演奏
オセアニア軍事国。クウェンサー、ヘイヴィア、ヴレイアは三人でダラダラと歩いていた。
「……なぁ」
「何」
「しりとりしようぜ」
「いいよ」
「しりとり」
「リストラ」
「いきなり縁起でもねーな」
「ラブライブ」
「豚」
「タヌキ」
「キ○タマ」
「マスターガンダム」
「無意識」
「北の国から」
「らっきょ」
「競争」
「総督府」
「フローレイティアさん」
「若白髪」
「鬼上官」
「巨乳」
「和風マニア」
「実は純情そう」
「処女そう」
「ディープキス一回でオチそう」
「ガチで泣く時は声をあげそう」
「オッパイ針で突いたら破裂しそう」
「プフッ!……ツンデレそう」
「部下の失敗もほんとは優しく許してくれそう」
「失敗した日のお風呂では静かに涙を流してそう」
なんて話しながら歩いてると、三人の目の前に見覚えのある巨乳が現れた。
「……あんたらはしりとりをしてるんじゃなかったのかしら?」
フローレイティアがブロリーのようなオーラを出して立っていた。
「こ、こんにちは……」
引きつる笑顔で挨拶するヘイヴィア。クウェンサーとヴレイアに至っては何も話せないで口をガチガチと鳴らす。が、
「なんてね。気にしないで」
「「「へっ?」」」
「残念だけど、アレの前では手は出せないの」
フローレイティアの視線の先には海外メディアのカメラマン達がいた。
「ああ、なるほど……」
「だからあんたらボコボコにするのはどうあっても室内の中になるわね」
「俺たち今日は外にいるか……」
クウェンサーが言った。
「ちなみに、あの人たちは何なんですか?」
ヴレイアが純粋に質問した。
「軍事国の横暴を暴くとか言って、面倒な連中が集まってるのよ。大半は戦争を知らない安全国のお坊ちゃんか、あるいは本当に文化人かどうかも怪しい連中ばっかりだけどね」
「こっちの苦労も知らないで……毎回毎回死と隣り合わせなんだってのに……」
ヴレイアは前回撃たれた肩を押さえて言った。
「そういや、海の方じゃ反戦団体のボートも元気に走り回ってるみてぇだよな。『多国籍軍は数の暴力でオブジェクトをけしかける侵略行為を今すぐやめろ』とかなんとか」
「軍事国内の内側で何が起きてるかわからないおバカさんか、あるいは知ってて放置しようとしてる自己中の集まりだし、気にしなくても良いだろ。……そもそもあいつら、軍事国の魚雷に沈められたら、『何でもっと早く軍事国を攻撃しなかったんだ』とかサラッと言いそうだしなぁ」
ヘイヴィアに続いてクウェンサーが言うと、フローレイティアも嫌そうな顔をして言う。
「本国のフライド評議員とかも相当ピリピリしてるから。変なマイナスイメージを与えないようにってね。ひょっとすると、平和ボケした反戦団体を救助するための作戦に動員、なんてこともあるかもしれないのよ」
その話を聞きながらヴレイアはギリギリついていけないのか、小首を傾げた。
「……それって、戦争のせの字も知らないアホを守るってことですか?」
「そういうのもあるかもって話だよ」
「おお、ヴレイアが話についてこれてる」
「どういう意味だ⁉︎」
ヘイヴィアの台詞に食って掛かるヴレイア。
「とにかく、クウェンサーとヘイヴィアには日没と同時に始まる作戦に参加してもらうよ。今から準備しておくように。夕暮れ頃には正式な作戦前の会議……ブリーフィングに招集されると思うから、それまでに装備一式の準備を整えておいてね」
「は、はぁ」
「ヴレイア」
フローレイティアはヴレイアを見た。
「無理しないでね」
言われて、何のことやら?と首を傾げるヴレイアだった。
○
ドーム状の施設の中にミリンダはいた。衛生班に混じって、普段はオブジェクト整備を行っている婆さんと、その雑用のヴレイアはそこにいた。
現在、フルートで体の調整を行っているのだ。
「へぇー……こんなこと出来るんですね」
「何を今更言ってんだい」
婆さんにジロリと睨まれる。ここ最近、オブジェクトをぶっ壊す仕事ばかりで、ヴレイアは婆さんとの仕事をほとんど休みがちになっていた。今回も、いつも通りクウェンサーやヘイヴィアと駄弁っていて大幅に遅刻したのである。
(後で婆さんに謝らないとな)
そんな事を思ってると、出入り口付近にクウェンサーとヘイヴィアが現れた。ヘイヴィアは肩を押して、クウェンサーだけに何か指示を出している。
(……ヘイヴィアはらんぼうものだけど、ああいうきくばりはわるくない)
ミリンダはその様子を見てそう思った。すると、ばあさんも『ちょっと休憩するね』と言った。
「今日は何しに来たの?」
ミリンダが近付いてくるクウェンサーに聞いた。
「ヴレイアがここで仕事あるっていうから、ついでに」
「…………」
ムッとするお姫様。ヘイヴィアも出入り口付近でそれを聞いてため息をついた。
「へぇー。それ、フルートって奴だよな。俺も安全国にいた頃は吹奏楽部の連中が使ってるのを見たことがあるけど、なんかゴテゴテしてて不思議だよね。コツみたいなものが全くイメージできない」
「いがいにかんたんよ。吹いてみる?」
出だしはアレなものの、良い感じに話を進める二人。すると、そこにアホが来た。
「おーっす!僕も吹きたい!」
それを見てヘイヴィアはため息をついて、ミリンダはより深いため息をついた。
「? どしたの?」
「おお、ヴレイア!見とけよ俺の演奏!」
「あっ、いや吹いたことないなら今やめといたほうが……」
言いながらフルートに口を付けるクウェンサー。口元の部分を拭き忘れたミリンダは顔を赤くさせたが、それ以上の何かが体に走る。
ぺぷーっと、間抜けな音がした。楽器の音で身体を調整してるミリンダの背筋に得体の知れない何かが襲いかかった。声を発することなく、口が動くお姫様だが、それに気にせずクウェンサーは間抜けな音を連発。
「あれ?なんかちゃんと出ないな」
「馬鹿!貸せ!」
慌ててヴレイアはフルートを奪った。そして、意外にも正確にドレミファソラシドを確認する。
「……久々だから、吹けるか分からんけど……」
涙目のミリンダはヴレイアを見上げる。少なくとも、音色を確認してる時の音を聞いた感じではクウェンサーよりマシだ。そして、フルートを吹いた。
ただし、曲名はΖガンダム挿入曲『モビルスーツ戦』。かなり激しい曲調に、お姫様は余計に体に衝撃を感じる。
「おお!スゲェなヴレイア!」
クウェンサーに褒められるも、嬉しくない。目の前のお姫様の症状が悪化してるからだ。
「ッ!」
曲を変えることにした。ただし、ガンダムW挿入曲『思春期を殺した少年の翼』。
「〜〜〜ッ⁉︎」
涙目ながらも本気で殺意を飛ばすお姫様に怯えながらヴレイアは曲を変える。
ただし、ヤッターマンop『ヤッターマンの歌』。
「ガンダムじゃねぇのかよォォォォッッ‼︎」
整備主任の飛び蹴りが顔面に炸裂、ヴレイアはフルートを手放して壁に激突した。
「うおっ……なんだよ、もっと聞きたかったのに……ん?」
文句を呟いたクウェンサーが小さく声を上げた。ミリンダの様子がおかしいからだ。
「だっ、大丈夫か。おトイレ我慢してるの?」
直後、お姫様は拳を顔面に叩き込んだ。クウェンサーは薄れゆく意識の中、お姫様が拳銃を抜いてヴレイアに走って行くのが見えた。