オレは声の主に会いに行く   作:ほったいもいづんな

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ようやく4日目です。 半分くらいですね。 気持ち半分です……


4日目の急変 1

 8話

 

 

 

 

 祝歌が目を覚ましたのは朝の9時の頃であった。 起きた、そういうよりは起こされた。 そういった方が正しい。 原因はもちろん『声』だ。

 

『はやて!! はやて!!』

 

 聞き覚えがあった。 八神家の一人、ヴィータの『声』だ。 だがいつもの様子とは違う、悲痛と恐怖、混乱の混じった耳がつん裂く様な『声』。 その『声』は離れたホテルで寝泊まりをしていた祝歌にまで届くほどであった。

 

 目覚めた祝歌は鳴り止まぬ『声』を頼りに走っていた。 近づけば近づくほど『声』は増えていく。 シグナム、シャマル、ザフィーラ、そして「闇の書」の『声』。 ヴォルケンの面々はひたすらにはやてを心配する『声』だが、「闇の書」は違う。 ひたすら謝罪の言葉を口にしている、相手はもちろんはやてだ。 何故「闇の書」が謝るのか、それは何も知らない祝歌には計り知れないことである。

 

 肩で息をするほど走り、息を切らしながら辿り着いたのは病院であった。

 

「もしかして……はやてちゃんの身に何かあったのか!?」

 

 祝歌ははやてがいつも車イスに乗っているのを思い出す。 「もしや容態が悪化したのか? それとも何か事故に巻き込まれたのか?」、考えれば考えるほど嫌な想像しか出来ない。 祝歌はひとまず考えるのを止め病院に入る事にした。

 

 ヴォルケン達ははやての側にいる、そう考えた祝歌はヴォルケン達の『声』を辿り、はやての病室の前にくることに成功する。 面会謝絶の札が無いことを確認し、祝歌は扉をノックする。 するとドア越しからシグナムの声が聞こえ、「入れ」と言ったのを確認して部屋に入る。

 

「……失礼します」

 

 祝歌が部屋に入る、目に入るのは落ち込んだ様子を見せるヴォルケン達。 そして部屋のベットに横たわっているはやての姿だった。

 

「やはり来たか」

 

 口を開いたのはシグナムだった。 重苦しい空気で満たされている部屋で、シグナムの声が嫌に響く。

 

「ヴィータも、我々も心の内で何度も叫び狼狽えていた。 それを聞いてここまで来たんだろ?」

 

 祝歌は何故だか口を動かすことが出来ず、静かに頷いた。 シグナムはそれを見て続ける。

 

「……お前は我が主が何故足に障害を持っているか話してなかったな」

「おいシグナム!」

「お前は黙っていろヴィータ。 ……こいつには知る権利がある」

「……分かったよ」

 

 思わず静止に入ったヴィータ。 それほど込み入った事情なのか、祝歌は生唾を飲み込みながらシグナムの話を聞く。

 

「……結論だけ言おう。 全ては『我々の所為』だ」

「ッ!?」

 

 そこからシグナムは驚きの真実を祝歌に伝える。 はやてと「闇の書」の関係について。

 

 それは呪いと表現するのが的確か。 気が遠くなるほど昔から存在している魔道書、それが「闇の書」である。 それは持ち主に絶大な力を与えると同時に絶望的な最期を与える最悪の書である。 そして持ち主が死ぬと同時に新たな持ち主を「闇の書」自身が探し出し次の持ち主の元に転生する。 たとえチリになろうとも決して防ぐことの出来ない呪い。

 

 ヴォルケン達は「闇の書」によって生み出された存在。 「闇の書」と同じ時間を過ごしてきた、苦悩と決められた運命に屈しながら……

 

 そして「闇の書」が新たに選んだ持ち主は一人の少女だった。

 

「我々は主の名に従い、争うことなく平和な時間を過ごしてきた」

 

 だが争う理由が生まれる。 いや、元々あったのだ。

 

「闇の書」の全ページ666を、魔導士のリンガーコアと魔力資質で埋め尽くし、「闇の書」を完成させる。 それこそが元々あった『存在理由』。 だがはやてはそれを望まなかった。

 

「主は平和に仲良く暮らしていればそれでいい、そう仰っていた。 我々もそれを強く望み、蒐集を行わなかった」

 

 祝歌はシグナムの『声』からその当時の情景を感じ取る。 温かな空気は普通の家庭と全く同じ、幸せだったと感じることが出来た。

 

「だが「闇の書」はそれすら奪おうとしている」

 

 これまでの持ち主は恐らく成人して一人前の魔導士ばかりだったのだろう。 だがはやては子どもだ、身体も魔力も成長しきっていない。 はやてのリンガーコアと深く結びついている「闇の書」が魔力を徐々に侵食していった。

 

「我々に残された道は一つ、「闇の書」を完成させて主を「闇の書」から解放する。 これしか道はない」

 

 主であるはやてとの約束を破ってでも、ヴォルケン達ははやての身を案じている。 今まで彼女らにはなかった感情、誰かを思う『愛』が彼女達に決意をさせた。

 

「……言ってくれて……ありがとうございます……」

「気にするな、隠しても意味はない。 お前相手にはな」

「すいません……」

 

 祝歌は何と言って良いのか分からない。 励ますのか、応援するのか? だが今の説明を聞いて『蒐集』というのがそんなほんわかしたモノではないと考えている。 恐らく危険なことだろう。 なら止めるのか? 説得でもして他の道を探すのか? 祝歌には出来ない、なぜなら彼は『人間を救う方法を知らない』からだ。

 

「ちくしょう……悔しいなぁ……」

 

 抑えきれない悔しさを零す。

 

「俺はずっと……この力でモノや動物達の『声』を聞いてきたんだ」

 

 祝歌の語りを皆静かにして聞いている。

 

「人の『声』を聞かなくても、周りのモノに聞けばいいしペットとかに聞けばいい。 ずっとそう思ってた」

 

 祝歌は自身の過去を思い出す。 誰も知らない祝歌の過去を振り返る。

 

「だから俺は人の心が分からない。 何をしてやれば喜ぶのか、何をしてやれば慰めになるのか……どうやったらその痛みを分け合うことが出来るのか…………俺は分からない」

 

 ヴォルケン達は人間ではない、だが人の心は理解出来ているつもりだ。 だが祝歌はそれすら出来ない、ヴォルケン達以上に人に程遠いい存在。 彼の過去に何があったのだろうか?

 

「……初めてこの力を恨むよ。 何で……何で人の『声』まで聞かせてくれないんだ……! そしたら……! そしたら……はやてちゃんの痛みを知れたのかもしれないのに……ッ!」

 

 はやては静かに横たわっている。 寝息を立てて穏やかな表情を浮かべながら。 祝歌ははやてに近づく。 だが何と声を掛けてやれば良いか分からず、悔しそうな表情をしている。 そんな祝歌を見かねてかシャマルが祝歌を慰めようとする。

 

「はやてちゃんね、祝歌さんに会うのを楽しみにしてたの」

 

 シャマルに続きザフィーラも。

 

「お前は我々を受け入れ、我が主を友として見た。 それを本当に喜んでいた。 だから気を落とすな、我が主が目を覚ました時にそんな顔をされていては困る」

 

 騎士達はこの祝歌という男が心の底からはやてのことを心配し、思ってくれていると心で理解している。 それはシグナムやヴィータはもちろん『あの本』でさえも……

 

『……………………ごめんなさい』

「ッ!!」

 

 そう、「闇の書」でさえも祝歌の心を理解している。 ここ数日何度も何度も呼びかけてくるこの男がどういう存在なのか、キチンと知っているのだ。 だから謝辞を漏らしたのか? いや違うのかもしれない……

 

「……「闇の書」……いま……」

 

「闇の書」はやてのすぐ側の棚に置いてある。 それを手に取る祝歌。

 

「何で今になって『声』を……ーーそうだ、まだ可能性が……!」

 

 そして閃く一筋の希望。 蜘蛛の糸のようにか細く頼りないが、今の祝歌にとっては唯一の光である。

 

「……まだはやてちゃんの助かる方法があるかも」

『なに!?』

 

 驚く騎士達に祝歌は最後の可能性を提示する。

 

「俺の『声』がこの本に届いているのは分かった、だから後はこの本からの『声』を聞くことが出来れば……もしかしたらはやてちゃんを助ける方法を教えてくれるかもしれない!」

 

 それは今までの傾向からすればとても難しい……ということばでは足らない程の難度。 この可能性にかける祝歌に対しヴォルケンのリーダーであるシグナムが答える。

 

「いいだろう。 我々も他に方法があるならばそれに縋りたい。 だが主に迫っている危機はそれを待ってはくれない。 ……だから1日だ、1日だけお前に託す。 だがそれを過ぎれば我々は蒐集を再開する。 ……それでいいか?」

「はい!」

 

 たった1日。 それが祝歌に残された最後のチャンス。 そもそもはやての症状がいつ悪化するのか分からない現状、『最悪な事態』がいつ起こるかなんて誰にも分からない。 故に1日。 ヴォルケン達も1日しか賭けることが出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 祝歌は病院から出る。 きっと静かな場所を求めて走っているのだろう。 残された騎士達は寝ているはやての側から離れない。

 

「祝歌さん大丈夫かしら……」

「むぅ……」

 

 祝歌の心配をする騎士達。 今まで成功しなかった祝歌の呼びかけ。 それを1日全てを使って成功させようとするのだ。 肉体的疲労より精神的疲労がかなり出るはず。 だがそんな心配をしない者が一人。

 

「だいじょーぶだろ」

 

 ヴィータだ。 ヴィータはぶすっとした表情で話し続ける。

 

「あいつはムカつくヤロウだ。 ヘラヘラしてて、いつもこっちの顔色を見てきやがる」

 

 でも、と言ってヴィータは少し微笑む。

 

「あいつはいいヤツだ。 それだけは分かる。 だからあいつが成功しても失敗してもあたしはそれでいい」

 

 だから待つ、そう言ってヴィータは口を閉じる。 結果は決して重要ではない訳ではない。 ただ祝歌が自分達のために必死になってくれている、その事実だけでヴィータは満足しているのだ。

 

 はやてが目を覚ましたのはそれから数分後のことだった。

 

 

 




……何か薄味。 やりたいことは出来ているが……何か薄味。 やっぱり文才には恵まれてないって如実にわかんだね。

今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。
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