人で主砲ガン積みの戦艦2隻と重巡4隻を相手にするつもりなの!?」

 

いくら何でもそれは無謀すぎる、時間稼ぎにしてもそれは死に急いでいる!

それに今回は一切の発砲をしないと言っていた、なにも向こうからは出来ない!!

 

 

単なる的でしか無いぞ!?

 

 

「全艦、射撃用意!」

 

「こっちの位置はバレてる……みたいね」

 

「出なければまっすぐ突っ込んでは来ないだろう。

まあこちらとしては突っ込んで来てくれるのはありがたい」

 

「 さあ派手にかますわよ!」

 

「いよいよスネークさんと対面ですかっ」

 

接近の報を聞いて4人に気合いが入る

……私も負けてはいられないがっ!!

 

「見えた!距離4200、まっすぐこっちに突っ込んで来てるわ!!」

 

見ると秋月らしい姿と、水上ボートが2隻見えた

ボートに乗っているのは………マーリンとスネークか

 

「全艦発砲許可!全砲門開け!!」

「全主砲斉射!」

 

私と陸奥がまず先に撃つがすぐに回避される

だがその方向に向けて妙高たちが砲弾を飛ばす、しかしそれも回避される。

さすがに簡単に仕留められる相手では無い か

 

「やっぱり回避されますか……」

 

「構うな、接近を許せばこちらが不利になる!近づかれないようにしろ!!」

 

『了解!!』

 

5人全員が答える、同時に陸奥が副砲を発砲し始めた

私も副砲で攻撃する……が距離が開いていること、相手が駆逐艦と水上バイクのため全て回避される。

 

さらに、水上ボート2隻が速度を上げ秋月の前に出て左右に交差、

煙幕や横に大きく広がり秋月が隠れる

 

……どこにいるかわからない

電探も水上バイクですら補足する事が出来ず他の反応を示している、また金属片を撒いたのだろう

 

さらに、そのまま水上バイク2隻は円を描くよう大きく迂回しながらこっちに近づいてくる

焚き続けているため煙幕の範囲効果はさらに広がる

 

 

「秋月に奇襲攻撃させるつもりね」

 

「全艦、速力を上げろ!近距離で魚雷を放たれればこっちもタダじゃ済まないぞ!!」

 

「だけど正面は煙幕で何も見えませんよ!?」

 

幸い、と言うか則面に展開しているのはただの水上ボートだ。

……もし駆逐艦や軽巡だったならすぐに反転しなければならなかった

 

だが今回魚雷を撃てるのは秋月ただ1人、多くても4本しか向かって来ない

 

「則面に回る2隻に攻撃しながらこのまま正面を突っ切る!

そのまま空母がいる方に向かいソレを守る護衛ごと倒す!!」

 

「しかし大鳳さんがどこにいるかは——」

 

「大丈夫よ、長門の水観がさっき補足した!

すぐに私の水観も向かったから見失うことは無いわ!!」

 

「そういう事だ、何か意見がある奴は?」

 

『なし!!』

 

「よし!全艦、私に続け!!」

 

この煙幕の中に秋月が居たとしてもコレだけ視界が遮られていれば砲撃でも当てるのは難しい、

衝突の危険性もある、もし攻撃して来るとすれば煙幕が切れた後だ。

 

それに向こうとしてもこの攻撃は賭けに近い。

演習とはいえ、もし敵が連合艦隊……倍の数ならば通常なら逃げるしか方法は無い

 

あの面子は航空隊に対しては圧倒的な攻撃力を持つが対艦戦には不向きだ

航空攻撃を凌げても私たちに補足された今、ついて来られないよう打撃を加えるしか無い、

そのまま逃げればいつか私か陸奥の砲弾が確実に当たる

 

「全員気を緩めるな!!煙幕が切れた所では特に注意しろ!!」

 

『了解!!』

 

「突入!!」

 

煙幕の中に入る

煙幕そのものは10秒もかからず抜け切るだろう……問題はその後だ

 

今のところ後ろから全員ついて来ている、出来るだけ早く大鳳を仕留めるのが最優先、

この局面を切り抜けられれば戦術的勝利はもぎ取れる!

 

「戦闘準備!」

 

間も無く煙幕を抜ける、煙の間から少しずつ赤い空が見え始めた

 

どこから来る!?

 

正面か?

 

右か?

 

左か?

 

後ろからか?

 

煙幕を・・・抜けた!

 

 

瞬間

 

 

上に影を見る

 

 

……風船!?

 

 

「全員回避!上に注意しろ!!」

 

 

とにかく何らかの罠だ!

 

避けるに越した事は無い!!

 

 

 

“バンッ” と音が聞こえた

 

 

 

同時に上を見る

 

 

 

何か落ちてきた

 

 

 

だが私たちの真上ではない

 

 

 

前に落ちて来た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして光った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、

秋月の作戦は完璧に型にはまり 大鳳が中破したため全員無傷とはいかなかったが

秋月生還は果たされ、6人全員判定としては帰還する事が出来た

 

 

秋月の作戦はいたってシンプルだった、同時に長門の予想通り賭けでもあった

 

まず、私達は長門たちに同情できなくも無い

「艦娘にチャフを使用する事を予想させるっていうのは酷だし、秋月・大鳳活躍してたか?ていうか何かセコくねぇ?」

と思われても何の問題もない、いたって普通の考えだ。

 

 

しかし、スネークの秋月に対する判定はというと “アリ” の一言に尽きる

 

コードネーム〈ネイキッドスネーク〉

由来は全ての装備を敵地から現地調達する事から来ている

要するに“使える物は何でも使う”のは当然なのだ

 

本人いわく

「秋月がアドバイスを求めて来たら減点対象だったが、本人からの発案、提案、実行を行った。

頭も度胸もある、なかなか見込みのある奴」 だそうだ。

 

 

MSF……国境なき軍隊の任務遂行の基本は

 

・いかに自分が生き残るか

・いかに味方と生還するか

・いかに敵を退けるか

 

この3つだ

第一条件は個人の生存

……極論だが、全員が“俺だけでも生き延びてやるっ!!”と思えば全員助かる

集団で無くとも生き残るという精神がいかに強いかで任務の成功率は変わる

 

身を捨ててでも相手を打破したところで目の前の相手だけにしか損害は出ない、

生き延び、自分自身も反省し次に生かさなければ強くなれないからだ。

もちろん味方に情報を伝えるという点でも何が何でも生き残るとうのは最優先事項になる

 

いかに味方と生還するかというのは、味方も生き残る意志がある事が大前提だ

しかし、どんなに強い意志があろうとも技術・知識がなければどうにもならない

それに過酷な環境下で判断を下さなければならない、そのために訓練を行う

 

最後の いかに敵を退けるかだが、コレは別に敵をどの様に殲滅させるか という事ではもちろんない

どの様に排除するか と言うのも少し違う

 

スネークの任務は基本スニーキング、完全ステルスだ

その際、殺傷は当然だが催眠や気絶も“人”という大きく目立つ痕跡が残る

そのためスネークは出来るだけ殺傷せず、

空マガジンで音を立て敵をやり過ごし、

最低限しか敵との接触をしない

 

いかに退けるか、というよりいかにやる過ごすかと言う方が正しいかもしれない

 

 

さて、この3つの観点から見ると、秋月の長門たちへの切り込みはある程度正しい

戦艦2隻と重巡4隻に突っ込んで何が自分の生存だ と思うかもしれないが、

秋月1人だけで突撃しても十分足止めは出来る、だが秋月はスネークとマーリンに願い出ている。

この時点で生き残る気はあった。

 

いかに味方と生還するかという点でも ある程度評価出来る

速度の出ないウェーバーと大鳳を後方に下げ、エアーを護衛に配置した

スネークとしては秋月自身が護衛に回り、スネーク・マーリン・エアーを奇襲役でも良かった。

……だが本人が発砲しないと言ったのだから仕方ない

(どうやら弾薬庫に集中攻撃をかけるつもりだったらしい………少しぐらいてかげry)

 

と言っても長門たちが予想していた通り煙幕を使い、視界を遮ぎり奇襲をかけるのは合っている、

煙幕が切れた後に攻撃をかけるのも事実だった

 

スネークとマーリンが煙幕を展開、秋月を隠し位置を特定される前に近距離から砲雷撃する、

ここまでは誰もが予想出来ていた。

 

だが秋月はスネークたちの装備の力を借りた

 

実はマーリンやウェーバーはティムに頼んで空中機雷を改造してもらっていたのだ。

空中機雷とはフルトンの技術を応用した、対ヘリコプター地雷といえばわかりやすいだろう

原理としては簡易的なフルトンで触接信管を組み込んだ爆弾を浮かす

地面にセットするとフルトンが膨らみ、ある程度の高度(約数十メートル)を維持して浮き続ける。

ヘリが近づいて来ると、気流によって機雷は勝手にヘリに寄って行き接触、爆発する

 

 

だが今回は爆弾ではなくスタングレネードを付けた

 

 

さらに元とはいえMSF研究開発班所属の人間に改造をさせた代物だ

海上での運用のために設置式ではなく水上バイクでも運用可能にし、

クレイモアのセンサーを使い 何かが接近するとフルトンを破裂させ安全ピンが抜ける様になっていた

 

欠点としてはある程度波が立つと誤作動を起こし、何も居ないのに炸裂してしまう事だが

そもそも沖で140cm以上の波は頻繁に出るものではない。

それに風があると空中機雷そのものが流されるため運用は控えることになっている。

今回は晴天でしかも風も影響するほど吹いておらず、弾道もほとんどズレることも無かった

 

そして秋月はこのスタングレネードを活用する事にした

スタングレネードの存在はウェーバーとゴムボートを運んでいる最中に興味があり事前に聞いていた

 

煙幕の展開は秋月の姿を隠すのと同時に改造された空中機雷を隠すためで、

交差し円を描きながら接近したのも、どの方向に逃げても引っかかる様にする為だった。

 

 

……本来なら長門たちも、空中が予想外としても罠の設置には警戒するべき状況だった

実態が見えず、周りを取り囲む様に移動されたら何かをしていると思うのが普通だ。

(想像すれば簡単だ、周りを敵に囲まれ、その後ろが何も見えなければ誰でも警戒はする)

 

だが囲んでいたのが水上ボート出会ったこと、

その水上ボートは攻撃して来ないということ、

数で勝っていたこと、

全く攻撃を仕掛けられず逆に一方的に攻撃を仕掛けていたこと、

 

他にもスネークたちが器用に設置した点や、改造した空中機雷そのものが小型がされていたことも

原因ではあるが、大半が本人たちが優位で油断した為にやられたとも言える。

 

 

結果的にもろにスタングレネード2個分の閃光と轟音を喰らい、全員が方向感覚を失った

長門や陸奥はどうにか直進したが、

妙高は右に急回頭してしまい最後尾の羽黒と接触、那智と足柄は陣形から大きく逸脱。

 

秋月はマーリン側の煙幕の中に居たが、轟音と閃光を見た後マーリンと共にその場に急行、

重巡4人に魚雷を1発ずつ当て、長門と陸奥には近距離から砲撃を加え、

周辺にはスモークをばら撒き、ついでにスタングレネード1個を追加でスモークの中に放り投げ

その場を後にした (えげつねぇ……)

 

 

 

 

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