数時間後、医務室でヴレイアがゴロゴロしてると、クウェンサーとヘイヴィアがヤケに焦った様子で入って来た。
「う、うわっ‼︎ふ、2人とも⁉︎な、何⁉︎……はっ、この4DSは別にナイショの退屈しのぎ用に持ってきたんじゃなくてそこで拾って……!」
「いいから来い、ヴレイア」
「お前の力が必要だ」
真面目な顔で言われ、ヴレイアはニヤリと不敵に笑った。
「そう来なくっちゃ」
○
で、三人は建物内部に入った。
「いいか、ヴレイア。お前にも分かるように簡単に説明してやる」
クウェンサーに言われて、コクリと頷いた。
「フライドの野郎が敵オブジェクトを見つけた。そこに二機のオブジェクトを使って殴り込みに行ったわけだが、それはダミーの可能性もあるんだ。もしダミーだった場合、試作実験炉が爆発して二機とも吹き飛ぶことになる。そうなる前にオレ達は作戦会議場に置いてあるはずのレポートがある。だから、取ってきてくれ」
「は、はぁ……話はよくわからないけど、レポートを持って来ればいいのね?」
「お、おう。もうそれでいいや」
そんなわけで、ヴレイアは会議室の前に立った。そして、息を小さく吸うと、気配を最大限に消して中に侵入した。それも、ずっと見ていたヘイヴィアやクウェンサーが見逃すほどに気配を消した。
「っ!」
「おいおい……幻のシックスマンかよ……」
2人がそーっと中を覗くと、フローレイティアがいるにも関わらず、まったく気づかれることなく資料を取って帰って来た。
「はい、これ」
「……おいおい、お前マジかよ……」
「? 何が?このくらい一般技術でしょう」
「無理だろ」
で、ヘイヴィアとクウェンサーは資料を見た。後ろからヴレイアが覗き見しようとするが、裏拳やら何やらを喰らって見せてもらえない。
「……やっばりグレートサンディー砂漠とタナミ砂漠で別れてたか」
「おいおい、お前の読み通りあいつらグレートサンディー砂漠の方に行っちまったっぽいぞ!」
「………仕方ないな。行くぞ、ヘイヴィア、ヴレイア」
「やっぱりな……いつも通りの地獄絵図かよ!」
「えっと……どこに?」
「いいから来い。いつも通り、オブジェクトと正面から殴り合いだ!」
ヘイヴィアに言われて、三人は外に出た。で、オフロードカーを見つけた。
「……免許持ってるか?」
「僕が運転するよ」
「おいおい、大丈夫かよ。オブジェクトとやり合う前にドカンなんて勘弁だぜ」
言われてヴレイアはポケットからカードのようなものを数枚出した。車やらバイクやら飛行機やら戦闘機やらの免許証だった。
「………お前まじ体動かす事ならとんでもねぇのな」
「いいから乗って。道案内は任せたよ」
「お、おお」
三人はいろいろと準備を整えてから出発した。武器はハンドアックスと電気信管の他に、ヴレイアの独断でバズーカやら何やらと色んな物を持った。
で、ヘイヴィアがマイクを持った。
「あっあー、ただいまマイクのテスト中」
「マイクチェック、ワン、ツー」
ヴレイアが続いた。
「勤勉なる『正統王国』の兵士諸君よ」
「むしろヤマトの諸君よ」
「テメェらが追いかけてるのはおそらくダミーだからがっかりせよ。本物はタナミ砂漠だ」
「そっちはランバ・ラル隊の罠である」
ぶふっ⁉︎という変な音が無線機から聞こえた。無視して、クウェンサーも声を出した。
「多分、グレートサンディー砂漠の施設にあるのは、オブジェクトじゃなくて試作実験炉だ。しかも大規模なトラップが待ち構えている可能性も高い。下手すると試作実験炉自体、通常の出力を振り切ってわざと特別臨界爆発させて、近づいて来たオブジェクトごと吹き飛ばす算段かもしれない」
「そうだよ。ニュータイプでも余所見運転すれば隕石にぶつかって死ぬんだよ。それと一緒」
「いや全然違ぇよ」
「……………」
ヘイヴィアの冷ややかなツッコミが飛んで来た。すると、情報同盟軍のエリートの声が通信機から聞こえてきた。
『そのはなしに、めいかくなこんきょはあるのかしら。おほほ』
「ない」
「男なら根拠より魂で語れ」
「ヴレイア、黙れ。それに向こうは女だ」
「検証してる暇がなかった」
『それなら……』
「だから、可能性のある両方を叩こうって言ってるんだ。力の余波の大小はあれ、二ヶ所から動力炉の反応があった事には間違いない。オセアニアのオブジェクトは一機。となると、どちらかが本物でどちらかがダミー。……両方潰しておいて損はないだろう?」
「俺らとしちゃ、分かりやす過ぎるグレートサンディー砂漠より、それっぽく隠してあるタナミ砂漠の方が怪しいと思ってるわけだ」
ヘイヴィアが続いた。すると、別の声が割り込んできた。
『オイちょっと待って。じゃあお前達は今、タナミ砂漠の方に向かっているの⁉︎』
フローレイティアの声だ。
「おおっと、軍法裁判ですかい。なら賭けようぜ、グレートサンディー砂漠が本命なら俺らは営倉にブチ込まれるが、タナミ砂漠が本命だったらなんでも言うこと聞いてもらいますからね。ちなみに俺は美人の柔らかい足の裏でイロイロと踏んで欲しいな!」
「おまっ、ホントに要求するの⁉︎そうそうところで俺は美人の脇の下でイロイロされるのにちょっと期待したいです!」
ヘイヴィアとクウェンサーは好き勝手言った後、ヴレイアを睨んだ。「なんか言え」とのことらしい。
「え、えと……僕は……じゃあ、フローレイティアさんと超プロレスごっこしたいです!」
「「おおーう……指名しましたよこいつ……」」
『んなっ……⁉︎ヴレイアもいるの⁉︎あんたはまだ怪我が治ってないでしょうが‼︎』
「へーきですよ。気合いで」
『というか前のバカ2人!勝手に賭けを成立させた上に、まともじゃない所ばかりリクエストするんじゃないの‼︎』
「「まだまだこんなもんじゃないですよ鼻の穴とか耳の裏とかっ‼︎」」
「え、えと僕もあとウルトラマンごっことか!」
『言わなくていいのよどうせ叶える気ないし‼︎』
フローレイティアの叫び声にヘイヴィアとクウェンサーはヴレイアを見た。
「流石にウルトラマンごっこは……」
「ねぇ?」
「お前らに言われたくねぇ‼︎」
「でも実際問題、俺らだけで0.5世代潰したらヒーローどころの騒ぎじゃねぇよな。ひょっとしてまた勲章追加とか。おいおい、あっという間にフローレイティさん追い抜いちゃうんじゃね?」
「駄目だよヘイヴィア。どっちにしたって軍の命令に背いてる事に変わりはない。最悪、今までの功績全部没収されるかもよ」
「いいよ僕は別に。戦えればなんでも」
『違う馬鹿、ふざけるんじゃないの!ここまで頑張ってきたお前達を、そんな簡単に切り捨てさせる訳ないのよ‼︎』
三人の声にフローレイティアは本気で怒った。
『0.5世代って言っても、相手は本物のオブジェクトよ‼︎仮にタナミ砂漠が本命だとしたら、お前達……たった三人でオブジェクトと戦う事になるのが分かってるの⁉︎』
「何それ最高じゃないっすか!」
『戦闘馬鹿は黙ってなさい‼︎』
目をキラキラと輝かせるヴレイアにフローレイティアは怒鳴る。
「いやーでも実際、ここは行くべきでしょう」
「だな、のんびりしてたら0.5世代が動き出すだろうし」
「村人虐殺されました〜なんてなったら多国籍軍のメンツボロボロになっちまうしなぁ。テメェも左遷されんじゃねぇのか」
ヘイヴィアのその言葉を最後に無線機のスイッチを切った。
「しかし、脇の下でイロイロねぇ」
「プロレスごっこよりマシだろ」
「煩悩の塊の奴らに言われたくないよ」
無駄口を叩きながらオブジェクト壊しの最強トリオはオフロードカーを進ませた。