作戦開始、クウェンサー、ヘイヴィア、ヴレイアの三人は二機のオブジェクトの戦闘を後ろから眺めていた。
「……よかったなぁ、今回はこっち側で」
「この間まであっち側だったもんなぁ……」
「僕もこんな一方的なのはもう嫌だからなぁ……」
ヘイヴィア、クウェンサー、ヴレイアはしみじみと呟いた。
『やっほー、おわったよー』
オブジェクトからお姫様の声がした。
「今回は、ハズレだっだみたいだな」
「さぁて、次の候補に移動するか」
ヘイヴィアが車に乗ろうとした時だ。
『あら、ここからはあなたたちのでばんですわよ』
「えっ?」
今度の声は情報同盟軍のオブジェクトからだ。
『私達が次のポイントに向かう前に集落がないか、歩いて確認してくださいな。おほほ』
「ええ⁉︎残業代も出ないのになんでそんなことを!オブジェクトがあれは十分だろ!」
ヘイヴィアが声を荒げるも、クウェンサーは冷静な様子で口を開いた。
「……ひょっとして、出られないんじゃ……。もしかして、体力が削られたの?」
『おほほ、ちょっとはわかるようですわね』
「………何?」
ヘイヴィアがクウェンサーに聞いた。
「あれだけの質量を高起動させてるからね。耐圧スーツを着ていても、限度はあるよ」
『エリートのスーツは足をしめつけるものですからね』
「そうか、脳に血が回らなくなるのを防ぐため、足の血流を止める機能があるって!」
『せんとうちょくごは体にねつがこもりますから。スーツをぬいでれいきゃくスプレーをつかうんですの』
「脱ぐ⁉︎じゃあ、うちのお姫様も⁉︎」
すると、話してる隣のオブジェクトが動き出し、主砲をクウェンサー達に向けた。
『よけいなことはかんがえなくていいから』
「ふおおお!ツッコミにしてもそれは強力すぎる‼︎」
慌ててクウェンサーが言うと、またまた情報同盟軍のオブジェクトから声が聞こえた。
『ふぅ、ハイレグレオタードスーツをぬいで、私のGカップナイスバディをさまさなくてはいけませんわ』
「「マジか!」」
クウェンサーとヘイヴィアが心以外を少年のように輝かせた。
「たった一文の中に、人を惹きつけるワードが満載!」
と、クウェンサーが言った時だ。
『ヴレイア、さがってて』
「もう退いてるよ」
「「えっ」」
そして、副砲が馬鹿2人に向けられた。
「うおわぁー!」
「馬鹿かクウェンサー!瞳をキラキラ輝かせるダミー情報に騙されてんじゃねぇ!そもそも、本当にハイレグだったら、足に耐圧機能付けられるはずねぇだろうが!」
『あら、バレてしまいましたわね。でもスクみずいじょうのきわどいところまで、スリットははいってますけどね」
「おいちょっとヘイヴィア!マジか!」
「ヘイヴィア、そいつはもう死んでいいよ。退避しよう」
「そうだな」
「あ?おい2人とも、どこ行くんだよ」
クウェンサーが止めるも、ヘイヴィアとヴレイアはとりあえずそこから退いた。後ろからクウェンサーの悲鳴が聞こえた。
○
密林の中。三人は歩いて作戦行動を開始した。
「にしても、スゲェ森だな。都市緑化用に遺伝子改造したんだっけ?」
「元が砂漠だったなんて信じられないよな」
「え?元砂漠なの?そんなことできんの?」
「お前本当に馬鹿なのな」
「どうやって軍人になったの?」
「お前ら失礼だな!」
失礼だが、言ってることは正しかった。
「つーかお前、なんでくっ付いてくんの?」
ヴレイアはヘイヴィアの背中にへっぴり腰でくっ付いていた。
「だ、だって……虫とかいるかもしれないし……」
「なんでフル武装してる人間相手に生身で嬉々として喧嘩する奴が、虫如きに負けてんだよ!」
「昔、蜂に刺されたんだよ!」
「知らねーよ!」
口喧嘩を始めるヴレイアにクウェンサーが言った。
「大丈夫だよヴレイア。どーせこの森、あとで焼き払うんだから」
「だったらなんで偵察なんてするの!もう焼き払えよ!」
「仕方ないだろ。集落があるかもって話なんだから」
なんで話しながら歩いてると、ヘイヴィアが「伏せろ!」とクウェンサーの頭を掴んでしゃがんだ。腰にへばりついてたヴレイアは、しゃがんだヘイヴィアの踵に顎を強打。
「アゴフッ!」
「……やっぱり集落がありやがったな」
言いながら、双眼鏡で様子を確認。
「あーらら、しかもオセアニア軍が来てやがる」
「けど、すぐに戦闘って感じじゃないな」
「大方、来月の家賃でも納めてるんだろ」
「どうする?」
「騎兵隊じゃねぇんだぞ。たった三人で10倍の兵隊と戦えるか」
「えっ⁉︎何々⁉︎10倍の人達と殴り合えるの⁉︎」
「「馬鹿は黙ってろ」」
と、2人して顎に絆創膏を貼ってるアホにツッコミを入れた時だ。パァンッ!と銃声が響いた。
「おい!やっちゃったのか?」
「隣で伏せてるてめぇが気付かない程の消音機能が付いてるように見えるのか?」
「あっちだよ」
ヴレイアの視線の方向には、草で人の姿は見えないものの、銃口の先っちょが見えた。
「………なんで双眼鏡持ってる俺らより早く見つけられるの?」
「聴力と嗅覚と第六感くらい鍛えときなよ」
大真面目な顔でヴレイアは言った。
「……お前それ本気で言ってる?」
「うん」
そして、マシンガン乱射の音。見ると、集落の人々の虐殺が始まっていた。
「うぅわ、ヤバイぜこりゃね
「何が起こってるんだ?」
「話すと長いから、村の自警団の話を三文芝で答えてやろう。『このやろう、騙しやがったな』『誤解ですー』『黙れ、皆殺しにして村ごと焼き払ってやるー』」
「やばすぎんだろオイ!」
「じゃあどうすんだよ」
「それは……」
と、話してる時だ。「ん?」と、唐突にヘイヴィアが声を上げた。
「ヴレイアは?」
「後ろにいるんじゃ……あれ?」
いなくなっていた。すると、「な、なんだお前は……!うわあ!」と悲鳴が聞こえた。双眼鏡で見てみると、ヴレイアがたった1人で暴れていた。
「………オイオイ。あいつ、化け物かよ」
「言ってる場合か!あいつだって無敵じゃないんだ!援護射撃しろ!」
「あ、ああ!」
クウェンサーに急かされて、ヘイヴィアはライフルを構え、撃った。
「ッァアアアア‼︎」
いつものヴレイアからは考えられない叫びが、敵の首を蹴り折る。だが、敵の数は多い。ヘイヴィアからの援護射撃があるとはいえ、武器のないヴレイアでは追い付かない。
「っ⁉︎」
とうとう、肩を撃ち抜かれた。
「ヴレイア!……おいクウェンサー!テメェも何かしやがれ!」
「分かってる!」
言うと、クウェンサーは爆薬を千切って投げた。それを爆破させ、見事に撹乱させる。
ヴレイアは肩の傷口を塞ごうともせずに、仕方なさそうに袖の中から短い棒を抜いた。それをビュッと横に振ると、シュコンシュコンと音を立てて伸びた。警棒(ヴレイア仕様)だ。まぁヴレイア仕様といっても普通より硬いってだけなんだけど。
「ぬうんりゃああああ‼︎」
気合いとともに銃弾を弾くヴレイア。そして、片っ端から敵を片付けた。
「……おお、あんなの持ってたのかあいつ」
クウェンサーがそう呟いた時だ。うしろから口を塞がれた。
「⁉︎」
ヘイヴィアもだ。振り返ると、情報同盟軍の兵隊が立っていた。
「我々は情報同盟軍第四分隊だ。正統王国軍だな?」
「あ、ああ。増援か?助かった」
「すぐ後ろにパワードスーツ部隊がいる」
「先方に1人、スナイパーがいます。そいつが先走って交戦を……」
クウェンサーもそう説明した。
「わかった、後は我々に任せてくれ」
「あとあの先頭の中に1人、俺たちの仲間が暴れてる。助けてやってください」
「了解した」
「それと、スナイパーに関しては俺たちにやらせてくれ」
ヘイヴィアがそう言うと、情報同盟軍は頷き、戦いの中に飛び込んだ。