オレは声の主に会いに行く   作:ほったいもいづんな

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今回、祝歌の設定を垂れ流してますが、もし表現が違うとかそういう時に使わない! と思った箇所がありましたら、迷わずコメントしていってください。


5日目の真実

 10話

 

 

 

 

 結果から言おう、祝歌は「闇の書」と対話出来なかった。 何度訴えかけても一度たりとも『声』を発さなかった。 祝歌は寝る間も惜しんで、食事も摂らないで挑んだ挑戦は無駄に終わってしまった。

 

 場所は病院の屋上。 表情に疲れが見える祝歌の前に立つのはシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。 騎士達は祝歌の様子を見て理解する、失敗した、と。 そして明らかに無理をしたのも見てとれる。 心配そうに祝歌を見ていた。

 

「ごめん……皆さん……俺……」

「何も言うな。 元々無理のある話だったのだろう、気にやむな」

 

 優しく言葉を投げかけるシグナム。 彼女は祝歌の頑張りを素直に受け止め、感謝していた。

 

「……返しますね」

「ああ……」

 

 何も言葉が出ない祝歌は約束通り本を返す。 その時だった。

 

『ごめんなさい……』

「!!」

 

 はやてが倒れた時と同じ言葉を「闇の書」は言う。 何故今になってそんな言葉を発するのか? 何に対する謝罪なのか? だが「闇の書」は謝るだけで何も口にしない。

 

「……ふざけんな……」

「祝歌……?」

「ふざけんな……チクショウ……!」

 

 だがその言葉は祝歌にとって燻っていた気持ちに火をつけるだけだった。

 

「謝るくらいなら『言葉』にするなよ!」

「お、おい、どうした祝歌?」

「希望を与えるくらいなら黙っていろよ! 『言葉』にするなら……ッ……!」

 

 祝歌は「闇の書」を掴んで叫び続ける。 怒りの『言葉』? それとも悲しみの『言葉』? 祝歌自身でさえ理解出来ない。 こんなにも感情を露わにしたのが初めてだから。

 

「『言葉』にするなら……みんなを笑顔にしてくれよ…………」

「祝歌…………」

 

 祝歌は本を持ったままその場に崩れる。 それを見ていた騎士達の心が痛む。 祝歌の悲痛な叫びは騎士達の心に直接届いていた。 祝歌の願い、真に思いやる優しい心、騎士達の心にまで届く。

 

「祝歌、お前は本当に優しい心を持っている。 我が主と同じだ。 お前は頑張った、もうそれでいい」

 

 シグナムは本心を祝歌に伝える。 それはシグナムだけではなく、騎士達全員の思いであった。 それは祝歌も重々理解していた。 だからこそ何も出来なかった自分が悔しくて堪らないのだ。

 

 そんな祝歌をあざ笑うようにーーーー

 

『いけない!』

「え……ーーーー」

 

 鮮血が祝歌の口から現れる。

 

「ーーあ?」

 

 口元を手で拭う。 その手は血で彩られている。

 

「あ、あ……あぁ……」

 

 そして何か納得したのか、一人冷静に血で濡れた手を見ている。

 

「おい祝歌! どうした!?」

「いやぁ……『忘れてた(・・・・)』……」

 

 言い終わるやいなや、まるで壊れた水道管のように全身から血を吹き出す。

 

『祝歌!!』

「……久しぶりだな……これも……」

 

 祝歌は突っ伏すように倒れる。

 

「まずいシャマル!!」

「いや、待って……」

「待てるか! 今のお前がどうなっているか……!」

「そうじゃなくてさ……誰でもいいから俺の荷物の中から……薬だしてくれないか……」

「薬……?」

 

『薬』、それは祝歌が度々服用していた薬。 それだと気付いたシャマルが祝歌の荷物からそれを取り出す。

 

「何粒でもいいや……いや、2粒でいいや。 飲まさせてくれないか……」

 

 シャマルは急ぎながら錠剤を取り出し、一緒に入っていた水と一緒に祝歌に飲ませる。

 

「……ふぅ」

 

 すると祝歌の出血は収まり、血が吹き出すことはなくなった。 だが一度出血した部分からは未だ血が流れている。 祝歌は落ち着いたのか、それとも薬の効果のせいなのか、眠りにつく。

 

「ちょっ! 祝歌さん!?」

「ヴィータ、誰か医師を連れてこい!」

「お、おう!」

「シャマルは医師が来るまで治療してやれ」

「は、はい!」

「ザフィーラは主の元へ戻っておけ。 魔導士の攻撃の可能性もなくはない」

「了解した」

 

 流石はヴォルケンの将、すぐに行動を支持し混乱しないよう役目を与える。 そしてシグナムは心配そうに眠っている祝歌を見た。

 

「祝歌……お前に一体何が……」

 

 それからヴィータが医師を連れてきたのは数分後のこと。 シャマルの治療のお陰で出血は完全に止まったが、あまりに異様な事態に祝歌はそのまま病院のベッドに寝かされる。

 

 目を覚ましたのは夜の11時のことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 暗闇の世界。

 

 そこは光も差し込まない影の世界。 周りはおろか自分自身の姿すら見ることが困難な世界。 そんな世界に一人、独りになることを望んでそこにいる者がいた。

 

『不ノ九是 祝歌、済まない……貴方のその身体にある『異常』を私は知っていた……だが一度声をかけてしまえば、きった新たな希望だと勘違いしてしまう……』

 

 その者は、この無の空間には似つかわしくない美しく、儚げな女性だった。

 

『全ては私のせい……なのに貴方は自分の身体のことを忘れ、主のために、騎士達のために、私に『声』をかけてくれた』

 

 この女性は何故祝歌に謝るのか。 何もかも『仕方のないこと』なのに。

 

『あぁ……もう1日2日もすれば……『私が暴走』してしまう……。 そうなれば全てを闇に返さねばならぬ』

 

 懺悔するように言葉を漏らす。 懺悔する先は一体誰?

 

『祝歌よ……願わくば我が主……『◾︎◾︎の主』と同じように、『優しい夢』を見てくれ……』

 

 神など存在するはずもない暗闇の世界で、女性は一人祈る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祝歌が目を覚ました。 祝歌は何故自分が病院のベッドで寝ているのか一瞬分からなかったが、すぐに自分に起きた出来事を思い出す。

 

「はぁ……やっちまった。 うっかり忘れるなんて……」

 

 顔に手を当てて後悔する。 別に飲まず食わずでいたことにでは無い。 いくら時間がないとはいえ大事な『薬』を飲むのを忘れたことに後悔していた。

 

「起きたか」

 

 そんな祝歌に声をかけるのはシグナム。

 

「シグナムさん……」

「ちょっと待ってろ、皆を呼んでくる」

 

 どうやら外で待機していた他の騎士達も病室に入る。 揃って神妙な顔つきをしている。

 

「あ……っと……」

 

 そんなヴォルケン達を見て察したのか、どこかバツが悪そうに祝歌が質問をする。

 

「もしかして……俺のこと……知っちゃった……の?」

『うん』

「で、ですよ……ねぇ……」

 

 祝歌は知らないが、病院側が祝歌の容体を確認し、身体の隅々まで検査を終えている。 もちろんその結果と祝歌の状態を騎士達は聞かされている。

 

「医師から聞いたぞ、『難病』……らしいな」

「あっちゃー……」

「あっちゃー、じゃねぇぞ祝歌! 何でそんなんなのに無理したんだよ!」

 

 食ってかかるのはヴィータ。 よく見ると目元が赤く腫れている。 連れてつい先ほどまで泣いていたのだろう。

 

「こっちはなぁ……! めちゃめちゃ心配したんだぞ!?」

「ヴィータちゃん……ごめん……」

 

 祝歌は優しくヴィータの頭を撫でる。 そして少し考えたあと、皆に向かって言う。

 

「教えます、俺のこと全て。 でもはやてちゃんには黙っていてください」

 

 全員無言で首を縦に降る。 今不安定なはやてに祝歌の身に起きている『震えるほどの事実』を話しては、かえってはやての負担になる。 そう予め話し合っていた。

 

「どこから話そうかな……」

 

 

 

 

 祝歌は生まれた時から『奇妙な異変』が身体で起きていた。 それは、突然心臓が破裂するくらいに高速で動き、全身の血管が切れるほど激しい勢いで血が流れる。 まるでアレルギー反応のように急に起こるソレは、治す手立ても見つからず、医師達からは『難病』と言い渡された。 唯一の手段はその症状を抑えるための一時しのぎの『薬』だけだった。

 

 当時の医師達は決して無力な訳ではなかった。 彼らの作り出した薬が、今になっても最も有効な手立てなのだ。 その薬を服用すれば、まるで毒を飲んだように鼓動が小さくなっていき、症状が発生してもその影響で激しく動くことはない。

 

 もちろん副作用はあった。

 

 毒のようなその薬は、心臓だけでなく脳にまで影響を及ぼし、脳の一部は半日は機能を停止させる。 その影響で五感のうちの味覚、嗅覚、触覚が機能しなくなる。 そしてそのような事を何年も繰り返せば、祝歌の寿命を縮めることになる。

 

 いつ発生するのか分からず、幼少の頃から外に出たことは無く、同年代の友達もおらず、常に孤独を感じていた。 彼の両親は祝歌を大事に思っていたが、自分達の無力さに常に打ちひしがれていた。

 

 そして祝歌が能力に目覚めたのは、そんな両親を見てきたからである。 いつの日からか、祝歌は人間以外の『声』を聞くことが出来るようになっていた。 その能力を使ってモノや動物達と心を通わせた結果、祝歌は精神的に大きな成長を果たした。

 

 そして今年の春、祝歌は長年聞いてきた「闇の書」の『声』を確かめる為に旅に出ることにした。 両親は反対しなかった。 何故なら、『今年で精一杯』と医師から聞いていたからだ。 両親は大粒の涙を流しながら祝歌の旅路を祈った。

 

 数ヶ月もの間、薬を飲みながら旅をしていた祝歌。 そしてとうとうこの町にたどり着いたのは……今から4日ほど前のことであった。

 

 

 

 

「……これが俺の全部、かな」

 

 話し終えた祝歌は、自分の話を聞いて複雑な表情をしている騎士達を見て、少し困ったように笑う。

 

「はは……そういう……反応になるよね」

 

 騎士達は言葉を失っている。 何故なら、今目の前にいるのは、いつ死んでもおかしくない人間だからだ。 そんな人物が、自分達を、自分達の主を助けようとしていた。 己の命を投げ打って。 そんな祝歌の事が不思議で堪らなかった。

 

「お前……何で死にそうなのにあたし達の為に……」

 

 ヴィータの漏らした疑問は最もだった。 何故危険を冒してまでここに来たのか? 何故残りわずかな命を自分達のために費やすのか?

 

「あぁ……そうだなぁ……」

 

 祝歌は考える。 思えば自分でも不思議なくらい理由がよく分からない。 何かに導かれるままにたどり着いたと言ってもおかしくないからだ。 そんな中で祝歌は揺るぎない本音を言う。

 

「少なくとも、俺は後悔なんてしてない。 だってみんなと出会えたから」

『!』

 

 嘘ではない。 今まで家から一歩も出たことのない祝歌が出会ったのは、誰も彼も優しい心の持ち主。 死ぬ前にそんな人達に出会えたのは本当に良き事であると祝歌は思っている。

 

「我々も、同じ思いだ」

 

 騎士達も祝歌に出会えて良かったとこの時思った。 自分達の主と同じ心を持った祝歌という人間に出会えたのは、今まで道具のように生きてきた自分達にとって、第二の救いとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 だが、刻一刻と、世界のバランスは崩れていっている。

 

「闇の書」暴走まで、あと2日。

 

 

 

 

 

 




ようやく明かされました祝歌の秘密。 でもまだまだ「闇の書」は暴走してないからどうなるんでしょうね?(他人事)

次回はゴールデンウィークがありますのでゴールデンウィーク終わってからですね。 サボりたい。(屑)

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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