鎮守府警備部外部顧問 スネーク   作:daaaper

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投稿遅れて申し訳ありません

あともう一本今年中に出すので待っていて下さい


大規模作戦 再会・分岐点

 

 

 

『・・・・・・・・・・』

 

「……さぁて、俺たちも動かなきゃねぇっと……えっと名前は?」

 

「シールです」

 

「シールは俺たちと一緒で……良いのか?」

 

「ええ、そう言う役割ですから」

 

「なら引き続きよろしく。

……さて惚けてるところ悪いけど、みんな移動するよ」

 

「えっあ はい」

 

「なら案内頼む」

 

「承りました、ではどうぞ」

 

そう言って再び艦娘を引き連れて歩き出す。

彼らが行く場所は総司令部、演説をしていた男がいたあの高い建物だ。

 

 

 

『…………………………………………』

 

「…………1つよろしいですか?」

 

「ん、なに高雄さん?」

 

しばしの長い沈黙が流れ、後ろ側にいる大人(風)勢が動き出す。

高雄がルイに質問する、もちろんルイとしては構わないしある程度予想していたことなので自然に

対応する。

 

「……なぜわざわざ“私たち”にあの光景を見せたんですか?」

 

「……別に深い意味は無いよ、俺たちの実態を少なくともここまで来てくれた君たちには知ってもらう必要があったから」

 

「実態……ですか」

 

「うん」

 

そう言うと再びエレベーターに乗る、それはブリーフィングルームに直行する物だ。

 

「さっきのでわかったと思うけど、俺たちはBOSSの為なら何でもする。

まあここにいた所で何も出来ないのは確かだけど、それにしたって何かしらBOSSの力になりたいって気持ちはある。だから迷いなく全員いま動いてる」

 

「……しかし」

 

 

ピンポーン

 

エレベーターの扉が開く

そこには部屋があり中央には大きな机と7席の椅子、そして周りにはパイプ椅子がいくつもあった

部屋そのものは鎮守府の講堂ほど広くは無いが、20人が入っても十分余裕があり学校の教室2個分程と言えば想像つくだろうか。

エレベーターは部屋の一番後ろ側にあり、中央にある机は縦に長く、その先にはドアがあった

 

「ここで待っていて下さい、私は班長達を呼んでくるので」」

 

「わかった」

 

そう言うと部屋から出て行くシール。ドアは勝手に開いた、どうやらここは全部自動ドアらしい。

彼が部屋から出て行くと全員がそれぞれ気軽に座り話し始める。

パッツィーやマーリンに駆逐艦の娘たちをまかせ引き続き高雄の相手をする。

彼女の隣には先ほどから話を聞いていたらしい摩耶もいた。

 

「……それにBOSSは君たちに危害が加わることを恐れてた」

 

「私らにか?」

 

「……知ってると思うけど君たちは全世界から注目されてる、俺たちも少なからずね。

そこまで短絡的な連中じゃないけど、もしこれまでのストレスを発散する吐け口に君たちに向かったら取り返しはつかない、それだけのことを強いたのも事実だしね。

…………何より数十年前には戦争相手だった国が故郷の奴もいる」

 

『………………………』

 

「それは君たちも同じはず、あえて言うけどBOSSは元はアメリカ生まれだ」

 

「アメリカ……ですか」

 

「多かれ少なかれ君たちの心の中にも抵抗心ができるのはどうしようもない、その抵抗心を少しでも軽減するためにみんなに見せたんだ」

 

「抵抗心を減らすため?」

 

「って言ってもよぉ、私はあんま気にしねえけど効果あったのか?」

 

「さあね……けどBOSSの部下でもない摩耶たちまでがBOSSの・・・スネークが言っていた事に耳を傾けてたんだからあるんじゃない?」

 

「っそれは——」

 

「例え聞かざるを得なかった状況だとしても、呆然とはならないよ」

 

「っ!」

 

「それまでにしておきなさい、摩耶」

 

「……わかったよ姉さん」

 

「まっ全隊員と付き合うのは後にするとしてだ、いまはここからさっさと出て島に拠点を作っちまう事だな」

 

「……そうですね、それに同時に進行している作戦のバックアップも必要ですし」

 

「そのためにも今から会う人達とはある程度は話さないとね」

 

「えっスネークだけじゃないの?」

 

「ち 千代田、いつの間に……」

 

「摩耶が真剣な顔をしていたからちょっとお邪魔するわよ」

 

「まあ俺としては邪魔でも何でもないけど」

 

「お前、千歳と一緒じゃないのかよ」

 

「もちろん私も居るわよ」

 

「……そうかよ」

 

「それで、これからお話しする相手とは一体誰なんです?」

 

「ありがとね高雄さん、話が進むよ。

これからみんなに会ってもらうのはここ本部で各班の指揮をとってる“班長”だ」

 

「班長?なんか遠足みたいね」

 

「うちは機械科とか普通科とかじゃなくて班ごとに人員を振ってる。

戦闘全般を扱う戦闘班、武器や資材の加工・調達 新技術の開発を担う研究開発班、

医療を提供する医療班、俺たちが生きるのに欠かせない食料調達と糧食を管理してる糧食班

あらゆる情報・物資の支援を行う諜報班。

この5つの班に所属する隊員がそれぞれの特技を持って動いている。

特にここは国境なき軍隊だ、いくらBOSSに尽くすって言っても個人ごとに問題は抱えてる。

ましてや様々な国や人種が混じってるからね、そんな連中を各班ごとに束ねてるのが班長。

その道に関してはプロ中のプロだし皆の信頼も厚い」

 

「……とにかくすごい人なのね」

 

「それもそうだけど、その班長さんたちに協力を得られれば事は運びやすいって事でしょう?」

 

「千歳さんの言う通り、あの人たちさえ協力してくれれば最低限の支援は可能になる」

 

「何よその最低限って?」

 

「……BOSSと班長さえいれば多分基地1つくらい簡単に潰して帰ってくると思うから」

 

「「「「!!?!?」」」」

 

「……もっとも今回の相手は深海凄艦だからそうはいかないんですけどねぇ」

 

「その通りだ、そのために俺たちはここに集められた訳だしな。まあ全員久々に体を動かせるから大喜びだろうし悪くない」

 

突如かけられた声

ドアの方を見ると立っている男が1人、その体つきはスネーク以上にゴツく身長もドアを潜るのがギリギリな程デカイ。声は低いがよく通る声でタバコがよく似合いそうだ。

……もっともスネークなら葉巻の方がいいと言いそうだが

 

一方で部屋にいた艦娘は警戒する。

いくら自分たちの知り合いとはいえ傭兵集団、ましてやその本部にいるためある程度警戒するに越した事はない、何よりその見た目から警戒に値する。

・・・だがその警戒心はルイの明るい声によって書き換えられる。

 

「ヤッコさんっ!久しぶりです!!」

 

「久しぶりだなルイ、相変わらず細いな?」

 

「あなたの堅いが良すぎるんですよ」

 

「……ラッコ?」

 

「ん、何だ?」

 

「えっと……お名前は?」

 

「あぁそれもそうか、他の奴も来るが先に紹介するか。

俺の名前はヤッコ、ここで戦闘班の責任者をやらせてもらってる、趣味は……まあ食べる事だな」

 

「あっ///」

 

「まっまぁ初めて聞けば聞き間違えるよ、そんな恥ずかしがらなくて良いよ」

 

「……なあルイ、彼女は何で恥ずかしがっているんだ?」

 

「えっとですね……あなたの名前を偶然にもあなたのコードネームと勘違いしたみたいで」

 

「おお!俺の名前は日本語でもシィーオータになるのか!!」

 

「シーオーター……って何ですか?」

 

「“sea otter” ラッコのことデスネ!」

 

「そうなんですか!?」

 

「ああ、俺のコードネームは正しく“ラッコ”なのさ」

 

「海産物大好きですしね」

 

「そうだなー美味いからな〜いやーつい食べ過ぎるんだよな〜!」

 

「はあ」

 

高雄は拍子抜けした。

何せ目の前にいるラッk……ヤッコは話しやすいのだ。

目の前にいる男はスネークとは違い何とも言えない雰囲気はない、ただ話しやすいおじさんなのだ

 

 

もっとも

 

 

「っとマーリン、すまないがお前の相手は今度だ」

 

「ウエェ、また読まれた……」

 

「お前はそのどうしようもない好奇心をどうにかしろ、闇雲に仕掛けるな」

 

隙がないのは変わりない

そう、例えば後ろから襲いかかろうとしたマーリンの右腕を突然振り返って捕まえたり。

 

「うぅ」

 

「だが前よりは落ち着いて強くなっている、さすがにBOSSといつもいれば鍛えられるな?」

 

「けど嬉しくない〜」

 

「……俺には訳わかんねえよ、お前の考え」

 

「奇遇ですね、俺もですよヤッコさん」

 

唐突に発生した戦闘未遂に高雄はもちろん、他の艦娘もついていけなかった。

ついていけるのは慣れてしまった川内くらいだろうが、ここにはいない。

 

「……相変わらず騒がしいな」

 

「元気がある事は良いことでしょう、こっちもその方が楽ですし」

 

そんな中であっさりとした言葉を発したのが2人、またドアの前にいた。

片方は物静かでクールの一言で言い表わせる男、背は高くも無ければ小さくもない普通の人

もう一方は一見すると至って特徴がないのだが、右手の親指と人差し指の付け根に蛸があった。

 

「ドクにフィースト、お前らが班長か?」

 

「まあ私は班長代理だがね」

 

「こっちは本当に班長だ」

 

「へぇフィーストが料理長」

 

「お前に料理で負けた覚えはねえぞ、パッツィー?」

 

「そうねっ私は不器用なのよ」

 

「腕が落ちたのか?なら私が教えよう、血流遮断後の再建には致命的だ」

 

「……ジョークなのだけど」

 

「そうか、だが腕は鈍っていないか?」

 

「そうそう腕は落ちませんよ、今もメスは握れます」

 

「えっ、パッツィーさんって手術できるんですか?」

 

「ぁあ?お前言ってなかったのか?」

 

「だってわざわざ言う必要は無いでしょ」

 

「パッツィーさんって単なる寮母さんじゃなくてお医者さんだったの?

 

「……こいつは外科医だ、腕はまあまあって所だが戦闘もできるからこっちに来た」

 

「そうなんですか」

 

「それより2人とも先に自己紹介した方が良いですよ。

……どこぞの科学者と情報分析官が容赦するとはとても思えないんで」

 

「もっともそうなったら俺も止めるがな」

 

「……なら私かな、私は医者で周りからドクと呼ばれている、だから君たちもドクと呼んでくれ」

 

「けどドクって医者のことだろ?あんた以外にもいるんじゃ……」

 

「……呼ぶときにドクと呼ばれるのは幸い私だけだ。他の医者は自分の名前を名乗っている」

 

「じゃあ本名は?」

 

「深雪ちゃん、わざわざあだ名で呼ぶよう頼んでいる人がわざわざ教えてくれると思いますか?」

 

「おおー吹雪ちゃん辛辣」

 

「……その娘の言う通りだ、私は本名を言う気はない」

 

「ではそんなレディの言葉に続けて。

・・・我が名はフィースト、ここにいる人間の全てを支配していr——」

 

「「もう一回いてみな、フィースト?」」

 

「…………私の名前はフィースト、ここで料理長をしている」

 

「お前調子に乗るなら貫き通せよっ」

 

「無理、戦闘班きってのタンクキラーと怪我人を治すのも量産するのも得意な医者を真っ向から

相手するとか俺には無理。ルイも巻き添え喰らってくれるならまだどうにかなるかも知れないけど」

 

「絶対遠慮するわ」

 

「だろ?」

 

「……全く、君は中途半端だな」

 

「だけど嘘は言ってないだろうドク?」

 

「……それはそうだろう、君が本当に中途半端な仕事をしていればここは早々に潰れてた。

だがね、かも自分が神のように語るのは頂けない」

 

「まあ俺らの中でお前やお前らに感謝してないやつはいねえよ、少なくとも戦闘班にはな」

 

「そりゃあどうも」

 

そんな会話を賑やかに展開する隊員達、そして若干取り残されている感が漂う艦娘たち。

しかしこれは彼らのささやかな配慮と抵抗だったのを彼女たちはまだ知らない。

 

「……あの〜マーリンさん」

 

「ん どしたの秋月ちゃん?」

 

「たぶん私だけじゃなくてみんな思ってると思うんですけど……私たちはどうしたら……」

 

「あっ大丈夫大丈夫、久しぶりに会ったから少しはしゃいでるだけだし。

ていうか今のうちにお互い自己紹介し終えてた方が良いよ」

 

「? それはどう言う意味です?」

 

「……今は話が出来る人達ってことだよ」

 

「はあ」

 

「じゃあみんなも今のうちに自己紹介しちゃおっか!」

 

「良いんですか?まだ他にもいらっしゃるんですよね?」

 

「そうだな、俺たち自身も気になるし」

 

「……早いうちに終わらせよう」

 

「この後は騒がしくなるでしょうしね」

 

「ていう訳でみんな整列っ!!」

 

 

どんな訳かわからないが流れるままに全員整列し駆逐艦から自己紹介していくことに。

そのうち場も和み、班長達が話しやすいこともあり ひとまず彼女たちの緊張感を拭うことは出来た

特にヤッコの名前に関しては以外と盛り上がった

 

 

「なんか先ほどはすいません……」

 

「いやいや俺としては新しい言葉を知れて良かった、それにこうやって美人さんと話ネタになった、俺としては全く問題ないさ」

 

「あらっお上手ですね」

 

「どんなに口下手な奴でも君が美人だってこと位言えるさ」

 

「ちょっとヤッコ、手は出さないでよ?」

 

「当たり前だパッツィー、俺には嫁がいること知ってるだろ」

 

「結婚なさってるんですか?」

 

「ああ、だがここじゃそんな珍しいことじゃ無いぞ。実際、ルイにも恋人がいたはずだが?」

 

『ええぇ!?』

 

「……ヤッコさん、何でそれを言うんですかね」

 

「えっルイさん付き合ってる人いるの!?」

 

「随分白露ちゃんも突っ込んでくるねぇ……そうだよ、まあ正しくは婚約者だけど」

 

 

「どんな人!?」「僕も気になるな」「私も気になるわ」「ぽいっ!」

「確かに私も気になります」「気になりますね」「……気になる」

「誰!どんな人!?」「あんたら……まあ気になるけど」「私も気になりますっ!」

 

 

「おーモテるなールイ」

 

「……一体誰のせいですかねぇ」

 

「俺だな」

 

「おーう、自覚あるですね……ちくしょう」

 

「ほら答えてやれよー」

 

「……まぁ、俺の嫁さんはニカラグア出身の美人だよ。

彼女自身は戦争とはあまり関係ない世界で生きてる、けど今はうちのツテでキューバにいる」

 

「そんなんじゃ全然わからないよぉー」

 

「勘弁してくれよ〜何でここで惚気話しなきゃいけないんだよぉ〜……」

 

「ほら、さっさと言ってやれよ」(⌒-⌒; )

 

「何爽やかな顔で言ってるんですか!ていうかなんであなたが仕切ってんですか!?」

 

「(^ν^)」

 

「ウザいですよ!!」

 

「あのルイさんが手玉に取られてる……」

 

「これが情報戦というものなのかな……」

 

「絶対違うわよ、名取」

 

今までからかう側だったルイが完全にからかわれている事に驚く長良と名取。

だが若干勘違いをこじらせている名取に五十鈴はツッコミを入れた。

もっとも五十鈴自身もここまでルイが戸惑っているのを初めて見るので新鮮ではあったが。

 

 

「おっと珍しいこともあるものだ〜、まさかこんなに魅力的な空間がこの世にあるとは。

いやいやっ生きてるって素晴らしいことだね」

 

「その目つきは止めてやれ、気味が悪いぞ」

 

「そちらが言うかい?」

 

「これ以上は有益ではない、か」

 

「わざわざ言う必要もないね」

 

そしてまたドアから人が入ってくる。

瞳は青く片方は白衣を着ている若い男、ルイより少し若いくらいか。

もう一方は……何というか特徴がない、フィーストもあまり見た目にこれといった特徴は無かったが彼の場合は見た目が青年である以外に一切特徴がない。

 

「……おっと、サイエンティストにネコのお出ましか」

 

「随分言うようになったね、ルイくん」

 

「お前に君呼ばわりされたかねぇよ」

 

「そうかい?」

 

「ああ、嫌だね」

 

「何をそんなに……いやそれを言うのは稀有ってやつか」

 

「……よくご存知でシェイさん」

 

「まあ少なくとも私はここで動くことはないから安心してほしい」

 

「へいへい……となると、問題は——」

 

「しっかし・・・見た目は本当に少女だね」

 

「あっあの?」

 

「うん恥ずかしがっているし脈も上がってる、さらに瞳孔の拡大もある」

 

「えーと……」

 

「おい、私らのことを初めて見るにしちゃ興味津々じゃねえか」

 

「そりゃ興味は湧き出るよ、君たちは極めて不思議の一言でまとめられている存在だからね」

 

「……ちょっと、変なこと考えて無いでしょうね?」

 

「変なこととは失礼な、ただ私は興味があるだけですよ」

 

「狂気の間違いじゃないの?」

 

「そうですかねー」

 

「この娘たちが怖がるからやめてくれる?」

 

「“この娘達”ですか、まぁそう思っても仕方ないのか」

 

「……キルゴア、これ以上その“好奇心”で動くな、それ以上は嫌われるぞ」

 

「…………それは確かに嫌だね、それは失礼しました」

 

ヤッコの言葉にキルゴアと呼ばれた男はマジマジと見る事を止めて高雄と摩耶に一礼する。

一方で高雄と摩耶はキルゴアという男の観察を始める。

見た目は青年という言葉が当てはまる、だが先ほどの言動と目つき・何より見た目白衣を着ている、以上のことから2人は彼をマッドサイエンティストだと結論付けるのに数秒とかからなかった。

 

「マーリンさん……あの人は?」

 

「ん、まぁうちの研究者、人の話は聞くだけまだマシだけど自分の世界にのめり込むと厄介なタイプ

まっ班長に選ばれるだけあって人としての器はあるけど……歪だねぇ」

 

「それって詰まるところ……“まっどさいえんてぃすと”っていうことですか?」

 

「よ よく知ってるね秋月ちゃん、その言葉」

 

「いえ、どこにでも似たような人は居るんだなと」

 

「………なるほどねぇ」

 

「ねえマーリンさん、私たちあの人のためにもう一回自己紹介した方が良いの?」

 

「白露ちゃんはどうしたいの?」

 

「嫌だ」

 

「じゃあ別に無理しなくて良いよー」

 

「……うん」

 

そう答えるとマーリンは駆逐艦の相手を再び始める。

だがさっきまでと違い、パッツィーはまるでキルゴアと彼女たちをあまり関わらせないようにする様彼と彼女たちの間に位置し動こうとしない。

 

「……キルゴア、どうやら少し手遅れみたいだ」

 

「みたいだね、まあ私としては別に構わないけれど」

 

「……君が構わなくても連携が取りにくくなってはダメだと思うが?」

 

「ドクは堅すぎだよ、君だって気にならないわけじゃ無いんでしょ?」

 

「……彼女たちに興味は尽きない、だが初見の相手 ましてや女性相手に詰め寄るのはどうなんだ」

 

「そんなんじゃ真実に辿り着けないでしょ」

 

「……とりあえず女性に詰め寄るのだけは止めたほうがいいと言っておこう」

 

「はいはぃ」

 

ドクの言葉に反省する気があるのか無いのか曖昧な返事をしつつ、お手上げだと言わんばかりに手をヒラヒラさせながら適当な場所に座る。

それが彼らなりの合図だったのか、キルゴアと同じ様に大きな机の周りに班長たちが座っていく。

 

椅子は全部で7席、左右にそれぞれ3つずつと上座(いわゆる誕生日席)に1つ

大きな机に対してあまりにも少なすぎるが、それは各員が様々な物を置いたりするためのスペースだ

しかし今回は誰も何も持ってきていないので無駄に広い。

そして空いている席は残り2つ、だが誰が座るのかは全員わかっていた。

 

「じゃあ私たちも適当に座ろっか、そこら辺にあるパイプ椅子だけど」

 

「まぁ立ってたい娘は立ってていいよ!」

 

「マーリン、この娘たちはゲストなのよ?」

 

「今後のための作戦会議にゲストも何も無いと思うけどねぇ」

 

「あらルイ、あなたは女性に対して配慮1つも出来ないの?」

 

「良いですよパッツィーさん、私たちも立ってますから」

 

「別に遠慮はいらないわよ?」

 

「別に配慮されなくたって私たちは疲れないわよ」

 

「五十鈴、それは言い過ぎ」

 

「けど長良もそう思ってんでしょ?」

 

「……まぁあなた達がそう言うなら私はどうこう言わないわ」

 

とりあえず班長以外は全員立つことになる。

そして随分と長かったやり取りのおかげで先ほどの集会から30分が経とうとしていた。

 

 

すると再び自動ドアが開く

 

そこには2人の男

 

1人は金髪でサングラスをかけ、肩に骸骨の様なものとMSFと書かれたロゴが入っている。

 

もう一方は全員よく知っている

 

眼帯をかけ、葉巻を好み、見た目は怖く何となく近寄りがたい雰囲気があるが話せば親しみやすい

 

その2人こそ

 

このMSFを成り立たせている土台と屋台である

 

 

「時間だ、戦術会議を初める、全員起立っ!」

 

先ほどまでの何となく気まずい雰囲気はどこかに去っていった

 

代わりになぜか緊張が走る

 

「BOSSに敬礼っ!!」

 

すると班長はもといルイやマーリン・パッツィーも敬礼する。

それに習い艦娘たちも入ってきた2人に対して一応の敬礼をする。

 

「まぁ休め、俺は何も出来なかったからな。

それにその敬礼は俺じゃなくこっちにしてやれ、それとお前たちまで俺に敬礼しなくて良い」

 

「んあ!?何で君たちまで敬礼してんの?!」

 

「……そこまで驚く要素は無いでしょうヤッコさん、けどとりあえずBOSSの言う通り皆まで敬礼しなくて良いよ」

 

「あっはい」

 

「なら時間が惜しい、済まないがこのまま始めるぞ」

 

そう金髪の方が言うと全員席に座る

 

「だがカズ、こいつらがお前の事を知らないままだと少し面倒だ」

 

「んん?……ああそうだな、なら簡単に俺の自己紹介だな。

俺の名前はカズヒラ・ミラーだ、ここで副司令として働いているビジネスマンだ」

 

『ビジネスマン?』

 

これには艦娘だけではなく、隊員達やスネークまで疑問を口に出す。

 

「……何だお前たち?俺はビジネスマンだろう」

 

「いや、恐らく副司令の言うビジネスマンに傭兵稼業は含まれているとは思えません」

 

「せめて頭に“スーパー”が付かなきゃ言葉負けしますよ」

 

「お前たち……」

 

「まあいじるのはそれまでにしてやれ、カズが言ってたみたいに時間が惜しい。早速だが戦術会議を始める、全員端末を出せ」

 

そう言うと机に計7台のiDroidが置かれ、そしてそれぞれが端末を起動させる。

 

《Strategy briefing system standby…………Members connect ready…………date rink construct to all terminal,project strategy imformation onto a screen.》

 

「……何ですかこれは」

 

「まあ驚くよね!まるでSF映画みたいだもんね!」

 

そして先程までただの金属製の机にあらゆる情報が表示される。

基地内の人員・装備の状況、基地の地図、周辺海域の3D海図、どこに誰がいるのかも表示されている

 

「さて、驚いているところ悪いが君たち艦娘にも関わってもらう。

早速だが既に島にある物資の搬入を開始した、必要な物以外は全て処分する、無駄に重くしたくないからな。それと人員や物資の搬入だが全てを6時間で終わらせ次第この島を放棄する」

 

『6時間!?』

 

「……出来るのか?」

 

「舐めないでくれスネーク、俺たちはそれくらいしか出来ることが無かったんだ。

すでに物資の積み込みは同時並行で始めさせている、各船の責任者と一緒に説明されながら動いてる

その間に俺達は戦術会議で今後の動向を決める、人員の割り振りも既に決まっている」

 

「け けど人だけじゃなくて戦車も運ぶんでしょう?たった6時間で搬入が終わるとはとても……」

 

「問題ない、それに関しては一切の心配はいらない。

俺たちは6時間で必要な物資と全員を乗せてこの島から移動する、それは決定事項だ」

 

「……まあ副司令がそこまで言うなら実現するんでしょうね。それで、“彼女たちに”話すこととは?」

 

「ああBOSSから話は聞いた、長良……という軽巡は誰だ?」

 

「私です」

 

手を挙げ、そう答えた長良をカズヒラはジッと見る。

見た目は小学生……いや中学生か、だが見た目通りの精神は持ち合わせて無いらしい。

でなければこの場で手を挙げられる訳がない、か。

 

「……まず君たちの全面的なバックアップ、それは受け入れよう」

 

「それは ありがとうございます」

 

「だが君たちの上司……まあ提督か、それに日本っていう国も俺たちの介入をあまり良くは思わないだろう、それに俺としても部下達を無駄に危険に晒すわけにもいかない、だから取り決めをしたい」

 

「取り決め、ですか」

 

「別に休戦協定じゃない、無論俺たちは自分の防衛には全力を尽くす。

だが支援となれば展開する武力や物資を制限しなければ資材は枯渇する、防衛もままならなくなる。

だからどういった状況下を想定しているのかを説明して欲しい」

 

「えっと………この輸送作戦と同時に西方海域に展開している空母機動部隊を援護して欲しいんです」

 

「西方海域……という事は俺たちが拠点を構えるラバウルより西側の海域が戦場だな」

 

そうカズヒラが言うと3Dマップが一気に西方海域に移動する。

もちろん上陸するラバウル島もマップ上に映っている。

 

「確か俺たちの輸送任務達成のために敵を惹きつける意味で出撃してるんだったな」

 

「そうなのかBOSS?」

 

「ああ、俺が聞いた情報に間違いがなければ敵の港湾施設と泊地がここで建設中らしい」

 

《Marker place,marker place.》

 

iDroidの機械音声が2つのマーカーをセットした事を知らせる。

マークされた場所は日本を発つ前日に見た海図に付けられた赤丸と全く同じ場所を指している

 

「……つまり、見事にラバウルが攻撃圏内と言う訳だ」

 

「そうだな、向こうの上の方もこいつらを脅威だと認定したらしい。

そこで俺たちの輸送任務と同時並行でこの2つの施設の破壊と敵の牽制に乗り出たらしい」

 

「…………だが、俺たちが出る幕はないんじゃないか?」

 

「いいえ、私はどうも嫌な予感がします」

 

「…………ほぅ、具体的には?」

 

「まず、この周辺海域は深海凄艦の勢力下です。

それなのにこの10日間で敵と接触したのは2日前の満月の時と今日島に来る途中で遭遇した計2回

だけ、2回とも数は圧倒的でしたがそれ以上に敵に遭わなすぎです」

 

「ただ出払ってるだけだったりしてな」

 

「そうですね、ヤッコさんの考えに間違えはないと思います」

 

「……こりゃあ冗談じゃなくなってきたな」

 

「ええ、あくまで私や他の娘とも話し合った結果ですがこの海域にいた深海凄艦が復旧中の港湾施設や再建中らしい泊地の防衛に回された可能性はあります。

それに……私たちの情報がすでに敵にばれている可能性があります」

 

「そりゃおっかないね、君たちは防諜って言葉を知ってるのかい?」

 

「それは……」

 

「キルゴア、からかうのは結構だがこいつらに護衛してもらう事を忘れてはいないだろうな?」

 

「……失礼しました、BOSS」

 

「わかればいい、続けてくれ長良」

 

「……はい、そしてばれているかもしれない情報として一番厄介なのは“連合艦隊が出撃した”という事実です」

 

「なぜ?むしろ囮なんだから派手に目立って好都合だと私は思うけど」

 

「まぁお前の言い方は癪に障って誰かぶん殴ってきてもおかしくねえが、俺もその通りだと思うな」

 

ヤッコが周りの視線を気にしながらそう発言する。

「……まぁ」などと間を作ってから発言していたら今頃自分の左にいる男は摩耶か五十鈴辺りの拳がキルゴアに降り注いでいただろう、だが彼が言ったことに嘘は無い、むしろ正論だ。

 

「ええ、ですがそれが襲撃前にバレていたら話は別です」

 

「……なるほど、だから他所からも味方を集めて防衛に回ったか」

 

「だとするとその連合艦隊は結構叩かれるね」

 

「そして俺たち輸送船団の存在は襲撃時点で認知されてる。

下手をすれば敵が上陸地点に雪崩れ込んで来る可能性がある……そういう事か」

 

「ですから支援を頼みたいんです、泊地や港湾施設といった陸上型の深海凄艦は完全に撃破するのに日数がかかります。その間に——」

 

「その間に俺たちはラバウルに拠点を構えて彼女たちの支援、まあ撤退を援護して欲しい、と?」

 

「はい」

 

「………わかった、元はといえばこっちが依頼したんだ、それ相応の働きをさせてもらうとしよう。

それに異論はあるか?」

 

「なし!」「無いね」「……無い」「ありませんっ」「妥当だ」

 

「BOSSは……と依頼を引き受けた張本人が断る理由が無いか」

 

「ああ、それに俺は動ければ何でもいい」

 

「……わかった、だが質問だ。

俺たちは支援するためにもすぐにラバウルに向けて出発した方がいい訳だ、だからこそ6時間で

終わらせるがそもそも移動に最短で5日はかかる、その間に向こうの作戦が終わる可能性もあるが、そこは考えているのか?」

 

「はい、作戦通りならまずは徹底的に復旧中の港湾施設を破壊したのち一旦海域を離脱しトラック島で補給、その後すぐに出撃し今度は泊地を潰す計画なので時間的には十分実行可能です」

 

「……まるでこちらが支援する前提が成り立ってたみたいだな」

 

「元々金剛さんや霧島さんを中心とした高速水上打撃部隊をラバウルで編成して支援艦隊として出撃することも視野に入れられてますから。

もっとも時間を置けば抵抗が激しくなるのは目に見えているので出来るなら連戦で撃破するでしょうが旗艦がどう判断するかによります。元から激しい抵抗は百の承知で少し無理してすぐ撤退という考えですので、予定より早く終わることはあんまり考えにくいかと」

 

「なるほどな」

 

それで一応納得いった。

それに自分たちはもちろん民間の輸送船をこっちは使わせてもらっている。

わざわざここまで来てくれた彼らを無下に扱い非情な形で彼らを祖国に返す気は無い。

 

とにかく動く事は今ここで決定的になった。

ならあとは出発するだけ・・・とはまだ行かなかった。

 

「…………お前たちの中には聞いてないやつもいるが2日前のデブリーフィングで言えなかったこと、覚えているか」

 

「えっと……私が80点しかもらえなかった事ですか?」

 

「ああそれだ」

 

「それならもう聞いてた人たちからみんな聞きました、さっき長良さんも説明してた事ですよね?」

 

「ああそうだな…………だが俺が言いたいのはあの時は言えなかった事だ」

 

「言えなかったこと……島に着いたら教えるって言ってた事ですか?」

 

「そうだ、その件だ」

 

 

そう言うとスネークは一旦間を置き全員の目を見る。

 

 

「覚悟は良いな?」そう説いていた、だが誰1人目をそらす事はなかった。

 

 

それを確認するとスネークは語り始める。

 

 

「この前吹雪がしていた説明や、いま長良が言った事には間違いがある」

 

「間違い……ですか?」

 

「ああ、言葉にズレがあると言った方が良いかもしれん」

 

「どういう事だボス?」

 

「ああ。俺は確かこう言ったハズだ「だが知れ渡っている“可能性”はある」とな」

 

「えっ・・・ええ、そうですね」

 

スネークの言葉を一言ずつ噛みしめるように聞いていた吹雪が頷く。

その時直接話を聞いていた五十鈴や名取たちもその言葉を思い出し、頷く。

 

「そして、長良もその話を聞いて“可能性がある”と言ったな?」

 

「・・・はい、スネークさんが一番最悪な状況を考えた時に一番厄介なのが全ての情報が相手に漏れている事だと聞きました」

 

「……まあ俺だけがそう思った訳じゃない、客観的な事実だ。

だが重要なのはそこじゃない、いま話した事は全部“可能性の話”だった」

 

「それは当然デショ?私たちにはfoundationがないんデスから」

 

「そいつは違う、これは全部“計画された事”いや“踊らされた”と言ったほうが良いか」

 

「・・・すまんスネーク、わかるように説明してくれ」

 

「良いか、敵からすれば恐らく俺たち、つまり輸送船団がやって来た事は“バレた”。

ましてや魚雷艇とはいえ輸送船なのに味方を全滅させるような輸送船団は予想外だろう」

 

「ええ、それは私も説明しました」

 

「ああそうだな。

だが“連合艦隊が自分たちの港湾施設や泊地を襲撃する”こと事態は向こうは想定済みだろう」

 

「Why? エネミーは偵察をされたんデスから警戒するのは当たり前デショ?」

 

「まぁそうだろうな、だが事前に港湾施設や泊地がバレる前提なら話は違う」

 

「……どういう事デス?」

 

「…………それは、内部にスパイがいると言いたいんですか?」

 

「まあ落ち着け霧島、それは違う……シェイ、お前ならわかってるんじゃないか?」

 

「ですがまだ憶測の域です……長良、と言いましたね?」

 

「え、はい」

 

「先ほど“復旧中の港湾施設”・“再建中の泊地”と言ってましたが、それはつまり一度破壊したところに再び出来たという事ですか?」

 

「はい、夏の大規模作戦で一度破壊したところの近くにまた施設が出来たんです」

 

「……地図を見る限り別働艦隊が破壊目的としている泊地と港湾施設は随分離れているように見えるのですが、この2つを同時期にどうやって見つけたのですか?」

 

「それは観測機が復旧中の港湾施設を見つけて、確認するべきだということで以前破壊した泊地を確認したところ再建中の泊地を偵察艦隊が肉眼で発見したみたいです」

 

「……なるほど、つまり罠ですか」

 

「そう言う事だ」

 

「えっ罠?」

 

「おいおい、そりゃ結構面倒な事になるじゃあねえか」

 

「確かにコレは厄介だねぇ、面倒だぁ」

 

「……どういう事デス?」

 

「……良いか、復旧中の港湾施設・再建中の泊地、どっちも艦隊を釣るための餌だって事だ」

 

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・えええええええええぇぇぇ!!?』

 

 

 

 

ほぼ全員の艦娘とマーリンが叫ぶ。

唯一、ルイからこのことを聞いていた高雄と摩耶はそう驚かなかったが改めて聞くと重大な局面を

迎えていることがよくわかる。

察しの良いパッツィーはシェイの言葉から大体わかった、続けてスネークが話す。

 

「ある程度の艦隊を差し向けさせるのが向こうの狙いだろう。実際、連合艦隊っていう大きな獲物が掛かった訳だ」

 

「それは……いつから、なぜわかったんですか?」

 

「提督から復旧中の港湾施設と秘匿泊地を発見した事を聞いた時からだ」

 

「それって日本を発つ前からってこと!?」

 

「ああ」

 

「ああって、あんた——」

 

「当然提督には言った、こいつはうまく出来すぎている。

タイミングが悪いのが気にくわないがわざわざ潜水艦だけで襲撃して来た。怪しいと思っらから偵察すると敵の中枢、確か深海凄艦からすれば巣にもなるんだったな?そいつが見つかった。

だが偶然にもまだ完成していない、なら今が破壊する絶好のチャンスだと思うのは当然だ」

 

「っ!」

 

その言葉に返す言葉が五十鈴には無かった。

自分たちはまんまと向こうの思惑通りに動いていたということ、そしてそれを見抜くことが出来なかったこと、それが何より気に食わなかった。

だが思うことは皆同じらしく、言い返せる者が言い返す。

 

「…………But,それだけじゃevidenceになりまセン、あくまで推測の域を出ないデース」

 

「まあ確かにそう思うだろうな、だが掛け値無しにこいつは罠だ」

 

「…………どうしてデス」

 

「そもそも横須賀鎮守府が潜水艦の襲撃を受けた、これ自体不自然だ」

 

「どうしてでしょう?私たちの中枢に奇襲をかけてくる事は不自然では無いのでは?」

 

霧島の疑問に艦娘全員が頷く。

確かに今まで潜水艦だけの襲撃を受けた事は無い、だが鎮守府そのものの奇襲自体は最初は珍しい事でも無かった、今でこそ周辺海域を定期的に掃討しているため奇襲を受ける頻度は減ったが全くない訳では無い。

 

「……他もそう思うか?」

 

「はい、霧島さんが言った通り襲撃を受けること自体に不自然な点は無さそうですが……」

 

「じゃあ聞くが、復旧作業中の港湾施設と隠しながら再建してる泊地がある状況でわざわざ敵を刺激して一体何の得があるんだ」

 

『!!!』

 

「普通なら無いだろう………隠したいものを見せびらかしたいなら別だろうが」

 

そう、別に潜水艦が襲撃してくること自体は別に問題ではない。

だが出来るだけ隠しておきたいものを作っている時に仕掛けるとなると本来ならデメリットしかない

敵が警戒レベルを上げるのはもちろん、こちらの手の内を知ろうと多かれ少なかれ動くことになる

それに攻撃パターンが変わってきたら何か変わったことをしようとしているとそれなりに頭が回る人間なら察し、何らかの対策を打ってくる。

彼らの馬鹿ではない、先ほども周りを囲い込むという戦術を取ってきた。

そんな戦術を取れるのばかりでは無いだろうが、それだけ頭が回るならリスクがあるのにわざわざ執拗に全滅してまで攻撃してき来ない。

 

「さっきの彼女が言ってた通りだとすれば、まず夏に破壊した港湾施設がまだ復旧してないのも気になりますね、わざわざ復旧作業が3ヶ月で可能な作業ならほぼ罠で間違いないでしょう」

 

「さらに言えば何故復旧が完了していないのかも重要だがな」

 

「何か心当たりがあるのか?」

 

「ルイ、説明してやれ」

 

「……何で俺が?」

 

「良いから言えっ」

 

「…………わかりました、副司令やここにいる班長たちにこの場で報告させて貰いますが艦娘が現れた方法は知る由も無いです、が 少なくとも海から発生したと考えられます。また、彼女たちの装備は各鎮守府の工廠で生産が可能です。ならあの深海凄艦も海から生まれてくるって考えれば装備開発みたく艦船を作るのも不可能じゃ無いと考えるのが妥当です」

 

「へぇ武装は作れるんだ」

 

「最も作り方は不明ですがね、それでも摩訶不思議な製造方法でもそれ相応の資材は消費してます。

深海凄艦が生まれるにもそれ相応の資材が消費されているとすれば」

 

「……資材を施設を復旧させるよりも重要な何かに回してた、か?」

 

「そう俺は考えます、可能性に関しては艦娘から証言は取ってます」

 

「もっともそれだけでは否定しきれない程度の確証です」

 

「……詰めが甘いのは重々承知してますよ、シェイさん」

 

「だが何かしら向こうは意図してる、それは確実だろう」

 

そうスネークが言うと一旦全員黙る、自分たちは見事に敵に一杯食われた訳だ。

そしてそれはある程度向こうの思惑通り運んでいる。

 

「・・・だったらこっちも派手に動きますか」

「私は君たちも気になるけど深海凄艦もとても気になる」

「……怪我人の手当てが増えるかね」

「腹は減ってりゃ戦は出来んでしょう、俺らも仕事が増えるねぇ」

「それを言うなら腹が減っては戦はできぬ、でしょう」

 

「…………ならなおさら、ですね。

私たちはあなた達をラバウルまで護衛します、その代わりと言うのが正しいかわかりませんが私たちの仲間を援護して欲しいです」

 

「……どうするんだ、カズ?」

 

「…………もちろん俺たちは傭兵だ、見返りが俺たちの命ならこっちも全力で答えよう。

俺たちMSFは今日をもって艦娘の全面的バックアップに当たる!異論はあるか!?」

 

『無し』

 

「なら予定通り6時間後、23:00に完全に島を放棄する、ヤッコ」

 

「武器・弾薬は予備も含めて各員に持たせてます、兵器の搬入と爆薬の設置も進行中です」

 

「キルゴア」

 

「戦車と装甲車はほとんどバラしてありますよ、後は搬入だけです、固定銃座とレーダーの取り付けが終わり次第何でもやりますよ」

 

「ドク」

 

「……医薬品と衛生兵・医師の配置は決めてあります、基本的にキャッチャーに医療船の機能を持つようにしました、医療機器もそこに」

 

「フィースト」

 

「余ってる人員はとにかく食料運ぶのを手伝ってくれ。

それとここでの最後の食事を作ってます、あと2時間で出来上がるから暇になったら取りに来てくれ」

 

「シェイ」

 

「情報を処理と最短のルートを策定中、偵察状況に変化無し、何かあったら報告します」

 

「なら解散だ、全員行け!」

 

そう言うと5人は立ち上がりスネークとカズヒラに敬礼すると自動ドアの奥に走って行った。

あとは歯車を回すのみ、時間内に島を“完全に放棄する”ために動き出す。

 

 

 

 

 

♦︎♢♦︎♢♦︎♢

 

 

 

 

 

「……マーリン、パッツィー」

 

「なに?」

「何かしら?」

 

「彼女達の警護頼むわ」

 

『……了解』

 

「ミラー副司令、彼女達に他に何かありますか?」

 

「今は無いな、とにかく今は時間との勝負になる。聞きたいことがあれば航海中にしつこく聞く」

 

「了解ですっならキャッチャーに戻させます」

 

「わかった」

 

「ああちょっと待て、シールと一緒に戻ってくれ」

 

「?何故です」

 

「あいつは今外にいるだろう、送り迎えにボートは不可欠だろう?」

 

「……そういえばそうでしたね」

 

「艦長とはもう少し話があるがすぐに返す、それまでに物資の搬入が始めるだろう」

 

「あの、私たちも補給を受けたいのですが」

 

「……補給?今も言ったがすぐにキャッチャーに物資は——」

 

「カズ、忘れてるかもしれんが彼女たちは“艦娘”だ」

 

「・・・そうか、燃料と弾薬の補給か」

 

「あと出来ればボーキサイトと鋼材もあれば良いんですが……」

 

「だがいくらここでも20.3cm砲や12.7cm砲の弾薬は無いぞ?」

 

「そうだな、7.7mmや12.7mmならまだあるが……まあ燃料の補給はこちらで用意しよう、だが鋼材とボーキサイトは何に使うんだ?」

 

「消費した艦載機の補給と損傷した白露の応急処置に使います」

 

「艦載機の補給は出来るのか?」

 

「ボーキサイトさえあればこの子たちが作ってくれるから」

 

そう言って最上が手のひらをヒョイっと持ち上げる。

そこにはこの子たち……もとい妖精が工具を持って腕を組んでいるのが彼女たちには見えるのだが

あいにくスネーク達には見えn

 

 

 

「ほーこんな小さいのも居るのか」

 

 

 

!?

 

 

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?』

 

 

 

「んーこんな小さいのに何か出来るのか?……ほー弾薬の装填に手旗信号、ダメコンに艦内清掃?

それを1人でか?……おお、こんなに居るのか」

 

1人で

 

最上の手に

 

女の子(?)の手に話しかける

 

MSF副司令カズヒラ・ ミラー

 

〔…………これは…………もしかして〕

 

〔……ええ…………もしかするとそう言うことかと〕

 

〔…………僕はいつまでこうすれば…………〕

 

〔スネークさんは………見えて無いみたいですけど〕

 

〔あの人はそれ以上ってこと!?〕

 

ザワつく艦娘たち

 

「マジか……いやあり得る話だけどさぁ」

 

「本当ね、まさか副司令が……いや副司令だからこそかしら」

 

「何でBOSSには見えないんだろうね?」

 

そして納得する隊員たち

 

ここに班長たちがいたらこぞって笑い話にしていただろう

 

「…………なあカズ」

 

「ん?どうしたスネーク」

 

「……お前、妖精が見えるのか」

 

「妖精?この小さいのは妖精なのか?」

 

「・・・あぁ」

 

そしてスネークは久しぶりに溜息を吐いた

 

もっともカズヒラは肯定してくれたと思ったらしく「ほぉ〜」と声を出している

 

…………何も無い最上の手のひらに対して

 

手を懐に入れ葉巻を取り出す・・・そう思ったがここは禁煙だったと思いだし止める

 

そして・・・・・・覚悟を決めた

 

「…………カズ」

 

「どうしたスネーク?」

 

「……その……言いにくいんだが」

 

「何だ今さら、俺とあんたとの間柄じゃあないか。一体どうしたって言うんだ?」

 

「…………そうだな、なら言わせてもらう」

 

「……何だ?」

 

スネークの様子からただ事では無いと察したカズヒラはスネークに顔を向ける

 

……まあ確かにただ事では無いのだが

 

「…………カズ、落ち着いて聞いてくれ、お前に関する事だ」

 

「ああ」

 

 

この日、その場にいた全員が青天の霹靂に見舞われた

 

しかしそれは地下100mで半年以上生き延びた隊員達がいた事では無い

 

実はルイに婚約者がいた事でも無い

 

たった6時間で全てを乗せきって島から撤退する事でも無い

 

味方が未だ全貌が分からない敵の罠に掛かろうとしている事実でも無い

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………………………………お前は、変人だ」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここに類い稀なる変人がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

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