そして相も変わらず苦手な戦闘描写、突然長くなる話……
何せここからが本番(これまでもこれからも手抜き)です!
12話
12月の24日、今日はクリスマスイブと呼ばれる日である。 道行く人は皆、このめでたい日を喜び楽しむ。 だが、この寒空の中で一般人には見えない戦いが繰り広げられていた。
片方は己が主人の命を救うため、もう片方はそんな彼らを救うため、意地と意地のぶつかり合いをしていた。 幾度となく放たれる閃光、様々な色を映し出しては異なる色とぶつかり合い消えていく。 まさに激戦、彼女達を止めることなど容易ではない。
「……」
祝歌はそれをずっと聞いていた。 耳を塞ごうとしても、祝歌の耳には必ず届いてしまう。 たとえ音が全く発生しない空間だとしてもだ。
「……はやてちゃんの所に行こう」
それはただの気晴らし、気を紛らわせるため。 そしてはやての事が純粋に心配だからだ。 シグナムから時間は余りないと聞かされ、いつはやての身に何が起こるか分からない。 もしものために自分だけでも側にいないといけない、そう思った。
「はやてちゃーーはやてちゃん!?」
はやての病室を訪れた祝歌は異様な光景を目の当たりにする。 寝ているはやてを囲うように魔法陣が形成されているからだ。
「これって……魔法……ってやつなのか……?」
初めて目の当たりにする魔法を前にたじろぐ祝歌。
「は、はやてちゃん!? 消えた!?」
そして魔法陣の中で突如消えるはやて。 はやてが消えた後、自然と消滅する魔法陣。 一瞬の間に色んな事が起こり、固まってしまう祝歌。
「……どうなってんだ……!?」
『ーーやめろぉぉぉぉ!!』
「ッ! 誰かの声!?」
今度は『声』が祝歌に届く。 悲痛な叫びが祝歌に伝わる。
「外……? クソ、何が起こっているんだ!」
思わず舌打ちをしてしまいそうになるほど、情報処理し切れない事態が立て続けに起こる。 祝歌は病室から飛び出し、病院の屋上を目指す。
「空の方から聞こえた……まさかみんなに何かが!?」
先ほどの、胸を貫かれるような悲鳴に嫌な予感が頭を埋め尽くす。 無事でいて欲しい、そう願いながら祝歌が屋上に到達すると……
「どういう……ことだ……!?」
上空、何度も対話を試みた「闇の書」が空に浮いており、開かれたページからおぞましい触手が生え、それらがヴォルケン達を『串刺し』にしている。 ダランと力をなくしたその姿は、まるで死んでいるように見える。 そして「闇の書」の背後には、先ほど消えたはやてが横たわった状態で浮いている。
「みんな……」
触手が突き刺さった彼女らの姿は、余りに悲惨で目を背けたくなるほど無残な姿をしている。
「頼む……答えてくれ!!」
だが、騎士達は答えない。 代わりに答えるのは……
「……えっ!? 祝歌さん!?」
「何で祝歌さんがここに!?」
「ちょっと……誰さあの男は、結界張ってんのにどうやって……」
「オイオイオイオイ、やっぱり来てしまうのか」
少し離れた所の建物の屋上にいるなのは、フェイト、アルフ、そして心悟であった。 もちろん祝歌は騎士達が戦っていた相手が彼女達だと知らなかったし、なのは達は祝歌の探し物が「闇の書」だとは知らない。 アルフに至っては祝歌をそもそも知らない。
「……ん? なのはちゃん……? もしかしてシグナムさん達が戦っていたのって……」
などと少し思考がブレている時、「闇の書」は貫いた騎士達をその身に吸収する。 まるで掃除機のように吸い込む。
「……何だ……吸収……いや、まるで戻った……のか……?」
祝歌の能力は何故か「闇の書」に通用しない。 故に何故このような事をしてるか理解出来ない。
「……ちょっと待て、みんなを返せよ……はやてちゃんの家族を返してくれよ!」
祝歌の叫びも「闇の書」には何の意味もない。 書は寝ているはやてを闇で包む。 自身も一緒に。 まるで一つになるために……
「……来る!」
心悟は思わず声に出す。 その瞬間、球体状になっていた闇から、一人の女性が現れる。
『……ッ!!』
現れたのは白銀の髪に透き通るような肌、見る者の目を全て奪うほどの美しさと儚さは、先ほどの禍々しい闇から現れたとは到底思えない。
「……」
「気をつけてくれよ……ここからが本番だ……!」
心悟の言葉になのは達は臨戦モードに入る。 詳しい事情を知らない彼女達でも、今現れた女性がこちらに友好的ではないと本能で察する。
「……」
「……?」
「誰かを……探している?」
だが女性はなのは達の方を見向きもしない。 首を動かし、何かを探している素振りを見せる。
「……?」
そして見つける……祝歌を。
「祝歌さん!」
「行かなきゃ!」
「待て! 落ち着け! この場で戦う意思がないのは祝歌さんだけだ、流石にやつはそれに気付いている。 もし君らが行けば、逆に祝歌さんが巻き込まれる可能性がある!」
二人を制止させる心悟。 彼にとってこの場の一番のイレギュラーは祝歌。 今動けば何が起こっても不思議じゃない、なのはとフェイトを守るため祝歌を助けに行くことは彼にはできないのだ。
「……」
「……あなたは……」
祝歌の目の前に降り立つ女性。 祝歌は女性を目の前にして何かを感じ取る。
「もしかしてあなたは「闇の書」……さん?」
祝歌の問いかけに女性は答えない。
「あなたには恩がある」
女性と祝歌の前に「闇の書」、書は開き白紙のページを祝歌に向ける。
「せめてもの償い、我が主と同じ……『優しい夢』に抱かれて眠れ」
「えっーー」
瞬間、書から放たれた光に飲み込まれ……祝歌は消える。 光が収まると同時に消える光景は、まるで書に飲み込まれるようだった。
『……消えた!?』
少女達は驚愕する。 事前に、地球に向かっているユーノから「闇の書」の概要をある程度は聞いていた。 恐ろしい力が書にはある、書は次第に壊れ始めた、ページが全て埋まると主が死ぬ、ユーノのおかげで事情を飲み込めた。
だが、目の前で起きたことに正直ビビった。 女性が「闇の書」に関係しているのは理解したが、よもや人一人簡単に消し去ることが出来るとは思わなかった。
「……ッ!」
思わず後ずさりしそうになる。
「落ち着け君たち……」
「心悟……?」
そんな彼女らを落ち着かせるのは心悟であった。
「非常事態だ、だからなりふり構わん」
心悟は思った、今ここに頼りになる『二人』はいない。 ならば自分が何とかしなければならない……そういう使命感を持っていた。
「いいか、アレは「闇の書」が持つ一種の吸収能力だ」
「吸収能力……」
「だが吸収された者が死ぬというわけではない……時間経過でどうなるかは知らんが」
「じゃあ祝歌さんを助けられるんだね!」
「そう慌てるな。 ……君たちは魔力の蒐集をされたな? あいつはその蒐集した魔力の持ち主の魔法を扱う」
「……まさか、フェイトの魔法とかなのはの魔法を使えるってのかい?」
「恐ろしい話だがな」
四人が作戦会議をしている様子を女性は静かに見ている。 まるで獲物を観察するように。
「いいか、僕らはさっきまでヴォルケンリッター達と対峙していた。 つまり彼女にとって僕らは敵だ。 そして真っ先に祝歌さんが吸収された……」
「……つまり次に狙われるのはあたし達ってわけか」
「そうだ……だから……」
心悟は眼帯を外し、自身の能力を解放する。
「全力でサポートする、だから全力で戦ってくれ」
『うん!!』
「それじゃああたしがシンゴを担ぐよ」
「頼む、出来る限りあいつが気に留めないで、それでいて遠くならない距離を維持してくれるとありがたい」
「善処するよ」
心悟を連れてアルフは離れる。 そして残ったなのはとフェイトは戦う意思を女性に向ける。
「私と戦うというのか……」
女性は一筋の涙を流す。 何が彼女の心を痛めたのか?
「行くよフェイトちゃん!」
「うん!」
「ならば……排除せねばならない……!」
勢いよく飛び出した二人を見る女性はもう涙を流してにいなかった。 その表情は氷のように冷たく、感情を感じ取ることが出来ない。
「やぁっ!」
なのはの射撃から戦いが始まった。 なのはの放つ魔法弾で牽制しながらフェイトが切り込む。 接近戦が得意なフェイトが前線、射撃戦が得意ななのはは後方で援護。
「今だよフェイトちゃん!」
「ハァァ!!」
周囲を囲む弾幕を自身の魔法で弾き飛ばす。 その無防備になった瞬間をフェイトが切りかかる。 閃光とも表現出来るその速度は同じ剣士であるシグナムですら手を焼く。
「……速いな」
だが女性はそれをいとも容易く受け止める。 盾のように展開した魔法がフェイトの攻撃を的確に防いでいた。
「くっ……」
女性は右手をフェイトの方に差し出す。 開かれたその手は攻撃するため? それとも祝歌のように吸収するため? 一瞬の迷いすらこの場では大きく響く。 迷うくらいなら……
「っ……!」
避けた方が得策だ。 フェイトは全力で後方に飛ぶ。
「……速い、だが捉えられん速度ではない」
女性はフェイトの速さを測る。 まるで機械のように静かに、淡々と二人を詰みに持っていく算段をたてる。
「大丈夫フェイトちゃん?」
「うん。 ……だけど私の速度に対応出来てる、次捕まったら……」
「……なら気をつけていかないと、だね」
「うん!」
女性の未だ見えない実力、だが二人は決して絶望はしない。
「……今度はこちらから」
『ッ!』
仕掛けてくるのは女性、その速度はフェイトに匹敵する。 もちろん対応出来るのはフェイトだけ……女性はそう考えていた。
「……今だ!」
「!?」
だがその考えは覆る。
「これは……」
接近してきた女性は突如現れたバインドによって拘束される。 一目見て分かる、これは「罠」だ。 なのはが見えないように設置し、すぐに終わると油断していた女性が引っかかった。
「迂闊……、だがこの程度!」
完全に虚を突かれた女性、しかしすぐにバインドを砕く。 強力なバインドを仕掛けたつもりだったなのはだが、単純に女性の方が優れた魔法使い、足止め程度にしか起用しなかった。
「そこっ!」
足が止まった女性に剣撃を見舞うフェイト。 もちろん防がれてしまうが、当てては離れ、離れは当ててを繰り返して女性を翻弄する。
「甘い……」
「くっ……」
だが女性の放った黒色の魔弾がフェイトに当たり爆発する。 攻撃が中断させられたフェイトであったが……
「……ニッ」
「…………?」
何故か笑ってる、まるでイタズラが成功した子どものように……。 その理由に気づかない女性は対角線上から外れたフェイトの後ろから現れたなのはの姿を見て納得し、焦る。
「しまっーー」
「ディバインバスタァァーーー!!」
女性の目には砲撃というよりは桃色の壁が迫っているように見える。 躱すことは出来ず、防御も間に合わない。 そう理解したときには桃色の波に飲み込まれていた。 砲撃と共に数十メートル吹き飛び、最後に不自然に爆発する。
「やった……いや、まだ……」
爆発の煙から現れる女性は、何もなかったようにそこに浮かんでいる。 どうやらあの不自然な爆発は彼女が起こしたもの。 砲撃に飲まれながら魔法を破裂させることでなのはの砲撃の威力を途中で殺したのだ。
「……何だかケロっとしてるね」
「でも今の連携は悪くなかったね」
攻撃が効いていない、そんなことで二人の闘志は消えはしない。 戦闘が始まってから一度たりとも警戒を解いていないのだから。
「……」
そんな二人を見ながら女性は考えている。
(この二人の連携……何か不自然だ……)
「……よく分からないけど」
「今がチャンス!」
再び向かってくる二人の魔導士をいなし、躱しながら女性は思案する。
(この二人の連携は即席にしては練度が高い……恐らくはかなり深い関係なのだろう。 だがこの二人だけでは説明が付かない部分も多くある)
女性は二人の一手一手を思い出し、分析する。
(二人を格下だと結論付けたのは確かに私のミスだ。 だが時折見せる二人の動きは、『二人だけ』の動きとは思えない)
「すごい……どれだけ弾幕を張ってもすぐに崩される……!」
「この防ぎ方……私の動きが読まれてるの!?」
二人は女性の動きに驚く、だが真に驚くべきなのはそれを考え事をしている最中にやってのける所だろう。 二人はまだまだ女性の実力に触れてすらいない。
(……相手は元々四人、一人使い魔と思われる者は魔導士ではない子どもを連れて避難したと考えていたが……)
女性は目線を二人から外し、離れた位置にいるアルフと心悟を見つける。
「……まずはあの少年からにしよう!」
「あっ!」
悲鳴をあげたのはなのは。 いや、フェイトも悲鳴をあげたくなった。
「バインド……!」
「それも……私よりもかなり強力だよ!」
先ほどの意趣返しのようにバインド仕返した女性は、二人を固く拘束した後、心悟達の方に向かう。
「気付かれちまったよ!!」
「……もうか、流石にするどいなぁ……」
「関心している場合かい!」
心悟を守るように前に立ち、アルフは女性を迎え撃つ。
「使い魔……どちらのだ? ……どちらでも構わないが」
「こ、この威圧感……キレたあのババア並だね……」
「アルフ、相手をしちゃあダメだ! 彼女の狙いは僕だ!」
心悟は自身の能力を使って、目の前の女性の恐ろしさを再認識していた。
(僕の能力を使っても、全くと言っていいほど心が分からない! 僕の実力不足もあるが、流石は闇の書のメインプログラム……と言ったところか)
心悟は今まで誰かに恐れを抱いたり、緊張することなど数えるくらいしか経験がなかった。 そんな彼が今、目の前の女性を見て冷や汗をかく。 目の前の女性にビビってしまっていた。
「悪いね心悟、そう簡単にフェイトの友達を見捨てるなんて、あたしは出来ないんだよ!」
飛び出すアルフ。 固めた右手を女性に向かって放つ。 まるで獣のように突進しながら放つ拳はまるで砲弾だ。
「……中々の腕だ。 だが……」
女性はそれをいとも容易く受け止める。 そしてアルフの腹部目掛けて強烈な蹴りを入れる。
「ガッ!?」
「……遅いな」
蹴られた腹部を抑えるアルフ。 だが女性の攻撃は止まらない。
「フッ、ハァ!」
「うっ……クソ!」
襲いかかる蹴りの連撃を何とか腕で防ぐも、その威力に防いだ腕が痺れる。 その痺れを気にする瞬間も女性は与えない。 まるでマシンガンのように繰り出される蹴りに防御も意味をなさない。
「何て重くて早い攻撃なんだい……! こ、こんなのを二人は相手してたの……!?」
思わず弱音を吐くアルフだが、彼女は先ほどから一歩たりとも後ろには下がらない。 床に足を沈め、不動の構えを見せる。 それは絶対に女性を心悟の元へは行かせない鉄の意志すら感じさせる。
「見事だ……」
「へっ……足だけ使っておいてよく言うよ」
女性の賞賛を吐いて捨てる。 アルフの言う通り、女性は足だけでアルフを攻撃していた。 それは相手に対しての侮辱とも捉えられる。 しかし女性はそんなことは微塵にも思っていない。
「貴様はそれだけで十分だと思っていたのだが……思い違いだったようだ」
女性にとってそれだけアルフが格下だと思われていただけなのだ。
「だからーー」
「!?」
アルフは瞬きなどしてはいなかった。 一瞬たりとも動きを見逃すことなく女性を見ていた。 のに、だ
「ーー拳で終わらせる」
「あっ……か……ぁ……」
腹部に深く、深く突き刺さる拳を防ぐこと……否、視認することすら叶わなかった。 アルフはその場で倒れる。 だが決して後ろには引かず、最後まで女性の前に立ちはだかった。
「最後まで引き下がらなかったその信念、もはや守護獣と同等だ」
女性は伏したアルフに賞賛を送る。 そして……アルフの後ろにいる心悟を睨む。
「だが、そこの少年はキッチリ処理させてもらう」
「……」
女性は体を浮かし、心悟の前まで来る。 そして……言葉を交わす。
「……1つ知りたい」
「……?」
「何故『貴様ら転生者はこの世界に来る?』」
「……君は……知って……」
女性から思わぬ言葉を聞いて驚く心悟。 その様子を遠くで見ていた、未だバインドによって拘束中のなのはとフェイトはチャンスと捉えバインドを解こうとする。
(今なら……!)
(心悟君、時間を稼いで!)
女性は話し続ける。
「過去に自らを転生者と名乗る者が幾人も私の前に現れた。 誰も彼も皆一様に同じことを言う、『自分は転生者だから、特別な存在だからお前を闇から救う』……と」
「以前から転生者に出会っていたのか……!」
「出会う者全て魔法ではない異質な力を持っていた。 ……だが誰一人として私を……この書の呪縛を解くことは叶わなかった。 そして死んでいった」
それは10、20年の話ではなく、遥か太古からの話であろう。 転生者がどのような思いを持っていたかは今となっては不明だが。
「転生者という存在は一度別の世界で死んだ者達のことを指すと聞いた。 だから問いたい」
「……?」
「……転生者は何を為すためにこの世界に転生する……? 何故無駄死にになると分かっていてこの世界に産まれる……?」
女性の問いに心悟は……
「……フフ」
「…………何故笑っている?」
「フフッ、いやぁねぇ……」
心悟はいつもの調子に戻る。
「思いの外、君ってば普通の人間みたいな質問をするんだねぇ」
「何……?」
「いやぁ失敬、ちゃんと君の質問に答えるとするよ」
心悟はいつもの、間延びしたマイペースな口調に戻る。
「そもそも、転生とは自身の死を強く否定した者を神が見つけて行う行為。 まぁ、時たま不埒な理由で転生したがる人もいるけどねぇ」
表情は笑っており、先ほどまでの恐れなどまるでない。
「つまり、別にこの世界に転生する必要はないし、この世界に転生してもこんな危険な目にあう必要はないんだよねぇ」
「……ならば何故」
「何故? それが特に理由がない、転生者は何故か英雄症候群……つまりヒーロー・シンドロームに陥るのさ」
英雄症候群、それは自己顕示欲の強い人間や英雄願望のある者のことを指す。 自分がことを為し、自分を英雄に仕立て上げ周りから賞賛されたがる。 精神の疾患ではなく、厨二病に近い。
「君みたいな難易度SSS級の人助けに成功すれば、間違いなく英雄と持て囃される。 転生者達はそうなりたいんだよ」
「……やはり、くだらない理由」
何か心当たりでもあるのか、女性は何かを思い出し侮蔑の言葉を口に出す。
「その通り、転生者とは思いの外『くだらない存在』なんだよ。 だって、転生者がやらなくても、世界は回り続けるんだから」
「……答えは聞いた。 貴様も書に……」
祝歌の時と同じように心悟を吸収しようとする。 が、何故かその動きが止まる。
「……何故だ、何故そんな顔をしている?」
「何のことだい?」
「その表情は……『希望』を持っている表情だ。 何故そんな顔が出来る」
女性は未だに希望を持っている心悟を見て動揺する。
「よし! 抜けた!」
「心悟君を助けなきゃ!」
その遥か後方では、やっとの事でバインドを解いたなのはとフェイトが心悟の方に向かう。
「……僕が二人の援護をするのは確かに強力だ、だけどね」
「……」
「僕は英雄にならなくていい。 奇跡を起こすのは……僕じゃあない、『彼女達』だ」
「……故に絶望しない……と?」
「そうだ」
「……ならば夢の中で希望を抱いて沈め」
全速力で向かっていた二人は間に合わなかった。
「心悟君!」
「心悟!」
心悟は書の中に吸い込まれて……消えた。
「……やはり少年の能力はコピー出来ない……か。 だが……」
女性は二人の方に向き直り、再び戦闘態勢に入る。
「少年の記憶からならコピー出来る。 ……本当に奇跡を起こすことが出来るなら……見せてみろ!!」
「心悟君……」
「よくもっ!」
怒りを露わにする二人、だが頭は冷静、ここで特攻なぞしてしまえば敵の思うつぼ。
「これは稲妻迸る少年の一撃……!」
「なっ!?」
「オオオオオオォォォォォォォォ!!!」
「あれはーーーーきゃあ!!」
女性がなのはに向かって吠えたと思ったら、なのはが後方に吹き飛ぶ。 それはかつて優秀な管理局の魔導士すら呆気にとられた、魔力を直接飛ばして攻撃するモノであった。
「心悟の記憶からコピーしたの!?」
思わぬ攻撃に驚くフェイト。 なのはの安否を確認しようとした時……
「なのは!」
「……遅れたな」
「しまっーーーー」
高速で距離を詰めた女性に吸収されてしまった。
「……っつつ」
吹き飛ばされたなのはが状況を確認しようとする。 そして目に入るのは女性のみ。 共に戦う友はいない。
「フェイトちゃん!? フェイトちゃん!!」
「彼女のソニックフォームは強力、先に対処させてもらった」
またしても吸収された者達の記憶から突破口を与えてしまう。
「……どうしよう」
心悟、フェイトは吸収され、アルフは戦闘続行等不可能。 救援も暫くは期待出来ない、圧倒的不利である。
「私……どうすればいいの……」
三人がかりでようやく対等に戦える実力なのに、一人でなんて到底戦うことは出来ない。 しかし撤退しようとしても女性のフェイト以上の速度に捕まってしまう。 考えれば考える程明らかになる実力差、自ら沈んでいく負のループ。
「……拳君……」
なのはの小さな願いはどこに向かう? 完全に戦意を失ったなのはに女性は迫る。
「これで終わりだ……」
なのはに闇が訪れようとしていた……
はい、圧倒的ピンチピンチピンチ! 1話でほぼ全員全滅! クロノとかリーゼロッテ姉妹は現れないし、ユーノもまだまだ時間がかかる。
拳君は何してんでしょうね?
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。