「! ヴレイア……!」
フローレイティアはヘリの上で戦闘を見ながら奥歯を噛み締めた。
「おい!ライフルか何かないのか⁉︎」
運転席に向かって叫んだ。だが、
「そんなものありませんよ!あったとしても、この距離じゃ届かない!」
と、もっともな台詞が返ってきた。「チッ」とフローレイティアは舌打ちする。その時、お姫様のオブジェクトの副砲も壊された。それを見て通信をした。
「クッ……これ以上は無理だ。お姫様、敵船を沈めなさい」
『クウェンサー達は?』
「撤退させる。気にしないで……」
と、言いかけた時だ。別の通信が割り込んできた。
『こちらヘイヴィア!聞いてるか和服マニア!敵オブジェクトを占拠した!』
「………!」
『……で、俺オブジェクトの動かし方とか分からんけどどうすればいい?』
「……ふっ、あいつら……。お姫様に運ばせるわ。あなた達はそこでコクピットを死守しなさい。お姫様が近付いた瞬間、コクピットを取り返されてドカンなんて事にならない為にね」
で、フローレイティアは双眼鏡をトライコアの上に向けた。
(後は………)
ヴレイアとヘルメット男の殴り合いだ。
○
パァンッ!パァンッ!と銃声が響いた。それを聞きながらヴレイアは何かの物資の箱と思われる木の箱の間を走る。
(……ここまできたら、狙いはやっぱりあの瞬間だけだ)
そう決めると、ヴレイアは動き回って敵を撹乱した。その度にパァンッ!パァンッ!と銃声が響く。そして、弾を再装填するために男が拳銃を引っ込めた時、ヴレイアは姿を現した。
「うりゃああああッ!」
「っ⁉︎」
再装填は間に合わないと判断し、男は殴りかかってきた。ヴンッ!と拳が真っ直ぐ前に繰り出されるが、ヴレイアは後ろにバク転をしながらヘルメットを蹴り上げた。思いっきり空中を舞うヘルメット。
「っ⁉︎」
男も蹴られた衝撃で後ろに倒れかけたが、なんとか踏ん張った。が、目の前には銃口がある。
「終わりだ」
タァーンッ!と銃声が響き、男は後ろに倒れた。ヴレイアは無言で無線機を取り出した。
「………ふぅ、こちらヴレイア。ヘイヴィア……いやクウェンサーか?こっちは片付いた。そっちは?……OK、了解」
通信を切ると、ヴレイアは後ろに大の字に倒れ込んだ。
「………休憩」
そう呟くと、いつの間にか眠っていた。
○
目を覚ますと、ヘリの中だった。
「………?」
「あら、起きた?」
ヴレイアが目を覚ますと、目の前は胸だけ入らなかったのか、中途半端に上げられたジャージのチャックと、胸の肌色が見えた。
「うわあっ⁉︎」
「動かないの」
「こひゅっ⁉︎」
ビックリして飛び退こうとしたら、腕に阻まれて喉ををその腕に強打した。
「ゲフッ!ェゲフッ!……ふ、フローレイティアさん⁉︎な、何を……⁉︎」
咳き込みながらも、自分が膝枕されているのに気付き、ヴレイアは顔を赤くしながら抗議した。
「言ったでしょう?女性への苦手意識を克服してあげるって」
が、そう返ってきて口をパクパクさせるしかない。
「チッ」
「ケッ」
不愉快そうな声が聞こえて、そっちを見るとクウェンサーとヘイヴィアが舌打ちしていた。
「な、何だよお前ら!」
「お前、後で殺す」
「賛成、殺す」
「やめときなさい。あんたらじゃ二人がかりでも返り討ちよ」
フローレイティアが一応止めておいた。
「それに、クウェンサーはさっき覗いてたじゃない。ヘイヴィアも下着を見たことだし」
「それでも直に感覚を味わうのでは価値が違うと思うのですが!」
「そうです!」
「そりゃあ、今回のMVPは間違いなくヴレイアだもの。言っとくけど、あそこで足止めしてたヘルメット男、ヘイヴィアだったら3秒、クウェンサーなら2秒で殺されてたわよ?」
その言葉にゾッとするヘイヴィアとクウェンサー。だが、クウェンサーが手を挙げた。
「そ、それなら前のアラスカの時は俺がMVPですよね⁉︎ねっ⁉︎」
「でもなんか、下心があるから嫌」
「そんなっ……!それならヴレイアはどうなんすか⁉︎」
「だってよヴレイア。………ヴレイア?」
恥ずかしさの余り、顔を赤くして気絶していた。
「………それ、女性への苦手意識尚更強くなったんじゃないですか?」
「……………」
「……そ、それより次の話をするからね」
「無理矢理話逸らしたよ……は?次?」
聞き捨てならない声にヘイヴィアが思わず聞き返した。
「オセアニアでなりを潜めていた軍事国で大きな動きがあったそうね。オブジェクトを一機潰し、一機は鹵獲したあんたらはいよいよ本格的に上層部に気に入られたみたいだから、直々にご指名よ。このままオセアニアまで直行ね」
ヘイヴィアとクウェンサーの絶叫がヘリの中で響いた。