えー……今更なのですが………………
小説を、しかも2話分も、あげく伏線成分をふんだんに取り込んでいる物を
投稿していませんでしたああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!
……そんな訳で今日から7話ほど連続で投稿させて頂きますm(_ _)m
時刻17:55
対空訓練を終え鎮守府の母港に戻って来た。
神通を旗艦とした艦隊は哨戒任務のためまだ沖を航行している、19:00前には戻って来るらしい
長門らはスタンをだいぶ喰らったハズだが気絶する事は無かったらしい、
だがその間に魚雷と砲撃を喰らったため判定は全員が中破以上、羽黒は大破判定だった。
……空母の連中からは結構な怨みを売ったようだが
「あら〜派手にやられちゃったみたいね〜」
「……俺は対空戦は苦手だ」
そう言うのはついさっきまで遠征に行っていた天龍と龍田だ。
長門たちに俺らが仕掛けている頃に空母の奴と合流したらしい、ドラム缶を後ろに繋ぎながら駆逐艦と海を航行していた。
こいつらは物資を上げるだけだったらしく、
補給中の第一・第二艦隊の連中より先にグラウンドにやって来た
駆逐艦の4人は先に並んでいる
「……そういえば、また随分派手にやったみたいだな?」
「まあねー第一波の時点で全部の航空機を撃墜か損害判定にしちゃったみたいで」
「おい、簡単なリザルトチャート作ったぞ」
リザルトチャートと言うのは結果表だ。
今回の場合は誰が何機墜としたのかを描き表した物だ。
ウェーバーの奴は役割上、数えるのがクセになっている
部下の中には誰が何発撃って何発当てたかを数える奴も居るがウェーバーはそこまでは無理らしい。
だが航空機ぐらいなら的が大きい為数えられるらしい
……今は砂の上に落書きの様に それぞれの名前と撃墜数・損害数がただ描かれただけだが
「えーと、私は73機撃墜と35機損害・離脱か〜」
「私は約60機と20ね……」
「エアーが狙った奴はほとんど当たってたけどな」
「あの…私のは?」
「大鳳さんは撃墜が30機、損害は86なんだけど離脱はほとんどしてなかった」
「そうですか……」
「だが広範囲に被害が出ていたからこっちは墜としやすかった、感謝するよ」
「はい」
「ていうか秋月ちゃんは凄いね!94機撃墜に17機損害!!」
「いっいえ!出来ることをやったまでで……」
「俺は38機撃墜、BOSSは約40機で損害機は無しでした」
「だろうな」
「ん?何でお前ら2人だけは妙に数が少ないんだ?」
「……まあ俺らはバックアップだったからな」
「5km前後に接近したのとリロード中のカバーしかしていなかったから」
「待てよ……あんたら2人は本気で射撃してなかったのか!?」
「……その言い方は気に障るんだが」
まあこの天龍っていうのは……何というか“間違ったことが嫌いな”タイプだ
俺らが真面目にやってなかったのでは無いかと思ったのだろう……目の奥が睨んでいた
「……天龍の本気っていう意味は闇雲にっていうか、できること全部やるって解釈で良いかい?」
「え?・・・ああ」
「俺たち全員 やる事は全部やったんだ、何て言えば良いか…………手加減はしてない。
そういう役回りだしむしろ俺らが活躍してたら大問題、ですよねBOSS?」
「……まあな、俺は後方の敵機しか狙っていない、ウェーバーも後方とマーリンの援護をしていた。
仮に俺らの方が撃墜数が多かったならば、カールグスタフまで持っていたこいつら2人が仕事を
していない事になる」
「か、かーる?」
「ああ、大砲の事よ」
「……じゃあ別に手を抜いたわけじゃ無いんだな?」
『当たり前だ』
陸上でなら手加減はしてやっても 海上では手を抜けるほど艦娘は弱く無い
……こっちは砲撃を食らっている中では何も出来なかったしな
それに沖が無風だったのもある、もう少し風があったならあんなに早く終わらせられなかった
「あら〜?そういえばティムさんはどうしたの〜??」
「ん、工廠でちょっとした作業、だから今日は別行動」
「お前ら2人も2時間前までは別行動だったろうが」
「……ちょっとした事件も起きたしね」
「そういえばちゃんと処分したのかしら」
「事件?……何の話だソレ?」
『知らないほうがいいよー』
マーリンとエアーの奴が天龍に向かって答える
心霊写真については無駄に広げても何の意味も無い、悪影響でもあるハズだ
そんな会話をしている間にいつもの放送が入る
1分もしないうちに全員が集まるだろう
「あっ!そういえばBOSS〜、終わったらちょっとつき合って下さい」
「……“突き合い”か?」
「はい!」
「……なぜ急にBOSSと相手するんだ?」
「いやね〜川内ちゃんに夕方の集会終わって時間あれば工廠に来なって言ったんですよ」
「川内にだけか?」
「うん、高雄ちゃんたちも誘ったんだけど……あの反応は逃げたね。クマネコはこの後哨戒任務があるんだってさ」
「クマネコ?……球磨と多摩の2人?」
「それ以外誰が居るって言うのさ」
「…………いや」
ウェーバーが話している間に全員が集まってきた、さっきまで近くにいた大鳳や秋月・天龍らも列に並んでいる、ティムも走って来た
……すぐ右隣にいる空母の連中からとてつもない視線が刺さって来るのは気のせいではないらしい、
長門たちは苦笑いを浮かべ、何となく空母の連中から距離を取ろうとしている様にも見えた
10分後
いつもの様に集会は国旗を降ろして終わった
昨日と違い全員に伝える事も無い、明日には提督が再びあの台に立つだろう。
・・・それよりだ
「…………………」
「それで、この後は工廠に行けば良いか?」
「…………………」
「はい、ちょっと突き合って下さい」
「…………………」
「どのみち全員用事はあるんだがな」
「…………………」
「ウェーバーも工廠に来んの?」
「…………………」
「銃のクリーニング、海水をもろに浴びたからな」
「ああ、マーリンとエアーは俺にやって欲しいと?」
「そゆこと〜」
「よろしく」
「…………………」
「……あのさ、BOSSもお前らも突っ込まないみたいだけど・・・後ろの集団は何の御用なの!?」
「…………………」
ティムの言う通り、俺らの後ろには空母6人が居た
……居るのは良いんだがさっきから無言でただただ俺らを見ながら付いて来る。
さらに後ろには長門たちも居た、大鳳と秋月は食堂に行ったらしい、
大行列、とまでは行かないが不自然に長い、通り過ぎる人間がいればすぐに振り返るだろう
「まっ、俺は関係無いから良いけど。んで昨日の一件はチャラにしてくれるの?」
『ああん?』
「……こえーよ」
「おいお前ら、少なからず今回は許してやれ」
でなければ釣り合わない
ウェーバーみたくは自前で全て調整しなければ気が済まないがウチでは担当の技術者にある程度の
カスタムやクリーニングを頼む事もある。
だが海水を浴びた後でメンテナンスをするのならば確実に完全分解をすることになる、
当たり前だが銃の手入れは持ち主の責任だ、だが専門家をたまには頼っても問題無い。
……その専門家にしても海水を浴びた銃のメンテナンスは時間と手間がかかる、
それに加え今までと全く同じ状態にするのはただでさえ技術と時間がいる。
それを2人分引き受けるとなれば相当な仕事だ
「それで……お前らは何が望みだ?秋月にはまだ用はあったが今日はもう——」
「そうですか、なら寝ます」
そう言ったが最後、一礼してさっさと自分たちの寮に空母全員が戻って行った。
……提督が戻ったなら説明させる様言っておくか、アレは相当引きずる、面倒事になりかねん、それに話したい事もある。
「それで……お前ら6人は何の用だ」
「いや、加賀たちの雰囲気があまりにもアレだったんでな。監視では無いが付いてきたのだ」
「いくら何でも…第一艦隊旗艦、あっ今は違うけどこの鎮守府エースとも言える正規空母の皆が
そこまで考え無しだとは思えないけどね」
「それも、そう……何ですけど………」
「ん?どったの??」
羽黒が妙に落ち着きが無い……いや“おどおどしている”と言った方が正しいのか
交流戦の反省会で見せた堂々とした態度は何だ?
「羽黒ちゃんはマーリンさんとスネークさんの“お・突・き・合・い”に興味があるのよね〜?」
「っ///」
「……何でそんなので照れるのよ」
「あん?なにマーリンがBOSSと相手すんの?」
「いや〜思ってたより巡洋艦の娘たちが上手くいってね〜?特に川内ちゃんなんかティムにも勝てるかもっ」
「……マジか」
「うん」
「……負けたく無いんだけど」
「その肝心の川内は?」
「さっきまで工廠に俺と一緒に居ましたけど何か入渠して来るって言ってましたよ」
「……良いのかそれで」
「まあ大丈夫でしょ、バレなきゃ。むしろ女の子に時間決めて風呂の間でも集会出させるのは酷ってもんだ、そんぐらいの妥協は許されるだろ」
確かにティムの言う通りバレなければ交代式に風呂にいて出なかったのは何の問題もない
……後ろに現在第1艦隊旗艦としてここの全艦娘を仕切っている長門が居なければ何の問題も無いが
「ほぅ 川内の奴が集会をサボったのはそんな理由か」
「……あえてフォローするなら、朝は出てるんだから問題無いと思うけど。
みんなは常に臨戦態勢とも言えなく無いんだから全員が揃う事もあんま無いみたいだし。
それに結構マーリンに鍛えられて意外と長い時間かかるって言ってたしっ」
「私たちなんて決まった時間に集会なんて開いて無いしね」
「BOSS自体が居ないからな」
「……悪いな」
「まあBOSSですから」
「ふむ……まぁ確かに意図してやったのでなければ問題ではないか」
そんな大した事も無い話をしながら工廠に着き、中にはすでに川内が居た
羽黒だけが俺らに強く興味があったようだが、着いてきた他の5人もついでに見学するつもりらしい。
今日の当直はこの6人らしく、そのまま隣のプレハブで夜を明かすそうだ
「さてさて……どうしましょう?」
「どうするって、マーリンが私を誘ったんでしょうが!」
「いやそうなんだけど……」
すでにティムとウェーバーの2人は銃のメンテナンスに入っている
特にティムの奴は部品を1つずつバラし、1個ずつ海水を拭き取り、ススやホコリ・焼きつき具合を
確認していた。
エアーは長門と陸奥の2人と何か話し、妙高ら4人は俺らの様子を近くで見ていた
……俺は何をやろうと構わないんだが
「とりあえずBOSS!」
「何だ」
「私と川内のやり取り見てくださいよ」
「…………えっいきなり!?」
「イヤだって他人に見てもらった方がわかりやすいし」
「うー……」
なぜか川内が嫌がっている……一体どうした?
「あれ、ダメ?」
「うんうん、ダメじゃ無いんだけどさっ……どうせならマーリンとスネークのを見たいなって思って」
「…………参考になるかなぁー」
珍しくマーリンが乗り気じゃない
……教えたばかりの奴に自分が負ける姿を誰でも晒したくはないか、ならウェーバーに悪いが——
「じゃあ言い方変える!見たいです!!」
「OK!」
「…………」
相変わらずノリが良い
これが体育会系……なのか?
「それじゃあ久しぶりに相手してもらいますか!!」
「……お前、どうせ俺とやりたいと思ってただろ」
「あっわかります?」
「舐めるな」
「……すいません」
まあいい、自衛官ばかり相手しても腕が鈍るかもしれない
こいつで少しばかり今日は慣らしておくか
「ナイフ使います?」
「当たり前だ」
もちろん味方にナイフと銃は向けない
ここでのナイフはゴム製の訓練用コンバットナイフだ
「あっあの〜、決着はどう決めるんです?」
「簡単だよ羽黒ちゃん。相手を先に、確実に仕留められる状況に追い込んだ方が勝ち」
「え?」
「どういう……ことなんだ?」
「スネークの方は丸腰よ?」
「いいから、見てればわかるわよ」
長門にエアーが答える
まあ確かに口で言うより実際に見れば話は早い
「じゃ……………遠慮なく」
深呼吸
吸って
吐いて・・・来た
ナイフの刃をこちらに向け振り上げる
下がる
目の前を通り過ぎる
すぐにナイフを止め顔に向かって来た
左手で受け流す
すぐに右手で手を掴む
回して手のひらを上に
そのまま左手で下に払う
ナイフは落ちた
だがマーリンは生きてる
無理やり右足を踏み込み左拳を腹に向けてきた
右で受け止め一歩前に出る
首を押さえ手前に持ってくる
前に出ている右足を引っ掛け
マーリンの体が回転
地面に落とす
足を首で抑える
左手はそのまま掴んでいる
右手は空いているがナイフもハンドガンも取り出せない
そのまま頸動脈を抑えた
「まだやるか?」
「……………完敗ですよ」
「ほら、手を出せ」
さすがに加減はしたがまともに受け身を取れずに地面に落とした
多少なりともダメージはあるはずだ……まあこいつなら大丈夫だろうが
「お前は投げる方が得意そうだが」
「やっぱり投げてからナイフは使いますけど……正面から切りこむにはやっぱり銃が無いとですね〜」
「……あんた、銃でどうやって斬るのよ」
「それもそうだった」
「全く、ナイフも払い落とされちゃって」
「ははは……」
ナイフの扱いに関しては何の文句も無い、完璧な動きをしていた、顔の前で止めたのも中々だ
だが足を使っていなかった
おそらく俺を投げようとしたんだろうが……投げる軸の左を封じていた、そう単純に倒させはしない
「……マーリンが負けるなんて」
「ん?」
「あっいや……今まで強いのはわかってんだ、この前の交流戦なんか一瞬で私もやられたからね。
けどそれはこっちが行動する前に早撃ちされたからであって実際に見るのは初めてで」
「だろうな」
「今まで何度か教えてもらってたけど、今日マーリンと戦いにならなくて……」
「なったら俺が困るよぉ」
「こんなに強い人どうやって倒すんだって思ってたんだ」
……強いも何もマーリンは最前線で撃ち合う役回りだ
ある程度近接戦闘でも戦いはするが銃を発砲して戦うのがこいつの基本であって、
CQCにおいては器用な方では無いんだがな
「あの!さっきのナイフを払い落としたのってどうやったんです?」
「……マーリン、持って手を出せ」
「はい・・・どうぞ」
マーリンがナイフを持ち右手を前に出した
これぐらい、艦娘に見せるだけなら問題無い、羽黒はこれを見に来たらしいしな
「グリップを普通に握ろうが地面を掘るように握ろうが構わないんだが、
人を刺すとき腕は内側を向いている」
そう言いながらマーリンの腕を指す
さすがに俺が俺の腕を使って説明するのは無理がある
「えっ……内側?」
「手首の血管が見える方とでも言えばわかりやすいか?
どんな持ち方だろうが必ず手の平や腕は地面を向いている」
「……確かに」
「それが一番力が入りやすいく扱いやすいからだ、試しに手や腕を上して握ってみろ、違和感があるハズだ」
訓練用のコンバットナイフを羽黒に渡す
少し躊躇していたがすぐに握り、手の平を表にしナイフのグリップが見える
「これじゃあ……確かに使いにくいです」
「その違和感はどうしようとも、一瞬グリップを握る力を弱くする。
あとは握っている手からナイフを奪うか叩き落とせばいい」
そう言って、マーリンのナイフを下に落とす
「待ってください、手を回す方向が逆じゃ無いですか?」
「そうだよね、腕を回すなら肘の方でしょ、何でさっき羽黒がやったみたいにただ手の平を上にした
だけなの?それだと抑え込めないんじゃ……」
「……まあ普通ならその通りでもあるんだけどね〜じゃあ羽黒ちゃんっ!試しに私からナイフを取ってみて、理由がわかるから」
「……いいんですか?」
「手加減しなくていいよ〜、顔だけは勘弁ね」
「……わかりました」
そう言って羽黒が工廠の中央に立つ、代わりに俺は羽黒がいた場所、妙高たちの方に行く。
さすがに教えるのを邪魔する程 俺はでしゃばりたく無い
「あんたは何もしないのか?」
「手を出すほどのことじゃ無い、兵士を鍛える為ならまだいいが可愛げな奴の手を触るのはさすがに遠慮したい。マーリンやエアーがやった方が適任だ、羽黒もその方が遠慮なく訓練できる」
「可愛げ……か」
「少なくともウチの隊員たちよりは、だが」
「それ……ちょっと失礼過ぎますよ」
妙高は気の毒に思ったらしく、こいつらのフォローに入った
だがその心配は全く必要ない
「大丈夫だ、お前たちと見た目を比べれば勝ち目はない、気品や色気はまた別だがな」
「……確かにエアーはSっ気が漂っているけど結構な美人なのよね」
「マーリンさんも活発だけれど静かなら可愛いと言われるタイプですね」
「しかし姉上……マーリンにそれが出来るとは……」
「つまりそういう事だ、失礼でも何でも無い、明らかに羽黒のほうが勝っている」
「……何も言えない、正しいから何も言えない……」
マーリンが苦笑する
まあ心は女子だろうと無理があるのは多かれ少なかれ本人が自覚している
……でなければ秋月が駆逐艦だった事に対してあそこまで落ち込む事も無い
「……気をとりなおしてっ!
羽黒ちゃんは私からこのナイフを下に落としてみてね、
たださっきの質問に対して答えたいから 肘の方向に手を回してナイフを離してね。
やり方はさっきBOSSが説明してた通り、一応言っておくけど私も抵抗するから」
「抵抗はどのくらいの……」
「ん〜・・・まあ私は羽黒ちゃんを刺そうとする役回りだと思って貰えればいいよ」
「……わかりました、じゃあ・・・お願いします」
羽黒が構える
あの構えはジュウドーやカラテじゃない…………合気道だったか
マーリンはさっきとは違い羽黒に向かって刺すためにまっすぐ右手を前に出す
羽黒はすぐ左にスライド
ナイフを持つ右手を右手で掴み
約束通り、腕を外側に・・・回した
そのまま空いている左手でナイフを払い落とす
……前にマーリンの蹴りが羽黒の右膝にヒット
羽黒の体勢が大きく右に傾く
その隙があればマーリンなら十分だろう
すぐに羽黒に接近
同時にからだをひねり後ろを向く
腰に羽黒を軽くのせ、まだ掴まれている右手ごと振り下ろし後ろに投げる
羽黒のからだはマーリンの腰に乗ったあと地面にぶつかる
掴まれていた右手にはまだナイフがあった
そのまま羽黒の首に刃が当てられる
「ふふ〜ん、どう?」
自慢気にマーリンが羽黒に向かってなげかける
……何も知らなかった奴を教えるために投げて自慢してどうする
「……もう一回、良いですか?」
「お〜!いいねいいね〜!!じゃあもう一回……って行きたいところだけど、まず疑問に答えよう。
何で羽黒ちゃんはやられたと思う?」
「……マーリンさんが私の膝に足を当ててから一気にやられましたけど」
「そうだね、じゃあ何で膝を蹴られたと思う?」
「なぜ…………手を肘の方に回すのは関係があること?……」
「うんん、そんなむずかしく考えない考えない。
じゃあ“何で私が羽黒ちゃんを蹴れたか?”って言えばわかりやすいかな」
「蹴れた理由……スネークさんと何か違ったこと……」
「まっ、これを自覚できてたら私なんかが教える必要ないぐらい器用って事になるからここは川内に
答えてもらうとしよっか、川内はわかってるでしょ?」
「まあこうやって観させてもらったからね」
「私たちも羽黒が何で投げられちゃったのかわかったわよ」
足柄が共に答える、妙高や那智もわかったらしい
さすがに単なる素人では無いか
「えっと……何なんです?」
「じゃあ川内、どうぞ!」
「えっとね……羽黒が蹴られたのは“速さ”なんだよ」
「速さ?」
「うん、詳しい事はマーリンに聞かなきゃわかんないけどね。
それでも羽黒がやった方法だとスネークがマーリンに仕掛けた時より明らかに速さが違った。
手慣れてないにしても流れが、何ていうか……ぎこちなくは無いんだ。
だけどスムーズに腕を回せてなかったんだよ」
「………言われてみれば確かに腕を回すのに少し力は要りましたけど、そんなに遅かったですか?」
「いや、確かに羽黒がやったのも早かったんだけど、
スネークがやった時みたいに“何をやってたか”がわからなかったわけじゃ無いって事」
「あっ」
「正解!やっぱさすがだね。
そう、川内が言ったみたいに速さが違うの、どっちかって言うと羽黒ちゃんのやり方は遅いんだ」
「……やり返されちゃうからですか?」
「うーんとね、正面で真っ向からやり合うには向かないね。
ただ傷つけるだけが目的の人間ならそれでも十分やって行けるのよ、
羽黒ちゃんがやったみたいに肘の方に回して相手の側面に回って背中を押さえる事は出来る。
……だけど私たちみたいに相手に容赦しない人間が相手なら別、さっきみたいに抵抗を許しちゃうし、もう一方の空いてる手で別の武器で攻撃されかねないしね」
「じゃあダメなんだね」
「……まあ例外はあるけど」
「何ですか?」
「……相手が憎たらしい時、遠慮なく肘ごと壊すんなら……アリ」
『あっ』
マーリンの説明に羽黒や川内は理解してらしい
お互い顔を見合わせ苦笑し、川内に関しては頭を掻いている。
マーリンの解釈に口を挟むつもりは無い。
……元々CQCは敵地で将校を生きたまま連れてくるために彼女が作ったものが基礎だ。
そのため、護衛をできる限り音を立てずに排除しターゲットを拘束するのが基本になる。
仮に、敵を無力化するのに腕を外側に回し肘を破壊すれば相手の口から必ず“音”を立てる羽目になる
周りにそいつだけなら問題ないが敵地でそんな事になれば警戒され、潜入が発覚されかねない。
……一度だけボスに吊り橋の上でやられた事もあったが
「けど一回だけ見て、説明しただけで出来るもんだねー」
「ああ、私たちは何度か合気道の師範に習った事があったからな」
「それは船だった時……じゃないよね?」
「ああ、艦娘として日本に来た直後だ。
他にも霧島や伊勢・日向、合気道ではないが天龍や龍田もやってたな」
「へぇ〜」
……“何度か”のみであの体さばきは身につかない、
まず体の横でナイフを止め、対処しにかかるのは素人では無い
「ねえエアー、なんか言うことある〜?」
「そうね……まっ、どうやって倒すかっていうより、どうやってるかを学んだ方がいいわね。
昨日私たちと一緒に訓練した娘たちには詳しく言わなかったけど、私たちに格闘戦で勝とうと思ったら多分毎日訓練してもまず1年はかかるから」
『1年!?』
「そうだねぇ……ティムになら3ヶ月あればどうにか勝てるかもっ」
「……待って、ティムさんってそんなに強いの?」
「おーい、俺がただの技術屋だと思ってたのー?これでも神通を走って捕まえたんだから、銃で撃ちはしたけど」
「……そういえば走って逃げた神通や黒潮たちを追いかけて捕まえたんだよねぇ……」
川内の言葉にティムが工廠の奥で拡大レンズを頭にかけながら答える。
その隣でウェーバーが薬室をマイクロスコープで確認し、焼き付き具合を確認しているようだ。
「あの……けどティムさんは研究室にいたんですよ……ね?」
「うん、だけどBOSSの考えで隊員全員が近接術を扱える様にはしてるんだよ。
研究開発担当でも強い奴は強いし、コックでもマーリンと渡り合える奴だっている」
「まさに戦う料理人ね」
「いや、あなたたちの鳳翔さんだって似た様なものでしょ?」
陸奥に対してエアーの言った事は当たっているはずだ。
まだ1ヶ月しかこの鎮守府には居ないが、鳳翔が出撃した所は見たことが無い。
提督室で初めて会った時の反応からしてかなりの手練れだろうが空母としては旧型らしく、
実戦での活躍は難しいという。だが艦娘たちの母親の様な存在だ、ある程度戦えるだろう。
それは俺の部下でも似た様なものだ、使い物にはなる。
「確かに……鳳翔さんだって弱いわけじゃ無いものね」
「もっとも、コックまで駆り出される様になったらだいぶヤバい事態でもあるんだけど」
「そこまで追い込んだ事は…………有ったな」
「有りましたね〜」
「……ところで、もう終わりなの?」
「アレ?エアーはなんかしたいの?」
「いや、久しぶりにBOSSと手合わせしたいと思って」
「おいおい、羽黒や川内に教えなくていいのか?」
「あっけど私、今日はスネークさんの動きさえ見れればよかったのでむしろ嬉しいです」
「私も観させてくれるだけで参考になるしね。
……ていうかいくらドックに入って疲れが取れてもマーリンとは今日相手したく無い……」
「だそうですよ、」
「・・・はぁ」
……まあいい、俺としても腕が鈍るのは勘弁したい、それはこいつらも同じはずだ。
「……ところで、失礼かもしれないが1つ質問してもいいか?」
「ん、長門さん気になることでも有った?何なら私が答えるけど」
「……その、スネークに近接戦闘で勝てる奴は居るのか?」
……別に失礼でも何でも無いんだが
「ああ多分居ないよ〜ここにいる5人じゃムリムリ」
「そうなのか……」
「……じゃあクマさんでもない限り勝てないってことですね」
「羽黒はクマに興味があったか」
「……ハイ、だってクマさんって かわい——」
「アレは美味かったぞ〜丁度食料の調達中に襲いかかって来てな、投げ飛ばして首を折ったら倒れたから捌いたが、意外とイケるもんだぞ」
『・・・え?』
長門を含めここにいる艦娘全員がたった一言をわざわざ一斉に言った
中央に居た川内と羽黒はわざわざ観察するようにジッと見ている
……その近くに居るマーリンはなぜか悔しがっている
「そうなんですか……悔しいっ!!」
「ちょ ちょっと?今とんでも無いこと聞いた気がするんだけど……」
「ああ、私も予想外の事を聞いた」
「……本当なのか」
「まあ可能性が無いって話だから。本部の戦闘班所属の連中なら少し勝てる可能性あるけど」
「・・・その事じゃ無いと思うがなぁ、それにBOSSに勝てる気はあんまり無い」
「ほぉ、ウェーバー“あんまり”か、なら今試してみるか?」
「止めときますよBOSS。あなたとやり合うとなったら銃の調整がしばらく出来なくなりますよ」
「腕は折らない」
「折られなくても細かい作業が出来るとは思えませんよ」
「……まっ俺もまだまだお前らに倒される程弱ってないしな」
「ははははは」
突然エアーが笑い出す、同時にこっちに歩いてきた
続けて俺に話しかける
「……どうしたエアー」
「……まっ、確かにBOSSを真っ向から勝負をかけても勝てませんよね」
「だろうな、真っ向から仕掛けてきてもお前は俺を仕留められん」
「ですよね……」
「なら——」
どうする、
と言う前に仕掛けてきた
ナイフ……もちろんゴム製だが……を俺に振り下ろす
右に避ける
だがすでに次の態勢に入ってる
左足を軸に回転
こっちを向き一直線に刺してきた
左手でそれを掴む
そのまま右手を出し横にナイフを飛ばす
左手を離し右手に持ち替え 空いた左を顔の横に構える
エアーが俺の顔に向けて蹴りを加えてきた
だが当たらなければどうという事も無い
右に向かって重心を崩す
片足しか地面についていないエアーはそのまま右に倒れる
勢いそのままにこいつの手を後ろに回し背中に乗る
「……てか、何でBOSSが強いのが意外なのさ」
「いやいやいや?目の前で起きた光景には一切突っ込まないの?!」
「ん?エアーが奇襲かけて失敗しただけじゃん」
「川内さんにみんなも気にしなくて良いよー、BOSSもBOSSでどうかとは思うけどね」
ティムとマーリンが他の艦娘になぜか説明している
……さて、こいつはどうする気なんだ?
「それで、降参はするのか?」
「はぃ参りました」
「そうか」
「はい、なので解放してください」
「…………」
言ったなら仕方ない、背中から離れ右手を離す
エアーは地面に平行のまま腕の力で浮き上がり立ち上がった
「いやーやっぱり私もまだまだですね」
「当たり前だ、お前らは俺から見たら頼りになる部下だが経験不足だ」
「ですか」
「ああ」
工夫を凝らせ
たかが8年この道で生きて来ただけで俺に真っ向から勝負を挑んでも勝てん
「………まぁ、ウチの基地じゃみんなBOSSを見かけると手合わせを願い出るんだよ」
「けど今のは明らかに——」
「何言ってんの川内、不意打ちだけどそれが俺たちの戦い方でもあるからね。
それにエアーが言ったじゃん、“お手合わせしたい”って」
「……なんかもう……良いや」
「……そういえば、そろそろ提督が帰ってくるんじゃない?」
「あっ、高雄たちが言ってたの本当なんだ」
「いや、この時間に帰ってくるとは限らないでしょうに」
「……俺もあの提督に用があった、すまんが俺は失礼するぞ」
「ならBOSSのもついでにメンテしましょうか?」
「いやいい、生憎人に触れるのは嫌いでな 夜中の内にやっておく」
「それもそうでした」
ティムの親切心はありがたいが俺は人に物を勝手にされるのは嫌いだ
こいつが信用できないわけじゃないが……性分だ
「あらーBOSSのは進んでやってくれるの?」
「……ついでにって言っただろ、今日中にドローンの完成は時間的に厳しいからな」
「何か用があれば無線で知らせろ
あと昨日みたく“実戦データ”や“かくれんぼ”は絶対にするな」
『ハイ』
また昨日の様な事が起きればさすがに面倒だ……すでに加賀たちがアレな時点でもう面倒なんだがな
だがほっとくわけにもいかない、とりあえず正門に行くか