9話
はやてのいる病室のドアをノックする音が聞こえる。 やる事がなくヴォルケン達は全員はやての側に……ザフィーラは家だが、残りははやてと共にいた。 ノックする人物にはやては心当たりがあった。 それははやてが良く行く図書館で知り合った一人の女の子。 その女の子ははやてが入院していると知り、早速見舞いに来ると連絡していた。 その際にいつも話していた『数人の友人』も連れてくると言っていたのだ。 はやてはそれを楽しみに待っていた。
「どうぞ〜」
はやてが返事を返事をするとその友人、すずかが部屋に入る。 それに続いてアリサ、なのは、フェイト、心悟が部屋に入る。 そして気付く。
『!?』
そこにいるのはつい先日争った相手であると。 なのはとフェイトははやてが闇の書の主だとは知らない。 だからここには友達の友達の見舞いに来ただけのつもりだった。 どうする? そう考えているとシグナムからの念話がくる。
『案ずるな、今の我々はと争うつもりはない』
『……』
『信じられんか。 当然のことだが、今日は募集を行わない。 それだけは言おう』
二人は表情を崩さなかったが、内心ではとても動揺していた。 今起こっている事件の犯人、それが一様に集まっている。 しかも目の前にいるベッドの上にいる少女がその主、それも自分達の親友の友達だと言うのだ。 どうすればよいのか、酷く混乱している二人に心悟が小声で話す。
(落ち着け、何を動揺している)
(心悟君……だってあの人達は……)
(いいか? 僕達はお見舞いに来ているんだ。 それ以上の事を考えるな)
(……分かった)
「ちょっと、どうしたのよ二人共」
「ううん、何でもないよアリサちゃん」
心悟の言葉で落ち着きを取り戻す二人。 この場での心悟の存在は何よりの支えになる。
「あかんよみんなぁ、きつ〜い顔してるからみんな緊張してるよぉ」
「う、すいません」
「はやてちゃんの家族の人?」
「せやでぇ〜ちょ〜っと変わってるけどな」
「あら、私らの知り合いにも変なのがいるわよ?」
「どんな人なん? ……あ、そこの二人も来てきて!」
「あ、うん!」
女の子同士すぐに仲良くなる。 その様子を心悟は一人見ていた。 別にヴォルケンを警戒しているのではない。 単純に女の子の話に混ざり辛いのだ。
「女の子も5人も集まればかしましいってレベルじゃないな……」
『ハハハッ!!』
「……一応病院ではなかったか?」
シグナム達は嬉しそうにはやてを見ている。 あんなに笑っているはやてを見るのも久しぶりのように感じるのだろう。
(『A's編』……か)
そんな中、心悟一人はまったく別のことを思案していた……
それは昨日の事である。 リンディの紹介で『ある男』に会って来た心悟。 その男の名は「ギル・グレアム」。 時空管理局の中でもかなりの重鎮で、ハラオウン母子とも親交が深く、またフェイトの保護観察官である。 グレアムは地球のフランス育ちで、高い魔力資質を持ち、管理局の魔導士を助け魔法と出会う。 その経歴はかなりなのはと似ている。
もちろん転生者である心悟はこのことを知っている。 だからどうしたものだと考えていた。
『過度な原作改変は管理会の目につく』、そう教えてもらった。 だから今の自分はどれくらい改変に手をつけているのか分からない。 双子使い魔の遭遇、そしてグレアムとの会話。 このくらいなら大丈夫だと思いたいのだ。
そしてグレアムのいる部屋に案内される。 そしてグレアムから席を外してもらいたいと言われリンディは部屋から出て待機する。 部屋には招かれた心悟、グレアム、そして件の双子使い魔がいる。 最初に口を開いたのはグレアムだった。
「心悟君、君の事情を聞いて一つ聞きたいことがある」
「……」
「君はうちの子達と会ったんだろう? ならある程度の事情は理解しているはずだよね」
「……あぁ、あなた達が「闇の書」を封印するために一人の『女の子』を
『利用』していること、「闇の書」に対して並ならぬ感情を抱いていること」
「……本当にそんなことまで!」
「もっと引き出していいぞ? でも僕はそこまで外道でもないし改変もしたくないからやめるが。 ……もちろんグレアム氏の『事情』も知ってはいる」
ギル・グレアムはクロノの父親、「クライド」の上官であった。 そのクライドは「闇の書」護送中に防衛プログラムが暴走し、その影響で命を落とす。 その事に深く思いつめていた。 「闇の書」には無限に再生し続ける。 ならば残されたリンディとクロノが巻き込まれれば……クライドと同じ事が起きてしまう。 だから彼は「闇の書」を永久に封じる術を見つける。 だがそれは非人道的であった。
「当事者になって分かったが……実際エグいな。 『所有者もろとも永久的に封印する』とは」
「私たちの作戦も知っているの……!?」
「君は本当に何でも知っているな。 ……もちろんこの方法はもっとも『非人道的』だがもっとも『確実性』があった」
所有者が死ぬから「闇の書」が再生する。 言い換えれば所有者が『死なない』限り「闇の書」は『再生出来ない』のだ。 所有者と書を共に封印する事でこれから起こりうる全ての被害がなくなる。 その代わりに所有者は死ぬことも出来ず、生きているとも言えない状態で存在し続ける。 魂は永遠に消えることはない。
「どんなに非難されようと、私にはこれ以外に何も思い浮かばない。 たとえ奇跡が起きたとしても、私はこの方法をとる」
「お父様……」
心悟はグレアムを見て理解していた。 彼の思い、誇り、覚悟、全てを汲み取り理解していた。 だから困っていた。
「君に聞きたい。 ーー私に別の道はあったのか?」
こう来ると分かっていた。
「……困るな」
自分は『親友』の様に誰かを励ましたり元気付けたりするのは不得手だと重々理解している。 だから目の前のグレアムに、救いの糸を求める男に何と言ってやればいい?
「……僕は口下手だから上手くは言えないが……」
だが、『彼』には彼なりのやり方があるなら心悟には心悟なりのやり方がある。
「たとえ100回同じ問いをしても、あなたは100回全部同じやり方を選ぶ。 多分な」
「……そうか」
「だが……」
心悟は自信満々に言う。
「君が否定した『奇跡』は必ず起こる。 起こすのは僕ではないがな」
「『奇跡』か……」
「そうだ。 ……っと言っても今は『劇場版』に近いからなぁ」
「劇……?」
「おっと『こちら』の話だ」
劇場版、それは大筋は一緒だが細部が異なる作品。 それを知っているのは『転生者』だけだ。
「ともかく、『奇跡』は起こる。 これは確定事項であり絶対だ」
「もしかしてあの男が?」
「祝歌さんのことか? それは知らん」
「えぇ……何でも知ってるんじゃ」
「知らんことは知らん」
呆れる双子使い魔。 こんな子どもを警戒していたのは失敗だったかもしれないと心の内で考える。
「グレアムさん、あなたは見ていてくれ。 誰かが起こすであろう『奇跡』を」
「『奇跡』は起こるのか……ありがとう心悟君、話してくれて」
そうして心悟は部屋を出た。 それがつい昨日の出来事である。
そのことを思い出しながら心悟は思案する。
(すでに物語が大分ズレているのは理解している。 だが祝歌さんの登場でいよいよTV版とも劇場版とも違うストーリーになってきている。 ならば本当にあと『3日位』で暴走するのか……)
心悟は一人、近づいてくると異変に胸をざわつかせていた。 ……それを見ていた少女達は……
「なあなあ、あの……心悟ゆうたか? 彼何で難しい顔しとるんやろ」
「あぁ、心悟君はね、ブサイクな女の子が好きなんだって。 はやてちゃんは可愛いから不満なのかな?」
「な! こんな傾国の美少女を前にして不満とは! たまげた男の子やねぇ」
それを話の種にしていた。
面会も終わり、後は帰るだけとなった時、なのはとフェイトは忘れ物をしたと言って病院に戻る。 残されたアリサ、すずか、心悟は先に帰ることにした。 二人が戻った本当の理由、それはヴォルケン達と対話するためであった。
「一体何の用だ」
場所は病院の屋上、二人と体面するのはシグナムとシャマル。 ヴィータははやての側に残っている。
「言っておくが……今日は戦う意思はない」
「……?」
「と言うか、戦う意味がないの」
「……???」
ますます意味が分からなくなる二人。 つい先日戦った時とはその様子がえらく違う。
「そもそもね、今私達の手元に「闇の書」はないの」
『!?』
「ある人が必死になってはやてちゃんを助ける方法を探してくれているの」
「ある人……?」
「だがそいつがダメな時、我らは再び剣を取る。 再び魔力の募集を再開する」
「なら、今度は止めます!」
「もう負けません!」
ぶつかり合うそれぞれの意思。 だがそれは今は対決しない。 一人、新たな道を探している者がいるから。 祝歌がまだ諦めてはいないから。
劇場版よりもはやてと遭遇するのが速い。 何ででしょうね、多分計画性がない私のせいですね。 お、オリジナリティ……(小声)
今回も誤字脱字等のミスがありましたら、コメントにてお教えください。