鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

43 / 65
昨日に引き続き、欠損箇所の補填です。

飛ばさずに読んで頂けたら幸いですm(_ _)m


意見具申

時刻は19:00を過ぎ、この横須賀鎮守府正門に4姉妹の姿があった。

……とは言っても決して警備などではない、マーリンからの“お突き合い”を断るためにわざわざ上司である提督の帰りを待っているだけだ。

だが提督の帰りに部下が出迎えないというのがマズイのも確かでもある為マーリンも止めはしなかった、もっともそんな彼女たち4人の魂胆もバレていたが

 

 

そんな四姉妹の後ろから本来こんなところにいる筈のない“男”が近づく

 

その“男”は裏の世界ではまさに伝説の存在であり、少なからず3回もの世界の危機を救った。

だが本人はその事について自ら多くを語ろうとしない、語る価値が無い。

そんな“伝説の傭兵”がなぜこんな極東の国で基地の警備をやっているのか、その理由を知っているのは彼の相方でもありMSF副司令であるミラーだ。

だがそのミラーやMSFの隊員達の大多数が南西諸島で籠っている。

その輸送作戦が来月行われるが、まだ艦娘たちに知らされてはいない。

 

その輸送作戦の指揮を採るであろう人間が間も無く防衛省から帰って来る

 

「けど〜 何であの人急に鎮守府離れて大本営に行ったのかしら?」

 

「わかりませんよ、提督に聞いてみたらどうです」

 

「……高雄ちゃん、それ本当にアテに出来ると思ってる?」

 

「まあいいんじゃねえの?提督も私たちの為に働いてる証拠だ、私らが突っ込んだらその苦労が水の泡だと思うぜ」

 

「摩耶の言う通りですよ愛宕姉さん、気になるのは確かですが提督の仕事に私たちが口を出すべきでは無いのも確かです。もし、私たちにも何か説明があればそれが私たちにとって重要な事なのだと思いますよ」

 

そんな会話を高雄四姉妹がしているうちに後ろから蛇がやって来た

もちろん彼女たちを襲うつもりは全く無く、本人も普通に歩いてきただけだ。

だが伝説の傭兵……BIGBOSSと呼ばれ、MSFの総司令であり潜入において右に出るものはいない彼が普通に歩くだけでステルスモード、決して誰にも気配を悟らせずただただ視界の外から接近する。

そんな彼が突然「そうだな」と言えばどうなるかと言うと…………

 

「そうでs・・・誰!?」

 

と、まるで加賀の様な反応をする鳥海が居た

続けて摩耶が挙動不審にその男——スネークに聞く

 

「いっいつからそこに居たんだ?」

 

「別についさっきからだが……」

 

「マーリンさんもそうでしたけど、一体どうやってそんなに気配を消せるんです?」

 

「……エアーじゃなくマーリンがか?」

 

「エアーさんの方はもう……」

 

「一体どうやって消えるんだってくらい目の前から消えたからなぁ……」

 

「そうね〜アレはさすがに私もビックリ!」

 

「あんな人を相手にしようとしたのが間違いだとよくわかりました」

 

「………………」

 

4人の話を黙って聞くスネーク

何せマーリンは確かに潜入する事は出来なくも無いが得意ではない部下だ。

エアーは戦闘班では専門的に潜入任務に従事していたが、マーリンの方は戦闘部隊や機甲部隊の排除などの“戦闘”を主に扱っていた。

それにエアーもスネークからすればまだまだ2流の軍人、訓練されているとはいえ気配を完全に殺せるほど“上手くない”、あの2人より強い部下は腐るほどいる。そんな2人を相手に苦戦している様では、まだまだ何だが…………と思いながら

 

「……ところで、提督が帰って来ると聞いて来たんだがまだなのか?」

 

「ええ、けどもうすぐ来ると思いますよ。皆さんが演習している間に鳳翔さんに聞いたら7時頃には帰ってこられると言ったのでそろそろかと」

 

「そうか……ところでその演習で気になった事があったんだがいいか」

 

「何ですか?」

 

「摩耶と鳥海が対空戦闘は上手いと秋月から聞いてな、話がしたい」

 

「……話って急に言われてもなぁ」

 

「まあいいじゃないですか、提督もすぐに帰ってきそうにありませんし。

それで、スネークさんは私たちに何を聞きたいんです?」

 

「お前たちの火砲についてだ。

今日、陸奥や妙高・そして秋月を近くで見た。なかなかの迫力だったが射撃速度に疑問がある」

 

「射撃速度だぁ?」

 

「ああ、主砲の装填速度に時間がかかるのは知っていたが機銃に関しても艦種どころか個人ごとに

装填速度が違ったのが気になってな。一人一人の要領の良さっていうのもあるんだろうが、銃の再装填はお前たちの妖精がやっているなら全員が大体同じ速さで作業する事が出来るんじゃ無いのか?」

 

「それは人によりますね。主砲に関しては弾を取り出して直接装填する娘も居ますし、戦艦にもなると妖精さんたちが手伝いながらだったりもします。

機銃に関しては完全に妖精さんたちに任せてますね、私たちはただ指示を出しているだけです」

 

「…… つまり妖精も経験が必要か」

 

「そうです。……もしかして妖精さんたちの事、万能だと思ってました?」

 

「……あいにく俺は直接見えるわけじゃ無いからな。

空母の発艦作業を見ると妖精は何でも出来るんじゃないかと思ったんだが」

 

「実際のところ私たち自身もよくわかってませんから」

 

「……わかってないのか」

 

鳥海の言葉に疑問を抱くスネーク

艦娘の存在が確認されすでに一年は経っている、技量の問題はわかるが自身の相方と言っても過言ではない妖精の事を“よくわかっていない”のは軍艦としてどうなのだろうか?

 

「……お前たちはそれで良く動けるな」

 

「妖精さんたちと私たちは意思疎通というか本当に一心同体なんですよ。

思っている事、考えている事は口に出さなくてもお互いわかるますから。

もちろん口に出して命令も出しますけどね」

 

「……そうなのか…………んん………」

 

「あっあの?」

 

そう言われてジロジロ鳥海の体を観察する伝説の傭兵。

頭から下に向かって目線を動かし、また目線を頭に戻し、一言

 

「……寒くないのか?」

 

『・・・え?』

 

そう、服装が気になっていた

ネイキッドスネークと呼ばれソ連領内に単独潜入したこの男には…………少し裸になりたいという癖があるのだが、他の人間を巻き込んでまで裸になろうとはしない。

ましてや年頃の少女が夜冷えする季節に結構な露出をしている服を着て、相当に短いスカートを履き外で待っているのはいささかどうかと思っていたのだ。

 

これに関しては彼の部下たちも気になっていた。

何せ海上でも半袖で色々アウトな長さのスカートを履いて戦い、ずぶ濡れになっていた。

動きやすさという点では何の問題も無いのだが……少なくとも見た目が寒そうではあった。

 

「いや、いくら艦娘とはいえ痛みを感じるなら感覚はあるだろう。……その格好自体が見ているだけで寒そうでな」

 

「……私たち2人はまだマシだけれど」

 

「お前らはな」

 

確かに高雄と愛宕の服装は全く寒そうでは無い

他の艦娘よりも一部が大きいが目のやり場に困る事も無い

 

「まあ確かに寒いぜ、けど一応これが制服なんでな。

もう少し寒くなれば上着もこっちじゃ着るがまだそんな季節じゃねえし、海上じゃ動きにくくなるから北方海域に行き時以外は制服のままだ」

 

「……要するに寒いんだな?」

 

「…………おう」

 

「まあ私たち、航海中は主機の熱でどうにか耐えられるだけどねっ」

 

「……私服は無いのか?」

 

「私服……っていうか無地のシャツとかパジャマならあるがあんまり着ないからなぁ」

 

「そうか……」

 

「あら、帰ってきたみたいね」

 

スネークが適当な話をしているうちに本命である提督が乗っている車が正門に真っ直ぐ向かって来た

車は速度を落とし、ゲートで手続きを行い高雄やスネークが居る方に来て止まり、後部座席から

手下げの革鞄を持った提督が降りてきた。

 

「おっ、今日は高雄たちが迎えか。悪いな2日も開けて」

 

「本当ですよ、提督を見たの久しぶりみたいです」

 

「私なんて待ちくたびれてたのよ〜?」

 

「ああ愛宕、それは部屋に戻ってからにしてくれ」

 

「おい提督、その……カバン持ってやろうか」

 

「すまないな摩耶、この中には重要書類が入っている。

その親切にあやかりたいのは山々なんだが、今日は心だけもらっておく」

 

「………そっか」

 

「ところで提督、スネークさんがお話があるそうで」

 

「それは丁度いい、私からも話がある。スネーク、このまま私の執務室に来てくれるか」

 

「構わん、もとより俺はそうするつもりだったしな」

 

「じゃあ私たちはこれで」

 

「ああそうしてくれ。迎えに来てくれてありがとうな」

 

そう言って4人は正門を後にし、寮に向かった。

後に残るのは……静寂

 

「……さて、中々長い話になりそうだ」

 

「お前からも話があるとはな」

 

「まあいい。とりあえず私の部屋に来てくれ、話はそれからだ」

 

「了解した」

 

そうして曲者2人は足早に中央庁舎に向かう

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ではどちらから話をしようか」

 

「俺の話は後でいい、先にそっちから話してくれ」

 

「ならその通りに」

 

提督室に到着した後、すぐに提督は部屋で作業していた鳳翔に茶を淹れるように頼み鞄を提督の机ではなく、真ん中にある方の机に置き左側に座った。スネークもその反対側に座っている。

咳払いをした後、提督は話を始めた

 

「一応あなたには報告しときます。

今回の厄介事はどうにかなりました、後は上が上手くやってくれるでしょう」

 

「……お前の上司を言いくるめずに済んでよかったな」

 

「まあ厳密には直属の上司ではないですから」

 

「……それで、彼女たちに面倒はかからないのか」

 

「マスコミもどちらかと言えば私の方に注目が向いてますし、少なからず議員たちも彼女たちを非難しても批判材料にはならなく成りましたからね」

 

愛宕が気にしていた提督の今回の仕事はただ単に“艦娘を守ること”だ

その件に関しては既に記者会見を提督自身が出席して行い、参考人招致も防衛省が泥では無く砂ぐらい浴びるかもしれないが、艦娘には全く影響を出さないよう対処するという。

 

「……で、俺にある話はそれだけじゃないんだろ?」

 

「ええ、むしろここからが本題です」

 

「警察組織と犯人についてか?」

 

「……さすがにその点では遠く及びませんね」

 

「それでどうした」

 

「……来週、SAT隊員と宴会をやるそうだな」

 

「ああそうだ、あれだけ仕事をしておいて単なる給料じゃ割に合わん。

それにあの建物で情報のやり取りをしたくないからな、店で情報をもらう事にしている」

 

「せめて私に事後報告でも言ってくれれば良かったんですが……」

 

「……どうしてだ」

 

「公安が大騒ぎしているらしく、SATが店を決められないそうで困ってるそうで」

 

「・・・お前は気にしすぎだ。

そんなもん警察どころかあの隊員たちが決めることだ、それにお前が口出す意味がないだろう。

あの隊員たちも馬鹿じゃない、器用にやってくれるだろう」

 

「……それもそうか」

 

「ああそうだ、お前は人が良すぎる。

少しはやる事を選べ、全部やろうとすると怪我するぞ、お前が倒れて困るのはここの連中だ」

 

「……指揮官として痛いところを突かれた」

 

「適当に手を抜けばいいだけの話だ」

 

「ですか……まあその言葉は覚えておきますよ、情報は要りませんが調査結果は報告お願いします」

 

「わかってる」

 

「そして最後、またフルトン回収の訓練をする事になりました」

 

「……まさかとは思うが今度は降ろさずにか」

 

「その通りです」

 

「……準備は?」

 

「今度は習志野の方にも手伝ってもらいますけど」

 

「“ならしの”……この前ヘリを出していたところか」

 

「はい、あなたの部下も参加できますか?」

 

「……まぁウェーバー・エアー・フォレストの奴は出来なくないが」

 

「えっ、フォレストさんが出来るんですか?てっきりマーリンさんかと思いましたが」

 

「マーリンの奴は訓練をしていなかったハズだ。

フォレストはメディックとして働いてたからな、その手の訓練も受けていた」

 

「そうだったんですか……」

 

「それでいつやる」

 

「さすがに今日明日で出来る様な事じゃないですからね、来週以降になります」

 

「……この前みたく彼女たちには秘密か」

 

「ええ、でないと訓練じゃありませんし」

 

「そうですよ、特に軽空母の娘たちはこの前逃げたんですから“特別待遇”ですよ」

 

そう言って2人の横からお茶を入れたカップを差し出す鳳翔

その顔は笑っているが、それは腹黒い事を考えている様に思える様な不敵な笑みだった。

 

「……まぁそういう訳だ、よろしく頼む」

 

「ああわかった、なら次は俺だな」

 

そう言われ、とりあえず鳳翔の出したカップに口をつける提督

それに構わずスネークが続ける

 

「少し加賀たちに面倒をかけてな、お前から言ってやってくれ」

 

「…………何をしたんです」

 

スネークの言葉から何かとんでもない事になっているのではと警戒し始めた提督は、本腰を入れて話を聞く事にした。

そしてその判断は残念ながら間違っていなかった

 

「いや、昨日言った通り秋月が興味を持っていた射撃に関して一応俺たちが教えたんだがな、

最後秋月と射撃演習をした時に第一波の時点で航空隊が全滅してな」

 

「……それぐらいなら実戦でもありえなくはないですが」

 

「そうなのか?」

 

「ええ、赤城と加賀・飛龍と蒼龍・翔鶴と瑞鶴・時にはそれにさらに大鳳が加わって出撃したりもしますがそれでも攻撃隊が壊滅することは無くは——」

 

「いや、正規空母6人を相手に第一波の時点で壊滅させた」

 

『ぇえ!?』

 

思わず声を上げたのは提督だけではなくその場にいた鳳翔もだった。

提督の方はどちらかというと資材の消費量を気にしたソレだったが、鳳翔の方は純粋な驚きからだ。

何せ第一線を退いているとはいえ空母の端くれ、それに古参の1人でもある鳳翔は一時期ではあったが実戦経験もある。

その経験則からしても、正規空母6隻分の航空隊がたったの1回で壊滅するのは常識外れだった

 

「待って下さい、それはいくら何でも嘘でしょう。

第一次攻撃隊に全力出撃をかけることも確かにありますが、正規空母6隻分の艦載機を一斉に攻撃し

ようとは彼女たちが考えるとは思えません」

 

「……確かに、瑞鶴ならまだしも加賀や赤城がそんな事をするとは考えにくい」

 

「……どうやら全部の経緯を話した方が良さそうだな」

 

そう言ってスネークが事の経緯を語り始めた

 

「まず、秋月に教える前に長門や妙高、神通らも参加したいと言ったから攻撃と防衛の二手に分かれて俺やウェーバーに艦娘の対空戦闘を見させてもらう事にした」

 

「……で、その時から手を出したのか」

 

「まあ第一波は何もしなかったが、第二波に関しては撃たせてもらった。

そのあと一旦こっちに戻って来たんだがその時マーリンとエアーも合流してな、それなら派手にやりたいと思ったんで俺ら4人と秋月・大鳳と、今の第一艦隊と残りの空母6人とまとめてやりあった」

 

「なるほど、つまり最初の2回のやり返しをするために第一波に全力出撃をしたんですね」

 

「さあな、だがさっきまでの長門の話を聞く限りでは殺気立っていたのかもしれないが」

 

「……待て、秋月の訓練には長門も参加したのか?」

 

「そう言っただろう、第一艦隊と加賀を旗艦とした正規空母6人による………連合艦隊か、それを相手にさせてもらった」

 

「ああ、だから今日は燃料の消費がいつもより多めだったんですね」

 

「……鳳翔、備蓄は大丈夫か?」

 

「今日の燃料に関してはギリギリ黒です。さすがにボーキサイトは大幅に赤ですが……」

 

「そうか……鋼材は?」

 

「いえ、いつも通りです」

 

「……なぜわざわざ長門たちも一緒に参加させたんだ。秋月の対空戦闘の向上なら連合艦隊を相手にする意味が無いだろう」

 

「意味はある、どんなに的が多かろうが極めて小さかろうが判断力さえあればどうにでもなる。

適切に判断し実行できなければ技量があろうとも何も出来ない」

 

「……つまり秋月にはもう十分な技量があるって事か?」

 

「いや自分の能力を把握しきれていない。それに今日は大量の艦載機を相手にできる機会があったが本来あまり無いだろうからな、射撃に関して教えるより今回は判断力に負荷をかけた方が良かった」

 

「……それで その演習で損害は無かったのか?」

 

「ああ、艦娘には何の損害も出してない。唯一ウェーバーが乗っていた水上バイクが不調になったがそれ以外では何の問題も発生していない」

 

「…………小破判定も無かったのか?」

 

「……そういえば近距離で妙高たちに秋月が魚雷を発射して中破にはしたらしいが判定だけだ」

 

「いや……私が言いたいのは6人だけで正規空母6隻の航空攻撃と戦艦中心の水上打撃部隊の攻撃を

受けて、あなたたちに被害は無かったのかと聞いてるんだが……」

 

「さっきも言った通りだがウェーバーが乗っていた水上ボートが不調にはなったがそれ以外では何の被害も出なかった」

 

「凌いだのか!?」

 

「……一体何に驚いている、確かに砲撃は凄かったが航空攻撃は一度も受けなかった。

爆弾や魚雷を落とす前に撃ち落としたからな」

 

「あっあの……回避運動は?」

 

「していない、する機会が無かった」

 

『………………』

 

常識外もいい所である

提督や鳳翔はスネークから話を聞く前までは、“普通の”訓練を思い浮かべていた。

だが、スネークから詳細を聞くにつれてとんでもない事をやってくれたと理解していった。

 

そもそも、長門も言っていたが6人だけで火力だけでも倍以上の相手を凌ぎきること自体難しい。

何せ、まず航空攻撃は練度が高い横須賀鎮守府のエースとも言える正規空母6人。

さらに第二艦隊にはやはり火力では横須賀鎮守府トップの長門と陸奥、さらに重巡4人で固めた。

これに対して戦艦4隻に正規空母2隻ならまだ考えられるが駆逐艦1人と空母1人、さらに“人が4にん”となるともはや絶望的としか思えない。

 

……が、中身が防空駆逐艦に装甲空母・さらに鍛えられた(訳がわからない)“兵士”となれば違った。

まず状況にもよるが、基本的に火力を発揮できない艦隊ならば各個に回避運動をしながら敵機をやり過ごす。駆逐艦と人ならば普通避けながらどうにかして凌いだのだろうと考えるのが普通だが、

秋月とMSFで戦闘班を経験した者がいれば十分に有効な弾幕(弾道)を形成できる。

もっとも、今回の場合は無風に近かったことにも原因はあるがそれを踏まえても常識外である、

忘れられているかもしれないがマーリンとエアーは昨日から今日にかけてティムを山の中で追いかけ朝を迎えている。

 

さらに付け加えるならば、演習で索敵範囲が絞られていたために接近されたとはいえ水上打撃部隊を無力化したのも異常とも言える。まだ、提督と鳳翔はこの事をスネークから説明されてはいないが。

 

「……どうした?」

 

「いや、そりゃ加賀もふてくされても仕方ないと思いましてね」

 

「……どういう事だ」

 

「負荷をかける訓練とはいえ、航空隊の全滅を招いたなら多少なりとも心にくるものはあります。

それに加えて一度も攻撃をさせてもらえなかったストレスは空母にとって相当のものです」

 

「……まあやられた感覚は少なからず有るだろうな、だが手加減してやる事は出来なかった」

 

「問題ありません、ここのところ深海凄艦との航空戦では負け知らずでしたから彼女たちも慢心していたのかもしれません、いい機会です。

私から直接今日のうちにあの娘たちを呼んで話しておきますから気にしないで下さい」

 

「なら鳳翔、早速で悪いが今すぐ行ってやって来てくれ。

俺が言うのも何だが…………あれは放っておけばどうなるかわからない」

 

「それほどか?」

 

「長門が様子見する程度に、だ」

 

「……鳳翔、ここはスネークの言う通り今すぐ行ってきてくれ、飲み代は経費で落とす」

 

「ふふっ、わかりました。

じゃあ私は寮に寄ってから居酒屋を開けますね、何かありましたら来てください。

お茶はここにありますから自由に飲んで下さい、ポットはここです」

 

「わかってるよ、鳳翔も何かあったら教えてくれ」

 

「では私は失礼しますね」

 

そう言って鳳翔は2人に一礼した後、提督室を後にし6人が否応な雰囲気を醸し出しているであろう

寮に向かった。幸いにして、大鳳は秋月の配慮で食堂でまだゆっくり食べている。

 

部屋に残った2人はカップに残っていたお茶を飲みながら足音が去っていくのを待っていた。

本来スネークはコーヒー派だが、美味いものなら何でも構わない本人にとってコーヒーが飲めないのは大した問題では無かった、むしろ鳳翔の淹れたお茶が美味く少し気に入っていた。

 

そして足音が遠ざかり、お互いのお茶を飲み終えた後…………静寂が訪れた

 

「……さて、ここからが本題の様で」

 

「鳳翔が居ても構わなかったんが……内容が内容だ。

お前自身の考えを聞いてからでないと色々と厄介そうだった」

 

「ほぅ、加賀たちが不機嫌になるより厄介ですか?」

 

「お前に対する艦娘からの信用に関わる」

 

「……………」

 

出方を見るためにネタとして吹っかけた提督の言葉だったが、スネークの言葉に詰まる。

何せ艦娘から嫌われかねないと正面切って言われたのだ、艦娘を預かる身としてはこれほどに深刻な問題はない。

 

「……それで一体何です?」

 

「“情報”に関してだ」

 

「……どういう事です」

 

「今回の訓練で俺らはチャフを使わせてもらったが、大鳳はそのチャフの存在を知らなかった」

 

「はい」

 

「秋月は一応知ってはいたが、ECMについては一切の知識が無かった。現状の……まあ深海凄艦が

出てくる前までの話だが、ミサイル攻撃が主流だ。その知識も自衛官から口づてで聞いたと言っていた」

 

「……それで?」

 

「なぜ“教えていない”?」

 

「………………」

 

「彼女たちは元艦船だ、船として生きてきた長さが違うだろうから個人によって知識に偏りがあるのはどうにもならないだろう。だが……軍事関係の知識が欠如しているのは正規の軍人では無いにしても防衛を担っているにしては問題はあると思うが?」

 

 

スネークは提督に対し“人が良すぎる”と言っていたが、こちらも人が良すぎる。

わざわざ依頼人の信用に単なる傭兵が口を出す価値は無い、ビジネスでも何でも無い………………が、この“単なる傭兵”では無いスネークがビジネスに興味があるわけがない。

だがこの業界に関与している奴が武器等について何の知識も無いのが彼にとって疑問だった。

軍人では無いにしても……人では無いにしても、国家機密レベルですら無い知識を彼女たちが知らないのはおかしい、ただそう思っただけだ。

 

 

「……訳があるなら構わん、それを聞く気も無い。

だが彼女たちを何よりも面倒見ているあんたが何で当たり前の事をしていないのか気になった、

ただそれだけの事だ」

 

「……いえ、あなたが考えているであろう事はありません」

 

「ほう?」

 

「・・・はぁ、貴方には適当に話せませんね」

 

溜息を吐きながら提督は肩の力を抜いた

なぜなら彼が思っていた最悪の事態が発生していた訳では無かったから

 

「簡単に言えば時間が無かった」

 

「だが、完熟訓練は出来ているだろう」

 

「ええ、彼女たちが艦娘として戦い 行動する為の訓練・座学をする時間はありました」

 

「……なるほどな」

 

人生の半分以上を戦場に身を置き、その大部分を傭兵として生きてきたスネークは反政府ゲリラや民兵の指導をした経験も当然ながらある、その経験から提督の言葉の意味は簡単に理解した。

 

普通の人間を軍人として、兵士として仕上げるには通常ならば軍直属の学校で短くても半年間の基礎訓練と座学を受け、教官や上官からの屈辱に耐えながら精神力も鍛える。

だが戦争中となればそんな悠長に教育する程の時間も弾薬も無い。

味方集団と行動でき、銃を用いて敵を倒し、敵から逃げれる事が出来る人間がいればいい。

訓練の為の弾薬があれば前線に回した方が良いと思うのは当然だ。

 

正規軍から武器だけを貰い受けた民兵や、そもそも資金や弾薬が乏しい反政府ゲリラ等は到底時間も無ければ経験もない。とにかく撃ち方と立ち回りだけ教え、戦場に送り出す。

そうなるのが一般的だ。

 

スネークは今まで考えた事も無かったが、彼女たちには最初から日本を守るという気持ちがあった。

それは政府や防衛省も似たようなもので領海を守って欲しかった。

そのため艦娘は試行錯誤しながらも訓練し、自分たちに慣れ、戦闘を経験する必要があった。

 

その結果

・まず戦えるようになったなら遠出をせず日本近海を徹底的に掃海・哨戒、

→戦い方を学び 戦闘経験がだいぶ得られてきたらシーレーンの確保、各海域の安全確保、

→そのうち深海凄艦に対する大規模作戦、逆に反抗作戦への対応、

→輸送線の拡大、遠征に対処する時間も拡大

 

と、どんどん忙しくなっていき気が付けば1年が経ってしまったのだ。

ましてや彼女たちは深海凄艦とまともな戦闘が可能な唯一の存在、否応にプレッシャーもあった。

早く強くなりこの国を守りたい、出来なかった事をもう一度、と焦燥感もあった。

誰もそれを止める気も、止める事もしなかった。

 

おかげで少なくとも日本は守られ、南西諸島の一部と北方海域はこの1年でどうにか安定し、必要最低限の燃料や資材の輸送は可能になっている。

 

「だが、そうだとしても武装の知識を欠いたままなのはマズイぞ」

 

「……あまり彼女たちに知って欲しく無い部分でもあります」

 

「……核か?」

 

「それもそうですが年頃の女の子に教えるのに抵抗がある」

 

「だが知識が無いのは問題だ。深海凄艦の方はまだ“昔の兵器だけ”で戦ってはいるが、ミサイルを搭載した奴が出てきてもおかしくは無い。ティムが言うには小型化はアレだけのジャミング技術を持っていれば設計図さえあれば不可能じゃ無いらしい。

あのよくわからん航空機を軍事運用もしている、扱う事もそう難しく無いはずだ」

 

「…………」

 

深海凄艦に対して攻撃をする事は艦娘で無くとも可能だ。

だが深海凄艦がいる場合、その周辺海域では極めて強力なジャマーが発生する。

そのため通常のレーダーはダウン、火器管制が生きていても艦船も航空機も一昔前の航法をしなければならず、まともな戦闘が難しい。

それだけ効果があるジャミングを“海域で発生させる事ができる技術”が有れば、少なくともロケット

兵器程度なら独自に作れなくもない。

 

さらに艦娘で言う妖精の存在も向こうにいる可能性もある

人と同じ身長である艦娘の寸法と同じように小型化された主砲が、艦船として存在していた主砲と

全く同じ射程・威力を持っていること自体異常で、それは深海凄艦も同じだ。もっとも“的”はとても小さいため、当てる難易度はむしろ上がっている。

 

 

 

 

 

だが、もしミサイルが実装されればどうなるか………想像に難くない

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、その時に教えるのも手だろう。その場合、誰かが二級特進されても不思議じゃないが」

 

「っ!」

 

「落ち着け、俺はお前をからかう気はない。

それだけ彼女たちのことを気にかけているならこれも考えておけという事だ」

 

「…………そんな事を考えた事もありませんでしたよ」

 

「当然だ、お前は艦娘を束ねている存在であって深海凄艦と戦う存在じゃ無い、それに指揮官として教育された訳でも無い素人だ。むしろここまでよく運営出来ている」

 

「……それ褒めてるんですか?」

 

「さあな、お前がどう思うかだ。

だが指揮官なら常に相手を過剰評価しろ、それだけ相手を警戒出来ていれば部下も油断する事は無い自分たちにとって都合が悪い事を考えろ、常に劣っていると思え、それが正体不明の敵なら尚更だ」

 

「…………」

 

「そう考えてわかった問題は1つずつ潰せ、それがお前ができる彼女たちを守る方法だ」

 

そう言って胸ポケットに手を突っ込み……盛大な溜息をした後、再び提督の方を見る。

 

「俺が言う事じゃあ無かったがな、お前には言っておきたかった」

 

「………いえ、むしろこちらから礼を言わせて下さい」

 

「礼はいら——待て、お前に聞きたいんだが」

 

「……何ですか、改まって」

 

さっきまで真剣だったスネークの表情は変わり、店員に声をかけるような少し陽気な顔で右手を出しいやなっ、と前置きしこう言った

 

「お前、葉巻持ってるか」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。