オレは声の主に会いに行く   作:ほったいもいづんな

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今回また新しい転生者が出ますが、彼に名前はありません。 あったんだと思います、でもないです、彼に名前はありません。 名前のあった誰かだと思っていてください。


ーー確か背が低くて……間違いなく白い花


7日目の決意 《ハルジオン》

 16話

 

 

 

 

 幸せな夢とは何だろうか? その者が真に望むことが叶う夢? 真に愛する者と過ごす夢? ならば祝歌にとっての幸せな夢とは何だろうか? 祝歌の目の前に現れるのはたくさんの人、誰もかれもが祝歌を受け入れ笑顔を見せている。

 

「おーい、どこだー?」

 

 だが祝歌は彼らに見向きもせずに何処かへ歩き出す。 今度は祝歌が今まで出会った動物やモノが祝歌を出迎える。 祝歌と心を交わした大切なモノ達。

 

「……こっちじゃないのかなぁ?」

 

 しかし一度視線を移し、それだけだ。 拒否するわけでもなくただ無視する。 そうしているとようやくあの銀の女性が現れる。

 

「何故だ……」

「あ、ようやく出て来てくれた。 さっきからあちこちで『声』が聞こえるから全然見つからなかったんだよ」

「何故夢に溺れない……」

 

 女性は祝歌に投げかける、何故夢を見ないのか、と。 何故幸せな夢で満足しないのか? 、と。 生きとし生けるものなら、辛い現実を生きるくらいなら、幸せな夢に溺れた方が楽だと知っているはず。 だがこの祝歌という人間は誰の手も借りずに夢を否定している。

 

「……別に俺は夢なんか見なくたっていいんだ。 どうせ『もうすぐ死ぬ』からね」

「迫る死を前に、最後に夢に包まれようとは思わないのか?」

 

 女性は祝歌の身体のことを知っている。 故に祝歌を気遣いこのような夢を見せている。 それははやてやヴォルケンの面々を想ってくれたことに対する礼だと考えていた。 だが祝歌はそれを断る。

 

「もうすぐ死ぬんだ。 だったらちゃんと死にたい、俺がここいる理由を最後まで貫きたい」

「……『正統なる死』か。 だが私はこの世界を闇に返すまで止まることはない」

「あっ、待って!」

 

 女性は祝歌の前から姿を消す。 これでまた打つ手がなくなってしまった。

 

「あぁ……どうしよう……俺方向音痴だし」

 

 思わず頭を抱える、すると祝歌の前に新たに現れる存在が……

 

『ーー』

「……?」

 

 それは青白く輝くガントレット、祝歌はコレを一度だけ見たことがある。

 

「これってザフィーラの……」

 

 八神家でザフィーラの人型の状態を見た際に身につけていたモノだと理解する。

 

『ーー』

 

 そのガントレットは言葉を発さず、ただ何処かを目指すように浮遊したまま動き出す。

 

「……もしかして案内してくれるのか?」

『ーー』

 

 ザフィーラはデバイスを持たない、故にレイジングハートやレヴァンティンのように流暢に話したりはしないが、それでも思いの言葉は祝歌に伝わる。

 

「ありがとう!」

 

 そして祝歌は誘われる、「闇の書」の深部に……

 

 

 

 

 しばらく歩いて行くと、ガントレットが停止し淡い光となって消える。

 

「あっ……」

 

 だが、消えた瞬間、闇だけを写していた周りの景色が一変する。

 

「ーーっ!」

 

 周りに映し出されるのは二人の人間の形をした存在。 一人は祝歌も見た銀の女性、だがもう一人の男性は知らない。

 

「この人は「闇の書」さんで……こっちは誰だ?」

 

 男性は真っ黒で長い髪を腰あたりまで伸ばし、その格好は日本で見る服装とは大きく異なる。 その格好はまるでクロノやリンディらの時空管理局と同じ服を着ている。 その男性が女性と話している。

 

『お前が「闇の書」……いや『■■の書』だな』

『何故それを……いや、それよりもどうやって()()に……』

『これはレアスキル……つーか特典? まぁ魔法じゃない力だ』

『……だからと言って私のプログラムを突破どころか察知すら出来ないとは……』

 

 二人の姿を見て祝歌は気付く。 女性は鎖に縛られてること、そして二人がいる場所が自分が今いる闇の空間に酷似していることに。

 

『……それで、管理局の人間が私に何の用ですか? すでに書は貴方がたに拘束されています』

『嘘だな』

『……何を』

『これからあと数時間後には暴走が始まるんだろ? ならあの程度の拘束じゃあ駄目だ』

『なっ!? 何故知っているのです!?』

 

 祝歌にはどういう状況かは分からない。 それもそのはず、恐らくこの光景は11年前、クロノの父であるクライド・ハラオウンが「闇の書」を護衛中に「闇の書」が暴走した事件のほんの前なのだろう。

 

『俺は『転生者』っつー存在でな、ある程度のことなら未来だって知っている』

『転生者……? 貴方は一体……』

『ま、それよりもだ。 あと数時間でお前は暴走、そのせいでクライドの奴はお前と運命を共にする……ってのが本来の筋書き通り。 だがここには俺がいる、俺がお前を止める』

『なんですって?』

 

 男性の言葉に女性は反応する。 「止める」と言われた、だが女性……「闇の書」の暴走を止めるなんて魔導師が何人いても足りない。 戦艦レベルの存在が必要なのは誰もが知っている、なのに目の前の男性が止めると宣言したのだ。 相手の正気を疑うのは変なことではない。

 

『ま、とりあえずこの俺をーーーー』

 

 ここで景色が闇に戻る。 どうやらここまでしか見れないようだ。 そう、もっと奥深くまで行かなければ……

 

「消えちゃった……あっ!」

『ーー』

 

 こんど現れたのはペンデュラム、振り子だ。 ライムグリーンの光を放つ振り子の持ち主はすぐに想像できた。

 

「クラールヴィント……シャマルさんの……」

『ーー』

「そっか、今度は君なんだね」

『ーー』

 

 どうやらヴォルケン達が順番に祝歌を道案内してくれるようだ。 そう、また祝歌は闇の深部に近づく。 そして先ほどと同様に途中で消えると、また周りの景色に女性と男性の姿が映し出される。

 

『その剣は……』

『こいつは俺のデバイスで、故郷の伝統である刀だ』

 

 どうやら少し時間が飛んだ様子。 男性は何も持っていなかったその手には刀を携えていた。 その刀の刀身は真っ白で峰と刃どころか鍔も柄も白く染まっている。

 

『こいつはこういう異空間への道を開けてくれる、そしてこいつがお前を救う鍵だ』

『なんですって?』

『こいつは一種のウイルスソフトみたいなもんでな、こいつをぶっ刺してお前の壊れたプログラムを改ざんする。 そうすれば転生プログラムも所有者を殺すプログラムもなくなる』

『……そんなことが……』

 

 男性の説明に女性は驚きを隠せない。 もし仮に男性の言葉に偽りがなければ、もう「■■の書」は誰も殺さなくて済むのだから。 だが女性は決して喜べない。

 

『ですが、「■■の書」のプログラムに干渉すれば必ず貴方に影響が出る。 ……あなたの命を奪うほどの』

『かもな……でも、もうクライドの奴にも話した。 腹は決まってんだ、あとは……』

 

 男性は両手で刀を持つ。 切っ先は足元。

 

『根性見せるだけだ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男性が刀を地面に突き刺す所でまたも景色が闇に戻る。 そして次の先導者が現れる。

 

『ーー』

「グラーフアイゼン……君の番か」

『ーーーー』

「うん、こっちなんだね」

 

 アイゼンの後ろについて行きながら祝歌は先ほどから見せてくる映像を思い出す。 あの刀を携えた男性、そして向かい合う銀の女性。 女性を止めると言った男性、それを止めずただ眺めているだけの女性、そして二人が度々口にしている■■という単語。 これらの意味するものとは? そして何故これを自分に見せてくるのか? 答えの見つからないまま次の地点に辿り着く。

 

 

 

 

 

 

 

『はぁっ……はぁっ……くそ……』

 

 また時間が飛んだ。 男性は地に両膝をつけ、突き刺した刀を杖代わりにしている。 顔やら腕の皮膚には先ほどには見られなかった黒い線が出ている。 そしてそれは徐々に男性の体全体に広がろうとしている。

 

『もう……諦めてください』

 

 男性を心配する女性。 男性を侵食しているのは「■■の書」の防衛プログラム。 男性の刀から進入しどんどん男性の身体の機能を奪っていく。 女性自身これを止めることは出来ない、そもそもそんなことが可能なら暴走などしない。 女性は目の前で自分を救おうとしている男性をただただ見ることしか出来ない。

 

『諦める……? やなこった……俺が逃げたらお前は暴走しちまう……』

『あなたはよくやりました。 「■■の書」の防衛プログラムにここまで立ち向かい、そして破損したプログラムの幾つかを書き換えた。 もうあなたは諦めてもいいのです!』

 

 女性は必死に男性を説得する。 このままでは確実に死ぬ、自らの使命を果たせずに……、女性はそこまで気づいてしまった。 だが男性はその手から刀を離さない。

 

『……俺一人で命賭けてるわけじゃあないのさ』

『な、なんですって……?』

『いるんだよ、俺の親友にして上官の……クライド・ハラオウンの奴がよぉ……』

『な、ならばその方と共に……!』

 

 逃げたって誰も責めはしない、むしろ仕方のないこと。 そう女性は説得する。 だが男性から来た言葉は確固たる意志を感じさせるものだった。

 

『……あいつはよ、いい奴だ。 仕事が出来て真面目で、器量のいい嫁さんと素直で誠実な息子、羨ましいくらいに幸せな野郎だ。 だからあいつに先に逃げてろって言っても、「お前を置いて逃げはしない。 死ぬならもろともだ」……とかなんとか言って残りやがった。 ほんっとにいい奴だよ』

『…………』

『だからよぉ……そんなあいつと知り合っちまって俺は……あいつに死んで欲しくなくなった! あいつには生きてもらいたいと心の底から思っちまった……!』

 

 だから、そう言って男性は柄を握る力を強める。

 

『たとえ本来の歴史じゃあなくなったとしても……俺はあいつを救う! 俺の身が滅ぼうとも!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこで切られ闇に戻る景色。 そして最後の案内人が現れる。

 

『ーー』

「レヴァンティン……」

『ーー』

「うん、お願いするよ。 次で最後なんだろう?」

『ーー』

 

 レヴァンティンは何も答えずに先に進む。 だがその沈黙は肯定を示していた。 侵食されていく男性、断片的にしか見てないが祝歌は察していた。 この男性は死んだのだと。 じゃなければ「闇の書」は暴走などしない、はやての身体を蝕んだりしない。 あの男性は望み叶わず死んだ、つまり男性が言っていたもう一人の男も死んだのだと祝歌は察していた。 レヴァンティンに案内されていると、今までとは違う空間が目の前に迫っていた。

 

「……光? いや、白い光…………?」

 

 そこまででレヴァンティンは役目を果たしたのか、祝歌の目の前から消える。 そして迫り来る白い光が祝歌を包む。

 

「うわっ!?」

 

 そして祝歌は、この場には似つかわしくない、優しい光だと感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……ちぇ、ここまでか』

 

 祝歌は見ている、刀から手を離し地面に仰向けで倒れている男性を。 男性を侵食していた闇は男性のほとんどを黒に染め上げ、残ったのは僅かな顔の部分だけ。 それもあと僅かで黒に塗りつぶされる。

 

『あなたは……よくやりました』

 

 悲しげに賞賛を送る女性。 その目は今にも涙が溢れそうで……

 

『この「■■の書」にここまで対抗したのは歴史上あなただけです。 どうかそのことを誇ってください』

『嫌だよ、結局クライドも……あんたも救えてない。 しょうもねえ転生だったわけだ……済まねえ』

 

 女性は横たわる男性の側で膝をついて男性の頬に手を添える。

 

『そんなことはありません、あなたはこの私に……少しの間でしたが希望をくれました。 ありがとう……』

『そっか……。 …………あぁそっか』

『?』

 

 男性は何かに気付いたのか、女性に最後の言葉を残す。

 

『……よく考えりゃ、別にあんたを救うのは俺じゃなくてもいいのか』

『何を……?』

『安心しろ、あんたには()()()()が訪れる。 ……必ずだ』

『……最後まで私を気遣ってくれるのですね』

『そういうわけじゃあねぇが……まぁ、そういうことでいいや』

 

 ほんの少し食い違いが起こっているのが少し不満げだが、男性はそれでもいいさと思う。 そして訪れる最後に、ここにはいない者に言葉を残す。

 

『悪いクライド……すいませんリンディさん……ごめんなクロノの坊主ーーーーーーーー』

 

 そう言って男性は黒になる。 そして男性だったものは砕け散りどこかに霧散する。 あとに残されたのは涙を溢した女性と、最後まで真っ白であり続けた男性の刀だった。

 

 

 

 

 

 

 

「これは……」

 

 そして光が消え元の闇に戻ると、目の前には先ほどまでずっと見ていた白い刀、そしてその前には巨大な扉がある。

 

「扉……?」

 

 その扉は高くそびえ立つ、そして鍵穴らしきものがちょうど祝歌の腹の位置くらいにある。 祝歌は目の前の扉に面を食らいながら突き刺さったままの刀に近づく。

 

「あの男の人が持っていたのが……まだ残っていたのか?」

 

 祝歌は恐る恐る刀を手に持つ。

 

「……!」

 

 そして自身の能力のせいか、刀の声が聞こえてきた。 刀から伝えられる、刀自身の最後の使命。

 

『ーーーーーーーーーーーー』

 

 祝歌はそれを聞いたのち、静かに刀を地面から抜く。 そして刀を扉の空いている穴に挿し込む。 すると刀が柄の部分から白い光の粒子となって消えていく。 少しずつ消えていく、そしてそれに連動するように扉が白い光を帯び始める。 完全に刀が消えると扉が開き始めた。 祝歌は最後に消えていく粒子を無意識のうちに右手で掴む。

 

「…………」

 

 伝わってきた刀の想い、そして残留し憑依した所有者の無念。 それを受け止め祝歌は感謝の言葉を口にしていた。

 

「ありがとうございます、あなたのおかげでようやく辿り着けます」

 

 扉の先には玉座らしきものに寝ながら座るはやて、そしてその側にいる銀の女性。 祝歌は二人の側に向かって歩き出す。 もう右手から光は消えていた……




おう、何がしたかったのかよく分かんねえな?

次回はようやく命名回。 サンタナと名付けたい。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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