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2話
なのは達に案内され祝歌は翠屋にたどり着く。 祝歌はお礼と言って少女達にも中に入る様に促される。 しばし一悶着あったが、アリサの「人の好意を無下にできない」の一言により少女達は祝歌にご馳走になることにした。
席に案内され、各々好きな物を注文する。 祝歌はカフェラテにチョコレートケーキを注文した。 どうやら甘いものが好みな様子。 注文したものは比較的早く来たので、早速口にした。 祝歌は一口目に歓声を上げ、黙々とケーキを食べ始める。 そんな光景を見ていた四人の少女、彼女達は祝歌の身なりを観察していた。
(それにしても……大人な人だなぁ。 お兄ちゃんより年上なのかな? それに……ちょっと雰囲気が忍さんとかに似てる……?)
(よく見れば……輝凛ほどじゃないけど容姿は整ってる……育ちがいいのかな?)
(あれ? あの時計……お姉ちゃんが恭也さんにプレゼントしていた高級時計……?)
(……んん? そういえばあのバックってもしかしてグッチ? それもそこそこ値の張る……)
見れば見るほど伝わる一般人とは異なる部分。 それに気づいた少女達が……
『(もしかして祝歌さんはお金持ち?)』
同じ疑問を持つのは仕方のないことで……
「〜♪」
しかしこの男、祝歌はそれを気にも留めずにひたすらにケーキを食う。 少々この男は変わっているようだ。
「……君たちは何をしているんだい?」
大人一人に対して小学生が四人というほんの少し変わった席に一人の少年が近づく。
「あ、心悟君!」
『心悟』と呼ばれた少年、彼はこの町の『転生者』の一人である。 木村 心悟は転生以前は大学で心理学を学んでいた学生であり、現在は小学生くらいの低身長だが、精神はなのは達よりも遥かに上である。 能力は『心を覗く能力』。 彼は普段左目に眼帯を付けている、その左目こそが心を覗く力を持っているのだ。
「……? おや、お友達かい?」
今までケーキに夢中になっていた祝歌はようやく心悟の存在に気付く。 祝歌は心悟に自分の名前を告げる。
「俺は不ノ九是 祝歌。 祝歌と呼んでくれ」
「これはご親切にどうも。 僕は木村 心悟、呼び方はご自由に」
淡々と行われる二人の挨拶。 なのは達と違った、大人らしい挨拶が交わされた。
「おっと、君も座るだろう? 女の子達の方は一杯だから俺の隣いいよ」
「……よろしいのですか?」
「もちろん、なのはちゃん達のお友達何だろ? 彼女達の分をおごるつもり何だ。 君の分もおごってあげよう」
「それじゃあご好意に甘えさせてもらいます」
心悟は祝歌の隣に座る。 店員に注文を済ませると心悟は祝歌に質問し始める。
「祝歌さん、海鳴にはどのようなご用心で? 夏に来るならいざ知らず、冬の海鳴に名所のような所は無いと思うのですが……」
この質問に祝歌だけでなくなのは達も耳を傾ける。 言われてみれば、海鳴のシーズンは夏。 まさか冬に寒中水泳をするわけも無いだろう。 この質問に祝歌は嬉しそうに答える。
「お! いい質問だね心悟君!」
「は、はぁ……」
あまりのテンションの差に困惑する心悟。 それに構わず祝歌は話し続ける。
「実はね……ここだけの話、何と俺には『不思議な能力』があるのさ!」
『へ、へぇ〜……そうなんですかぁ……』
突然の告白。 しかし彼女らにとって不思議な能力などすでに見飽きている。 微妙な反応しか出来ないのも仕方ない。
「その能力とは……『声を聞く能力』さ!」
「へぇ…………」
『……』
ほんの一瞬空く間。
『……???』
そして浮かび上がる疑問符。 当然だろう、誰しも声を聞くなんて事は余程の事がない限り出来て当然なのだから。
「お、この力の凄さが分かっていないみたいだね」
「実演してくれると嬉しいんですが……」
「それもそうだね……」
祝歌は皆を見渡す。 そしてすずかを見る。 正確にはすずかが付けているカチューシャを見ている。
「すずかちゃんのカチューシャ、ちょっと見せてもらってもいいかな?」
「え、はい……いいですけど……」
「ありがと……さて……」
すずかからカチューシャを受け取った祝歌はそれを机に置く。 そしてカチューシャに向かって話しかける。
「キミの事を教えてくれるかい?」
そこから祝歌は、まるで誰かと話してる様に頷いたり、相槌をうったり、時には驚いたりもした。 その様子を皆は神妙な面持ちで見ていた。 心悟はより注意深く観察していた。
「……なるほどね。 ありがとうすずかちゃん、返すよ」
「あ、はい」
返されたカチューシャを再度付け直すすずか。 祝歌はなのは、すずか、アリサ達を見て言う。
「君たち三人はとても仲がいい、親友のようだ」
『あ、ハイ、どうも……』
「でも……出会いはそれほど感じのいいものではなかったようだね」
『!?』
何故それを……、そう思わずにはいられない三人。 心悟はその様子を静かに見ている。 フェイト一人は何のことだか分からない様子。 祝歌は構わず続けた。
「すずかちゃんのカチューシャをアリサちゃんがイタズラして奪って、その行動を見ていたなのはちゃんがキツ〜いビンタをお見舞いした。 その後はもう激しい取っ組み合いになった。 でもお陰で三人は親友と呼べる存在になった。 間違ってはいないだろう?」
『 』
固まる三人に出る言葉は無い。 要約された内容、しかし全てに間違いは存在しない。
「どうして知っているんですかぁ!?」
堪らず疑問を投げつけるなのは。 祝歌はほんの少し得意げに答える。
「ふふん、これこそが俺の能力ってわけさ。 すずかちゃんのカチューシャが全部教えてくれたよ」
「……本当なの?」
「……無駄に壮大なドッキリとかないわよね……」
「流石にそれは……」
未だ疑問が払拭しきれない三人に心悟が言う。
「嘘はついていないみたいだ。 言葉の頭から終わりの先まで、全て祝歌さんにとって事実のようだ」
「心悟君がそういうなら……」
「そういうことよ……ねぇ……」
心悟の言葉を聞き、半ば強引に納得した三人。 しかし未だ要領を得ていないフェイトは頭に疑問符が乗ったままだ。
「フェイトちゃんも何か思い出深い物を持っているなら見せてくれるかい?」
「はい、何かあったかなぁ……」
言われて自身の荷物を確認するフェイト。 数十秒ののち、何故か犬の耳のアクセサリーを机の上に置く。 フェイトの顔はかなり紅潮している。
「えっと……その……大切な人からもらったもので……」
「フェイトあんた……いくら何でもそれを持ち歩くのは……」(ドン引き)
「ね、ネコ耳だってあるんだよ!?」(錯乱)
「問題はそこじゃないでしょ……」と言って呆れるアリサ。 フェイトは真っ赤にした顔をもっと赤く染める。 その間に祝歌は犬耳との話を終え、フェイトに返すよ。 もちろんこの時のフェイトは恥ずかしさで悶えていた。 祝歌は犬耳から聞いた話を話し始める。
「不思議な子から貰ったんだね。 男の子のようで女の子、女の子だったのに男の子になった不思議な子。 今は離れ離れだけど、とても強い繋がりがフェイトとその子にはあるんだね」
「ふふっ、そんなこと……」
「……あの変態とのノロケを聞かされると何か腹立つわね」
「まぁまぁアリサちゃん」
「例のアレ」の話を聞いて少し不満気なアリサをなだめるすずか。 祝歌の能力を知りたくなったなのはは祝歌に質問をする。
「何でも聞くことが出来るんですか?」
「そういうわけじゃないんだけどね。 例えば……」
祝歌は先ほどまでケーキを食すために使っていたフォークを手にする。
「この店のフォーク、このフォークからは少ししか話を聞けない。 何故ならこのフォークに対して強い思いを持っている人が少ないから」
フォークを置き、すずかのカチューシャを見る。
「すずかちゃんのカチューシャはいつも三人の思いを聞いている。きっかけとは言え三人にとって深い繋がりがある。 だからたくさんの話が聞ける」
「へぇ……」
「俺の能力は実は万能じゃないんだ」
「そうなんですか? てっきり凄い能力だと……」
「そんなに何だよねぇ……何て言えばいいか……」
意外な言葉に驚くなのは達。 祝歌はどうやって説明するか、暫し頭を捻る。 そして言葉にする。
「みんなは付喪神って知っているかい?」
「あれですよね、物に宿る神様……ですよね?」
「その通り。 人は物を大切にする。 物に対してたくさんの「思い」を込める。 するとその「思い」は『声』に変わる。 その『声』をたくさん聞いた物は、何時しかその『声』を自ら上げる。 俺はその『声』を聞けるだけなのさ」
『はぇ〜……』
古来より「言葉」には様々な意味が込められていた。 祈りを込めたり呪いを込めたり。 名前がその人を縛るように、言葉には強力な力があると言われていた。 祝歌本人は自分の能力を何てことのない能力だと思っているが、実際は神の天啓を聞く「神官」や悟りを開き仏の声を聞く「僧侶」と同じくらい『神の近くに位置する力』なのだ。
「他にも何かあるなら出してごらん」
「それなら……」
この後も祝歌はなのは達が出した物の声を聞き続けた。 一番驚いたのはなのはとフェイトのデバイスである。 声を聞いた祝歌は思わず声を上げてしまう程の衝撃を受けた。
暫しの談笑ののち、祝歌達は店を出た。 もちろん会計は祝歌一人で支払った。
『ありがとうございます』
「いいよいいよ、こっちも中々面白い話が聞けたからね」
キチンとお礼を言う小学生達。 ふと、心悟は気になった事を祝歌に聞く。
「……そう言えばまだあの質問には答えて貰ってませんでしたね」
「あの質問…………あぁ! 俺が海鳴に来た目的だね!」
突然の能力の話の所為でそれた祝歌の目的。 祝歌は隠さずに話す。
「実はね……数ヶ月前にある『声』が聞こえたんだ」
「『声』……? 海鳴からのですか?」
「うん、間違いないと思う。 ……その『声』は叫んでいた、悲しみや怒り、自身の絶望をひたすらに嘆いていたんだ」
『……』
急に神妙な顔付きで話し始める祝歌に対し、なのは達は静かにしていた。
「俺はずっとその『声』聞いていた。 そして思い立ったんだ、「俺が助けに行こう」って。 俺しか聞こえない『声』なんだ、だったら俺しか助けることが出来ない。 だから俺はココにたどり着いた」
「……そうですか……」
「ま、ここに来たら急によく分かんなくなったんだけどね。 ははっ!」
祝歌の目的を聞いたなのは達の表情には強い意志が現れる。
「何か困った事があったら言ってください、手伝います!」
「困っている人は見過ごせません!」
「これでも顔が効くんです。 他の人にも言っておきますよ!」
「一人じゃ大変だけどみんなでやればあっという間ですよ!」
彼女達の発言に驚く祝歌。
「お、おぉ? いいのかい君達……」
「彼女達はこの町じゃかなりのアグレッシブ少女です。 きっと断っても勝手にやりますよ」
驚く祝歌に追撃を加える心悟。 その様子を見てすんなりと彼女達の手助けを受け入れる。
「……ま、本当に困ったら君達に助けてもらおうかな。 その時は必ず君達に助けを呼ぶよ」
『はい!』
少女達と別れ、一人道を歩く祝歌。 彼は先ほどまでのやり取りを思い出しながら歩く。
「あの子達はとてもいい子だったな。 ……それにしても驚かされたな、なのはちゃんとフェイトちゃんのあの『宝石』には」
宝石とはなのはとフェイトのデバイスの事だろう。 確かに魔法を知らない人間から見てみれば宝石に見えるのも頷ける。
「あれは物の声じゃない……人間に非常に近い『声』だった。 自分で考え、自分の声で話す……人間にそっくりだ……」
祝歌は二つの宝石の名前を思い出す。
「確か……なのはちゃんのがレイジングハートで、フェイトちゃんのがバルディッシュだったな。 ……この町にはあういうのがたくさんあるのか?」
当たらすとも遠からず。
「この町は不思議な『声』で一杯だ。 ……でも一際大きいのは……あっちから聞こえる『声』だ」
祝歌は目標がいるであろう方向を確認し、歩き出す。 その先に待っているのは……一体どんな物なのだろうか……
「ふんふふーん♪ 今日はええ天気やな、こんな日はお洗濯物を干すに限るなぁ。 みんな手伝ってくれるか?」
はやて登場ッ! はやて登場ッ! でも私はそんなにはやての事は好きではない! ヴィータちゃんは好き、VITAちゃんはは好きじゃないです。
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