しんしゅポケモンの、げんそうぐらし   作:サンダーボルト

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しんしゅポケモンの、げんそういり

幻想郷。

 

人間達に忘れ去られた存在が行き着く楽園の地。人と妖怪が絶妙なバランスを保つ事で成り立っている。……私はそのどちらでもないんだけどね。

 

 

我輩はミュウである。名前はミュウから一文字取ってユウ。

 

 

私は元々はみなみアメリカに住んでいた。たま~に人間の学者が入り込んできたけど、概ね平和に暮らしていた。

 

 

前に私の同族が、『自分のまつ毛拾った奴が自分のコピー作りやがった。ちょっとシバいてくるわ』とか言って人工島にカチコミかけに行ったが、私は平和に暮らしていた。

 

少し前に私の同族が、『ずっと前に死んだ波動の勇者と同じ波動持ってる子供いたんだけど、子孫かなんかかねえ?』と興奮気味に話していたが、私は平和に暮らしていた。

 

そしてある日、私は幻想郷へと来ていた。

 

 

解せぬ。

 

 

最初は戸惑った。森をさ迷えばポケモンではない魑魅魍魎が闊歩しているし、集落にいる人間達はモンスターボールを携帯していないどころか、ポケモンの存在すら知らないのだから。

 

この幻想郷へと誘われる理由としては、人間達に存在を忘れ去られてしまう事らしい。妖怪の賢者と呼ばれる存在が妖怪の食料として人拐いをする事もあるらしいが、私はポケモンだ。となれば、理由は前者だろう。

 

考えれば納得はできる。ポケモン図鑑に登録されているとはいえ、私や私の同族は人間達の前に姿を現す事はほぼ無い。

 

その存在は広まっていても、実在すると思っている人間は数少ないのだろう。

 

自分の存在が否定されたのは少し腹立たしいが、考えてみればこっちで暮らすのも悪くない。私を追い求めて住みかを荒らすポケモンハンターもいない。むこうの同族に会えなくなるのはほんの少し寂しいが、ここで新たな生活を始めるのも良いかもしれない。

 

 

 

………てな訳で、私は現在幻想郷で暮らしている。何もない、ゼロからのスタートであったが、すべてのポケモンの遺伝子を持つ私に不可能はなかった。

 

まずは住居の確保。これは"ひみつのちから"でひみつきちを作るやり方を応用し、立派な一軒家を作り出した。やればできるもんだ。食べ物についても問題ない。卵産めるし、ミルク飲めるし、なんなら自分でキノコやらカニのハサミやら生やしてちぎって食べればいいんだから。

 

 

割と悠々自適な生活を送る私だったが、最近は一人暮らしに一抹の寂しさを覚えるようになってきた。たまに出てくるスキマのお姉さん以外、訪問者なんて来ないからなぁ。目立たないように暮らしているのだから、致し方ない事ではあるんだけどね。

 

 

「……みゅー」

 

 

まんまる満月の夜に寂しさを紛らわせるように、今日も私はみゅーと鳴く。

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