オレは声の主に会いに行く   作:ほったいもいづんな

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最近お尻が痛い。 痔になってしまったかもしれない……




3日目の周り道 2

7話

 

 

 

 

未だ八神家に戻れずにいた祝歌は腹ごしらえに「翠屋」に向かった。 ついでに少し前に出会った男が無事心悟に会えたかも気になっていた。 歩きながら八神家に土産を持っていくのも悪くない、そう思った。

 

「……ん? あの二人は……」

 

「翠屋」に向かう途中、見知った二人を発見する。 一人は小さく髪を結び、もう一人は長いツインテールにしている。 どちらも女の子、そして同じ制服を身につけている。 祝歌は一度見たことがある、海鳴に到着した日に出会ったなのはとフェイトだ。

 

「どうしたんだろう……?」

 

祝歌は二人の様子に疑問を持つ。 前は四人組だったのに二人だけになっているのはさほどどうでもいいことだが、問題はその表情である。 どちらも元気なく下を向いている。 以前出会った時とは大違いで、一度しか話をしていない祝歌でもその違いに気付く。

 

「どうしようね……」

「どうしようか……」

『はぁ〜…………』

 

何かに困っている様子。 気になった祝歌は二人に近づく。

 

「こんな時拳君だったら……」

「こういう時、キリンは……」

 

何かを呟いていたが、祝歌の能力は人間には意味ないので当然聞こえない。 問答無用で話しかける祝歌。

 

「や、二人元気なさそうだね?」

「あ、祝歌……さん?」

「こんにちは……です」

 

元気のない挨拶を受けてますます二人の事情が気になる祝歌。 もちろん容赦なしに聞く。 この男にはデリカシーなどほんの少ししかないからだ……

 

「元気ないけど、何かあったの? 誰かと喧嘩したとか……怒られたとか」

『えぇと……そのぉ……』

 

二人は困りながら、当たり障りのないように言葉を選ぶ。

 

「そういう訳じゃあ……」

「あ、でも『喧嘩』はあっている……よう……な?」

「??」

 

かなり言い淀んだ答えに祝歌は考える。 「よく考えたら普通の人とのコミュニケーションってどうやればいいんだ?」、と。 この男、物や動物とのコミュニケーションを取りすぎた所為で人間とのコミュニケーションの取り方が分からない様子。 悩みに悩んだ末、祝歌は二人を「翠屋」に連れて行くことにする。

 

「……よく分からないけど、甘いものを食べれば元気でるって! 今から「翠屋」に行かないか? 奢っちゃうよ?」

『え、それは……』

 

再びご馳走になるのは気が引けるのか、最初は断ろうとしたが祝歌に強引に決められる羽目になった。 ……この二人、祝歌よりよっぽど大人である。

 

「あそこの食べ物はみんな美味しいから大丈夫だって!」

『ソウデスネ……』

 

何が大丈夫なのだろうか。

 

 

 

 

 

店に到着した三人は店の奥の席でポカンとした表情で誰かと対面して座っている心悟を発見する。 その珍しい表情を不思議に思いながら心悟が座っている席に近づく。

 

「心悟君、どうしたの?」

「その人は……」

 

なのは達に気付いたのか、対面していた人物……数時間前に祝歌が出会った男が振り向く。

 

「やぁ、こんにちは」

『こんにちは〜』

「あ、さっきの……」

「君は……先ほどは世話になったね」

「お知り合いですか?」

「いや……顔見知り……程度かな?」

 

心悟が何故この男に驚いていたのか、疑問に思っていたなのはとフェイトに心悟が話す。

 

「いやぁ……驚かないでくれよ二人とも……」

『はぁ……』

「?」

 

生返事をする二人と未だこの状況がよく分からない祝歌。 心悟は大分動揺した様子で男について教える。

 

「この人はねぇ…………『キリンのお父上』だそうだ…………!」

『へぇ〜…………………………ぇぇえええええええええええええ!?』

 

やや遅れて反応するなのはとフェイトはさっきまでの落ち込んだ姿からは想像もつかないほどの大声をだしていた。 はしたなく大きく口を開け、瞳も大きく見開き、男ーー『キリンのお父上』なる人物を見ている。

 

「初めまして、ご紹介に預かった霧刀、そしてキリンの父の「都 正刀」です」

 

正刀は笑顔で自分の名前を告げていた。 だが二人はあまりの衝撃に固まったまま動かずにいた。

 

『 』

「……?」

 

……だが、いや当然と言うべきか。 祝歌には何のことかは分からない。

 

 

 

 

 

祝歌達も同じ席に座るも、なのはとフェイトは未だ状況を飲み込めないのか正刀の顔をジロジロ見る。 それに気付いた正刀は笑顔で返す。 心悟は少しずつ冷静を取り戻していた。 祝歌はやはり事情が分からずにいる。

 

落ち着きを取り戻した心悟が正刀に質問を始めた。

 

「……よく考えれば、正刀さんはキリンのことや霧刀のことを知っていたのですか?」

「あぁ、その通りだよ」

 

肯定すると正刀は昔に赤子を預かった時のことをなのは達に話す。(前作23話参照) そして士郎に状況を逐一教えてもらっていたことを話す。

 

「そういうことだったのですね……」

「お父さんと知り合いだったなんて……」

「ふふ、高町さん……ああ、なのはちゃんのお父さんとは旧知の仲でね、この店もよく来ていたんだよ」

「ぜ、全然知らなかった……」

 

父親の意外な繋がりを知り、まだまだ知らないことばかりだと知らされたなのは。 まさか、父親同士の繋がりが近くであったとは知らず、世の中意外と狭いことを思い知らされるなのはであった。

 

「君は……君も息子の友達なのかい?」

「は、はいぃ!!」

 

正刀が話を振られたフェイトは、緊張のせいか大分上ずった声で答える。

 

「き、キリンとは……その……仲良くっていうか……友達っていうか……その…………大切な……ゴニョゴニョ……」

 

人差し指をツンツンさせたりイジイジしながら顔を赤らめて答えるフェイト。 その様子を見て察したのか……

 

「そうか。 ふふ、帰ってきたらウチの息子を頼むよ」

「え!? あ、その…………任せてくださいッ!?」

 

恋する乙女、フェイト。 まさかの父親認定に戸惑いを隠せない模様。 その様子を見て正刀は優しい笑顔を向ける。

 

「……そう言えばなのはちゃん、フェイトちゃん、さっきは何で元気なかったんだい?」

 

祝歌は先ほどからずっと気になっていた疑問を二人にぶつける。

 

「あぁと……それは……」

 

やはり口にはし辛いのか、どもってしまう。 それを見て横から口を出すのは心悟ではなく正刀だった。

 

「よかったらおじさんに話してごらん? これでも中々の人生経験を積んでいる、もしかしたら何かアドバイスが出来るかもしれない」

 

正刀の紳士な態度に思わず頷いてしまった二人。 二人の悩みを口にする。

 

「えっと……昨日出会った子なんですけど……」

「話をしようとしたんです。 ……でも向こうは聞く耳を持たなくて……」

「すごい必死で……何かそれが悲しく思って……」

「どうにかしようとして……でも喧嘩したまま別れちゃって……」

 

二人は嘘を言ってはいない、ただ断片的にだが事実を言う。 その姿を見て正刀は二人に話す。

 

「その子とは……お友達なのかい?」

「いえ、そういうわけじゃあ……」

「なのにずっとその子のことを考えているのかい? なら君たちはとてもイイ子だ」

 

二人だけでなく、心悟と祝歌も正刀の話に聞き入る。

 

「そんなイイ子達におじさんからのアドバイスだ」

 

正刀は優しい眼差しを二人に向ける。

 

「おじさんくらいになるとね、どんなに行動しても何も残らない時があるんだ。 それは自分の限界……どんなに上を見ても空が見えなくなるんだ」

 

それは彼の経験なのだろう。 若い頃はどんな無茶だって出来た、だが女性を愛し、息子を愛し、家族を愛するようになってからは彼は無茶が出来なくなっていた。 愛する家族を悲しませないようにするためだ。

 

「おじさんが上を見てもね、薄汚れた天井しか見えないんだ。 しかもそれをよく見るとシミだとかクモの巣だとか……どれだけ掃除しても無くならない汚れがある」

 

正刀は上に首を動かす。 そして右手を胸に添える。

 

「その時になってようやく気付くんだ、ソレは自分自信の心なのだと」

 

子どもの心は純粋で、透き通るような色をしている。 何もない空を見ても、それをキャンパスにして自由に空を描ける。 だが、年を取ればとるほど、空を描くことは出来ず、終いには空を見上げることをやめて自分の限界を見始める。

 

「君たちの心は私達と違う、何にでもなれる。 だからこそ諦めないで欲しい、君達の挑戦はどんな結果になろうと必ず何かが残る。 だからどんどんぶつかっていくんだ」

『はいっ!!』

 

静かに聞いていた二人は力強く返事をする。 先ほどまでとは違い、その眼には失われていた『黄金のように輝く精神』が宿っていた。

 

「頑張ってね」

 

そう言って正刀は笑う。 その姿を見てなのはとフェイトは思わず笑ってしまう。

 

「ふふ……」

「何だか……キリンと正刀さんってそっくりなんですねですね。 そういうところが」

 

フェイトの言葉を聞いて驚く正刀。 だが直ぐにいつもの笑顔に戻る。

 

「そうかぁ……何だか嬉しいなぁ……」

 

そして小さくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

元気になったなのはとフェイトは正刀に礼を言ってどこかに走って行った。 正刀は祝歌達の分も奢るといい、祝歌達はそれに甘えた。 祝歌は心悟と一緒に店を出たが、正刀は残って士郎と話をするとのこと。 店を出て祝歌と心悟の話す話題はもちろん正刀のことだ。

 

「凄い人だったねぇ正刀さん」

「ええ、本当に……何だか迫力があって、それでいて暖かさがありました」

 

改めて正刀と言う人物を思い出す二人。 そんな時、ふと祝歌は思う。

 

「あれ? 心悟君はなのはちゃん達と一緒に行かなくていいの?」

 

二人は元気よく走り去っていったので、疑問に思った祝歌。 その問いに心悟は答える。

 

「あぁ……もちろん後で合流しますよ。 二人とも元気になったからって僕を置いていくことはないだろうに……」

「あらら、可哀想に……」

「なので今から二人に追いつきますよ。 それでは……」

「あ、うん。 気をつけてね」

 

心悟は二人と合流するために祝歌とは違う方向を目指す。 そして残された祝歌はさっき「翠屋」で買ったケーキを持って八神家に向かった。

 

 

 

 

 

 

「やはり……な」

 

心悟はその姿を隠れて見ていた。 自信の能力を使って。

 

「やはり祝歌さんは八神家にいたのか。 それも「闇の書」目当てで」

 

心悟がずっと疑問に思っていたこと。 それは何故祝歌が使い魔に襲われていたのかだった。

 

「だが祝歌さんは完全に善意で行っているのか、それはそれで困ったな」

 

眼帯を付け直しながら心悟は思案する。

 

(今からリンディさんの紹介でギル・グレアムに会うが……そのときはやはり『あの双子使い魔』もいるだろう……どうしたものか)

 

頭を悩ませている心悟に、先ほどの正刀の言葉が響く。

 

「結果に関係なく何かが残る……か。 そうだな、やってみなくては分からんか」

 

心悟もなのはとフェイトと同じように正刀の言葉から力をもらっていた。

 

「……親子揃って色んな人に元気を与える人達だ」

 

そう言って少し笑う。 そして心悟は走って行った二人に追いつくため少し軽めに走り始めた。

 




まるで心悟君が主人公みたいだぁ。 ……祝歌は今までの出番が多かったからね、多少はね?

次はヘイト高いんだか低いんだか分かんないギルおじさんの登場、どうなるかは……明日の私が何とかするでしょう。

今回ちょっとシャーマンキングネタがあったけど……分かる人いるかな?

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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