鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

56 / 65
大規模作戦 rendez-vous

 

いま五十鈴は混乱していた

 

いや、他の娘たちもそうであるに違いない

 

自分たちが座っている奥には先ほどまで悠々と葉巻を吸っていた男

 

そしてもう1人………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取りあえずスネークは無事だった、というかアレだけの敵機に急降下爆撃をされそうになったのに見つけた時は葉巻を吸っていた。

そんな暇があるなら無線で応答しなさいと言ったが本人曰く、

 

「あの爆撃で少し不調になったらしくてな、治していた」という。

 

……はっきり言って迷惑だ、人騒がせだ。

何なら文句の1つ言いたかったが戦艦から発射されたらしい砲弾で掻き消された。

 

色々とあり過ぎて忘れてたが前方から来ていた艦隊をまだ対処していない、しかも摩耶が言うには

戦艦も含まれている。

敵弾は随分的外れな場所に着弾したがそれもどんどん修正されていくだろう。

 

「取りあえず撤退だ」

 

それがスネークの判断だった

 

「どうして!?このまま追撃したほうが良いに決まってるでしょ!!」

 

「まぁ落ち着け」

 

五十鈴はスネークに迫り反対した。

このまま撤退する事になればそれこそ輸送船団の方へ敵を誘導する事になり、壊滅する可能性が高い

それに上陸対象の近くに敵がいるのはどう考えてもよろしくない。

だがスネークは葉巻を吸い終え、律儀に銀色の携帯葉巻入れに燃えカスを入れた。

 

「良いか?確かにこのまま追撃したほうが俺らのためだ、船団に脅威が迫るしこのまま敵を野放しにする事になる」

 

「っなら!」

 

「だが確実にお前らに被害が出る、下手をすればやられる、連戦だからな」

 

「わ わたしは大丈夫よ!!」

 

「お前が大丈夫でも他がキツイ、特に千歳と千代田は艦載機を消耗している、白露は怪我もしている

これ以上の戦闘は危険が高い」

 

「…………」

 

その言葉に返す言葉がなかった。

確かに千歳と千代田はほとんどの艦載機を消耗して反撃する術がもうほとんどない。

甲標的は持っているが先制攻撃で終わりだ、それ以降は本当になす術が無い。

それに白露は大破では無いにしても機関部に損傷がある。

これ以上の戦闘は厳しいのは確かだ。

 

「まぁお前がどう思おうが勝手だが、取りあえず撤退が今は良いと思うが?」

 

「……わかったわよ、じゃあ回避運動しながら——」

 

「ピークォード、回収してくれ」

 

《了解》

 

そう言ってスネークは上空で待機していたヘリを近くに呼び寄せた。

ヘリはそのままゆっくりと降下

・・・してくると思ったら一気に降下しスネークの真横に着いた

 

それにビクともせず、スネークは自動で開いたドアからバイクを踏み台にヘリに乗った。

そして手を出しこう言った。

 

「……どうした?乗れ」

 

「・・・いやいやいやいや!!何でこれに乗るのよ!?」

 

「早いだろうが」

 

「私たちは動けるわよ!」

 

「バカ言うな、けが人も居るんだぞ、曳航するより搬送したほうが確実だ」

 

「いやっだって——」

 

「いっちばーん!」

 

そう言って乗ってきたのはその怪我人の白露。

スネークはその手を取り、一気に機体に引きずり込んだ。

 

「ほらっみんなも乗りなよ!わたしは疲れた!!」

 

『…………………』

 

戸惑っていた面々だが、白露のその言葉に押され最終的にヘリに乗る事となった。

ちなみに艤装を展開したままでは重量面でも搬入面でも不可能なため、水上バイクを踏み台に艤装を解除、そしてスネークの手を取り全員がピークォードに搭乗した。

その光景はいささか不自然だったが全員疲れていたためか何も思うことなく無事に乗った。

 

「全員乗った、出してくれ」

 

「えっバイクは良いの?」

 

「問題無い、後で回収する」

 

《離脱します》

 

五十鈴はバイクを置いていくことに驚いたが、そんなことは気にもせずスネークは答えパイロットも機体を上昇させスネークの命令に応えた。

 

 

 

 

 

つまり現在、彼女たちはヘリの中にいるのだ。

最初は疲れや戦闘の直後という事から何とも思っていなかったが、余裕が出てくると今度は落ち着かなくなってきた。

例の事件で横須賀鎮守府へ警視庁からヘリに乗ったことがある高雄は平気だったが、他の面子はヘリはおろか空を飛ぶ経験が初めてで全員気が気でなかった。

 

その光景はまさしく年相応の子供であり少女であり何だか面白い物だった。

……まぁ乗っているのが観光用の飛行船や遊覧船ではなくフルカスタムされた兵員輸送ヘリだが

 

$「久しいな、腕は鈍ってないか?」

 

$「心配なくBOSS、連中が出るようになってから思うようには飛べませんでしたが全く飛ばなかった訳ではないので」

 

$「そうか……他はどうしている?」

 

$「心配いりません、襲撃時点でニカやコスタリカの連中は返してましたし連絡は取れてます。

BOSSたちが無事なのもしばらくは皆聞いてました……まあ今日会うまで信じられませんでしたけど」

 

$「……カズは?」

 

$「副司令は少し無理をして不調気味でしたけど、今は復活してます」

 

$「何かあったのか?」

 

$「……まぁ彼女たちが来ると聞いて」

 

$「…………なるほどな」

 

「ちょっと、私たち英語はわからないんだけどっ」

 

「……そうだったな、なら緊張をほぐしがてらお前の自己紹介とついでに状況報告をしてくれ」

 

「そうですね。

改めてわたしはピークォード……というのはヘリの名前で本当の名前はマロイ、個人としてはベアと呼ばれている、趣味はピアノを弾くこととヘリに乗る事、あとはトレーニングかな」

 

『日本語喋れるの(ですか)!?』

 

「……そんなに驚かせる事でした?何気なく日本語は結構使ってたと思うんですが……」

 

「まあいつも通りの反応だ 気にしないでくれ、お前らも色々と質問はあるだろうが今は後にしてくれ

それでベア、ここまでの流れを船に着くまでに説明してくれ」

 

「それは……何処から?」

 

「必要なだけだ」

 

「……了解です、あと10分ほどで着くのでこれまでの経緯を簡単に」

 

そう答えてパイロットのマロイ……もといベアはこれまでの作戦の状況を説明し始めた。

 

「しばらくここら辺の深海凄艦が活発化して通信障害が発生しました。なので元から1500の到着予定時刻の前に周辺海域を捜索する事になってました、そして事前にヘリで船団を捜索したところ先に輸送船団を発見し案内人を降ろしたのち、BOSSたちが島に向かったと言うので合流しようとした途中で信号弾を確認、現場に急行して……あとの流れは知っての通りです」

 

「捜索ならお前だけじゃないな、誰だ」

 

「グリーズとワモン、あと護衛にロングボウが二機です。

グリーズ達はソノブイを置いて帰投まあブイの他にも何人か水先案内人を置いていってます、ロングボウはわたし達の帰りまで船団の上空で警戒してくれてます」

 

「そうか……詳細は島に着いてからになりそうだな?」

 

「ええ、それにお互い伝えたい事があるでしょうし」

 

「まあな」

 

本当に簡単にマロイは説明を終えた。

実際問題彼は説明に適していない、それに説明も早々10分で終わるものでは無い。

それを話し終えたと察したのか1人の艦娘が手を挙げた。

 

「……では質問を宜しいですか?」

 

「ええ構いませんよ、ところでお名前は?」

 

「あっ高雄と言います」

 

「それで高雄さん、ご質問とは?」

 

「先ほどのお話から考えるとこのヘリコプターは私たちの100km圏内に常に居たようなのですが?」

 

「……ああ確かにそう言えますね、島から直線距離で100kmを超えて行動してないですから」

 

「それなら私たちの電探に映らないハズが無いんですが……」

 

「それは特殊塗料を塗ってるからだろうね」

 

「特殊塗料……ですか?」

 

「簡単な話、レーダーが出す電波をよく吸収する素材で機体の表面を塗装してるからレーダに映りにくくなってる、だから君たちのレーダーの実用圏内でも映んなかったんだと思うけど」

 

「けどあの時私の電探に反応は出たわよ?」

 

「あの時って……ああ煙幕が晴れたときか」

 

「そう」

 

「あくまでこの塗料は電波を吸収しやすいだけで完全に吸収はしないからある程度の出力とか距離が近ければさすがに映るよ、まぁその前に目視できるだろうけど」

 

「……十分な性能なのね」

 

確かにあの時、何処から現れたかわからなかった。

それは煙幕を使われていたからと言われればそれまでだが、仮に煙幕がなくとも目視圏内まで接近が気付けなければ対応に致命的な支障をきたす。

それが味方ならまだ良いが敵だったら………これは彼女たちにとって追々考える必要があるだろう。

 

「ではあの攻撃?と言うんですか、すごい光は何だったんですか?あれで全敵機が落ちたみたいですけどあれは一体……」

 

「……大方、連中が試作で作ったスタングレネードのミサイル版なんじゃないのか」

 

「その通りです、視覚と聴覚は奴らにも効くのは実証出来てたので……そこを徹底的に突く様な物を作ったらああなったみたいで、ちなみに実用は初めてでした」

 

「あれ試作兵器だったの!?」

 

「そんな事だろうとは思ったがな、嫌な予感がして耳を塞いで正解だった」

 

「……ちなみにスタングレネードとは?」

 

「人質になったお前達を助けるときに投げ込んだアレだ、目と耳が痛かったと思うが」

 

「あれの強化版ですか……結構効きました」

 

「だがあれは味方にも影響が出すぎだ、何せこいつを敵だと勘違いしてたんだからな」

 

「あれは焦りました、まさか撃たれるとは思わなかったんで」

 

「……俺から言っておく」

 

いくら助かったとはいえあれはやり過ぎだ、下手をすればピークォードがダウンしていた。

そうなれば話はややこしく厄介なものになっていた。

……最も頭を抱えるのは彼女たちの監督者である提督と、組織の資金運用を担っているカズだが

 

「……船団が見えてきました。

あーーこれより本機は着陸作業に入ります、ご搭乗の皆様はシートベルトを締め席にお座り下さい」

 

『はーい』

『…………』

 

元気よく答える駆逐艦たち、それとは打って変わり不安そうな顔を浮かべる軽巡・水母たち

どちらもしっかりと即席で作られたであろう椅子にシートベルトを締めていたがその様子には必死さがそれぞれ違い、それはそれで可笑しかったのだが言えばまた跳ねっ返りが来るためスネークもマロイも何も言わないでおく事にした。

 

「This is Pequod ,between even landing zone points arrive,over.」

 

《This is Transship1,IFF contact.Induction to start,your approaching allow,as it straight please.》

 

間も無く無線で航空通信を行い着艦の手順を踏むマロイ。

航空管制を担当するトランスシップワンが応答し、誘導を開始する。

 

「Roger,Pequod as it straight.こっちはお姫様を抱えてるんだ、しっかり誘導を頼んだぞ?」

 

《わかってる、そっちこそ重すぎてヘマするなよ》

 

「勝手に言っていろ……Pequod over.」

 

「……本当に大丈夫かしら」

 

「安心しろこいつの腕は本物だ、俺が信頼できる程度にはだが」

 

「……そう」

 

それだけで十分な実力なのはわかる。

この男が信頼するという事は命を預けられるという事に等しい、それがヘリのパイロットなら尚更だ

 

「BOSS、すいませんが手伝って下さい」

 

「構わん、こっちでやる」

 

「助かります」

 

そう言ってスネークは席を立つとヘリのドアを開けた

……そう 巡航速度で航行しているヘリのドアを開けたのだ

当然彼女たちには猛烈な風が吹き込んでくる訳で、視界には猛スピードで過ぎ去っていく海面が映る

 

「えっちょっと!?」

 

「早いよこれ!思ったより早いよ!!」

 

「かぜっがすっごいっぽいぃぃぃぃ!」

 

「瑞雲とかってこんな感じに飛んでるのね」

 

「怖い怖い怖い怖い!千歳お姉怖いよぉっ!!」

 

 

「……随分後ろが愉快ですね」

 

「まぁ所詮こいつらはルーキーだからな」

 

「なら少し脅かしますか」

 

「彼女たちがトラウマにでもなったらフォレストかパッツィーがお前に文句を言ってくるぞ」

 

「それって確か——」

 

「日本にいた“カウンセラー”と船の“寮母役”だが」

 

「……止めておきます」

 

「まぁ今度の機会に取っておけ、今回はソフトランディングで頼む」

 

「了解です」

 

……一体何をそうさせたのだろうか

ピークォードのパイロットは素直に答え、素直に機体を操縦する事にした。

 

「ちょっと!本当に安全運転なんでしょうね!?」

 

「安心しろ……と言っても無駄でしょうね、これ」

 

「だろうな、まぁ船か海に上がれば問題無いだろう」

 

 

 

『なら早く下ろしてよっ!!』

 

 

 

「……だそうだが?」

 

「わかってますって、あと3分も掛かりませんよ」

 

「だろうな」

 

そんなことを悠長に言い合う2人だが、片一方はこのヘリに乗っている全員の命を背負いながら機体をコントロールし、片一方は周辺警戒のためヘリのパワースライドの上で体をベルトで固定し外を眺めている、つまり足が宙に浮いている。

 

そして機内に吹き付ける猛烈な風が彼女たちに広がる視覚による刺激と共により恐怖を煽っている。おかげで高雄を除いた艦娘たちによって機内は阿鼻叫喚の模様を呈そうとしていた。

 

「This is pequod,approaching final.」

 

《Pequod,………あー後ろを安心させるために言うか、着艦を許可する。

このままキャッチャーに接近してくれ、南東から7mの風、船速18ノット、以降は誘導員の指示に従ってくれ、以上だ》

 

「ピークォード了解、よし許可が出たぞみんな」

 

そう言っても軽いパニック状態になっている彼女たちにとって そんなことはどうでも良い。

早く着陸してくれ!!・・・それだけだった。

 

《ミーアからピークォードへ、そのまま直進してくれ》

 

二機のAH64の下を過ぎ去り、輸送船団の陣形の中に入る。

海上には長良や最上たちが周辺を警戒しながら航行しているのが見えた。

何隻かを通り過ぎた後、無線にそんな言葉が流れた、どうやらさっき言われた誘導員らしい。

 

《速度そのまま、パスした後旋回》

 

「了解」

 

そうマロイが答えると久しぶりに見るキャッチャーこと、平和丸が前方に見えた。

無線の通り、減速することなく一旦そのまま通過し船が左後方に消えていく。

その後大きく旋回し船の真後ろに着き接近していく。

 

《進入路問題なし、速度落とせ》

 

機体が水平になる

 

《速度そのまま、右手から若干風が吹き込んでくる、マストとメインローターの距離に注意》

 

スルスルと機体が艦に近づいて行く

 

誘導員らしい隊員の顔も見えた

 

その周りには何人かの部下たちも見える

 

《あと500》

 

ふと気付くとずいぶん静かだった

 

後ろを見ると全員が緊張した顔でジッと前に映るコックピットを睨んでいた

 

……あんまり見られるのは好きじゃ無いんだがと思いながら着艦作業を続ける

 

《あと300》

 

そこで瞬間右から機体が風に仰われる

 

だがパイロットは予想していたらしく、機体はわずかに揺れるだけで進路からは一切ズレ無い

 

《周辺状況問題なし、下ろせ》

 

そう言われ段々と、着実に機体が降下していきながら接近を続ける

 

《150………130…………100…………80…………50》

 

「まだ座ってろ、揺れるからな」

 

『っっ』

 

焦って立とうとした名取と千代田がスネークの言葉に慌てて座る。

もっともこの機体は優秀なパイロットが操縦しているためあまり揺れることは無いのだが、

変に揺らし墜落でもしたら……という恐怖が圧倒的に勝りすぐに、素直に、座った。

 

《……高度10、そのまま維持しろ》

 

「っ了解」

 

そんなことをしているうちに機体は船の真上まで来ていた。

本来ならファストロープを垂らし人が降下するのが早いのだが、生憎“お姫様”たちにそれをやらせるには酷だ、それにロープを用いた降下はある程度訓練しなければ着地時に足首を痛めたりする。

この位の高さ(地上3階建て程)なら落下でも良いのだが、それもまた彼女たちが怖がるだろう。

そのためこのままヘリを降下させ、彼女たちを下すことにした。

 

「・・・OKだ、全員降りて良いぞ」

 

誘導員が外で〈問題なし〉とハンドサインで知らせた、それを見越していたスネークは既に左右両方のドアを開け、体をコックピット側に寄せ通路を作り、彼女たちに知らせた。

 

……と同時に我先に“お姫様”たちが降りて行く

 

その姿に優雅さも上品さもなく、

何処ぞの長女が「レディーのたしなみが成ってない!」と言うだろうがその長女も一番にヘリを

降りようとするだろう。

唯一、この中でヘリの搭乗経験があった高雄が余裕を持って全員が降りるのを待ってから笑顔で

 

「ありがとうございました」

 

とマロイに礼を言って降りて行った。

そしてスネークも降りる事にした、もちろん機内に忘れ物が無いか確認してからだが。

 

「特に無いな……なら俺も失礼する」

 

「ええ、では」

 

そう言ってスネークがピークォードから降り、改装捕鯨船……“平和丸”に降り立った。

先に降りていた艦娘はほとんど艦内に入って行ったらしい。

最後に降りていた高雄と旗艦だった五十鈴がピークォードを少し離れたところで見つめていた

 

「周辺状況クリア、ピークォード離陸を開始してくれ」

 

《了解、ピークォード離脱する》

 

その瞬間ヘリは先ほどまでの優しい動きではなく、

一瞬で機体は垂直に上昇、同時に機首をあげ後方に下がりながらターン、そして離脱。

高雄と五十鈴が目を丸くしているのがここからでもよく見えた。

上空にはピークォードと二機のAH64 アパッチが一度周辺を旋回、そして島の方向へ向かって行く

のが見えた。

 

 

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

 

 

さて、戻ってきたが……

 

「おいお前ら」

 

『えっ?』

 

「……何を惚けてるんだ?さっさと艦内に戻ってデブリーフィングだ」

 

「あっいや……私もお礼を言おうと思って待ってたんだけど行っちゃって」

 

「そんな事か、どうせ奴にはあとで会う、その時にでも直接会って言ってやれ。

……だが何で惚けてたんだ?」

 

「いやっだって、いきなりあんな機動するとは思わなかったから」

 

「まぁ結構大胆なやり方だったな」

 

「でしょう?」

 

「ああ、だがあれは見た目が派手なだけだ、それ以上に難しい事をあいつはやってたんだ」

 

「えっ?それってどういう——」

 

「BOSS!」

 

五十鈴が何かを聞こうとしたが、それは最後まで俺は聞けそうに無いな。

何せドアから出てきたのは……久しぶりに見る頼りになる奴だ

 

「……久しぶりだな、メディック」

 

「ご無事で何よりですBOSS、怪我も無さそうですし」

 

「ああ、お前に世話になる程無茶はしちゃいない」

 

「……クロードさん、BOSSに敬礼も無しですか?」

 

「そう言うなルイ 俺は気にしない、それにここには知れた連中しかいないからな」

 

「……お疲れ様です、BOSS」

 

「お前もな、ルイ」

 

「俺はBOSSほど働いてませんよ……」

 

「……まぁ良い、場所は食堂か?」

 

「ええ」

 

「なら装備を下ろしてから行く、少し待たせるが良いか?」

 

「構いませんよ、BOSSを待つことぐらい誰も文句を言いませんよ。ましてや戦時下でも緊急案件でも無いですから」

 

「そうか、ならこいつらを頼むぞ」

 

そう言って俺は部屋に戻る事にする。

さすがに銃を持ったままは色々と邪魔だ、それにシャワーも浴びたいしな。

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

「……五十鈴ちゃんもお疲れ、高雄さんも大変だったでしょ?」

 

「えっええ、まぁ……」

 

「ていうかヒヤヒヤしたわ……」

 

「それは……ヘリか?」

 

「それもそうだけど……って貴方は案内役の人?」

 

「そう言えば2人は初めてか、すっかり忘れてた」

 

「……お前、俺の扱い酷いな」

 

「さっさと名乗ってあげて下さいよ」

 

そう言われた男……身長と年齢はスネークと同じくらいに見えるがスネークより体格は少し細い。

だが鍛えられているのは迷彩服の上からでもわかり、何より雰囲気に隙が無い。

 

「……俺はクロードだ、周りからはメディックと呼ばれてる。

ヘリでここに運ばれてこの船団を案内する事になった、BOSSには世話になっている」

 

「あとついでに俺らの中で一番強い」

 

『えっ!?』

 

「……無駄なことを言うな」

 

「事実でしょうに?」

 

「えっあの……それ本当ですか?」

 

「そうだよ、だってBOSSを相手に接近戦で一本取れるんだから」

 

「ええ!?」

 

「……それそんな凄いことなの?」

 

高雄が珍しく驚き、クロードから少し距離をとる。

その反応に五十鈴が戸惑い、疑問を持ち、何より想像が付かなかった。

そんな五十鈴に高雄が解説を始める。

 

「五十鈴さん、夜戦下で本気状態の川内さんと神通さんが率いる水雷戦隊が手を組んでるとします、それに1人で勝てます?」

 

「…………何その絶対関わりたくない訓練?無理に決まってるでしょ」

 

「それを丘でやってのけたのがスネークさんです」

 

「・・・はっ?」

 

「正しくは1個小隊、40人の自衛官をまとめて相手にして素手で真っ向から叩きのめしました。

そして私たちが丘では弱いと実力を持って示したあの交流戦でも、響ちゃんと雪風ちゃんのタックルを跳ね飛ばし、川内さんが撃つ前に撃ち倒したのもスネークさんです」

 

「…………」

 

「そんな人を相手に出来て、しかも倒すことも出来るのがこのクロードさんなんです」

 

「…………」

 

だんだん顔から血の気が引いていき、最後の高雄の言葉からとりあえず五十鈴はクロードから三歩距離を取ることにした。

 

「……ルイ」

 

「2人とも!大丈夫だから!そんな危険人物じゃないから!ちょっと戦えるメディックだから!!」

 

「……まぁ交流はまた今度の機会だな、とりあえず俺は艦橋に戻る。お前は彼女たちを案内することだ」

 

「……すいません」

 

「気にするな、今度奢れ」

 

「ですねぇ」

 

 

ルイにそう言ってクロードは艦内に戻って行った。

 

その背中は……少し寂しそうに感じたのは気のせいなのだろうか?

 

 

「わ、私たち悪いことしちゃったわね……」

 

「気にしないで良いよ、あの人が言ってた通り交流の機会は持ち越しだし、それよりか2人を案内しなきゃな、まぁすぐに着くが」

 

「えっ……放っておいて良いんですか?」

 

「大丈夫だよ高雄さん、あの人結構打たれ強いし気にするタイプでも無いから」

 

「……良いのかなぁ」

 

「五十鈴ちゃんまでっ大丈夫だって、とりあえず今は上陸準備だよ」

 

『・・・はぁ』

 

 

五十鈴と高雄が合わせて溜息を吐く。

それを背中に置きながらルイは苦笑し艦内に先導し始める。

 

 

「……まあ随分無理な切り替えだろうけど今後の展開をみんなで詰めなきゃダメだからね」

 

「今後の展開……ってラバウルへの上陸ってこと?」

 

「まあそれもそうだけど他にも色々とやる事が出来たからね、“君たちの”支援を含めてどうするのが良いのか決めなきゃいけないし、この後の上陸の流れもある程度頭に入れておかないと」

 

「そうだった……」

 

「もっともさっきまで先行してた君たちは話を聞いて貰えれば良いだけだから。

基本的に話し合うのは俺たちだし、みんなに意見を言ってもらう事になるのは島の本部で、になる」

 

「けど重要なお話をされるのは確かですよね?」

 

「まあね……なんか質問ある?今なら何でも答えられるけど」

 

ルイはふと思い出したように後ろに振り返り、2人に問いかける。

その問いに2人はお互い顔を向かいあわせる。

高雄は首を横に振り特に無いと示す、だが五十鈴は何かを思い詰める様に顔をしかめる。

……どうやら言って良いのか悩んでいるらしい。

 

「…………えっとじゃあ、これから話し合う事については特に無いんだけどスネークが言ってた事がちょっと引っかかってて」

 

「BOSSが言ってた事?……五十鈴ちゃん、惚れたの?」

 

「っな違うわよ!!何でこのタイミングで私が告白しなないけないのよ!?」

 

「……噛んだね」

 

「うるさい!!」

 

「……それで、気になる事って?」

 

「そうよ・・・えっと何だったかしら……そうそう、ヘリのこと」

 

「ピークォードのことか、それがどうかした?」

 

「私たちが降りたあと島に帰って行ったみたいなんだけど、その時の機動が私たちが乗ってた時と違かったの」

 

「それで?」

 

「で、それを見てた私たちに

《見た目が派手なだけだ、それ以上に難しい事をあいつはやってたんだ》って言ったんだけど、一体何が難しかったのかなって」

 

「あ〜〜とねぇ、それは……まあ確かにね」

 

「どういう意味?」

 

「……簡単な話、まずこの船に近づく事自体が難しい。

空母みたいなだだっ広い飛行甲板があれば話は別だが、今のこの船の構造的に艦尾のマストから後ろのスペースがちょうどヘリが収まるかどうかくらいだ。

そこにまず接近しようとすること自体パイロットにとって出来れば遠慮したい事だ」

 

「まぁ……確かに機体が接触するかも知れませんしね」

 

「ああ、だがある程度慣れればそう言った感覚は紛れるし造作も無い程度の問題だ」

 

「……じゃあ他に難しいことが?」

 

「機内ってあんまり揺れなかったでしょ。

海上で、しかもそんなアプローチ中に機体を揺らさないためには相当な集中力と技術、あと風を読む勘が必要になる」

 

「……マロイさんそんな気全然しなかったけど」

 

「パイロットがマロイか!そりゃ良かったな」

 

「……あの人も凄い人なんですか?」

 

「うちに所属してるパイロットは全員腕利きだがその中でも確実にトップだ。

特に強襲・即離脱に関してはピカイチ、運も上々で今まで機体を基地に全部返してる」

 

機体が全部基地に帰ってきているという事はつまり彼の乗ったヘリコプターが帰って来なかった事が無い事を指す、それだけの技量が彼にはある事を2人は察した。

それにルイは気にしていないが運というのは彼女たちにとって重要な“素質”であり気にする事なのだ

 

「それに一番難しいのは降下する時だ」

 

「えっ接近するのも降下するのも一緒でしょ?」

 

「先も言ったけどここは海上で風も良く吹く、それに降下先は陸地じゃなく波打つ海上を航行する船の上だ、うねっている時に着艦すれば機体が傷つくし しかも航行速度に合わせながらタイミングを合わせて降下しないと最悪事故だ。

だから本来人員だけを下すならスリング降下……要するにロープでヘリから直接降下するんだ。

その方が早いし安全だからね」

 

「それなのにわざわざ私たちのために降下してくれたのね……しかも怖らがせ無いように」

 

「そう言う事、むしろ島に戻って行った時に見せた離脱機動の方がマロイからすればやり易かったと思うけど」

 

「そう言う意味だったんだ……」

 

「………今のうちに2人には言っておくけど、本部の連中は全員腕利きだ。

そりゃあ俺らだってそこらの人間や軍人に負けるほど弱くは無いしそれなりに実力もある。

…………だけど今の本部の連中は正真正銘強い、嘘偽りなくこの船団に乗ってる全員が束になって挑んでも勝てない、もちろん君たちを戦力に含めてもね」

 

「ちょちょ、いくら何でもそれは言い過ぎ——」

 

「深海凄艦がはびこるこの海域で半年以上生き延びてる様な連中がたかが20隻の艦娘相手に手こずると思う?そもそもあの島多分要塞化されてるだろうし」

 

「…………」

 

「俺から言いたいのは注意しろってこと。

俺みたいにみんなが皆フレンドリーってわけじゃ無い、だからと言って邪険にはしないだろうけど中には君たちを嫌がるのもいると思う。

そう言う人たちを相手にする事になるんだってとりあえず頭に入れてくれれば良い」

 

『…………』

 

ルイの言葉に2人は黙る。

今目の前にいるルイの雰囲気がいつもの気軽で接しやすい者ではなく、こちらをただじっと見ている観察者であり、観察されている側である自分たちと確かな距離を感じた。

何より先ほどルイが言ったことを自分たちは想定していなかった。

 

「……まっそれは君たち個人で乗り越えるべき案件だし、何かあったら遠慮なく俺とかに言って。

多分助けにはなれるし、ていうかパッツィとフォレストが君たちを守ってくれるだろうし。

つうかあの2人を敵に回す馬鹿はいないだろうし」

 

「……まあそれは言えてる」

 

「そうですね、私もパッツィさんを怒らせたくはありません」

 

「だろうね……だからまあ今はとりあえず」

 

 

そう言って扉を唐突に開けるルイ

 

そこにはこの船に乗りこの10日間近くともに過ごした隊員たちがいた

 

 

「俺たちに付き合ってよ、何かあれば俺らが力になるさ」

 

そこに自分たちの仲間もいた、これほど心強い味方もいないだろう

 

「全員揃ったか」

 

全ての兵士の憧れであり

 

彼らにとって尊敬と畏怖の対象であり

 

何より彼の元で、彼のために動きたい

 

 

BOSS

 

 

「……上陸準備だ」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。