11話
「見つけたぁぁぁ!!」
そう叫ぶのは一人の少年。 地球に災いの種となりえるロストロギアを海鳴に落としてしまうも、持ち前の正義感に共感し共に戦ってくれた何人かの仲間によって何事もなく終わらせることができた。 その結果ロストロギアは遥かどこかへ消えてしまった。 そして今は「闇の書」の秘密を知るべく『無限書庫』と呼ばれる、この世のあらゆる知識が収められている場所にて調べていた。
「これを解読して……あぁでも早く地球に戻らなきゃ……」
少年の名前はユーノ・スクライア。 始まりの出会いを作った少年だ。 彼は管理局の推薦で無限書庫に案内され、その持ち前の能力で無限書庫を洗いざらい調べ上げた。 ここに来たのはほんの数日前だが、誰よりも無限書庫を理解し、管理局よりも理解を深めた。 もはや数十年に一度の才能の持ち主。 彼ならばいつの日か無限書庫の全てを暴いてもなんら不思議ではない。
だが、今の目的はそうではない。 地球で待っている大切な仲間のために一刻も早く向かわねばならない。
「待っててねみんな、なのは!」
ユーノの手には「闇の書」の事が記された本が握られている。 そこには間違いなく、「闇の書」の秘密が書かれているのだろう。
ユーノ・スクライア、地球に到着するのは明日。
ところ変わって地球の海鳴。 この町に一人の少年が人知れず到着した。
「ふむ……まだ大丈夫か……いや、明日には間違いなく……」
少年は身丈に合わない大きなマントを身に付け、付属しているフードを深く被っている。 少年はどこかの建物の屋上に立っている。 少年の姿ははたから見れば異様だが、下の道路を行く人々や、空を羽ばたく鳥でさえも誰も気付かない。 まるで視覚から消えているかのように……
「どこに潜伏しているか……ーー!」
だが、接近してくる存在が一つ。 それに気付いた少年は一瞬身構えるも、その正体に気付き警戒を解く。
「おぉ? あっれぇ……おかしいねぇ……?」
オレンジの髪をたなびかせながら現れた女性。 いや、使い魔と言った方が正しい。
「確かに匂いがしたんだけど……クンクン」
言いながら鼻を鳴らす姿はまるで犬そのもの。 それもそのはず、彼女はフェイトの使い魔のアルフ。 今は隠しているが頭には犬耳があり、嗅覚は犬並みにある。 そんな彼女が少年から僅かに漂う匂いを察知し、ここまで飛んできたのだろう。
「隠れてないで出てきな、別に取って食うわけじゃないしさ」
少年はアルフ以外に誰かいないかを確認し、彼女だけだと認識するとフードを外し話しかける。
「……よく分かったな」
「ドワァ!? イキナリ現れないでおくれ!」
フードを外しただけなのに何故アルフは驚いたのか? それは少年の身に付けている特殊なマントにある。
「このマントを身に付け、フードをしっかり被るとこの世界から認識されなくなるんだ」
そう、それは少年や少年と同じような存在のみ手にする事を許される特殊なマント。 その技術はもはや『世界の常識を超えている』と言っても何ら遜色もない。
「はぁ……まぁたビックリアイテムかい……」
「……それよりも一体何のようだ?」
「あたしからして見れば、『一体何が起こるんだい?』」
「質問を質問で返すんじゃない……はぁ……」
少年は仕方なしと言った様子で話す。 話さなければアルフが何をしでかすか分からないからだ。
「……今、この町で起きている事件を言ってみろ」
「お? 話してくれるんだね?……えっと、確か「闇の書」の守護騎士って連中が魔力を蒐集しているやつだろ?」
「そうだ」
「……まさかあんた達に何か関係があるとかは……」
「絶対にそれはない」
「キッパリ言うね……まぁそう言ってくれるのは嬉しいけどさ」
アルフは胸を撫で下ろす。 何せ自分の主の親友の想い人が目の前の少年なのだ。 もしこれで少年が悪事に加担していると聞けば卒倒してしまうかもしれない。
「……? ちょい待ちアンタ」
しかし、少年の言葉を思い返しながらあることに気付く。
「アンタが今このタイミングで来るってことは……『「闇の書」が何らかの影響をこの町に及ぼす』って事態になるってことかい!?」
「……」
少年は本来なら『何も行ってはいけない』存在だ。 その彼が、わざわざ違う宇宙からこの町に戻ってきたのだ。 アルフは気付く、『もしやコイツが出張らないといけない事態が起こってしまう……!?』 と。
「アンタは前に言っていたね、本来起こるはずの事が起こらないから自分が来た、と。 なら今までは割りかし予定通りだったけど、今日明日には『起こるはずもない事態になる』可能性があるってことだよね?」
「……すまないが何も言えん」
「……アンタんとこの事情ってわけかい」
少年は何も答えない。 そう、『答えないだけ』である。 少年は一つ、わざとらしく咳払いをし、アルフとは逆の方向に向き突然喋り出す。
「んっん! あー……あー……」
「……??」
「……お、俺が今身に付けているマントのお陰でフードさえ被っていれば誰にも認識されなくなる!」
「???」
突然の少年の奇行に疑問符しか浮かばないアルフ。 少年は恥ずかしそうに顔を赤らめながら『独り言』を続ける。
「あー! でも久しぶりにこの町に来たから、つい物思いに耽ってしまうだろうなぁー! もしフードが外れても気付かないだろうなぁ!!」
半ばヤケクソの様に聞こえる独り言は少年の羞恥心の現れだろう。 何だかちょっぴり少年の事が可愛く見えてきたアルフだった。
「……明日には「闇の書」が暴走する」
「!?」
「だがそれだけならば何も問題はない……だが、もしそこでなのはに何かあるのならば……」
少年は固く拳を握りしめながら言う。
「『なのはは俺が守る』、必ずな」
「……アンタ」
アルフは何かを言おうとして、それを止める。 代わりに少年と同じ様に『独り言』を呟く。
「……あー、あたしってご飯食べると大抵のことは忘れちまうんだよねぇ。 もし誰かに会っていたとしても、このあとすぐにご飯だから忘れちまうだろうね」
「……すまないな」
「全部独り言さ」
そう言ってアルフは飛び去る。 もちろん魔法によって一般人からは視認されない。 アルフが去り、残された少年は再びフードを深く被る。
「……要らぬ知恵を『あいつら』から学んでしまったな……」
少年は先ほどの自分の行動を思い返しながら反省する。
「……だが、本当に今の世界はおかしい。 今になって出現した『オリ主』、バラバラになった時系列、本当に独立した世界になってしまった」
少年は屋上から屋上へと飛んで移動する。 魔法を使わず、特殊な能力も使わず己の力のみで跳躍する。
「もしやズレにズレた世界がここに来て一気に崩壊し始めた……? ならば修復するには……」
少年はそこまで考えて足を止める。
「まずは「闇の書事件」を筋書き通りにとは言わないが主軸をずらさずに終える必要がある」
少年は海鳴全体を見渡しながら決意する。
「そのためにも、『たとえ俺という存在が消滅する可能性』があったとしても、この町を……なのはを守る……!」
少年ーー『
次々と海鳴に集結するメンバー。 刻一刻と迫る「闇の書」の暴走。 そんなことはつゆ知らず、祝歌は自分も入院してしまったことをはやてに話していた。
「ははっ、ちょっと血を吐いちゃって」
「笑いながら言うことじゃないですよね!?」
「でもこれでしばらくははやてちゃんとお話ができるよ?」
「はよう治してください!」
祝歌ははやてに決して自分の身体の異変を伝えなかった。 はやてには笑顔でいてもらいたい、そう思っていた。 だが、そんな小さな希望も明日には砕けてしまう運命だった……
次は7日目、セミ的には最後の日ですね。
7日間しか生きれないのはセミだけ? それとも……
果たして8日目を迎えられるのか。
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。