鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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出来上がったっ!

……あれ?戦闘シーンが少ない……

じっ次回は機動部隊メインだから大丈夫っ……なハズ







大規模作戦 12/2 02:20

 

 

「目標視認!砲雷撃戦用意っ!!」

 

 

02:20

夜戦にはもってこいの時刻に今度は深海凄艦の魚雷艇が襲って来た。

これを五十鈴を旗艦とした通常艦隊編成で迎撃、各個撃破に向かっている。

護衛すべき輸送船団との距離はすでに5kmを切り船団の姿が見えている。

 

本来ならすでに雷撃されてもおかしくないのだが、魚雷艇発見の報を聞きすぐに船団は船を

立てたため、仮に雷撃しても簡単に回避されてしまうためここではまだ撃ってこない。

さらに艦娘が近づいているにも関わらず逃げず、牽制射もしてこない。

 

「全主砲一斉射、撃てっ!」

 

数十もの火炎、放たれた弾丸は短めの弧を描き目標に向かう

 

だがその全てが水柱を作っただけだった

 

「っ相変わらずすばしっこいわね!」

 

「どうする!?」

 

「名取は秋月、白雪と叢雲と組んで!夕立は私について来て!!」

 

「ぽい〜」

 

「散開!1匹たりとも輸送船に近づけさせないで!!」

 

『了解!』

 

散開させたのは敵の数が多い事、火力を分散させても問題ない相手だという事、

そして何より………………………………………………………………………………………………………

 

「それにしてもこれっ!」

 

「白雪!文句言ってないでさっさと撃ちなさいよっ!」

 

『ピヒィー!』

 

今相手をしている敵、“PT小鬼群魚雷”は雷撃でのみしか攻撃手段がない。

装甲も駆逐艦よりもなく、極めて脆い、だから牽制射もしてこない。

だが機動力に関してはどの艦種よりも高く、戦艦や重巡洋艦の主砲では標準が定まらず、

まず攻撃する事が出来ない、さらに駆逐艦の砲撃すら意図も容易く回避する。

その機動力で回避不可能な所まで懐に入り雷撃するのがこのPT小鬼群の戦術だ。

 

何より“群”と付くように、集団で襲ってくる。

 

「撃っても撃っても減らない!」

 

「名取さん!」

 

「なにっ!?」

 

「これ輸送船だけを狙ってます!私たちを無視して突撃してきています!!」

 

「何でわかるの!?」

 

「先ほどから輸送船の側面を取ろうとばかりしてるからですっ!」

 

「っなら絶対に取らせない様にしないと!」

 

「はいっ!」

 

そしてその数の多さで強行突破を仕掛けてきた。

秋月の言う通り護衛には目もくれず、飛んでくる砲弾を回避し、ただひたすら輸送船に近づいていく。

 

「五十鈴さん!ちょっとヤバいっぽい!?」

 

「ちょっとじゃなくて相当っ!接近をだいぶ許した!!」

 

五十鈴の叫ぶ様にPT小鬼群の接近をだいぶ許した。

すでに3km圏内に迫っており、輸送船団の影もはっきり見える。

まだ横に回られていないがこのままいけば輸送船の間に入られ…………結果は目に見えていた

 

一瞬迷ったが五十鈴は無線で残りの艦娘を呼び出す

 

「……時雨!ちょっとこっちの支援に来て!」

 

《どうしたんだい!?》

 

「小鬼たちが群れで襲って来た!

私たちじゃなくて輸送船だけを狙ってて手が足りない!このままじゃ——」

 

《ならこちらが請け負う》

 

「えっ?」

 

《こちらライフル22、抜けてきた魚雷艇の排除を行う》

 

「な 何言ってるの!?深海凄艦は単なる銃じゃ——」

 

《悪いが情報は高雄から得ている、そいつらは君たちの主砲なら1発でも当てれば沈む。

その位ならこちらでも排除できる見込みはある》

 

「っそれにしたってあなた1人じゃあ!!」

 

《誰が1人だ?》

 

「誰って……」

 

《こちらクラウド、配置良し》

《リーオン同じく》

《レオ部隊配置完了、いつでも》

《P分隊もだ》

《チョッパー レディ》

《ジェネラル班3隻とも位置についた》

 

《日本にいた元ハンターだ、色々と狩っていた連中で腕も申し分ない。

固定機銃にも配置は完了してる、それに簡単に警戒で残してる彼女たちを動かすのは得策じゃない》

 

「けどっ!」

 

「大丈夫です五十鈴さん!あの人たちは私たち以上に経験豊富です!

さすがに戦艦は倒せませんがPT小鬼くらいなら任せても問題ありません!!」

 

秋月が撃ちまくりながらそう五十鈴に答えた。

この場でジョークを言えるはずもなく、その声は真剣そのものだった。

 

「……なら……なら私たちが今いるところを防衛ラインにする!

そこから抜け出してきた敵だけを撃って!!」

 

《了解した、全員聞いたな?》

 

《なら早撃ち対決だな》

 

「くれぐれも無理だけはしないで下さい!」

 

《……て言ってるそばから3匹抜けてきたな》

 

「え!?」

 

慌てて五十鈴が後方を見ると確かに3匹のPT小鬼が抜け出していた。

無線で話していたおかげで火力が幾分薄くなり、そこを突かれた。

全員でそこに集中砲火を浴びせたが俊敏な機動性で全て避けられる。

 

「っち!」

 

《大丈夫だ、こちらで仕留める》

 

「けど——」

 

《目標標準……撃て》

 

冷酷に言い放つ

 

同時に幾つものマズルフラッシュ

 

その火炎を小鬼群も見た瞬間

 

 

“PT小鬼群が爆発”した

 

 

魚雷が暴発したのだ

 

そして3つの炎が生まれた

 

その光景を見て五十鈴は唖然とする

 

「………………………」

 

《まだ来てるぞ、旗艦が撃たないでどうする》

 

「っわかってる!」

 

《おいウェーバー!これ、近づいてくる奴は撃っていいんだよな?》

 

《ただし彼女たちの手前の奴だけだ、爆風に巻き込ませるな》

 

《あいよ》

 

 

 

それを引き金に輸送船団からの本格的な攻撃が始まった

艦娘が取り逃がしたPT小鬼は数秒後には爆発四散していった

 

《また抜けて来た、右2つ》

 

《あいよ》

 

それを見たPT小鬼は対抗策として直進する事をさけ、艦娘を避け、全速力で逃げながら雷撃を仕掛けようともしたが遠回りをしたため、それらのほとんどは艦娘によって沈められた

 

「そうはさせないわっ!!」

 

「ぽいぽいぽいぽーい!!」

 

そのほとんどを逃れた運のいいものも、百発百中の狙撃で仕留められた

 

《Fire……Hit》

 

《Beautiful……!》

 

 

そのうち魚雷艇は姿を消した

逃げることも無く、ただ海の藻屑と成り果てた

 

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……全員無事?」

 

「私の方は……大丈夫ですぅ……」

 

「私たちも大丈夫です、ただ叢雲が……」

 

「どうしたの!?」

 

「あっいや……」

 

「今回ほとんど撃ってないわよ!もっとかかって来なさいよ!!」

 

「……ああ、叢雲にとっては少し不完全燃焼かもしれないか」

 

「けど気にしないで下さい、すぐ治るんで」

 

「そう……」

 

《ホーネットから全隊員へ、周辺に敵影なし。

対象は全て沈黙、取り逃がした奴はいないように思われる、引き続き警戒する》

 

《よし、一旦全員戻って来い。夜食を用意してある》

 

「何言ってるの?私たちはまだ戦えるわよ?」

 

《……こちらキャッチャー、お前ら何時間労働する気だ?》

 

「……どういう意味?」

 

《現在時刻02:40、戦闘対応にすでに1時間、さっきのPT小鬼群の対処には20分。

さらに言えばお前たちが警戒態勢で海上に出てもうすぐ6時間になる。

戦えても警戒するには注意力が散漫になる、素直に戻って来い》

 

「けど……」

 

《戦える時に戦え、変なところで意地を張るな。

休める時に体だけでも休ませなければすぐに限界が来る。

俺らが夜中仕事してられるのは適当な時間に休息を挟んでいるからだ。

戦場で体を壊せば待ってるのは美人の看護師じゃない、死だ》

 

「…………」

 

《……安心しろ、敵を発見したらお前たちにはすぐにでも迎撃に出てもらうからな》

 

「いやっ別に戦いたくない……」

 

《そりゃそうだ、とにかく一旦戻って来い、夜食は美味いのを用意した。

その間の護衛は最上と名取にそれぞ指揮を執ってもらう。

ついでに簡単なデブリーフィングだ、全員船に戻って来い》

 

「わかったわ……皆んなとりあえず一旦船に戻るわよ」

 

『ふぁーい』

 

「吹雪や時雨たちも戻って来て」

 

《わかりました》

《わかったよ》

 

「……少し眠いわ……」

 

 

 

 

 

こうして怒涛の深海凄艦からの襲撃はひとまず終わった…………………………………ハズだった

 

 

 

 

だが一隻残された潜水艦は味方の全滅を島かげから海上で見た後、

興味を無くしたのか、はたまた見方が全員倒されたからか、それともそれが任務だったのか

その光景を見届け、海に潜行し西へ向かっていった。

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

「………あー終わった」

 

「とりあえず、だがな」

 

「BOSS!いつの間に!?」

 

「なに、あいつらが全部仕留めたからな。ほとんど暇だったおかげですぐに帰って来れた」

 

「それはまた……なんとも言えないですね」

 

「馬鹿言うな、おかげで楽が出来た、無駄に弾薬も使わずに済んだ」

 

「……それで、この後は?」

 

「ホーネットは引き続き警戒に出しておけ、他は最低限残して下がらせろ」

 

「ですね、こちらでしばらく作業はするのでBOSSは食堂に」

 

「ああ、そうする」

 

…………ルイには面倒事(書類)を任せるとしてとりあえず俺は食堂だ、

デブリーフィングと状況変化の説明は……俺がやるしか無いだろう。

それと糧食班の連中も居させるか

 

「あっBOSS、食堂ですか?」

 

「そうだ」

 

「ならちょうど良いです、同部屋の住人として吹雪ちゃんの様子も見たいですし」

 

「そうか、なら手伝え」

 

「了解です」

 

艦内の二階でマーリンがいた、ついでに手伝わせる事にする。

 

「お前は何をしてた?」

 

「夜食の準備ですよ、て言っても食材運ぶだけですけどね。

料理長が張り切って作ってましたから美味いのは間違いないです」

 

「ただシャイだがな」

 

「みんなとあんまり関わろうとしませんからね、“俺は料理を作るだけだ”そうですし」

 

「……俺らもそうだ、ただ戦うだけだ。もっとも犬死させる気はない」

 

「そうですねぇ……着きましたよ!」

 

「……相変わらずだな」

 

この船の構造は基本五階建てだ

 

五階部分が艦橋、

四階部分は当直部屋と男の居住区、

三階は甲板と医務室に女の居住区、

二階は食堂や倉庫、

一階はほぼ機関室になる。

 

他にもマストや通信室なんかもあるが、大体のメンバーがいるのは3階より上だ。

だがこの船の糧食班の連中は休息以外ほぼ食堂にこもり作業している。

何せ艦娘だけでも21人、機関室には10人、艦橋メンバーが4人、他スタッフが36人の計71人

 

全員が同時に食べることは無いが、その代わりほぼ常に飯を作っていなければならない。

さらに毎食味を変え、隊員たちを飽きさせず、士気を低下させず、健康に直結する。

それら全てを行ってる食堂は…………戦場だ。

 

「お前!その塩さっさとよこせっ!!」

 

「皿足りるかー!?」

 

「大皿あと三枚寄越せぇ!」

 

「もうすぐ火下ろせっ!!」

 

「手ぇ空き次第さっさと作れ、もうすぐ腹空かせて彼女たちが帰ってくんだ」

 

『了解!』

 

「机拭くぞー」

 

「あと3分で終わらせるぞ!スープはどうだ!?」

 

「問題ありません!」

 

「馬鹿やろう!!問題ある物作るやつがいるか!!」

 

「器じゃなくコップ出せ!スープの温度は熱くていいがなぁ!!」

 

「……本当に相変わらず騒がしいな」

 

「けど夜食なんでまだ皆静かですよ?

霧島に千歳なんか最初は目をクラクラさせて、ほとんど部屋に入ったらすぐに寝ちゃってたみたいですし」

 

「だがもう慣れたんだろ?」

 

「それにしたって疲れますよ、腕はまぁまぁみたいですけど」

 

「だろうな、うちの連中の手際が良すぎるだけだからな」

 

5時間ごとに新しい飯を作りつつ70人近い分量の飯を作り、その間に次の飯の予定を立てる

それをローテーションで回すとはいえ毎日やる、決められた時間に休み仕事をする。

……言うのは楽だが、やってるのは全部で6人だけだ。

まぁ艦娘の霧島と千歳を加えれば8人だが…………戦力の頭数に入ってるのかは知らん。

 

「じゃあ私は皆を呼んできます、とりあえずBOSSは座ってて下さい」

 

「そうか?……まあそうする」

 

「あっ!どうもですBOSS!!」

 

「とりあえずお前らは先にする事をやれ、料理長に怒鳴られる」

 

「違い無いです、なら失礼します!」

 

マーリンは一旦ドアから出て行き、俺のところの机を拭きに来た若いのは軽く礼をして忙しく働いている。

その間にも調理場から怒号が鳴り響く、それと食器やら調理器具が立てる音もデカくなる。

その調理場から1人の男が出てきた……不器用なここの料理長だ

 

「……どうもBOSS」

 

「ああ、それよりこっちに来て大丈夫か」

 

「……何も言わなくても後は勝手にやる」

 

「そうだな……なら軽く話せるか?」

 

「ええそうですね……艦娘2人の事ですか」

 

「……ああ」

 

「さすが元艦船ってだけはありますよ、それなりに器用・視野も狭く無い 周りへの気配りは中々のものです」

 

「……料理の腕は?」

 

「まぁ………この中じゃ一番切って下手だな」

 

「そうか?この前食べたスコーンは美味かったが」

 

「ええ菓子に関してはむしろ俺らより上でしょう……が料理となると……」

 

「ダメなのか?」

 

「まぁ“時間が”あれば上手いんでしょう」

 

「……なるほどな」

 

それはそうだろう、やる事も気をつける事も多い。

しかもそれら全部が毎日あるんだ、1週間程度で慣れるものじゃ無い。

 

「……良い経験でしょうがね」

 

「そうか、いい経験か」

 

「違うんですか?」

 

「………さあな、俺は何も言ってない。

提案したのはマーリンだ、それを問題無いと言ったのは彼女たちの上司の提督だ」

 

「……まあ関係無いですけど」

 

「相変わらずだなぁ……まあ構わんが」

 

「ふっ……ただ単に面倒な気がするで」

 

「そうか」

 

胸のポケットに手を突っ込み、いつものを取り出そうと……して料理長に止められた

そう言えばここは食堂だったな

 

「……すまんが時間が時間だ ここらで一旦切り上げる、良いな?」

 

「……ならこちらも用意します」

 

「そうしてくれ」

 

そう言って料理長はさっさと調理場に戻った。

すると同時にドアが開けられ、マーリンが入って来た。

 

「すいませーん!夜食20人前ありますかぁ!?」

 

「…………あるよ」

 

「よーし!みんな各自席に着いて待ってて〜」

 

『はーい』

 

そして後ろから海戦から戻って来た艦娘12人が入って来た。

その顔は明らかに疲れている……おいおい、女のして良い顔じゃ無いぞ?

まぁそうせざるを得ないのは仕方ないが……

 

「BOSS〜野暮ですよー?」

 

「……顔に出てたか」

 

「けどしょうがないですよ、私たちが少し慣れすぎただけです」

 

「そうか……ならとりあえず全員を席に座らせて待たせてやれ」

 

「わかりました。

みんな〜とりあえず各自席に着いて待っててー、いま夜食来るから〜」

 

「えっ自分で運びますよ!」

 

「ノーノーノー、みんなは歓迎……じゃないや、

けどお客……でも無いけど……とにかく休むべき人たちなの!

だから席に座って少しボケーっとしてるのが今の仕事、OK?」

 

「はぁ?」

 

「とにかく座った座った!」

 

そう言って半ば強引に全員を座らせる、同時に奥に行き厨房でやり取りを始める。

 

「ってなワケで全員分の夜食運んでくれる?」

 

『喜んでっ!』

 

「よろしく〜」

 

「あと1分待っててくれ!美味いの出すからなぁ!!」

 

『はーい』

 

元気は無くとも全員が返事をする。

……ここだけを切り取ればそれこそ学生の団体だ、ましてやそれが女なら……士気も上がる。

 

「全員っ気合い入れろ!腹空かせて待ってもらってるぞ!!」

 

『了解っ!!』

 

「よーし、まずはスープだ」

 

そう言って器用なのが片手に3つのコップを持ちながら彼女たちがいる机に運んでいく。

その中身はスープらしい。

 

格好は普通の服、色はグレーと黒の地味なシャツとパンツの掛け合わせだ。

だがその身のこなしは見かけとは違いしっかりとしている。

そいつが吹雪たちがいる所にそのスープを3人分置いた。

 

「ありがとうございます」

 

「いやいや、感謝は食べた後に言ってくれ。

何せ一番喜ぶのは作ってるあそこの面子、私はただ料理をみんなに運ぶだけだ」

 

「じゃあじゃあ、このスープは何?」

 

「ちょっと深雪!いくらなんでも——」

 

「いやいや吹雪さん、別にはしたなくないさ、むしろわからないことを聞くのは正しい。

……ならメインが来るまでに皆様にご説明しましょうか」

 

その身のこなし通りいつの間にか全員分のコップを運びきり、俺のところにもスープが来た

……どうやらコンソメらしい。

 

「今日のスープはコンソメスープ……の様に見えますが少し違います」

 

「えっ?けどこれ透明でコンソメの匂いがしますけど?」

 

「このスープは漢方薬・生薬の考え方をもとに作ったスープです。

疲労回復を期待して作ってます」

 

「漢方って……」

 

「基本的に苦い印象がある物だけどそれは偏見だ。まあ試しに飲んでみてほしい」

 

「……それなら」

 

「まぁ……頂きましょうか」

 

漢方薬は東洋医学だとして見下されているらしいがそいつは違う……らしい。

詳しい事は俺は説明できないが漢方薬、その中でも科学的に効果がある物を生薬と言うらしいが、症状に合わせてそれらを食すらしい。

 

何でも五つの性と五味で漢方薬は分類しているそうだ。

性っていうのは温性・熱性といったものは体を温めたりだとか、循環の促進・発汗・代謝を活発化させ、寒性・涼性といったものは体の熱を取り鎮静・解毒・利尿作用があるらしい。

 

五味はそのまま味、漢方だと酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味だったか。

それぞれに効果・目的があり、症状に合わせて調合する。

 

他にも五臓だとか虚実なんて物があるらしいが、それらを考えて対処するらしい。

詳しくは確か中医学と日本漢方の二種類あるらしいが……違いは知らん。

 

まぁ効能があるのは明らかに良いことだ、それに加えて美味ければ俺は文句は無い。

 

「ああ〜美味しい〜〜」

 

……マーリン、お前が一番満喫してどうする。

全身が溶けるみたいに体の力が抜けてるぞ

 

「マーリンさんが美味しいって言うなら…………!」

 

『!!!!!!』

 

「どうですか?」

 

「……本当に美味しい、何か体に染み渡るって言うのが嘘じゃないみたいにどんどん奥に

スープが染み込んでいきます……」

 

「他の娘もそんな感じ?」

 

「何ていうか……鎮守府でも滋養強壮とかでシジミ汁をよく飲むけれどここまで実感は

沸かないわ」

 

「……まぁシジミには滋養強壮作用はもちろんある。だがこのスープと勝負はできないだろうね」

 

「これ……何が入ってるんだい?」

 

「詳しくは秘密、だけど漢方薬の独特の風味を消すために海産物の出汁で味を濃くして

旨味で飲みやすくしてはいる」

 

『へぇ〜』

 

完全にウェイターと化した部下が時雨の質問に対して答え、全員に感心された。

その間にメインとなる料理が次々とさらに盛り付けられていく。

その皿に乗っているのは……ピラフか?

 

「さて、メインが出来たから運ぶとしよう」

 

「……なら俺も動くとしよう、食べながらですまないがデブリーフィングを行う。

生憎また敵襲があっても文句を言える状況じゃないからな、質問は」

 

「デブリーフィングって何ぽいっ?」

 

「帰還報告、作戦報告って言えばわかるか」

 

「ぽい〜!」

 

「……まあいい、とりあえず気楽に食べながら聞いてくれ。

わからない事があればすぐに言え……なら早速だが五十鈴、戦況報告を簡単にしてくれ、

交戦に入ってからで構わない」

 

「……わかったわ、じゃあ私から簡単にだけど説明する。

最初は潜水艦の浮上音が聞こえたって時雨から報告があったの、同時にホーネットから潜望鏡を見つけたって無線が入って来たわ。

だからすぐに時雨たちを艦隊の右後方に向かわせた、その対処中に今度は反対側の左翼から

雷撃を受けたって聞いたから吹雪・初雪・深雪の3人を向かわせた。

その後それらの潜水艦の処理が終わったって報告がそれぞれ来たからその場で2グループには

待機を命じたわ」

 

「そこまでに大方1時間くらいか?」

 

「正しくは40分くらいかしら」

 

「……続けてくれ」

 

「そうさせてもらうわ。

その後にPT小鬼群が出現、6人で対処したわ……そこら辺は貴方の方が知ってるでしょ?」

 

「ああ」

 

「そして全滅を確認、こうして食堂で休憩中って所かしら。

弾薬や燃料の消費量は追って報告書を出すけど……」

 

「いいや十分だ、ならあのPT小鬼群って言うのを詳しく説明してくれるか。

ウェーバーは話を高雄から聞いたそうだが生憎俺は脆いボートだとしか聞いてない」

 

「……あの敵は群れで襲って来て、魚雷を撃ったらさっさと逃げていくの」

 

「何だっけ、その……………PT小鬼群って魚雷しか攻撃手段無いの?」

 

「そうよ」

 

「んで、貴方たちが軍艦の記憶って言うか元軍艦というか何て言えばわかんないけど、

その敵は何が元になってるの?」

 

「……マーリン、patrol torpedo でわかるな?」

 

「……ああ警戒船ですか、しかも魚雷持ちの。さながら沿岸警備隊ですね」

 

「タンクトップの奴も同じことを言ってたな」

 

「国境警備隊よりマシですけど」

 

「お前たちにとってはな」

 

「あっあの?」

 

「あっごめんごめん!話を戻す!

……じゃあそのPT小鬼群って大したこと無い……わけじゃ無いんだよね?」

 

「ええ、あいつらの特徴は機動性よ。貴方は見てたから……って言っても夜じゃわからないか」

 

「いいや、よく見えた。

あの回避能力は俺の勝手な推測だが駆逐艦以上だ、当てるには数が必要だろう」

 

「……そうよ、あの回避能力のおかげでまず戦艦や重巡の主砲は標準が間に合わない。

私たちの主砲ならそれなりに連射できるから対応できるけどそれでも中々当たらないわ」

 

「当たればほぼ戦闘能力は喪失してたな」

 

「所詮ボートよ、脆いわ」

 

「だが当たらなければどうという事は無いからな、そのまま必中の間合いに入り込まれれば

終わりだ」

 

「……ええ」

 

「だからと言って俺たちはただ傍観してるのは嫌いでな、少しばかり手を出させてもらった」

 

『……………………』

 

……落ち込むだろうな、いくら乗ってるのが兵士だとは言え普通なら何もしない

ましてや艦隊戦に首を突っ込むことはない、まぁ今回のは艦隊戦じゃあ無いんだがな

それにしたって俺らが手を貸さなかったらどうなっていたかは…………ある程度想像つく

 

「……どう思うかはお前たちの勝手だ、深く考えても良いが思い込みすぎるな。

時間があるときに考える事だ、それより今はやるべき事は無いのか?」

 

「とりあえず今は味わって食べてくれ!」

 

厨房から夜中にもかかわらず元気な声が響く……ただうるさい。

 

「……それで、これからどうするの?」

 

「切り替えが早いな」

 

「生憎あなたたちと違って艦娘でね、メンタルが強いのよ」

 

「・・・あれ?誰かが似たようなこと言ってた気がする??」

 

「……確か瑞鶴のはずだ、意味が少しばかり違うが……何でお前が知っている?」

 

「そうなんですか?けど言ってたのは事実なんですよね?」

 

「まあな」

 

「なら良いじゃないですか」

 

「……それもそうか」

 

「いやっ結構大事な気がするわ……」

 

「五十鈴」

 

「何よ」

 

「細かいことは気にするな」

 

「そっそう」

 

「……さて、俺からも話すことがある。

それもこの輸送作戦、さらには同時並行で実行される敵施設への攻撃の結果に関わる重要な情報だ」

 

『……………………』

 

全員が黙り込む

自分たちだけならまだしも別の味方が行ってる作戦にも影響あると言われれば当然だ

 

「……とりあえず聞いてくれ。

さっきまで襲ってきた深海凄艦は全て退治した……事にはなっているだろうがそれは違う。

恐らく生き残った潜水艦に俺らの居場所、船団の規模はバレた」

 

「……確かに離れた場所で見ていたらわかりませんから敵に見つかったことが知られてるの

はわかりますけど……」

 

「それがどう影響するの?」

 

「考えてみろ、この規模の輸送船団を見つけたらお前たちならどう思う?」

 

「それは……本拠地とまではいかないけど、自分たちの勢力下にこれだけの船団が護衛付きでいれば脅威よね」

 

「ならどうする」

 

「そりゃあ船団を攻撃するでしょ!何企んでるかわからないにしてもヤバそうだし!」

 

「何がヤバそうなんだ?規模は確かにデカイがそれだけだろ?」

 

「そりゃあ輸送船自体が攻撃して来たんだ!」

 

「……なるほどな」

 

深雪が力説する程だ、俺たちが攻撃した事実だけでも艦娘や深海凄艦には相当なものらしい。

だがそれだけで今回は済まない

 

「ならお前ならどうする」

 

「……どうするって?」

 

「いつの間にか侵入していた輸送船団、それも自分たちの魚雷艇・潜水艦隊なら無傷で乗り切る程度の戦闘力を持っている、それらをどう対処する」

 

「えっ……そんなヤバい集団がいたら近づきたく無いよ」

 

「あっ」

 

「どうした五十鈴?」

 

「……ねぇ深雪、今何て言った」

 

「ええ!?いやっ近づきたく……無いって………言いました…………すいません」

 

「うんうん悪く無い……私でもそうする」

 

「えっ?」

 

「……航空戦力か戦艦が来るってこと?」

 

「正解だ」

 

『!!』

 

この場にいる12人の艦娘が目を見開き、固唾を呑む。

何せ自分たちが抱いた通りの感情を相手も抱いたなら、何としても、徹底的に叩くだろうと自分たち自身の感情から結論を得た。

 

何より不気味な輸送船団に、単なる通商破壊部隊ではなく戦艦や空母を差し向けるだろうと

俺からではなくそれを自分たちの経験から考えついた事から導いた、

その信用性は早々揺らぐものでは無い。

 

「当然ながら俺らの進路から施設とは真逆だと向こうも悟ってるはずだ。

俺らを潰すために差し向けるにしてもしばらくは時間がかかるだろう。

……だがあいつらの戦力配置がどうなってるかは未知だ、すでに配備が完了してる可能性もある」

 

「……それでも行かなきゃ」

 

「ああそうだ、むしろ本隊と合流出来れば作戦の成功率は上がる」

 

「そうなの!?」

 

「五十鈴ちゃん……言っちゃ何だけど私たちは言ってみれば日本支部に“飛ばされた”人間なの」

 

「……どう言う事?」

 

「私たちはほぼ戦う必要の無い日本にいるの、そこにいるメンバーは所詮それなり。

もりろん実践経験はあるけど大した事無いの」

 

「えっ?」

 

「あっあの!じゃあウェーバーさんも大した事無い部類に入るんですか!?」

 

「落ち着いて〜秋月ちゃ〜ん。

まぁ確かにウェーバーは出来る方だよ、だけど一流じゃ無い」

 

「お前が言うな」

 

「けど事実でしょうBOSS?」

 

「・・・はぁ、お前が言う資格は無い」

 

「すいません……」

 

「えっっじゃあっ」

 

「……ウェーバーより銃が上手い奴はごまんといる、特に本体には精鋭が残っている。

あいつらなら深海凄艦を相手にする事ぐらい可能なはずだ」

 

「一体どんな連中よ……」

 

「実際、海上の孤島で未だに生き残ってるのが証拠だ。

俺が最後に連絡を取ったのは4ヶ月以上も前だが誰1人欠けていない」

 

「ウェーバーさんより上手いだなんて……」

 

……あのな秋月、お前や横須賀の連中はあいつを狙撃手だと思ってるみたいだがあいつは

“スナイパーでも何でもない”

確かに狙撃手としての教練を受けさせた、それなりの腕もある。

だが銃がそれなりに上手いだけだ、本物の狙撃手じゃない。

 

「とにかく何としても本隊と合流する、それがこの船団が生き残る唯一の術だ」

 

「……わかったわ、私たちも全力で協力する」

 

「おーそう言ってくれると私たちも嬉しいっ!!」

 

「うん?けど何で私たちが攻撃されちゃう事がみんなに迷惑をかけるっポイの?」

 

「……俺たちは常に最悪の事態を想定しながら事実を照らし合わせ状況を把握する。

この状況で一番面倒なのは敵に“全ての情報が漏れている事”だ」

 

「全てって……どの位?」

 

「すでにバレたこの船団の規模と位置はそうだが、別働艦隊の艦種・規模・何より目標地点だ」

 

「本当に全部じゃないですか!?」

 

「だが知れ渡っている可能性はある」

 

「でもでも!何でそれがみんなに迷惑をかけるっぽいの!?」

 

「良いか、時系列で整理しろ。

まず予定通りの手筈なら12/5に攻撃が開始される、そこから逆算すれば11/30以前に出発している。

俺らが捕捉されたのは12/2の00:40頃だ、だがそれ以前に別働艦隊を捕捉していたらどうなる?」

 

「それは……規模によりますけど、今回は連合艦隊による出撃です。

しかも艦隊編成は確実に主力を軸とした艦隊です、誰から見ても本気だってわかるような物でしょうから自分たちの周りの守りを固めます」

 

「その通りだ吹雪、そしてその2週間前に強行偵察されたのは何処だ?」

 

「!敵建設中の施設ですっ!!」

 

「ならどうする」

 

「……戦力を集中させます」

 

「そして敵から本気の艦隊が出てきたらどうする」

 

「……その艦隊に対抗できるように守りを固めます」

 

「その戦力増強中の最中、大規模な輸送船が発見されたとしたらどうなる」

 

「……向かってる途中の艦隊に撃破を命じます」

 

「それが失敗したらどうする?」

 

「…………先に向かってくるであろう連合艦隊を撃破、または追い返した後に輸送船団を攻撃します」

 

「そういう事だ」

 

「……なるほど……そうなると私たちはだいぶ危機的ですね」

 

「……どういうことぉ?」

 

吹雪や一部の艦娘は理解したらしい。

だが白露を始めとする一部の駆逐艦は理解していないらしい。

そんな彼女たちに吹雪は勝手に説明を始めた……楽でありがたい

 

「えっとですね、わかりやすく説明すると……深海凄艦の立場で考えてみて下さい。

まず最初に敵の強行偵察がありました」

 

「私たちの筑摩さんとか阿賀野さんたちが行ったやつ?」

 

「はい。

佐世保鎮守府からは筑摩さんと阿賀野さん・矢矧さん、

舞鶴からは卯月さん・皐月さん、

横須賀からは高雄さんが行きました」

 

……随分詳しいことまで覚えてるんだな、この吹雪っていうのは

 

「その後……はい、1週間近くずっと輸送船がトラックに物資を搬入してました。

さらにその1週間後明らかにこちらを攻撃する意図のある艦隊が出撃したのを発見しました」

 

「それって私たちじゃなくて別働艦隊のこと?」

 

「そうです、そしたらどうしましょう?」

 

「えっと……明らかに本気だってわかるから、そりゃあ1週間前にやって来た所を警戒するよね」

 

「そうです村雨さん、だとしたらどうやって守りを固めます?」

 

「あっと……とにかく周りに展開してる敵っっじゃなくて味方を寄せ集める!

そうでもしないと落ち着かない!!」

 

「はい、敵も同じだと思います。

その呼び寄せてる艦隊が大規模な輸送船団を発見しました。

しかもその輸送艦自体が攻撃してきて、魚雷艇とはいえ全て殲滅しました。

そんな訳のわからない敵の輸送船団が同じように向かって来てます」

 

「ちょっと不気味だよね……」

 

「けどただ攻撃されて倒されちゃっただけじゃないですか、そこまで怯えます?」

 

「……白雪、輸送ワ級が如月ちゃんを撃沈したらどう思う?」

 

「何で如月ちゃん!?初雪なんか恨みでもあるの?!」

 

「……例えが悪いけど、それでも想像して……どう思う?」

 

「それは……いくら駆逐艦でも輸送艦に撃沈されたとしたらさすがに警戒するよ」

 

「吹雪が言いたいのはそういう事……私たちはその位敵から警戒されてる」

 

「はい、初雪ちゃんの言う通りです。

敵がPT小鬼群と潜水艦だったとはいえ、それら全てを壊滅状態にはしました。

そんな相手を放っておく程敵は呑気じゃないと思います。

なので向こうが取ってくる戦術としては私たちの近くにいる一番強力な艦隊を差し向けてくると思います、むしろ水雷戦隊はこの海域を離脱するよう言われてるかもしれません」

 

「な なるほど」

 

「じゃあみんなに迷惑をかけるっぽいのは?」

 

「……本来なら敵は相当な戦力を防衛に回して戦うつもりだったはずです。

ですが私たちの存在がわかった時点で敵は2つの脅威に対処する必要に迫られています。

そうなればきっと気味の悪い輸送船団にではなくまず連合艦隊の方に主力を向けるでしょう。

ある意味苦しい深海凄艦としてはそれこそ徹底的に連合艦隊を追い返すでしょうから……」

 

「……被害が甚大になりそうぽいっ?」

 

「…………はい」

 

「80点だ吹雪、主軸は間違えていない、それに俺じゃそこまでわかりやすく説明できん」

 

「あっありがとうございます……けど何で100点じゃ無いんです?」

 

「それは本隊と合流した後に伝える、今知ればお前たちが任務に集中を欠く可能性がある。

その位重要な情報だ、だが今は我慢してくれ、時が来れば教える」

 

……まあルイの奴が高雄と摩耶に話してたが、あの2人は基本的に護衛として周辺警戒の任に着いていない、万が一敵の水上打撃部隊が現れた時の戦力だ。

さらに味方である連合艦隊の支援艦隊としてラバウル上陸後は俺らと離れる、ある程度範囲の広い情報を持っていた方が都合がいい。

 

だがここにいる艦娘はあと2日間は俺らの護衛を担う、

そんな中で情報が漏れてる、味方が敵の罠に踏みいろうとしていると聞けば穏やかじゃ無い。

 

「私からもお願い、ここは少し我慢して。

必ず2日後に本隊と合流した時、みんなには私たちの仲間と一緒に情報共有って形で作戦会議に出席してもらう、だからそれまでお願いっ!」

 

「……言ったでしょ、私たちも全力で協力するって。

本音を言えばとても気になるけど……どうせ教えてくれるんでしょ?ならそれまで私たちは待つわ」

 

「ありがとね五十鈴〜、本土に戻ったらジュースおごるー」

 

「……マーリン、そんなセリフを言った奴は大体ヤられるのが決まってるぞ」

 

「ビールじゃなくてジュースですっ!オレンジジュース何でセーフですっ!!」

 

「そうか」

 

「ってなんかそれだと私も巻き込まれそうなんだけど!?」

 

「五十鈴さん……どんまい……」

 

「初雪が言うと本当にそうなりそうで怖い……」

 

「次から本気……出すっ……」

 

「何の!?」

 

五十鈴と初雪のやり取りに全員が笑う。

……あんまり笑えるネタじゃ無いんだがなぁ

 

「……おいウェイター、どうやら全員元気なったみたいだ、食器を戻してくれるか?」

 

「全員完食ですね、作らさせて頂いたこちらとしてもありがたい事です。

なら食器をお下げしますね」

 

そう答えた器用なウェイターはさっさと全員分の食器を片付けた。

……こいつ、どこかで修行でもしてたのか?

ものの数十秒で数十皿分を両手に全て持った、随分と手慣れているが……慣れればこんなものか。

 

調理場からは食器と水が出す音が聞こえ始め…………今度は誰だ?

 

「失礼するぞ……って随分な光景だ、大繁盛だなムンク?」

 

「相変わらずだなルイ、だが私は手を出す気は無いさ」

 

「俺も手を出す気は無い、サポートだけだ」

 

「何のだい?」

 

「それを言わすか」

 

「やめてくれ、ここは食堂だ」

 

「だろうな……それでBOSS、説明は終わりましたか?」

 

「ああ吹雪がやってくれた、俺は気楽に飯が食えた」

 

「そっそんな大した事は……」

 

「良いの良いの吹雪ちゃん、BOSSは面倒なのが嫌いなだけだ。

それだけ嫌いだから感謝されて良いんだよ」

 

「悪いな、説明する事ほど面倒くさい事は無いんだ」

 

「おいルイわざわざこっちに来てどうした、書類を片付けたのか?」

 

「まあ書類だけは仕上げた、報告書はこれです」

 

「おう」

 

そう言って入ってきたルイが俺に数枚の束を寄越した。

中身は五十鈴が言っていたことの詳細をこの船の観点で書いてあった。

 

遭遇した時刻、

その際のこちらの陣形と相手の数、

それらの対処法に関する報告と反省、

さらにその際に使用した弾薬数、

 

他には簡易的ではあるが艦娘の移動情報も乗っていた。

どうせ後から諜報班の情報分析にかけられるだろうが……まあいい。

 

「ねえルイさん、それ見てもいい?」

 

「うん?まあ機密書類じゃ無いし単なる報告書だから良いけど……何で五十鈴ちゃんが見るの?」

 

「いえ、この短時間で書かれた報告書がどんな物か気なって……」

 

「なんか変な興味心だな……まあどうぞ、BOSSも構いませんよね?」

 

「ああ、ほれ」

 

五十鈴に報告書を渡す。

渡された本人は……随分と熱心に報告書を読んでいる。

それこそその目力で紙に穴が空きそうだ……そんな大事な事は書いてないはずだが?

 

「……BOSS、俺何か気になる事書いてました?」

 

「いや、少なくとも俺は気にならなかった」

 

「ねえ吹雪ちゃん、あれどういう事?」

 

「多分……報告書の内容もそうですけど、その完成度に感心してるのかと」

 

「完成度?ありゃ適当にささっと書き上げたやつだ、誤字があるだろうし別に大した事は書

いてない、それに……あそこまで興味持たれるほどのこと書いてないぞ?」

 

「それは——」

 

「……ルイさん、コレどの位で作りました?」

 

「それか?戦闘が終わったのが02:40位でそこからそれぞれの船から状況聞きながら作ったから……1時間くらいか」

 

「1時間でここまで作ったんですか!?」

 

「いやっ今03:50過ぎだからもっと早いかもしれんけど」

 

「………………」

 

五十鈴の顔が固まった、

まるで敵に敗れた時に見せるような敗北の顔だ……一体何に負けた?

 

「ねえ吹雪ちゃん、早く報告書を出す事に何であんなに驚くの?」

 

今度はマーリンが吹雪に質問する。

 

 

「……私たちもこれでも軍人という扱いなので戦果報告を書きます。

けどどんなに頑張っても1時間であんなに中身の濃い報告者は書けないですよ……」

 

「何だ、そんな事?

それは慣れれば勝手に出来るようになるよー、この世にデスクワークが好きな人間なんて

いないけど嫌いなのは大勢いる。

そんな中でやっぱりそういうのを一手に引き受ける人って必ず出てくるでしょ?」

 

「……はい」

 

「うちじゃその一手に引き受けちゃった1人がルイだからね、その手の仕事は早いんだよ。

おかげで臨機応変な指揮までできるようになっちゃったし」

 

「そうなんですか……」

 

「あっBOSSは例外ね。

何でもできるけど書類作成とかは全然やりたがらないから口頭で全部済ましちゃうから」

 

「それは……それで皆さん大変そうですね」

 

「まあ副司令がBOSSの書類作業を全部肩代わりしてたから少なくとも私たちには迷惑かかってないかな」

 

「なんかその副司令さん? もすごいですね……」

 

「私たちが生きてられるのもBOSSと副司令のミラーさんがいたおかげだからねぇ……」

 

「そうなんですか?」

 

「うん」

 

「……あー五十鈴ちゃん、そんなに事務処理に困ってるなら簡単なコツくらい教えるけど」

 

「本当ですか!?」

 

「至ってシンプル、数をこなせばいつか出来る」

 

「………………」

 

「……そんな軽蔑な眼差しを俺に向けないでくれ、それが事実なんだ。

人間 仕事環境で適応してくる、まあそこに今までの経験とか才能とかで一人一人得意不得意

ていう個性が出てくるんだけどある程度のレベルまでは誰でも出来るさ」

 

「正論……」

 

「いやいや俺の経験論だよ。

まっ俺の仕事が早いのは確かだけど俺より早い奴は他に幾らでもいる、焦る事でも無いさ。

それに“肝心の仕事”が出来てない訳じゃ無いんだからさ」

 

「けど……」

 

「それで自信を持たないのは的外れだ、何せ俺たちより遥かに“仕事が出来る”人がいるしね

さらに言えばここにいる誰よりも強いけどデスクワークは丸っきしダメだから」

 

「……俺はじっとしてるのは嫌いだ」

 

「私もメニュー表や注文票なら喜んで書きますが……閉店後の締めなんか嫌ですよ。

さらに納税告知する季節になったら今までの総決算ですよ、その場から動きたくても動けません」

 

「えっお店?いまお店って言ったの?」

 

 

 

「ああ、ムンクはここの厨房連中と一緒に港町で定食屋やってるんだよ」

 

 

 

『ええ!?』

 

「ちなみに料理長がそのままシェフ、他全員がコックでありウェイターでありって所だ。

特にムンクはウェイターとしては優秀」

 

「何でまた港町で定食屋さんをやってるんだい?」

 

「暇だからです」

 

「えっ?」

 

「私たちは海上での異変から日本に来たが、それは諜報活動をするためでもあってね。

同じように他の国に行った仲間は大勢いる、けど特に日本は平和すぎてね。

そんな状況で時間に余裕が出来始めた頃、あの深海凄艦が日本にもやって来てね」

 

『………………』

 

「私たちとしても深海凄艦の情報を収集する必要があった

だけど外国人っていうのはどうしても目立つ、内陸部は人が多すぎるし何より欲しい情報が得られそうに無い、ならいっその事拠点がてら漁港に飲食店をやろうって結論に至った」

 

「なんかいきなり飲食店って結論が出てきたんだけど……」

 

「深海凄艦が現れた途端、

〈仲間全員が一箇所に集まったから俺は暇になった!俺はこれから旅に出るっ!!〉

なんて言葉残して自転車で日本一周した部隊長よりマシだと思いますよ」

 

「ひっでぇなムンク、俺だけがクレイジーみたいだ」

 

「間違えてませんよ?」

 

「そう来たか……いやっだから俺はイカれてはいないぞ」

 

「まぁとりあえず時間つぶしのために定食屋を始めたって所です」

 

「スルーデスカ ソウデスカ」

 

「じゃあ皆プロなんだー」

 

「定食屋ですけどね」

 

……単なる定食屋では無さそうだがな

だがこのウェイターが昼時には忙しくなるに決まっている定食屋で働いていればたかが10人程度、捌くのも楽だろう。

 

「……話が逸れたが、俺が話したいことは以上だ。

何か質問はあるか?気になるだろうがさっきの話はまだ話せないがな」

 

「今後の予定は?」

 

「船団の航路と到着予定時刻に変更は無い。

急ぎたいのは山々だが燃料の残量からしても予定通りでないとギリギリだからな。

警備のローテーションはお前たちに任せる、何か問題があったら言ってくれ」

 

「……そう言えばこの船団にはタンカーが含まれてませんが、燃料の補給はどうするんですか?」

 

「それは心配しないで、本隊で全部の船の燃料補給が出来るから。

未だに海上でどうやってか油田を掘って精油してるからね」

 

「・・・それって海上プラントってことですか!?」

 

「早い話そうなるね、ていうかそうだね」

 

「良く今まで深海凄艦に狙われませんでしたね?」

 

「あー……それこそ本当にうちのオリジナルの話になって来るから……お話デキナイ」

 

「いやっマーリン、何でそこで片言になるんだよ」

 

「えっ……だってウェーバーとかが駆けつけてくるよ」

 

「いやあいつそんな奴じゃ無いから、何ならBOSSがここにいるから焦ろよ」

 

「……何か触れちゃいけない物みたいですね」

 

「そういう事にしておいて」

 

「あっマジだ」

 

「……ならこれで終わりだ、全員仮眠を取っておけ」

 

「まだ食べたい人いるなら部屋に持っていくけど、いる人?」

 

『大丈夫でーす』

 

「そうかい」

 

そう言って艦娘たちが出て行く。

その姿は入ってきた時より元気になっていた、まあすぐに寝るだろうがな。

それでも活力は戻って来ている、やはり食事は重要だ。

 

「なあ俺にも少し食べさせてくれないか、俺も小腹が空いた」

 

「良いぞ、500円な」

 

「コックが金取るのかよ!?」

 

「あっ5ドルでも良いぞ」

 

「高えよっ!さっきより高えよ!!レートいまどうなってるか知ってるだろ!?」

 

「……ならビールでも良いぜ?」

 

「何でお前たちに奢らなきゃいけねえんだよ!」

 

「じゃあ無くて良いか?」

 

「作ってくれよっ!ていうかそこにあるじゃねえか!!」

 

「……まぁ寸劇はここまでとして、温めて出してやるからちょっと待ってろ」

 

「……おうよ」

 

厨房連中とルイがいつも通り掛け合いをしている。

取り残されたムンクとマーリンはただそれを見ていただけだが、

終わった途端マーリンはドアから出て行き、ムンクは厨房に戻っていった。

恐らく食材の整理って所だろう

 

「……しかしまさか魚雷艇が来るとは思いもしませんでした」

 

「それについては同感だ、潜水艦と連携するとはな」

 

「……そろそろ夜明けですね」

 

「まだ山場は超えてない、踏ん張れよ」

 

「全員わかってますよ、その加減も」

 

「もうしばらく頼む」

 

「任せて下さい」

 

 

……そろそろ夜明けだ

あの提督が考えなしに突入させることは無いだろう、艦娘自身も優秀だ。

だがこっちより向こうの方が危険なのは確実だ。

 

それにあの建設中とかいう施設は囮、または陽動の可能性が高い。

その可能性に気付けているか……気付けてなくとも別に本隊がいる可能性を考えているのか

……いずれにせよ任せるしか無い、俺らもこの2日を生き延びるしかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・お前何でここに来たんだ」

 

「……何の事です?」

 

「今さらとぼけるな、お前は確かに“しばらくかかる”と言って艦橋に残っていた。

なのに“書類だけは仕上げた”と言ってここに来た。お前が適当な仕事をする奴じゃ無いのは知っている、ただ放り出してきたとは考えにくい……何があった?」

 

「……マーリンも察して出て行ったみたいですしね」

 

「良いから言え」

 

「…………よりによってアレですが、先にまずい状況の話と 面倒な話のどちらが良いですか」

 

「面倒な話からだ」

 

「……このタイミングで横須賀鎮守府提督からの正式な依頼要請です」

 

「内容は」

 

「“我が連合艦隊機動部隊をラバウル上陸以降、全力で支援されたし、

上陸以降の輸送護衛部隊に所属する艦娘21名の指揮権を一時的に一任する”……との事です」

 

「随分早い一任状だが……一任者は名指しか?」

 

「いえ」

 

「……だが上陸以降のご予約だ しばらくは面倒では無いな、でまずい状況は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………本部との連絡が途絶えました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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